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天使だった私。病気だった僕。

作者: Yurinya

クリスマスに16歳を迎える、『癒す』能力を持つ不思議な少女。彼女は16歳になるクリスマスまでにある試練を乗り越えなければならないが、その能力は、人間に使う事が許されなかった。重い病を患っている普通の少年もまた、死の恐怖と戦いながら過ごしていた。そんな2人が出逢い、お互いに惹かれ合っていく中で、何を想い、どう過ごすのか、感じて頂きたいなと思います。

13年前のクリスマスの夜、私は1人、夜道を彷徨っていた。そして、通りすがりの女性に声をかけられ、保護された。


その女性は、ここのシスターでもあり、母代わりでもある、シスター・サヤ(徳永 咲野(トクナガ サヤ))だ。

そう、私は、とても小さな教会のある施設で暮らしている。

お母さんと会う前の記憶は、私にはない。

本当の母親や父親、自分の名前さえもわからない。

誕生日もわからないので、見つけてくれたクリスマスが私の誕生日になった。


今年のクリスマスに私は16歳になる。


私の名前は徳永 由梨(トクナガ ユリ)

私の髪の色は銀色。

この辺では珍しいのか、よくからかわれた。

もう一つ、私には、普通の人とは変わった力を持っていた。


それは、「癒す」能力だった。

傷や病気を治すことができる。

でも、お母さんと

「絶対に人に使ってはいけないし、見せてはいけない」と約束していた。

もちろん、自分の傷も治ってしまうので、スポーツや怪我する恐れがあるものは禁止だった。

きっと、みんなに怖がられるから。


友達と外で遊ぶことが出来ない私は、いつも1人ぼっちだった。

でも、全然寂しくはなかった。

お母さんがいたし、動物達はみんな友達だから。

それに、傷ついた動物には「癒す」事が許された。


私には、いつも部屋に遊びに来てくれる2匹のお友達がいた。

お友達の名前は、「べリル」と、「スピネル」。

ベリルは、薄い緑掛かった鳥。スピネルは、ちょっとグレーぽい鳥。


ある日、私はいつも通り3階にある自分の部屋の窓から、外を眺めていた。

すると、ベリルとスピネルが、慌てて窓から飛び込んできた。

「どうしたの?そんなに慌てて。」

外を見ると、大きな鳥が円を描いて飛んで行った。

どうやら、あの大きな鳥に追われていたらしい。

「ほら、もう大丈夫。もう行ったみたいだよ。」

でも、ベリル達はまだ、慌ててる様子。

「ちょっと、どうしたの?落ち着いて!」

話を聞くと、さっきの大きな鳥に襲われて怪我をしたコがいるらしい。

私はベリル達の案内で、ここから少し離れた所にある公園に向かった。

耳を澄ますと、微かに鳴き声が聴こえた。

その鳴き声の方へ行くと、小さなトンネルの形をした遊具の中に、一羽の小鳥が横たわっていた。

小鳥さんを 助ける為に、ベリルとスピネルが囮になり、その隙にここに逃げてきたらしい。

私は急いでその小鳥を両手で抱え、「癒し」た。


その小鳥は、私の手の中で小さく光り、みるみる元気を取り戻した。

「よかった!」

小鳥は私にお礼を言って、空高く羽ばたいていった。

「大きな鳥さんに気をつけるんだよー。」

私は小鳥さんを見送った。


「お嬢さんは優しい子なんだね。」

後ろから声がしたので、振り返った。

「あなた、誰?」

そこには身体の大きな男が立っていた。

よく見て見ると、私と同じ銀色の髪。

その男は、優しく微笑みながら、その場を去っていった。

今の人は一体誰なのだろう。でも、あまり怖く感じなかった。ううん、なんだか懐かしい、優しい雰囲気の人だったな。

その夜、ベットに入り、寝ようとしても、あの男の人の事が気になって眠れずにいた。






俺は花吹 律(ハナブキ リツ)

俺は4階にある自分の部屋の窓から、いつも外を眺めていた。

ここから少し離れた所には小さな教会の入っている孤児院があった。

そこは3階建てだ。

5、6人くらいの子供が住んでいるのだろうか?

いつも子供達が教会の広場で遊んでいた。


しかし、1人だけ、その輪の中には入らず、3階の窓から小鳥達とおしゃべりをしている女の子がいた。


銀色の髪の女の子。


俺は気づかれないように、カーテン越しからいつもその子を眺めていた。






ある日、施設に住む5歳の志乃ちゃんという女の子が、足に大怪我をした。

施設内の広場で遊んでいたら、転んでしまい、転がっていた大きな石の少し尖ったところに足をぶつけてしまったらしい。

膝の下辺りから血が流れて止まらない。

お母さんはタオルで志乃ちゃんの傷を抑えていた。

私も志乃ちゃんに駆け寄り、手を握った。

「痛いよー、おねぇーちゃん!」

「志乃ちゃん、大丈夫だからね。」

私は、お母さんの顔を見た。

お母さんは、私に気づき、顔を 小さく横に振った。

「お母さん!」

由梨は思わずお母さんを呼んだ。

「救急車を呼ぶから、志乃ちゃんを見ててね。」と言ってタオルで抑えるのを代わり、お母さんは部屋に戻っていった。


すぐに救急車が来て、志乃ちゃんは病院に運ばれた。私も心配だったから、一緒について行った。その間、私は志乃ちゃんの手を握っていた。

私ならすぐに助けてあげられるのに。なんで癒しちゃいけないの?なんで…。

私は悔しくてたまらなかった。


志乃ちゃんが手術室に入っている間、お母さんは先生に呼ばれて行った。

私は廊下の椅子に座り、手術が終わるのを待っていた。すると、自然と涙がこみ上げてきてた。


一体何のためにこの力はあるのだろうか。

なんで使ってはいけないのか。

私には分からなかった。助けてあげられるのなら、バケモノ呼ばわりされたって構わなかったのに。






「いつもありがと。」

俺は、母さんを玄関まで見送りしていた。

「何言ってるの。こっちこそ、毎日来れなくてごめんね。今日も元気でよかったわ。また来るからね。」

そう言って母さんは手を振って家に帰っていった。

俺は部屋に戻ろうと振り向くと、あの銀色の髪の女の子だ。

こんな近くで見かけるのは初めてだ。

でも彼女は泣いていた。

「どうしたの?」

自分でも、びっくりした。

俺は思わず声をかけていた。

「あっ、ごめん、えっと…ほら、これ食べる?」

俺はポケットからイチゴミルクキャンディーを取り出し彼女に差し出した。

彼女は俺を見た瞬間、一瞬涙は止まったが、今度はさっきよりも涙が溢れ出していた。

俺は、彼女の頭を撫でていた。

なんだか、彼女を放っては置けなかった。


しばらくして、彼女は落ち着いた。

「ほら。じゃぁな。」

俺は、イチゴミルクキャンディーを彼女の横に置いて、部屋に戻った。

彼女と別れてからも彼女のサラサラな髪の感触が、まだ手に残っていた。






志乃ちゃんに何も出来ない自分が悔しくて、私は涙が止まらなかった。

すると、「どうしたの?」と、突然声をかけられた。

その声にびっくりして、声がした方を見ると、凄く優しい瞳をした男の人が、イチゴミルクキャンディーを出して立っていた。その男の人に見つめられ、なんだかさっきよりも涙が溢れてきた。

そして、その人は、優しく頭を撫でてくれた。

初めて会った人なのに、なんだか凄く嬉しかった。


志乃ちゃんの怪我は何針か縫ってはいたが、すっかり元気になっていた。足首も痛めていたようで、しっかり歩けるようになるまでは、しばらく入院することになった。


施設に帰ってから、私は、お母さんとは口を聞いていない。

お母さんは、私の為って言っていたけど、そんな事はどうでもよった。

ただ、自分の力の意味がわからなかった。

怪我をした鳥や猫は癒せても、人に使ってはいけなかった。

お母さんは、「神様が決めた事」といつもいっていた。


次の日私は、志乃ちゃんのお見舞いに来ていた。

「おねぇちゃん!」

志乃ちゃんは、私の顔をみて、凄く喜んでいた。

「志乃ちゃん、元気そうでよかった。」

「うん、大丈夫だよ!おねぇちゃんがいてくれたから。」

「えっ、私が?」

「おねぇちゃんが手を握ってくれたら、なんだか気持ちが落ち着いて、痛かったのがどっか行っちゃった。」

志乃ちゃんの暖かい言葉が嬉しかった。

「おねぇちゃん?どうしたの?どうして泣いているの?」

「…えっ?」

私は気付いたら、涙を流していた。



志乃ちゃんは、いつも私の部屋に来てくれた。

「なんでおねぇちゃんはお外で一緒に遊ばないの?」

「お部屋にいるのが好きなの。ほら、私のお友達だよ。」

「わぁー、可愛いね!私も鳥さんとお友達になってもいい?」

「もちろんだよ!このコがベリルで、こっちのコがスピネルって言うんだよ。」

「ベリちゃん、スピちゃんだねー!こっちにおいでー!」




コンコンッ。

「おねぇちゃーん、入っていいー?今日はね、ベリちゃんとスピちゃんにごはん持ってきてあげたよー!」

志乃ちゃんはそういって、半分ほど食べかけのパンを持ってきてくれたり、一緒に歌を歌ったりしてくれた。


私にとって、妹のような存在だった。

そんな志乃ちゃんを癒してあげられなくて、悔しかったのに。


私は涙を手で拭った。

「志乃ちゃん、そろそろ帰るね。明日もまた来るからね!」

「うん、おねぇちゃん、絶対に来てね!」

志乃ちゃんは、寂しそうだったけど、私は志乃ちゃんに微笑んで、病室を出た。


そして、ゆっくりと廊下を歩いていた。

すると、1番奥の部屋から、風が吹いてきた。

私は、引き寄せられるかのように、その部屋へ向かった。

部屋の入り口まで行くと、さっきより強い風が吹いた。

「きゃっ」

私は思わず目を瞑り、そっと開けると、あの人が、ベットから私を見ていた。


「あっ」

彼が、ビックリして私を見ていた。

「あっ」

私もまさか、彼がここにいるなんて思わなかったから、びっくりしたけど、嬉しかった。

「あっ、あの、き、昨日は、あ、ありがとうございました。イチゴミルクキャンディー。」

「う、うん。こっちこそ、急に話しかけて、その、ごめん。」

「い、いえ。嬉しかったです。あのー。」

「何?」

「あなたは、その、なんでここにいるんですか?」

私は、なぜ彼が入院しているのか気になった。

「大したことないよ。ちょっと体調が良くないだけだから。」

「そう、なんだ…。」

私はホッとした。

「そうだ、あの、名前、聞いてもいいですか?」

「えっ、…律。 花吹 律。」

「ハナブキ リツ?」

「君は?」

「私は、由梨。徳永 由梨。」

「トクナガ ユリ…か。よろしく」

「う、うん。こちらこそ。今日はありがとうございました。あのー、明日も、来ていいですか?」

自分でもびっくりしていた。でも、また話したい。

「 えっ、 あぁ。」

私は、律くんの返事に一安心した。

「じゃあ、また明日。」

「明日。」

私は、なんだかドキドキしていた。






ー教会ー

銀髪の男「メジアスは、どうだい?」

シスター「はい、まだ人に使わせてはおりません。」

銀髪の男「きっと辛いと思うけど、もう少しの辛抱だ、宜しく頼むよ、シスター。」

シスター「はい、あの子は、必ず天使になる子。」






その日の夜

コンコンッ。

「はーい」

お母さんがドアを開けた。

「由梨、ちょっと話があるの」

「お母さん!出てっ…」

私は、「出てって」 って言おうとした。

だって、まだ話したくない。

でも、やめた。

なんだかお母さんが寂しそうだったから。


「何?お母さん」

「志乃ちゃんの様子はどうだった?」

「うん、元気そうだったよ」

「そう、それは良かったわ」

私は、お母さんに尋ねた。

「ねぇ…なんで人を癒しちゃいけないの?誰かが助かるなら、私は怖がられたって平気なのに。」

お母さんは、申し訳なさそうに言った。

「…そうね。由梨は優しい子だものね。でもね、それは神様が決めた事。由梨、今は我慢してちょうだい。必ず、わかる日がくるから。」

最後にお母さんは、「ごめんね。」と言って部屋を出た。

「お母さん…」


そう、お母さんは、いつも「神様が決めた事」と言っていた。

そんなの理由になんかならない。だけど、私はお母さんを問い詰めたことが無かった。


あの時までは。


私は毎日、志乃ちゃんのお見舞いに行った。

そして、その後、律くんに会いに行くのが楽しみになっていた。


律くんは、あまり自分の事を話さない。質問をしても、質問を返されるから。


「律くんは、何色が好きなんですか?」

「由梨は?」

「私?私は虹色かな。」

「全部入ってるよ。ずるいじゃん」

「だって全部好きなんだもん」

「じゃあ、俺も」


ー別の日ー

「律くんはいつも何をしているんですか?」

「俺は…別に。由梨は?」

「私は、鳥さんとおしゃべり」

「なにそれ笑。おとぎ話に出てくるお姫様みたいだね」

「えーなんですか?」

「えっ、知らないの?マジかぁ」


それでも律くんと話すのがとても楽しい。私が悩んでた事なんて、どうでもよく思えてくる。

気がつくと私は、いつも律くんの事ばかり考えていた。



今日も私は志乃ちゃんの病室に来ていた。

「志乃ちゃん、もうすぐ退院だね!」

「うん、早くみんなと遊びたいよ!そうだ!ベリちゃんとスピちゃんがね、志乃に会いに来てくれるんだよ!」

志乃ちゃんは嬉しそうに言った。

「そうなんだね。よかったね!」

ベリルとスピネルのお陰で、志乃ちゃんは病院でも寂しくないみたいで良かった。

「志乃ちゃん、また来るからね!」

「うん!」


その後、志乃ちゃんはすぐに退院する事が出来た。

まだ少し足首が痛むようで、走ることは出来ないけれど、生活する上では全然問題みたい。傷もすっかり良くなっていた。

「志乃ちゃん、本当によかったね。」

「うん、おねぇちゃんありがとう。」

志乃ちゃんの退院祝いで、その日は施設の子達とパーティーをやった。

もちろん、ベリルとスピネルも一緒にお祝いした。

「由梨、ありがとね。」

片付けを手伝っていると、お母さんか話しかけてきた。

「ううん。志乃ちゃん、元気になったから。」

お母さんが、何を隠しているのかわからない。でも、今はまだ、お母さんの言う通りにしよう。



「律くん、今日は天気がいいですね。」

私と律くんは、病院の庭を散歩していた。

「…あのさ、由梨は、他の友達とは遊ばないの?」

「あっ、ごめんなさい。いつも来られたら迷惑…ですよね。」

そうだよね。こんな毎日の様に来られたら、迷惑だよね。そう思っていると…

「あっ、いや、いつも会いに来てくれて、嬉しいんだけど、俺に気を遣ってるなら、さ。」

「律くん、何言ってるんですか?」

すると、律くんは申し訳なさそうに言った。

「俺は、由梨に何もしてあげられないから。」

そんな風に思ってくれていたんだ。なんか嬉しかった。

「私は、律くんに会いたいから会いに来てるんですよ。」

私がそう言うと、律くんは照れ臭そうに頭を掻いて言った。

「また、来てくる?」

私はすぐに「はい!」と答えた。

「由梨…ありがっ…っ!」

その瞬間、律くんは少しよろけた。

「えっ、律くん、大丈夫?」

私は彼の腕を支えて言った。

「うっ…ごめん。」

なんだか、律くんの顔色がよくない。

「だんだん寒くなってきましたね。病室に戻りましょうか?」

すると、律くんは

「そうだね。」と言ったので、私達は病室に戻った。



ー次の日ー

昨日は顔色が悪かったけど、律くん大丈夫かなぁ。

病室のドアから顔を覗かせると、いつも通り、律くんは、窓から外を眺めていた。


すると突然律くんは苦しそうに咳き込み出した。

私は慌てて律くんに駆け寄り背中をさすった。

「ゴホッ、ゴホッ、由梨っ、ご、ごめん。」

「そんなのいいよ。大丈夫?」

「う、うん。ゴホッ、」

よく見ると律くんの手には血が付いていた。

私は怖くなり、すぐにナースコールを鳴らした。

「律くん!律くん!しっかりして!大丈夫?律くん!」

咳は全然とまらなくて、その後、すぐに看護師さんや先生が来て、私は病室を 追い出された。

こんな時、癒せたら…

そう思いながらも、お母さんが「それは神様が決めた事。由梨、今は我慢してちょうだい。必ず、わかる日がくるから。」と言っていた事を思い出していた。

…我慢って、いつまでしなきゃいけないの?わかる日がくるって何?

何も出来ない自分が悔しくて、涙が止まらなかった。


そして、律くんとは、面会ができなくなった。

次の日も。

その次の日も。


私は、律くんから貰ったイチゴミルクキャンディーを舐めながら、自分の部屋から律くんの病室の窓を眺めた。

次の日も。

その次の日も。


何日くらい経ったのだろうか。

今日もいつもの様に、病室を眺めていた。

すると、それまで閉まっていた律くんの病室の窓が開いていて、カーテンが揺れていた。


目を凝らして見ると、律くんが外を眺めていた。

律くん、元気になったんだ。良かった。

そう思っていると、律くんもこっちに気が付いた。


私が手を振ろうと、腕を上げかけたその瞬間、律くんは窓を閉めた。


「えっ、なんで?」

私はわからなかった。

なんだか哀しくて、気づいたら部屋を飛び出して病院に向かっていた。



「律くん!」

私は勢いよく病室のドアを開けた。

「由梨?」

律くんは驚いていた。

でも、元気になった律くんを見たら、急に涙が溢れてきた。

「ゔっ、よがっだ。本当に良がっだぁ。ゔっっ」

私は泣きじゃくった。涙が次から次へと溢れ出した。

窓を閉められた時は哀しかったけど、でも、でも、元気になって本当に嬉しかった。


しばらくして、俯きながら律くんは言った。

「由梨…ごめん。…本当は、俺の病気…もう、治らないんだ。…だから、もう……ほっといてくれないか。」

「…治らないって…どう言うこと?」

私は恐る恐る聞いた。

律くんは、しばらく黙っていたが、ゆっくりと重たい口を開いた。

「…俺…もうすぐ…死ぬんだよ。」

私は頭が真っ白になった。

「えっ…だって、体調が良くないだけって…。」

「…嘘…付いていたんだ。ごめん。」

そんな、そんなことって…。


その日の夜は、食事も喉を通らなかった。

そんな私をみて、お母さんは、凄く心配していたが、私は「もう寝るね」と言って部屋に戻った。


でも、全然眠れない。

目を瞑ると、さっき律くんに言われた言葉を思い出してしまう。


「…俺…もうすぐ…死ぬんだよ。」


こんな夜中だし、きっとお母さんも眠っているだろうと思い、教会に向かった。


すると、教会の灯がついていて、少し開いていた扉から光が漏れていた。

誰かいるのか、話し声がうっすら聞こえる。

私は、気づかれないように、そっと、扉に近づき、顔を覗かせた。


なんだか2人いるみたい。1人は…お母さん?…と、もう1人は…誰?

後ろ姿だが、見覚えのある銀色の髪。

あっ、公園で小鳥を助けた時の、あの人だ。


銀髪の男「もうすぐ、クリスマス。メジアスが帰ってくる日が楽しみだ!シスターよ、もう少しだけ、我慢してくれ。」

シスター「何をおっしゃられるのですか!リンゼル様。わたくしは、光栄にございます。由梨…いや、メジアス様の成長をお側で見守ることが出来、なんという幸せ。メジアス様が天使様になられましたら、世界中の人々が幸福になりましょう。」


どう言うこと?メジアスって誰?私…なの?

私は、思わず足を扉にぶつけてしまった。

カタンッ。

「あっ。」


「メジアス。入って来なさい。」

銀髪の男の人は、私がいた事に気付いていたのか、驚いた様子が全くなかった。

「由梨…?聞いていたの?」

お母さんはびっくりした様子で私を見た。

「どういう事なの?メジアスって誰?天使ってなんのこと?私が癒しを使っちゃいけない事と、関係があるの?…ねぇ、教えて!その人は誰なの?お母さん。」

私は初めて、お母さんを問い詰めてしまった。でも、私にも時間がなかった。律くんを助けたい。癒しを使いたい。

「由梨…」

お母さんは、どうしたらいいのかわからない様子だったが、銀髪の男の人が口を開いた。

「…私から話そう。そろそろ話してもいい頃だからね。」

銀髪の男の人は、そう言うと、私の側にゆっくりと近づいてきた。

「メジアス…いや、今はまだ、由梨か。お前は私の娘なのだよ。私の名前は、『大天使リンゼル』。君の母親は、『大天使サラ』 だ。天使には、それぞれの能力が備わっている。水の天使、森の天使、風の天使…そしておまえは、癒しの天使なんだ。どんな傷や病気だって、治すことができる能力だ。しかし、今はまだ、その力を人間に使ってはいけないのだよ。」

私には、何を言っているのかさっぱりわからなかったが、リンゼル様って人の最後の言葉が引っかかった。

「なぜ人に使ってはいけないの?」

すると、リンゼル様は、こう答えた。

「おまえはまだ未熟だ。本当に癒しが必要な人間と、そうでない人間の判断がつかぬ。だから人間界に住み、人間の事、この地球の事を理解する必要があるのだ。もし、今人間に癒しの力が使えるなら、目の前にいる傷ついた全ての人間を癒してしまうだろう。」

「…」

確かにそうかもしれない。しかし、私は黙って聞いていた。

「そうなったら、地球は大変なことになる。だから主はルールを作った。立派な天使になるまでは、その力をむやみに使ってはならないように。そしておまえの癒す力は人間に使ってはいけないと。もし、ルールを破ったら、お前は天使になれなくなる。それに、その癒しの力も使えなくなるのだ。そして、ただの人間になる。これは試練なのだよ。」

「じゃあ、天使になったら助けたい人を癒してもいいの?」

私は律くんの事が頭をよぎった。

「立派な天使になれば、目の前の傷ついた人間ではなく、本当に癒しが必要な人間がわかる。由梨よ。次のクリスマスにお前が立派な天使になる為の儀式が行われる。神が認めれば、お前に光輪と翼が贈られるだろう。」

そう言って、大天使リンゼル様は翼を広げ、教会の天井へと舞い上がり消えていった。

私は夢でも見ているのだろうか。

今起こっている光景はなんだったんだろう。

「お母さん、今のは一体何??」

「…由梨、ちゃんと説明するわね。」


それから、お母さんは、知っているコトを全て話してくれた。


天使の子が産まれると、人間であり、神様に仕える教会のシスターが母代わりになり、天使の子を育てるのだそう。その中でお母さんが選ばれた。

そして、人間として、育てられた幼き天使は、善悪を知り、神様が認めた者だけが本当の天使になれるのだそうだ。


なんだか信じられなかった。私が天使だなんて。でも、その話が本当なら、私は一体どうなってしまうのだろうか。

「ねぇ、お母さん、もし、私が天使になったら、お母さんや施設の子達とはもう会えないの?」

「そうね。でも、こうやってあなたを育てられた事は、何よりの誇りよ。由梨、貴方は立派な天使になって、私達の事を見守っていてちょうだい。」


私は答える事が出来なかった。


律くんは、癒しが必要な人間なのだろうか?

もしそうじゃなかったら、私が天使になったとしても、律くんの病気を癒してあげる事なんて出来ない。それにもしかしたら、私が天使になるよりも先に…。

でも、今癒したら、私は天使にはなれない。


ううん。天使になることなんて、私にはどうだっていい。

でも、お母さん達を裏切ることになってしまう。

私は、どうしたらいいのかわからなかった。



暗い部屋に戻った私は、そのまま自分のベットに倒れ込んだ。すると…


「メジアスよ…」


どこからともなく、声が聞こえた。


「メジアスよ!」


「…誰?」

私は辺りを見回した。


「私はサラ。貴方の母です。」

暗かったはずの部屋が明るく光り、優しい雰囲気に包まれた美しい天使様が薄っすらと姿を現した。

「お、かぁ、さま?」

その人もまた、銀色で、凄く長く綺麗な髪をしていた。

「貴方は今、迷っている。」

「は、はい。」

「それでいいのですよ。 貴方が進む道は、自分で決めるのですよ、メジアス。神は決して、意地悪な方ではないのですよ。貴方が正しいと思う道を 進むのですよ。」

「何が正しいのかわからないよ!私は、どうしたらいいの?ねぇ、お母様!」

「それは貴方が決める事。」

「ねぇ、教えて!大天使様なら導いてくれるんじゃないの? こんな試練、嫌だよ…」


「…」


「お母様ぁ!」

さっきまでの優しい光りは消えていき、辺りはまた、暗い部屋に戻っていた。



私は部屋に籠っていた。

ベリル達は、「大丈夫?」といって、いつも来てくれた。私は、自分の部屋の窓から、律くんの病室の窓を眺めていた。

窓は、いつも開いていたが、カーテンが閉まっていて、律くんの姿を見る事は出来なかった。


ただ、志乃ちゃんが部屋に遊びに来てくれる時は、志乃ちゃんを悲しませないように、精一杯の笑顔で接した。

せっかく退院してくれたんだもの。

こうやって、遊べるのも、もうすぐで出来なくなってしまうかもしれない。たくさん思い出を作ろう。



あれから何日が過ぎたのだろうか。

クリスマスまであと少し。

寒いからか、律くんの病室の窓はいつのまにか開く事がなくなっていた。

私は気になって、毎日律くんに気づかれないようにベリル達に様子を見に行ってもらっていた。

「ベリル、スピネル、いつもありがとね。彼の様子はどうだった?…そう、今日も元気そうでよかったわ。」

ただ、ベリル達が言うには、彼は日に日に(やつ)れている様だった。

私は、律くんに会いたくてたまらなかった。

「律くん…」



明日はいよいよクリスマス。

私は、正直まだ迷っていた。

このまま律くんを癒さずに、天使になってしまっていいのだろうか。

そしたら私は、神様のところへ行かなくてはいけない。

でも、律くんを助けられなくなってしまう。


もし、律くんを癒したら、律くんも元気になれるし、私も人間として、律くんの側にいられる。

でも、神様やお母さん達を裏切ることになってしまう。


ただ、この気持ちだけは、この気持ちだけは私の本当の気持ち。

伝えよう。後悔しないように。

「よしっ。」

私は、病院へ走った。



「律…くん!」

私は、息を切らしながら律くんのいる病室の扉を開けた。

「由…梨?」

律くんは、驚いてこっちを見ていた。

「ごめんなさい、会いに来ちゃって。」

律くんの姿を見た瞬間、涙がこみ上げてきた。

「あれっ、泣くつもりなんてなかったんだけどな。本当、ご、ごめんなさい…。」

律くんは、優しく言った。

「いいよ。」

伝えなきゃ。律くんに、ちゃんと私の想いを。

私は、深呼吸して、ゆっくりと話した。

「もう、今日で最後だから。もう、会いに来ないから。…だから…だから…わたし…律くんが……。」

声が震えて上手く話せない。でも、ちゃんと伝えなきゃ!


「…すき…。」


「えっ…。」

律くんは、凄く驚いて、しばらく黙っていた。

そして、言った。

「…ごめん。でも、由梨に出逢えて良かった。ありがとう。」


「…ううん。私も…私も、律くんに出逢えて良かった。こちらこそ、ありがとう。」

私は、最後に精一杯の笑顔で言った。

そして、これ以上涙を見せないように、走って病室を出ていった。

律くんに自分の想い伝える事が出来て、よかった。



クリスマス当日の朝。

ガタン、ガタンッ。

私は、騒がしい音で目が覚めた。

ベリルが、窓を叩いている。

こんな朝早くどうしたんだろう。

私は急いで窓を開けた。

すると、ベリルがクチバシに何か咥えていた。

手紙?

私は、その手紙を開けると、律くんからだった。


「由梨へ。ちゃんと由梨に届いているだらうか。

由梨、クリスマスイブに言ってくれた言葉、本当に嬉しかった。でも俺は、由梨を守る事も、幸せにする事も出来ないんだ。だから、だから俺は、由梨の気持ちに応える事は、出来ないけど、でも、俺も後悔したくないから、ちゃんと伝えるよ。

由梨、俺も、由梨が好きだった。

今度生まれ変わったら、由梨を守れるような、強い男になるよ!由梨、今までありがとう。律より」


こんなのズルイよ。

律くん。

せっかくくれた手紙は、私の涙でぐちゃぐちゃになってしまった。

私は…私は…

律くんを守りたい。


窓の外を見ると、今度は勢いよくスピネルが部屋に飛び込んできた。

「どうしたの?そんなに慌て…」


「えっ?!」


私は急いで病院へと向かった。



私が病室へ向かうと、先生や看護師さんが集まっていて、もうこれ以上、手の施しようがないといった感じだった。

その横で律くんの両親が泣いていた。

律くんは眠っているが、もう息は浅い。


私は律くんの手を握っていた。

「律くん!律くん!死なないで!」

先生は「お嬢さん」と、私を呼び、顔を横に振った。


律くんが死んじゃうのは嫌!最後って言ったけど、やっぱり最後なんて嫌!今使わなかったら、私、大事な人を救えないなら、天使なんてならなくていい!!

私は、握っていた手を放し、律くんの心臓にその手をかざした。

律くん、生きて!お願い!


私の手の中が光り出す。


先生達「なんだ、この光は…」


すると、律くんの心臓の音が少しずつ強くなっていく。


私は、ただただ、律くんの事だけを想っていた。

そして、私に、光輪と大きな翼が姿を現した。



律くんの目が、ゆっくりと開き、私を見た。

「由、、梨?、、、てん、、、し、、?」



光輪と翼は、いつのまにか消えていた。

しかし、たくさんの白い羽根が、病室の中を舞っていた。


律くんを 助けられた。

私はほっとして、病室を出て行った。

これでもう私はただの人間になったんだ。

2度と癒すことはできない。

でも、私は嬉しかった。

こんなにも暖かい気持ちになったのは、初めてだ。



教会に戻ると、お母さんが待っていた。

「由梨!」

お母さんの姿を見て、なぜか私は、全身の力が抜けていった。

そして、自然と涙が溢れた。

「おかぁ、さん。ごめんなさい。私、力を使ってしまったの。本当にごめんなさい、、、神様、、お父様、、お母様、、本当にごめんなさい。」

私は泣きながら謝っていた。

みんなを裏切ってしまったことが、申し訳なくて、私は、謝ることしかできなかった。

でも、お母さんは、私を優しく抱きしめた。

「何を言っているの?由梨。貴方はもう、立派な天使よ。」

さっきまで見えなかったはずの光輪と翼が、また姿を現していた。

「なん、で?わたし、天使になったの?」

「由梨…今はもう、由梨じゃないわね。メジアス様、私は、貴方様の母になれた事、光栄に思います。」

「お…かぁ…さん…。」


すると、教会の天井から光が差し、私はその光に包まれた。














穏やかな風が吹く中、突然強い風が吹いた。そしたら突然由梨が俺の目の前にいた。


俺はびっくりした。



それから由梨は、同じ施設に住んでいる 志乃ちゃんのお見舞いの後、毎日俺に会いに来てくれた。


俺は嬉しかったんだ。

いつも窓から見ていた女の子が、会いに来てくれるなんて。



由梨はいつも俺に質問ばかりした。


好きな色を聞かれた時、

本当は、銀色の髪の色が好きだった。


いつも何してるのって聞かれた時、

本当は、鳥と話してる由梨を見ていたんだ。


ストーカーみたいに思われるのがイヤで、言えなかったけど。


由梨が、「会いたいから、会いに来てる」って言ってくれた時、俺は心臓が止まってしまうんじゃないかってくらい嬉しかった。


でも、俺が血を出してしまった時の、あの時の由梨の顔を あんなに哀しそうな由梨の顔を もう見たくなくて、「ほっといてくれ」なんて言った事、後悔している。


本当に会いに来なくなるなんて、思わなかったから…


俺は、由梨に気づかれないように、カーテンで顔を隠し、由梨が部屋の窓から外を眺めているのを見ていたんだ。


病気は嫌だ。


苦しいし、辛いし、外にも出れない。自由になんかなれないから。


でも、もし、俺が病気じゃなかったら、由梨に出逢う事も、話す事も出来なかったかもしれない。


ただ、死ぬのだけは、勘弁してくれ。

でも、身体はどんどん病気に蝕まれていく。

苦しさや、辛さが増していく。


クリスマスイブ。

俺の身体は限界だった。


ただ、最近は本当にしんどい日が続いてたからなのか、その日は少し調子が良くて。


なんとなく、

なんとなくだけど、由梨が来てくれるような気がしていたんだ。


なんてな。


もうすぐ陽が沈みかけたその時だった。


「律くん!」


彼女は来た。


俺はびっくりした。

まさか本当に来るなんて思わなかったから。


でも、彼女は泣きながら、

「今日で最後だから」

「もう会いに来ないから」って。


俺は、なんて事を言ってしまったんだ。

あの言葉が、こんなにも彼女を苦しめていたなんて…。


俺は最低だ。


結局俺は、頑張って言ってくれた、あの言葉の返事さえも、ちゃんと答えることができなかった。


由梨を…

由梨を泣かせてばかりで、本当に最低だ。


でも、これでよかったんだ。

もうすぐ死ぬ奴のことなんて、引きずっていてはいけない。


彼女は、これから色んな人に出会い、楽しい人生が待っているんだから。


そう、これでよかったんだ。


ただ…

俺は、後悔していた。本当にこれでよかったのだろうか。


すると、何処からか、変わった色の鳥が俺の病室の窓から顔を覗かせていた。


この鳥は…

もし、この鳥が、俺にチャンスをくれるなら、賭けてみよう。


俺は、由梨に手紙を書いた。

この鳥が、この手紙を届けてくれると信じて。

「宜しく頼むな。」



手紙を書き終わると、俺は、なんだか全身の気が緩んで、そして、そこから俺の意識は薄れていった。


きっと、このまま死ぬんだ。


やっと楽になれる。




由梨…好きだった…。

















突然、俺は光に包まれた。



ここは、どこなんだ?

あ…れ…?


俺は、死んだのか?




遠くの方に人影が見える。

そこにいるのは誰なんだ。


だんだんと近づいてくるその人は、俺の手を握った。


由梨?

いや、違う。




天使だ。

ほら、やっぱり。




身体中が暖かくて、なんだか優しくて、、、






あれ?




父さん?

かあさん?


ここは、、、病室?


天国じゃなかったのか?




俺は、だんだん意識を取り戻した。






「えっ?ここは?」

すると、父さんと、母さんが俺に駆け寄って、抱きしめた。

「父さん? 母さん?」

「律ー!りつぅ!よかったぁ!目を覚ましてくれてよかったぁ!」

生きているのか?

でも、天使がいたような。

きっと、夢でも見ていたんだ。

暖かくて、優しい夢。




いや…夢じゃない。


俺は、ベットに落ちていた羽根を拾った。






それから数日後、俺はすっかり元気になり、退院することになった。


病院の先生は 奇跡だと言っていた。


なぜだか、あの時病室に舞っていた羽根は、消えていたし、父さんも母さんも、夢でも見ていたんだろう といって、全然覚えてないみたいだったけど、確かにあの時天使はいた。


だって、ここに羽根があるのだから。


ただ、あの教会のある孤児院に、由梨の姿はもうどこにもなかった。

本当は、病気が治ったこと、あの時の返事、由梨にちゃんと話したかったのに、あれから1度も由梨には会っていない。



そして、退院して数ヶ月間、俺は勉強をして、高校に編入することになった。














今日が学校初日。


「今日からこの学校に通うことになった、花吹 律くんです。みんな仲良くしてあげてくださいね。」

「よろしく」

「じゃあ、あの1番後ろの席ね」

「はい」

俺は、1番後ろの空いている席に向かって歩いた。

すると、その隣の席に、銀色の髪をした、女性がいた。


「律くん、よろしくね。」



えっ…由…梨…?














私は確かにあの時、天使になった。

教会で光に包まれた私は、気がつくと、神様の目の前にいた。

そして、その両隣りには、お父様とお母様の姿があった。


「メジアスよ、よくぞここまで来てくれた。」

なんて神々しいのだろう。

この方が神様。凄く眩しくて、暖かい光に満ち溢れている。

私は、この方にお使いできるのら、光栄に思えた。

「ありがとうございます。神様に認めていただいた事、光栄に思います。ただ、私は…私は…。」

すると神様は、

「メジアスよ、おまえに、もう一つ試練を与える。これは特別な試練だ。おまえの救ってくれた少年は、これからの未来を担う人間。そこでだ、メジアス。おまえをその少年の監視役として、もう一度、人間界に行ってはくれないか?」

「えっ。」

私はびっくりした。

「しかし、それには条件がある。」

「はい。」

「おまえを人間にしなくてはいけないのだ。人間になれば、おまえの癒す能力はなくなってしまう。しかし、おまえが少年を最後まで導く事が出来れば、その時は、リンゼルとサラがおまえを迎えに行くであろう。」

神様…神様…

私は、涙が止まらなかった。

「必ず、必ず、導いてみせます。」

















そして私は、人間になった。


「律くん、よろしくね。」























この物語を読んで、上手くいかなくて悩んだり苦しくても、2人の強い想いや、お互いを思いやる気持ちを感じていただける事ができたら幸いです。

はじめての作品なので、至らない点が多々あると思いますが、多くの人に読んで頂けることを願っています。

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