開発は爆発だ‼
今月1話目となります。
明日は早朝から仕事に行かなければならなくなったため、今日、この時間の投稿とさせていただきました。
――西暦2031年 1月6日 日本国 首相官邸
この日、日本国の労働者の多くはいわゆる仕事始めであった。
何せ、2031年は三が日に加えて土日も続いたため、6日からの仕事始めとなってしまったのだ。
転移からすでに12年が経過しており、転移してから生まれた子供こと、『転移後ベイビー』も『合計では』2億人を超えた。
彼らの育成による将来の日本を豊かにしていく目標はまだまだ半ばどころか三分の一にも至っていないが、教育方針を改めて厳格なものにしたことにより、不満も多いものの、優秀な人材が育成されつつある。
人的品位や礼節などが疎かになってはいけないので、その点に関する教育も強く行なっていた。
かつて土日と2日休むことが当たり前だった学校も、日曜日と月曜日の祝日だけが休みとなったため、その分学ぶことは多くなった。
今まで軽視されがちだった道徳や倫理に関する授業に加えて、本当に世の中で生きていくために必要な電子機器の扱い方など、教育の内容は戦後から考えると大きく変わっていた。
そして、この日首相官邸では大事なことが決定されようとしていた。
「では、オーストラリアを経由して東南アジアを領有する島嶼国家・『ワスパニート王国』と国交締結することを、ここに決定します」
ワスパニート王国とは、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、さらに東南アジアの島嶼各地を支配する王国で、ハチに似た触角と、尾骶骨から伸びる第二の腹を持つ『蜂人族』の国である。
女性が政治の主権を握る国で、男は力仕事などの労働力以外では子孫繁栄のための存在として扱われている国。
背中に翅を持ち、その翅で低速ながら飛行することが可能で、ハチのような見た目で攻撃的な性格かと思いきや、生活レベルは日本の江戸時代に近いレベルながら非常に簡潔な組織作りのお陰で方針の進行スピードが非常に早く、それでいて他者に自ら積極的に攻めかかるようなことはしない温和な性質であった。
ガネーシェード神国のアラクネ族と同様に、ハチの腹部分に磁場発生器官を有しており、これと翅を用いることである程度ながら飛行を可能としている。
「急な話だったが、向こうが温和な国で助かったな」
首相の一言に、閣僚たちも頷く。
昨年の豪州事変からまだ数か月しか経過していないにもかかわらず、なぜそんなことになったのか。
答えは簡単であった。
自分たちの国土のすぐ近くでそんなドンパチが行われていたということにワスパニート王国側がシンドヴァン共同体からの情報で気付き、向こうから国交締結の交渉をしてきたからである。
ワスパニート王国は設計思想などを含めて文明水準が日本の江戸時代末期並みでありながら、総人口は6千万人とかなり多い。
これには、島嶼部の各所を飛行能力で渡り歩き、島しょ部を自分たちで開拓するという感覚があるという理由がある。
飛行速度は最大でも時速25kmほどしか出せないが、それでも下手な帆船よりは十分に速い(わかる人にわかりやすく言えば、はっきゅんこと八九式中戦車やカモさんことフランスのルノーB1 bisが大体そのくらいの最大速度)。
そんな島々を渡り歩いているうちに各島に定住し始めるようになり、いつの間にか島と島を結ぶ船などが出始め、そしてついには島を多数保有する国となったが、この世界では珍しくグランドラゴ王国のモールス信号が伝わっていなかったこともあり、情報の伝達が遅れていた。
そんなところにオーストラリアでのドンパチである。
ワスパニートとしては強大な力を持つ日本国のことはシンドヴァンを通じて耳にしてはいたものの、国交を結ぶべきかどうかをここ2年ほどずっと迷っていたらしい。
だが、近年ユーラシア大陸の列強国である蟻皇国が大きく勢力を伸ばしつつあることに不安を覚えていたらしく、遂に昨年12月の22日にシンドヴァンを通じて使者を送ってきたのである。
とはいえ、日本としても戦後処理などで忙しかったこともあって今までずっと悩んでいたのだ。
そもそも、日本は現在に至るまで大陸開発、インフラ開発、さらに次世代の人々の教育に自衛隊員の拡充と全く余裕がない。
そんな状況で旧世界の米軍のように雪だるま式に防衛費が増えるのみならず、諸経費がもりもりと増えていたものだから、財界及び労働者からは『それなりの』悲鳴が上がっていた。
なぜ『それなり』なのかと言えば、高度経済成長期の頃を知っている方ならばわかると思うが、『仕事は溢れている』、『必要なところは引く手数多』、『基本給及び基本時給も大幅アップ』など、労働者にとっては忙しいなりに充実した状態となっている……過労死しそうな人が相変わらず数十万人を超える単位で存在するという問題を除けば、だが。
とにかく、休日と呼べるものを大幅に少なくしなければならないほどに工事を含めた様々な作業が追い付いていないのだ。
道路工事や水道管の敷設、もっと大きなことを言えばアメリカ大陸の北部(アラスカ州など)という、厳寒期はロシアに匹敵する厳しい環境の開発まで行わなければならないこともあって、様々な計画だけは既に出されているものの、それらを行うのに数十年から100年以上先までかかるという密度なのである。
これでは、整備を進めていった先に数十年後にまた整備をするという、新宿駅のような状態になりそう、とは建築関係者の言である。
特に、インフラ方面から大手ゼネコンが必要とされ、子会社・下受などに分かれていた小さな会社を次々と吸収したことで、大手4社の勢力はさらに大きなものとなっていた。
今を生きる人々の就職三大目標が『自衛隊』、『建築業』、『次世代技術開発研究者』であると言えば、その勢いが知れる。
また、人口というものに関しても『数だけは』すぐに増やすことができたものの、それを『育成』するとなるとそう簡単にはいかない。
実際現在の日本の人口は既に3億人近くにまで伸びているが、これでも亜人類の多産率の高さから言えば少ないのだ。
なぜなら、政府の政策や手当が追い付かず、困窮したまま子供を育てることができずに死なせてしまう親もいれば、やはり虐待やネグレクトに陥る者もいる。
この問題だけはどう足掻いても根絶することができないらしく、政府も頭を抱えている。
当然、それを承知している国交相及び文科相は若干渋い顔だ。
「しかし、ワスパニート王国と国交締結となると、かの国にもインフラ整備などをしなければならないのではありませんか? ただでさえ現状に余裕がないというのに、これ以上ハードモードを通り越してヘルモードにされると、労働者はさておき、財界の方から苦情が来かねません」
「確かに。一夫多妻やそれに伴う相続制度なども整備して人口が増え続けているのはいいことですが、今の教育現場はそれに対応できていません。このままでは、教育崩壊も危惧するべきかと」
財務相がなにも言わないのは『言っても無駄』ということと、一応各国が日本製品を買いまくっているおかげで日本国内自体は大幅な貿易黒字を出しているからである。
とはいえ、大きな問題もあった。それは、『国の多様性が異様なまでに少ない』ということである。
この世界は旧世界では考えられないほどの国土を支配する巨大国家が多い代わりに、旧世界では190か国ほど存在していたはずの国が、わずか10か国ちょっとしかない。
しかしそれには、『種族が多様すぎる』というところが大きな問題として立ちはだかっていたことを日本はまだ知らない。
種族によって『生活しやすい環境』というのは大きく異なっており、シンドヴァン共同体を除けば、多種族国家というのは今のところ日本しか存在しない。
わかりやすい例を挙げれば、フランシェスカ共和国は『山と森林』が多い国である。
そのため、どうしても樹上生活に強いエルフ族と、森の中でも素早く動ける狼人族が暮らしやすかった、という状態だったのだ。
ではイエティスク帝国や蟻皇国の場合はというと、ガネーシェード神国のヘンブから聞いた話が確かならば、『そこに先史人類の研究所が存在したから』というのが一番大きな理由だろうと考えられる。
そもそも数ある種族の中でも強靭な種族と言われるオーガ族、ミノタウロス族、そして蟻皇国を支配する蟻人族は種族的に他人種より精強なのだ。
そんな彼らは先史人類の手によって遺伝子的な制約を施され、『自分たちが戻ってくるまでの防衛』を任されているはずだった。
だが、彼らは長い年月の中で、なんらかの理由によってそのくびきから解き放たれ、技術を盗み自分たちの物として運用し始めた。
実際、イエティスク帝国も蟻皇国も列強と呼べるほどの実力をつけたのはここ300年ほどの間でのことらしい。
それまでは解析が進まなかったのだろうか、と防衛省では推測していた。
イエティスク帝国がニュートリーヌ人……つまり猫耳族を奴隷化して迫害していたのはその頃までなのだが、その頃に猫耳族の人々が吸収した知識と経験だけでも、明治時代後半から大正時代レベルの陸軍力を手に入れることに成功している。
海軍力に関して強化がうまくいっていなかったのは、単に猫耳族が旧世界ではモスクワに近い内陸部に多く点在していたからである。
逆に、そんな事情もあって東欧区域に逃げ延びることができたわけだが。
余談だが、そんな彼らからかつてイエティスク帝国が配備していた『珍兵器』の存在を聞いた。
その名はノウゴロド。『円形砲艦』と呼ばれる、かつてのロシアで配備されていた船である。イエティスク帝国では『砲艦ポールナヤ』と呼ばれていた。
物体を水の上に浮かせる場合、円形の方が安定するからという理由で作られたもので、28cmの口径を持つ大砲で対地攻撃をさせるのが目的だった。
しかし、円形の船は水の上ではくるくると回転してしまい、安定性はともかく、まともな射撃ができないのである。
そんな失敗兵器が存在したという話を聞き、防衛省及び防衛装備庁では『たとえ盗んだ技術を用いていてもそんな失敗をするのか……』となんとも言えない顔をしたという。
日本も現在先史人類の技術解析を始めたところなので、くれぐれもそうならないように注意しないといけないと閣僚をはじめとして気を引き締めるのだった。
ただし、日本が落ちる『日本面』は、間違っているとわかっていても気付かずに破滅へと直行するという厄介な『病気』でもあるので、気を付けていてもなる可能性は十分にあるのだが……どうなるかは神のみぞ知る。
閑話休題。
「その件だがな、グランドラゴ王国がインフラ整備に名乗りを上げてくれたよ」
首相の言葉に、財務相以外の面々の顔が驚きのものに変わる。心配になった法務相が恐る恐る手を挙げた。
「失礼ですが……グランドラゴ王国の工業水準で大丈夫でしょうか? グランドラゴ王国の能力は、ニュートリーヌらとほとんど変わらない、明治から大正の間くらいの能力ですよ?」
「以前はな。だが、かの国は我が国と真っ先に国交を締結したという利点を生かして、我が国から色々な技術を吸収した。特に、将来的に軍事技術を構築する上で重要な建築技術は、科学・化学と共に彼らも優先的に取り入れていた。我が国から工業機械も導入した彼らは既にそれなりに高い水準にある。具体的には……どれくらいだったかな、防衛相?」
防衛省が現在のグランドラゴ王国の能力をもまとめたレポートを見ながら答える。
「そうですね……軍事技術は大戦末期レベルから一部冷戦期ですね。我が国がパーツなどを輸出した結果、旧世界のアフリカで運用されている『オリファント』に近いレベルの戦車……つまり戦後第2世代レベル戦車と言える『クロマイト型戦車』の試験車両が完成しています。船舶に関しては現在対空レーダーおよび対潜ソナーを強化した巡洋艦・駆逐艦の建造に入り始めたようです。我が国から高張力鋼の技術が入ったことから、それを用いて新世代の艦艇の建造も始めましたが、何分誘導弾に関してはまだ初歩的な赤外線誘導のものしかできていないこともあって、艦載型はランチャータイプがせいぜいですね。レーダーによる誘導は実験段階です」
VLS(垂直発射装置)が開発されたのは、米国では『タイコンデロガ級』イージス巡洋艦ができてからの話なので、それなりに新しい。
少なくとも、大戦末期から冷戦期へ移ろうとしているグランドラゴ王国では、まだ難しいのだろう。
「こんな話になってから聞くが、戦闘機はどうだ? ジェット機の研究も始めたと聞くが……」
グランドラゴ王国の現在の主力戦闘機は、制空・対地・対艦攻撃のすべてをこなせて、艦上機に改造することもできた『紫電改二』をモデルにしたパチモン(ただし、日本の魔改造込みなので弱体化ではなく強化)の『ファルコン』型戦闘機である。
だが、先史人類の遺跡がなかったにもかかわらず、独力で戦艦や車を開発した研究熱心な国である。
ジェット機も概念と基礎的な技術さえ入れば、すぐに作り出すだろうと日本側は考えていた。
すると、防衛相が『ぷい』と目をそらした。
「ど、どうした……?」
「いえ、その……開発を始めていて一応試験機にこぎつけてはいるのですが……」
「おぉ、流石に早いな。で、どんな風になった?」
防衛相が『仕方ないな』と言わんばかりにプロジェクターを操作し、モニターに映像を映し出した。
すると、閣僚たちは全員が『ブフッ』と噴き出した。
「な、な、なぁっ……?」
「これは……なんという……」
「……英国面」
そこに映し出されていた機体は、第1世代ジェット機の1つ、『デ・ハビランド ヴァンパイア』に酷似していた。
しかし、決定的に形状が違う部分があった。直線翼だった翼が後退翼になっていることと、胴体後方である。
ヴァンパイアはエンジンを胴体後方に『単発で』装備しているのだが、このヴァンパイアもどきはなぜか胴体後方が大きく膨らんでいた。
「恐らくなのですが、ターボジェットエンジンを『2基』後方に『縦積みで』搭載しています……」
しかも、双胴構造の後方胴体の奥ではご丁寧に尾翼も後退角をつけてある。
「……英国ライトニングの考え方を、こんなところで出してきたか……」
英国ライトニングとは、旧世界の第三世代型ジェット戦闘機の1つ、『イングリッシュ・エレクトリック・ライトニング』のことである。
高速でも低速でも優れた飛行特性を得ようとした結果このような形になったと言われているようだが、エンジンの整備が煩雑となったうえ、熱がこもりやすくて火災が多発したという『英国面を体現した戦闘機』である。
しかも機内スペースに余裕がなく、燃料タンクは出っ腹のように大きく下に張り出し、主脚収納庫が主翼を縦断するように設けられたせいで兵装用のハードポイントが極端に少なくなってしまったという欠点があるのだ。
故に、ついたあだ名が『子持ちシシャモ』という大変不本意だったであろうセンスの名前であった。
もっとも、軽量かつ大推力で『打ち上げられるロケットに乗っているよう』と評されるほどの上昇力は、のちに『Fー15』や、同世代の『Migー25』が出現するまでは存在しなかったという意味では優れた機体である。
「で、性能的には?」
こういった英国面の発現の場合、結構な……失礼、かなりの高確率で『大失敗』とみなされることが多い。
だが、そうでないときもたまにあるのでこれがバカにできないのだ。
「それが……最高速度、1000km(マッハ0.9)とか……」
「は!?」
「遷音速に届いているじゃないか! 元のヴァンパイアが確か……時速880kmくらいだろう!? なにがどうしてそうなった!?」
もちろん、ヴァンパイアもそのままでいたわけではなく改良と改修をした結果、わずかな後退角を付けた翼を装備することに成功していた。
だが、今の王国にそこまでの技術があるとも思えない。
「それが……ターボジェットエンジンを我が国のものを研究して製造したタイプを採用しているようで、オリジナルのヴァンパイアよりかなり出力と燃費が向上しているんですよ……航続距離も2300kmまで延びてますし」
余計なことを……と閣僚たちは頭を抱えたが、イエティスク帝国には『Migー17』レベルの戦闘機が存在するという情報があるため、それに近い能力を持つジェット機の開発に成功した。というのは素晴らしい話である……できあがりが英国面的な形状でさえなければ。
「武装は我が国の『Fー4EJ改』を参考にしたのか、胴体の『下』に20mm多銃身機関砲を装備しています。発射レートは海保の奴をそのまま流用したので遅めですが……それでも中々のものですよ。また、主翼下には我が国のMk.82爆弾を1発ずつ、あるいはかの国が国産化した赤外線誘導の空対空誘導弾『フェアリー1』を1発ずつ装備できるようになっているそうです」
「おぉ、航空機発射型の誘導弾までも製造したか」
これには閣僚たちも『おぉ』と感嘆の声を上げた。先ほどは呆れて、今度は感心してと、大変に忙しい会議である。
「まぁ、最大射程はまだ25kmほどなので、背後をとるかすれ違う際に接近したところで発射するかのどちらかになると思いますが。赤外線誘導ということを考慮すると、背後の方がいいでしょうし」
「そうか。いやはや、少し見ない間に立派に成長したものだ……と、言っている間に我が国が追い抜かれないように、こちらでも頑張ってもらわないとな」
「そうですね。現在、射程200kmを超える長射程の対空誘導弾の採用や、旧世界で『Fー14』が主兵器としていた『フェニックス空対空誘導弾』のように、一度に6つ以上の目標に発射できるようなものがあると助かりますね。まぁ、あれはそれだけあの『どら猫』のレーダーの処理能力が優れていた、ということなのでしょうが」
「あとはどうかな……まぁ、我が国の書籍も既に多数が王国に流れているから、その辺り(主に設計思想)は問題ないと思うが……時折介入して様子を見ないとな」
「そうですな」
閣僚たちも苦笑している。もしも英国面兵器ばかりになろうものならば、旧世界に残っているイギリスの紳士たちに顔向けが……ある意味できるのかもしれないが、できないと言いたい日本である。
「諸国の技術発展では、グランドラゴ王国を除けば、現在アヌビシャス神王国がもっとも発展していますね。既に国産エンジンを用いた戦車を製造し始めました。設計思想が入ったからか、ディーゼルエンジンを搭載した『Ⅲ号戦車』と『Ⅲ号突撃砲』に似た車両を作り始めてますねあれくらいなら、砂漠や荒れ地では便利だろうと思いますよ」
「だからなぜドイツ風に走りたがる……」
ドイツの技術はぁ、世界一ィィィィィィィィッ‼……と叫びたいわけでもあるまいが、それだけ『優秀』に見えるのだろう。
「武装もほぼ同様です。強いて言うなら、『Ⅲ号戦車』モドキは『60口径5cm砲』だったのを『65口径』に延長するという無茶をしていますね。しかも、『Ⅲ突』の主砲はグランドラゴ王国から輸入した『76mm対戦車砲』を用いているようです」
「……ちょっと待て。確かグランドラゴ王国の『76mm対戦車砲』って……旧世界の『17ポンド砲(アーチャー対戦車自走砲やシャーマン・ファイアフライに装備された奴)』に似てるって言ってなかったか? いや、対戦車能力は十分なんだろうが……」
「ま、まぁ、似てると言いますか、ほぼ同じです……」
「……また変なハイブリッドができた……」
「あ、ハイブリッドで思い出しましたが、その『Ⅲ号戦車』モドキ……もとい、『デセルタ型戦車』のエンジン、ハイブリッドエンジンなんですよ」
「ファッ!?」
またも叫ばされた首相である。余談だがこの首相は連載初期の首相から数えて3人目である。『私は、3人目だから……』とは言わないが。
転移後2人の首相と比べるとリアクションが豊かで、『政治ネタを使えばリアクション芸人になれんじゃなかろうか』と周囲からは言われるほど表現が豊かであった。
国会中継でもその姿が国民に意外と人気だったりする。国民としては親しみを持てる方が、ウケがいいようだ。
「ちょ、ちょっと待て! いや、何度目になるかわからんが……それでも待て‼ かのドイツがそれで大失敗やらかしてるだろう‼ 具体的にはポルシェティーガーとエレファント‼」
あまり知られていないことだが(ガル○ン見ているファンはそうでもないかもしれないが)……ドイツが作った戦車駆逐車の1つ、『エレファント』はポルシェティーガーの車体を用いて作られている。
つまり、あのレオポン由来のハイブリッドエンジンも受け継いでいるのだ。
色々な評価を聞くが、間違いがないのは『複雑で整備が面倒』。これに尽きる。
「わかっていないなら答えなくていいんだが……ハイブリッド特有の煩雑な問題をどうやって解決した?」
「それがその……あの国、我が国からハイブリッドディーゼルエンジンを輸入してますよね?」
「あぁ。向こうでノックダウン生産として組み立てする自動車のためにな……まさか?」
「そのまさかです。彼らはそのエンジンを解析して、『とりあえず大きな車体に乗せられるサイズのモーターとエンジン』を自分たちなりに作ったんですよ……砂漠でも平気なように、ね。いやはや、執念って恐ろしいですね♪」
「恐ろしいですね♪ じゃねーよ‼」
遂にキレた首相が叫んでいた。説明していた防衛省の幹部も、半ばヤケになっていたのか最後はそんな言い方しかできなかったようだ。
周囲の閣僚たちは『また始まった』と言わんばかりに面白そうに眺めているだけだが、これは意外とバカにできない。
潜在能力を開花させたアヌビシャス神王国は、既にその才能を大きく花開かせつつあるのだ。
飛行機に関しても、今後はグランドラゴ王国と共同開発で『空母に乗せられるジェット戦闘機と、ジェット戦闘機を載せられるだけの機能を持つ空母』の研究をするつもりらしい。
この成長をなにかに例えるなら、ナゾ○クサがクサイ○ナを通り越してラ○レシアに進化するようなものだ。
なぜ草○ケか? 花開くからだ。誰がうまいこと言えと。
「既に我が国が認めたことでもありますので、日本製鋼所や三菱電機、各造船所らと提携して、新型の国産巡洋艦と駆逐艦も作るらしいですし……案外、グランドラゴ王国に匹敵する日も近いかもしれません」
まぁ、逆に言えば技術レベルが近い国が間近にいれば、その分技術競争が加速して国が発展しやすくなるので一概に悪いことばかりとは言えないのだが。
「なんてこった……こりゃ本当に油断ならなくなってきたぞ」
「ですが、これならばイエティスク帝国も簡単には侵攻してこれなくなりそうですね。未だに東の開発をしているそうですから、もうしばらくはなんとかなるだろうというのが試算です」
「油断だけはくれぐれも勘弁してくれよ」
「それはもちろんです」
どうやら、日本と深いつながりのある2国は、想像をはるかに超えるぶっ飛び方をしているようだ。
これは、将来が楽しみである。
……やらかしました。だが、反省はしていない。
そして、重大発表(と、言うほどでもないが)です。
2作目となる物語ですが、100話目から月一で投稿を開始しようと思いました。
え、まだ1年以上あるじゃないかって?色々悩んだ結果なんです……。
なにせ、この小説も執筆自体は終盤に差し掛かっているのですが、悩む部分も多くて……まぁ、なんとか早めに終わらせて、次の小説に集中できればと思います。
あと、一部のわずかな方が期待してくださっているようですが、今のところ書籍化の話はありません。
やはり、賞とかに応募しないとダメなんでしょうかねぇ……?
次回は18日か19日に投稿しようと思います。