機竜VS飛竜
今月1話目となります。
なんとかちょっとずつではありますが続きも書けるようになっていますので、もうしばらくは投稿に支障はないと思われます。
――世界暦381年 2月3日 バルバラッサ帝国西部200km空域
何もない青空を、巨大な鉄の塊が飛んでいた。
高度8千mという高空を飛行しているのは、日本が『Cー2』輸送機を流用して開発したAWACS『EC―2』早期警戒管制機である。
開発した当初は多数の電子機器を元々搭載していた『Pー1』哨戒機にしようかと研究していたのだが、内部スペースの余裕確保及び航続距離の観点から、パーツを一部併用している『Cー2』輸送機に白羽の矢が立った。
結果として多数の電子機器を機内に搭載することになったが、それでも元々大型の(あくまで日本基準では)輸送機ということで搭載重量には十分な余裕があったこともあり、内部スペースを居住しやすいように大幅に改装した。
その結果、重量は本来の『Cー2』と比較すると3tほど増量したものの、それ以外にほとんど搭載する物がなかったため、航続距離は『Eー767』並み、機動力は戦闘機並みという、これまた『動けるデブ』となっていた。
しかし、機動力があるということは状況に応じての移動がスムーズということになり、僚機と連携を取る上では重要な事である。
そんな『ECー2』はゆっくりと旋回を続ける。そのレーダーはゆっくりと回転しており、1分間で6回転する。
そんな『ECー2』の1千m下を、700kmを超える速度で飛行する物体がレーダーに映る。
航空自衛隊所属の『FTー4』練習軽戦闘機20機だ。
彼らの誘導弾は射程が10kmしかないため、9kmくらいで発射するのがちょうどいい。
だが、いくら打ちっ放しの誘導弾とはいえ、10km以内まで近付かなければいけないこの状態は、現在のアウトレンジ戦法からは外れた戦い方でもあるため、操縦する隊員たちの間にも緊張が走る。
彼らはもう30分もしないうちにバルバラッサ帝国首都上空へ侵入し、ワイバーンの限界高度に向けて降下しながら誘導弾を発射する予定だ。
さらに、『FTー4』に遅れること10分、時速550kmでグランドラゴ王国の『ファルコン』型戦闘機が胴体下に250kg爆弾を搭載して飛行していた。
この爆弾は日本が航空自衛隊で採用している『Mk.82』と同じものであり、装着のためのパイロンはファルコンを製造する際に設計されていた。
同じ様式でセットできる増槽も設計されており、これを用いることで航続距離が大幅に延びる。
彼らは万が一『FTー4』がワイバーンを撃ち漏らした場合の掃討と、滑走路及び兵舎施設への爆撃で敵戦力の動きを封じる役である。
地上への機銃掃射は『明確に武装した者』にのみ認められており、民間人への発砲は厳禁と通達されている。
この二段攻撃で、帝国の航空戦力及び陸上兵力の多くが出てこられなくなるようにしてしまおうという計画であった。
その後には『ACー3』彗星と『Aー1』飛竜が続く。
彼らは誘導爆弾と機銃掃射、そして砲撃で地上戦力を徹底的に潰す役割を持たされている。
彼らが通った後には、『軍事施設に関しては』という注釈付きにはなるが……ぺんぺん草すら生えないだろうと日本の友好国からは言われていた。
また、日本の偵察機により既に帝国が首都に多数のバリケードを敷いていることは既に判明していたため、それらへの対処は陸上自衛隊に任されることになる。
日本はこの1年ほどで、他国と連携を取りやすくするべく法改正も進めており、集団的自衛権の行使に関しても民意が寛容になりつつあることもあって今回のグランドラゴとの連携が成立していた。
グランドラゴ軍の歩兵部隊と連携して、車両部隊の妨害をしようという敵歩兵のゲリラ攻撃を突破する必要がある。
日本側はこのゲリラ迎撃に対応するべく多数のドローン派遣を要請しており、これを用いた妨害工作を行うつもりであった。
具体的には、陸上自衛隊とグランドラゴ軍の突撃の際にドローンに手榴弾を取り付けて、あらかじめ指定したポイントへ飛行させて敵の真上から攻撃するか、小型銃器を取り付けて撃ち込むという考えである。
ドローンは使い捨てを想定しているので、いっそのこと突っ込ませて自爆させてもいい。
そんなことを言っているうちに、『FTー4』と哨戒飛行しているワイバーン4騎の距離が10kmを切った。
『ECー2』から指令が飛ぶ。
『オオワシより各機、攻撃を開始せよ。繰り返す、攻撃を開始せよ』
指令が飛んだ直後、誘導弾の発射を予定している各機は符牒をコールする。
『FOX2、FOX2‼』
その直後、『FTー4』2機の翼下パイロンから誘導弾4発が発射された。
誘導弾は、狙いを定めた獲物に向かっていく猛禽類のように飛んでいくのだった。
その頃、帝国の首都上空でも『キイイイィィィィィィ……』という奇妙な音が響いていることに、多くの人が気付いていた。
人々は家の窓を開け『なんだなんだ』と口々に言いながら空を見渡すのだった。
そんな中で、哨戒飛行をしている竜騎士ハヴォーラは、青い空に響き渡る奇妙な音に耳を澄ませていた。
彼は僚騎に近づき、大声を出す。
「なんだ!? この音は‼」
「分からん‼ 耳にやたらと響く‼」
「隊長‼」
ハヴォーラが部下の声に反応して指さす方向を見ると、白い雲が広がる空に、まるで白いキャンバスに落ちた絵の具汚れのような点が見えた。
「なんだ?」
ハヴォーラはひとまず、『警戒を要する』という黄色い信号旗をパラパラと落とした。
そして再び空に目をやると、明らかに近づいている。
彼が再度信号旗……今度は『敵襲来と思われる』を示す赤い旗を落とそうとした時、凄まじい勢いで飛行物体はハヴォーラたち4騎に着弾し、近接信管が作動して爆発による大きな花火を打ち上げたのだった。
一方、地上の飛竜隊基地では『警戒を要する』の旗を確認したため、急いで竜騎士たちが出撃しようと準備を整えていた。
「急げ‼ すぐに上がるのだ‼」
管制官(現代の管制官という存在とは異なり、ワイバーンを出す順番を告げる役目)の声を受け、滑走路にワイバーンたちがジグザグに並ぶ。
これは、ワイバーンを急いで離陸させなければいけない時に用いる方法だ。
もしここで敵襲を受ければ、一網打尽になりかねない状態なのだが、いわゆる『背に腹は代えられない』という奴である。
加えて、この大陸にはワイバーンと同程度の存在を考慮した迎撃網が敷かれているため、『旗が落ちてきたことを確認してからでも遅くはない』というのが常識であった。
「よし、これで……」
竜騎士たちが並んだ瞬間、空の上で炸裂音が響き渡った。
なにかと竜騎士たちが上を見上げると、哨戒飛行をしていた4騎が煙に包まれていた。
よく見れば、竜騎士と人『だったもの』が、血の雨と共にバラバラと地上へ降り注いでいる。
「なっ‼ は、速すぎる‼」
その時、先程から聞こえていた『キイイイィィィィィィ』という音が近づいてきたと思うと、灰色の竜がこちらへ頭を向けた。
「攻撃が来るぞ‼ 急ぎ離陸を……」
だが、彼らが動き始めるよりも早く、灰色の竜の翼の下から光が走ったと思うと、凄まじい速度で接近してくる。
ワイバーン5騎が飛行しようと走り出すが、元々飛竜は地上での機動力に関してはかなり鈍い。
ヨタヨタとした走りの最中、光がワイバーンを捉える。
――バァンッ‼ バンバンババンッ‼
管制官や誘導員が目を開けた時には、ズタボロになったワイバーンと竜騎士の亡骸が滑走路に転がっていた。
「か、滑走路が塞がった‼早く片付けろ‼ このままでは、空からの攻撃に無防備だぞ‼」
施設兵たちが向かうが、そこに多数の灰色の竜が接近してきた。
「ひぃぃ‼」
「俺たちも殺されるっ‼」
施設兵たちは敵の竜が発する高音に怯えて逃げ出してしまった。
「あ、こら‼ 者ども逃げるなっ‼」
だが、一度逃げ出した兵を呼び戻すことは、古今東西どのような名将でもほとんどできた試しがない。
なので、管制官も結局逃げるほかなかったのだった。
飛竜隊の基地上空へ到達した鳴坂慧太以下11機は、速度を落として滑走路をターゲットポイントの中に収める。
機器は『No Target』の表示だが、この位置ならば間違いなく滑走路に着弾する。
『よし、FOX2‼』
慧太に続くように僚機が次々と誘導弾を発射していく。どちらかというと誘導弾というよりロケット弾のような使い方だが、この際それはいい。
中には、上空を監視する監視塔(近場の陸軍のも含める)に向けて誘導弾を発射した機もある。
誘導弾を発射し終えると、空になったポッドを捨てて飛竜隊宿舎に照準を合わせる。
『悪く思うなよ……FOX3‼』
『FTー4』の胴体下から多数の12.7mm機銃弾が発射され、宿舎の屋根に穴を空けていく。
僚機もそれに続き、竜舎にも穴を空けていった。
木造建築の建物には、多数の銃痕が残る。これでほとんどのワイバーンは息絶えたはずである。
『よし、こんなものかな?』
すると、通信機にAWACSからの声が響く。
『サーベル隊へ、間もなくウミボウズ隊とドラゴン隊が到着する。直ちにその場を離脱せよ』
ウミボウズ隊は『ファルコン』型戦闘機の部隊、ドラゴン隊はガンシップ部隊である。
彼らは竜舎や陸軍宿舎に攻撃し、掌握した制空権の下で敵兵力をできる限り減らすことが役目である。
『サーベル1、了解』
『サーベル2、了解』
『FTー4』は上昇を開始し、あっという間に高度4千mを超える高さへ到達する。
機体を水平に戻しながら、慧太は通信で愛実にぼやいた。
『……どうでもいいかもしれないけど、〈ウミボウズ隊〉ってのはもうちょっとどうにかならなかったのかな?』
『まぁいいんじゃない? 英国の人たちったら、あのマンガにはまっちゃうなんて誰も想像していなかったんだもの』
グランドラゴ王国に輸出された『ファルコン』型戦闘機と同じ異名を持つ、新宿を舞台にしたとあるマンガのキャラクターになぜかグランドラゴ軍は惚れ込んだらしく(ハードボイルドな生き様がカッコよかったのかもしれない)、今回自分たちの隊をそのキャラクターのもう一つのあだ名にする、と言ったのである。
防衛省の幹部たちは『なぜよりによってあのキャラ……』と頭を抱えるのだが、作戦遂行上は問題がなかったためそのまま放置したのだった。
それはさておき。
『はぁ~あ……とりあえず給料分は働いた、って感じかな?』
『そうね。早くベイモリオカ基地に戻りたいわぁ』
『FTー4』部隊はそのまま東の空へ飛び去っていった。
空を見ていた人々は、あまりに圧倒的な灰色の竜の所業に怯え、多くの者が家の中で最も頑丈な場所や、地下室などに隠れるのだった。
一方、陸軍も対空監視所を潰されたことで『敵襲だ』と大わらわで準備を進めていた。
すると、先程よりも若干野太い『ゴオオォォォォォ』という音が聞こえてきた。
「ま、また来たのか!?」
「次はなんだ!?」
空を見ると、先ほどの灰色の竜よりは武骨だが、それでもワイバーンよりはるかに速い速度で飛ぶ何かが迫っていた。
グランドラゴ王国空軍『ウミボウズ隊』隊長のクロウは、事前に覚えておいた陸軍施設を発見する。
見れば、まだ兵たちは右往左往しているようでほとんど出てきていないようだ。
「今だ。全機、急降下爆撃せよ‼」
『了解‼』
『ファルコン』戦闘機20機は、陸軍宿舎を破壊するべく次々と爆弾を投下していく。
――ヒュウウウゥゥゥゥゥッッ‼……ドガァンッ‼ ドガガガァンッ‼ ドガァンッ‼ ドガガァンッ‼
陸軍宿舎と、そこに繋がる道に大きな穴が開く。木造と石を組み合わせた宿舎は瞬く間に崩れ落ち、多くの兵がそのまま潰された。
「よし、まだまだ行くぞ」
『オオワシよりウミボウズ隊へ、貴殿らの部隊から見て9時の方向に敵機アリ』
送られてきたデータを見れば、首都郊外に配備されていたらしいワイバーンが飛んできていた。自衛隊や日本の人工衛星が見落としていたということは、洞窟など映りにくい場所に隠蔽されていたのかもしれない。
敵の隠蔽工作が意外と高度であることにクロウは驚くが、それでも時速180kmしか出せないので接近をすぐに察知することができた。
「流石の早期警戒管制機でも、洞窟に潜んでいる存在は探知できないのかもしれないな」
『隊長‼』
「分かっている。敵の数は?」
敢えて部下に報告させることで、しっかりと認識力を高める一因とする。
『全部で……15騎‼』
「よし。こっちは10機で向かう。残りはこれから来る日本のガンシップ部隊を護衛する」
『了解‼』
『ファルコン』20機の内、10機は首都上空を飛び回り、10機が敵機撃墜へ向けて飛び始めた。
この『ファルコン』戦闘機には現代戦闘機と比較するとかなり簡易的ではあるが、レーダーと射撃管制装置が備わっている。
『敵機を捕捉しました』
「よし、すれ違いざまに機銃を叩き込むぞ。心配するな、訓練通りやればいい」
『は、はいっ‼』
今回の戦いでは実戦が初めての新米パイロットも多数いる。クロウは『青いな』と苦笑しつつ敵との距離を詰めていく。
『敵との距離、10kmを切りました‼』
「攻撃用意‼ 敵の火炎弾発射より早く撃ち込め‼ すれ違いざまなら半数以上墜ちるはずだ。すれ違いざまに撃ち落とすことに夢中になって、敵の火炎弾をかわすことを忘れるなよ!」
『了解‼』
そう言っている間に、機銃の有効射程内に入った。
「全機、撃てっ‼」
――ドドドドドドッ‼
すれ違いざまに発射された12.7mm機関銃弾は、各機1騎ずつのワイバーンに命中した。
光弾に撃ち抜かれたワイバーンはたちまち穴だらけになって、地上へ向けて落下する。
『残機5です』
「各機、2機でチームを組んで撃墜しろ。追い込み漁だ」
『了解』
10機は2機一組になり、残ったワイバーンを追い詰めていく。元々『紫電改二』をモデルにしているだけのことはあり、格闘戦法でも一撃離脱戦法でも、『ファルコン』戦闘機の優位性は崩れない。
ただし、ワイバーンは時速180kmしか出せない。そのため、敵が低速すぎるとこちらが格闘戦に持ち込もうとした場合失速してしまうので、どちらかというと一撃離脱戦法を用いることになる。
実際、第二次世界大戦時にも、イギリスのフェアリーソードフィッシュ(第一次世界大戦の遺物)と格闘戦に持ち込もうとしたドイツ側の単葉戦闘機(当時最新鋭)が、失速で墜落するという事態が頻発していたほどであった。
ちなみにこのソードフィッシュは日本とも戦ったことがある機体だが、相手だった零式艦上戦闘機はソードフィッシュの得意舞台だった『低速・低高度』での格闘戦を得意とする機体だったことから、こちらにはあっさりとやられてしまったのは御愛嬌。
それはさておき、街の方からも爆炎が上がり始めた。
「お、ガンシップ部隊も到着したか」
バルバラッサ帝国の首都バルバロニアの郊外に存在する軍事基地及び、工場(文明水準的には『工房』と称するべきか)に接近してきた『ACー3』彗星と『Aー1』飛竜は、『支援』に来た『UHー2』と共に攻撃を開始する。
『UHー2』に乗っている坂口2等陸佐は、ヘリに搭載している音楽機器のスイッチを入れた。
「2佐、本当にいいんでしょうかね?」
「ま、『将軍』よりはいいんじゃないですかね?」
スイッチを入れて数秒後、音響機械から重厚なテーマが流れ出した。
「では、『怪獣襲来』と行きましょうか」
「はい」
それは、『怪獣王の映画』で流される、怪獣王が現れた時にも流れるメインテーマや、怪獣王を含めた怪獣たちが街を破壊する時に流される、いわゆる『伊福部マーチメドレー』だった。
それを皮切りに、まずは飛竜が攻撃を開始する。
『これでも喰らえ‼』
――ババババババババババババシュッ‼
飛竜は一気に低空へ降下すると、翼下に装備したロケット弾を次々に発射していく。工房は次々と爆発し、内部から猛烈な火が吹きあがる。
そんな工房の近くでは兵たちが集まって、飛竜に対して矢を放ってくる。
「ハハッ! そんなんじゃ『竜』は落ちねぇ‼ FOX3‼」
――ガガガガガガガガガガガッ‼
轟音と共に『信長』が火を噴き、たちまち地面を耕していく。そこに集まっていた兵士『だったもの』は、あっという間に血と肉のミンチとなってしまった。
「ヒャッハー! ぶっ飛ばしたぜベイビー‼」
ヘリのパイロットや乗員は、その光景にドン引きしている。
飛竜のパイロットは若干アメリカナイズされた上に、時代錯誤感も否めないが、これが攻撃機パイロットというものである……と、作者は思う。
だが、一応言う。令和の時代にベイビーはないだろう。
そこへ彗星2機も左旋回をしながら、郊外の陸軍基地へ攻撃を開始する。
「攻撃開始! 攻撃開始‼」
――ブオオオォォォォォォォォォッ‼
――ダンッ! ダンッ!
機体左部分に取り付けられた20mm機関砲と105mmライフル砲は凄まじい威力を発揮する。
多目的榴弾を撃ち込まれた兵舎はあっという間に崩れ落ち、広場にいた兵士たちも20mm機関砲を食らって瞬く間に崩れ落ちる。
「まだまだぁ‼ 弾薬尽きるまで撃ち続けるぞ‼」
「はい‼」
帝国兵は上空からのあまりに一方的な攻撃に為す術がなく、蜘蛛の子を散らすように右往左往するばかりだった。
「ちくしょう‼ ワイバーンより速い上にあんな猛烈な攻撃ができるなんて‼ どこのバケモノが攻めてきやがったんだぁ‼」
「帝国は……おしまいだぁ‼」
猛烈な攻撃により、既に軍事・工業施設はほとんど崩れ落ちた。だが、まだまだ彗星も飛竜も弾薬が余っている。
しかし、飛竜には重大な問題があった。
「こちら飛竜1よりオオワシへ。そろそろ燃料が心配だ。帰投しながら空中給油を受ける」
『こちらオオワシ了解。メテオ隊はどうする?』
メテオ隊は彗星2機のことである。
「こちらメテオ隊。まだ燃料には十分余裕があるし、弾薬もまだまだ残っている。今のうちに北の港湾設備近くにある陸軍基地を破壊しようと思うが、どうだろうか?」
だが、それにはAWACSからの反対を受ける。
『先程郊外の洞窟からワイバーンが出てきた。港湾部の近くにも山があり、目立った航空基地が確認されないことを考慮すると、万が一だが洞窟からワイバーンが出てくる可能性がある。一応そちらの方が高速だが、港湾攻撃は海上自衛隊に任せておいた方がいいだろう。港湾設備まではそれなりに距離がある。陸自が作戦を遂行している間は敵兵力も来ることはできないと判断する』
「了解、我々も帰投する」
先に帰投に入った飛竜に続くように、彗星もエンジンを唸らせながら飛び去っていくのだった。
首都バルバロニアの一般人はなにが起きたのか全く理解できず、ただただポカンとするのみである。
「い、いったいなんだったんだ……?」
「エルメリス王国にあんな真似ができるってのか?」
「バカな‼ 恐竜も操れないような下等種族の集まりに何ができる‼」
すると、誰かが呟く。
「もしかして、古代文明を味方につけたとか?」
その言葉を皮切りに、その場はシンと静まり返ってしまうのだった。
次は23日か24日に投稿しようと思います。