第一話 右が左か
今回は転生後の話となります。
間違いががあればご指摘お願いします。
「う…う…いててっ」
目を覚ました湊は恐る恐る周りを見渡して状況を確認した。
「ここは…?あれ俺確か化け物みたいな犬に驚いて壁に頭ぶつけて…」
目を覚ますと湊は何故か真っ暗な空間に1人ポツンと立っていた。
「あれ?どこにも痛みはない…」
湊は自分があのあと死んでしまったのだと悟った。
「もしかして死んだのか俺…死に方ダサすぎるだろ…死ぬ前に一度は親友と呼べる友人が欲しかった…愛し合える彼女が欲しかった…」
自分の死に様に後悔しながらこの暗闇のなかを歩いていた。すると前の方にうっすら光が見えた。
「なんだ…?あの光…」
湊は何か口ずさみながら光の場所を目指して走っていた。
「次に絶対生まれ変わったら絶対ハーレム生活を送ってやるんだ!」
そんなことを呟きながら光の場所へ到着すると、そこには2つの扉が並んでいた。
「なんだこの扉?何か書いてある…?」
左の扉には『世』右の扉には『凡』と書いてある。
「どういう意味だ…?とりあえず入ってみるしか…」
湊は躊躇なく『世』と書いてある左の扉を開けると中に吸い込まれるように入っていった。
…
「うわわぁぁぁあ!!」
湊は勢いよくベットから目を覚ました。
周りを見渡し扉に吸い込まれたときにここに飛ばされたということを理解した。
「っ、次はどこなんだ…?病院なのか…?今のは夢だったのだろうか。まあ、生きているのは確かだ」
湊は立派な木材のみで建てられた家のベッドの上で寝ていた。
「病院…という訳でもなさそうだ」
その周りには見たことのない言語で書かれた本がたくさん並べられていた。
「何語だよ…とりあえず外に出てみるか…」
扉の向こうから誰かの喋り声が聞こえた。
「誰…だ?」
扉に誰かが近づいてくるのが分かったーー
「…ガチャ」
「……」
扉が開くとそこには、髪の長い白髪が綺麗な同い年ぐらいの女の子が手にスープのようなものを持って部屋に入ってきた。
「誰…なんだ…??」
「…やっと目を覚ましたのね!あなた私の家の前で気を失って倒れていたのよ?」
その話を聞いて動揺を隠せず言葉を失う。
「ん……?」
湊は白髪の子が何を言っているのか理解ができなかった。
「ん?家の前で…?いや家の前なんかで倒れてないんだけど?」
湊は白髪の子が何を言っているのか理解するのに必死だった。
「何を言ってるの?頭から血が出ていたし、出血も酷かったし…もうお母さんの
魔法がなかったら危なかったのよ!?」
湊はパニック状態だったが、死にかけていた自分を助けてくれたということは確かである。
「あ、助けてくれてありがとうございます…」
「まあ、助けたのはお母さんなんだけどね」
(何かおかしい…出血と言っていたのに痛みもないし、治療をした痕跡すら無い…)
「まあとりあえず私の名前はユトリ。この辺では見ない顔ねあなた名前は?」
『スキリティ』という聞いたことのない言葉に困惑しながらも自分の名前を答えた。
「あ、はい…湊です…」
自分の名前を答えたあと、ここはいったいどこなのかユトリに聞いた。
「あの…ここってどこなんだ?」
少し驚いた表情でユトリは答える。
「え、ここ?先駆街という街よ。あなたはどこからきたの?」
もちろん『センティードシウダー』という街など聞いたことはない。
ーーセンティードシウダー??
湊はここが日本でもない全く違う異世界なんだと薄々気付き始める。
「お、俺は北海道からきたんだけど…」
やはりユトリはパッとしない表情で顔を傾けた。
「ホッカイドウ?ふーん…」
とりあえずユトリがこの家の住人ということは理解できた。
だが、さっき言っていた『スキリティ』という謎の言葉が頭から離れない。
(もしかして俺異世界転生でもしたのか…)
ユトリが持って来てくれた野菜のスープを飲みながら今の状況を考える。
「う、うまい!!」
野菜の旨味が体に染み渡る暖かいスープが美味すぎてそんなことどうでもよくなっていた。
「でしょ!私が作ったのよ?隠し味のガラピコが効いてるでしょ!」
ユトリはとても嬉しそうな顔で湊を見つめいたが、湊は隠し味の『ガラピコ』という言葉にまた困惑していた。
(ガラピコ…??そんな食べ物聞いたことない…)
「とりあえず外に出ていいか?…」
手に持っていたスープのお皿を机に置いた。
「まさかな…」
本当にここが異世界なのか外にでて確認がしたかった。
「いいわよ!付いて来て」
そう言うと湊はベッドから立ち上がりリビングを通ると玄関扉の前に立った。
「フウゥ…」
一息つき扉をゆっくり開ける。
「ーーガチャ」
……
そこには湊が住んでいた北海道…いや日本とすら思えない雲ひとつない美しい自然の風景が広がっていた。
「……」
「…は、は、はぁぁあ?!」
見たことのない形をした家や動物、見たことのない食べ物やアクセサリーを売っている商店街のような店がたくさん並んでいて明らかに元の世界とは違う風景だった。
「…」
このとき湊は自分が異世界転生をしたと確信した。
「ーー嘘、だろ」
「どう?あなたの住んでるホッカイドウってとこに負けないぐらいいい街だと思わない?」
「北海道よりも全然いい街だよ…はは」
衝撃を受けた湊はそのままユトリと外に出た。
「ここは『プレイストリート』って言うこの街で唯一、食料や装備など買えるところよ」
「元の世界でいう商店街のようなところか…まて!剣と防具も売っているじゃないか…」
武器や仲間を揃えてモンスター倒すアクションRPG系のゲームが大好きなゲームオタクの湊にはたまらない世界だろう。
「やっぱ俺異世界転生したんだ…!転生の仕方がダサいなんて関係ない!ここで生きてみせる!」
ユトリがポカンとした表情で湊を見る。
「ん…?生きてみせる…?なにを言ってるの?」
「い、いや、気にしないでくれ」
プレイストリートを抜け、さらに歩き続けていると立ち入り禁止と書いてある看板の前にたどり着いた。
(なんだこの不気味な森は…)
看板の先には暗い森への入り口になっていた。
「この先は通れないのか?」
困窮した顔でユトリは答える。
「ここ魔力の森って言うんだけど最近、魔物のサンタの群れが結構潜んでるから辞めといた方がいいかも…雑魚だけど群れでこられると厄介だわ」
(この世界には魔物というのが存在するのか…)
「魔物ってどんな奴らなんだ…?」
湊は興味ありげな顔でユトリに尋ねた。
「何も知らないのね!?」
ユトリは湊に呆れた表情で魔物のことを話し始めた。
「魔物って言うのはマナという呪力を纏っている生物のことよ、私のお婆ちゃんに聞い話だけど元は普通の生き物で死んだ動物や人間が何者かによって魔物に変えられてしまったと聞いたわ」
「マナ?じゃあサンタいう奴も魔物なのか??」
「まあ、下位種族だけどサンタもいちを魔物だわ」
(まじか、死んだ生き物を魔物に変えるとは悪趣味なやつがいるもんだな)
この世界には魔物という生物が存在しており、魔物の種類によって階級が分けられている。
「へー、とりあえずなんか辞めといたほうが良いみたいだな」
サンタという名をどこかで聞いたことがある湊はなんとくなく辞めといた方がいいと悟ったのかこの森を後にした。
読んでくださりありがとうございました