イカれたヤツら、再び
今月2話目となります。
ドンパチはもう間もなくですが、最後に来るべきものが来ました。
――世界暦381年 1月1日 バルバラッサ帝国 首都バルバロニア
この日、バルバラッサ帝国は新年を迎えたため、家臣一同が揃って皇帝、バルバラッサ21世の下へ新年の挨拶に訪れていた。
宰相のドルドムが家臣団の筆頭に立ち代表を務めている。
「陛下、新年のご挨拶を申し上げます。本年もまた、より良き年になりますように……」
「宰相よ」
ピリッと響く声に、宰相の言葉は中断させられてしまった。
「各将軍の後釜は決まっておるのか?」
「そ、それは……その……」
そう、軍関係者は陸海空軍共に戦死してしまっているため、軍ではその後釜を誰にするかということでかなり揉めていた。
なぜなら、敵兵を1人として倒すことができなかった戦いなど建国以来、初めての話である。
大敗どころではなく、『壊滅状態』に陥って半分以下の兵が逃げ帰ったという話は、帝国上層部を揺るがすには十分だった。
そんな戦いが起きるような戦場に立つかもしれない役目を、負いたくないと思うのは当然であった。
なにより、敗戦の詳細がほとんど明らかになっていない以上、首都に残っていたどの将校たちも受けたくないのである。
ドルドムが言いよどんでしまうのも無理はなかった。
「げ、現在三軍共に首都防衛のための立て直しと人材整理を行なっております。また、民間からの徴募も含めて人数は10万を超えるまでになっておりまして、最高司令官を誰にするかということに関しましては……」
「その中で最も優秀な者を選べばよかろう。誰もが優秀だと認める者が『最前線に』立てば、自然と士気も上がろうというものだ」
残念ながらその運用方法は、日本はもちろんのことだが、グランドラゴ王国レベルからしてもかなり前時代的な話である。
指揮官という存在は、大局的に物事を見られる位置から戦いの全貌を見渡す視野と能力が必要になる。
「そ、それはそうなのでしょうが……い、色々と事情がございまして」
そのため、日本でも鎌倉時代までは最前線で指揮官や総大将が戦うことも多かったが、優秀な指揮官であればあるほど、本来は戦場を客観的に俯瞰して戦う必要がある。
そもそも、総大将が最前線に出て戦うことで勝ちが成立したのは、先述の通り日本でも鎌倉時代の辺りまでで、足軽などが登場した戦国時代ではむしろ『古いやり方』の部類になる。
どのような豪傑でも、100人を相手にすることは基本的にはできない (世界史込みで、しかも第二次世界大戦頃まで広く見ると、たまに例外がいなくもないが……)。
余談だが戦国武将、それも総大将でなく現場指揮官レベルで分かりやすい『名指揮官』と『豪傑』を両立させたと言える人物ならば、筆者は徳川四天王の1人、本多忠勝を推したい。
彼は『蜻蛉切』という名槍を振るい、織田・徳川連合軍が浅井・朝倉連合軍と戦った姉川の戦いでは浅井軍の援軍に来た朝倉軍の豪傑、真柄直孝と一騎打ちに持ち込んだという逸話もある(ちなみにこの真柄直孝、鎧ごと叩き壊す『太郎太刀』なる超巨大な豪刀を振るう人物だったとか)。
しかも生涯50回を超える戦い(57回とも)において傷を負わなかった(家康唯一の敗戦と言われている三方ヶ原の戦いでさえ)という、日本はもちろんだが、世界史レベルで見ても類稀にみる豪傑である。
だが、彼は重装備だったから傷を負わなかったとか、武芸に優れていたからという単純な理由だけで無傷だったのではない。
その最たる例が、徳川軍と武田軍の『一言坂の戦い』という。
その時の武田軍との戦いでは、忠勝は退却する味方の殿を買って出た。
そして途中の民家に火をかけることで敵の追撃を妨害しながら時間を稼ぎ、その間に味方を揃えてからの反撃を繰り返したことで1人も失わなかったという。
戦国時代の乱戦の中で1人も失わず敵を食い止めて退却をするというのは、ほとんど例がない。
これは『名指揮官としての話』であり、同じ戦いで忠勝は最後尾に立つ。いわば両軍の間に単騎で割って入った形になる。
そんな忠勝は馬と槍を巧みに操り、敵を寄せ付けなかったことで、主君家康を本陣に帰すことができたという、『豪傑』の一面も持っている。
さらに余談だが、この時の忠勝の活躍から、『家康に過ぎたるモノ2つあり、唐の頭に本多平八』という高札を武田軍が建てたほど、と言えば活躍が知れる。
対照的に同じ徳川四天王の井伊直政はと言えば、足軽並みと言われた軽装の忠勝と比較しても(皆さんが思い浮かべる『あの絵』で軽装らしい)遥かに重装備だったにもかかわらず、文字通り最前線で兵士の如く戦い続けたせいで生傷が絶えなかったという(部隊の指揮は与力が執っていたとか)。
家臣たちが『指揮の上手な忠勝殿を見習ってください‼』という連署を手討ち覚悟で提出した、と言えば忠勝の采配上手も逆に知れる。
ちなみに、『人斬り兵部』と言われるほどに家臣をしょっちゅう手討ちにするくらいに激しい性格だったことで有名な直政だったそうだが、忠勝のことは尊敬していたのか、この時の家臣の諫言には流石に怒らなかったという話も残っている。
色々と語ったが、要するに指揮官が最前線に立つというのは『危険と隣り合わせ』なだけでなく、先程述べた問題が多々生じてくるのである。
筆者が言うのもなんだが、この2人は『指揮官とは』という例えで引き合いに出すには正にうってつけである。
同じ『指揮官』で『豪傑』だったにもかかわらず、あまりに対照的な戦い方をするのだから当然と言えば当然だが。
いずれにせよ、幕末を終えて明治に移行した大日本帝国軍は新しい野砲や戦艦などの近代兵器を手にするにつれて接近戦の機会が少なくなり(精々第一次世界大戦頃まで)、より大局的な俯瞰能力を持つ人物が求められることになる。
第二次世界大戦頃には、特に総指揮官の目の届かない場所で戦いあう海軍に関しては『ある程度』ではあるが、合理的で大局的な物事の見方ができるようになっていた。
陸軍は……お察しください。
「と、とにかく、急ぎ軍を立て直すと同時に将も選出いたしますので、陛下におかれましては、盤石をお約束いたします。ご安心くださいませ」
宰相としてはそう言うほかなかったが、内心では『どうしたらいいものか……』と冷や汗をダラダラとかく始末であった。
なにせ、出征した10万の軍勢の内、攻竜兵と飛竜隊は全滅し、歩兵部隊も半数以上が帰還していない。
正直、対策と言える対策も施していないのにここへ敵が攻め込んでこようものならば、兵のみならず一般市民にも多大な被害が出ることは確実である。
皇帝への挨拶を終えた家臣一同は退出するが、ドルドムは急いで軍関係者を招集して会議を開いた。
本来軍務に携わるわけではない宰相のドルドムが出ている時点で、いかに重大案件かというものである。
「さて、軍の立て直しについてだが……ニュート殿、現在の兵の割り振りは?」
話を振られたのは首都防衛隊隊長のニュート。勇猛なだけでなく忠義に篤いことで皇帝及び周囲の信頼も高い男であった。
だが、そんな男が今、顔を真っ青にして(元々蜥蜴人は青みのある肌をしているのだが)話す。
「ははっ。敵は守ることについては強いですが、攻めることに関しては素人同然です。まず間違いなく、東から攻め寄せてくるでしょう。王都防衛隊と臨時徴募した兵10万の内、5万は東側防衛に充てるべきだと考えます」
「敵の空からの猛烈な攻撃にはどう対処する?」
「生存者からの報告によると、非常に威力の高い攻撃だったようですので、それを避けるためにも、十数人前後の小さな部隊に振り分けた上で建物の陰から攻撃させるというのはどうでしょう?」
現代人に分かりやすく言えば、どこから襲ってくるかわからないゲリラ戦を仕掛けようということだ。
実際、ベトナム戦争での北ベトナム軍も同じことをやっており、うっそうとした密林の中に潜んで進軍する米軍を様々な形で襲撃したのである。
これには米軍もほとほと困り果て、『Bー52』による大規模な空爆で森を焼いたり、『Aー1』スカイレイダーで小規模な攻撃を仕掛けたりする、或いは現在もなお問題となっている枯葉剤を使用するなど、様々な工夫を強いられることになった。
ニュートは徹底的にゲリラ戦を仕掛けて、エルメリス王国を疲弊させてやろうという考えのようである。
「なるほど……敵の兵器の性能はさっぱり分からぬが、いかに攻竜兵を倒した鉄竜たちといえども、奇襲を受けては脆いやもしれぬな。よし、多数の丸太を用意させよう。それの先端に鉄板を張り付けて横から突っ込ませるのだ」
攻竜兵を倒した兵器とはすなわち『16式機動戦闘車』のことなのだが、戦車と比較すれば薄い装甲であるとはいえ、あくまで『比較すれば』の話である。
データによれば大口径機関砲(35mmから40mmほど)に耐えるくらいの装甲はあるという話もあり、鉄板を張り付けた丸太でちょっと突っ込んだくらいでどうにかなるような代物ではない。
だが、彼らは自分たちの攻竜兵(アンキロサウルスやトリケラトプスに鉄の鎧を着せた)と同じような存在だと誤解してしまっていた。
「しかし、あの鉄竜は背中にある角がピカリと光ったかと思うと雷鳴の如き轟音と共にすさまじい破壊を生み出す力を持っている。あれはどうする?」
それを聞くと、その場にいた陸軍関係者はシンと水を打ったように静まり返ってしまった。
対策などない。それが実情である。
「す、少なくとも……オーガ・ドラゴンはもちろんのこと、ギガンテス・ドラゴンやマキシマム・ドラゴンすらも屠られています。あの20mの長さを超える超巨体が、はるかに小さい鉄竜2体の攻撃で首を吹き飛ばされたのです。油断は禁物かと」
マキシマム・ドラゴンとは、ブラキオサウルスのことである。大陸最大の恐竜だったことからそう呼ばれていた。
「しかも、奴らはとんでもない高速で動き回る。あれでは丸太の突撃はもちろんだが、弓矢も当たらん」
16式機動戦闘車や軽装甲機動車、そして96式装輪装甲車の最高速度は100kmと非常に速く、帝国水準では目にも止まらない速さだ。
すると、防衛隊の参謀が手を挙げた。
「いかがでしょうか。道に罠を仕掛けておいては?」
「罠を?」
「はい。馬車も通れなくはなってしまいますが、道の各所に障害物を設置して、敵の侵攻を妨害するのです。それで圧倒的な機動力を削いだところに杭を持って吶喊すれば、大きな威力を発揮するでしょう」
「なるほど、それはいいかもしれないな」
「敵歩兵が護衛に付くことも考えられますが、歩兵には弓を射かけてしまえば防御が疎かになるはずです。敵の主力をなんとか黙らせることができれば、巻き返すことも可能でしょう」
今まで防衛に関する概念がなかったとはいえ、いざやろうと考えればこれだけの意見が出てくる。
古代文明のみならず、自分たちがどれだけできるかという研究に余念がなかったことが窺える。
果たして、どれだけ日本に通じるのだろうか。
――世界暦381年 1月20日 エルメリス王国 エルメリス空港
ここには、援軍として駆け付けた対地支援を得意とする航空機が多数、駐機していた。
その中には、ニュートリーヌ皇国との戦いで猛威を振るった『Aー1』飛竜の姿も5機、さらに敵の軍事施設に対して強力な攻撃をするためか、『ACー3』彗星も3機派遣されている。
特に『Aー1』飛竜はこれまでの対地誘導弾や通常爆弾のみならず、誘導爆弾JDAM及びLJDAM、さらに航空自衛隊ではかつて『Fー4EJ改』ファントムが持っていたペイヴェイの運用能力も得ていた。
多数が駐機している様子を見た航空管制官の円山は目を丸くする。
「すごい……こんな数の対地攻撃機が集まるなんて、日本の近代史では考えられない規模だ」
見れば、武器弾薬も大量に集められている。どれほどの作戦が展開されるのかと、恐ろしくなるほどだ。
「政府も本腰を入れ始めたってことですね、先輩」
声をかけてきた犬飼もポカンとしている。相手はフランシェスカ共和国よりも弱小といえる存在(流石に恐竜がいた時はフランシェスカよりは強いと言えたが)の、その残党に近い相手である。
そんな相手にも、隙を見せぬよう、全力で仕掛けようということらしい。
見れば、到着した『Aー1』のパイロットたちが『Aー1』訓を高々と叫んでいた。今度は米軍人はおらず、ニュートリーヌ皇国で実戦経験を積んだパイロットが小隊長として一番前に立っている。
「では空自パイロット一同、Aー1訓、詠唱始めッ! なんのために生まれた!?」
「Aー1に乗るためだ‼」
「なんのためにAー1に乗るんだ!?」
「ゴミを吹っ飛ばすためだ‼」
「Aー1はなぜ飛ぶんだ!?」
「信長公をお運びするためだ‼」
「お前が敵にすべきことはなんだ!?」
「機首と同軸7段撃ち‼」
「信長公は何故30mmなんだ!?」
「Fー2の根性無しが20mmだからだ‼」
「信長公とは何だ!?」
「撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれない‼」
「Aー1とはなんだ!?」
「コブラより強く! やんまより強く! Fー2より強く! どれよりも安い!」
「Aー1乗りが食うものは!?」
「焼肉とビール‼」
「寿司と日本酒をお上品に食うのは誰だ!?」
「前線早漏Fー2! 爆弾終わればアラホラサッサと踵を返す‼」
「お前の親父は誰だ!?」
「IS殺しのサンダーボルトッ‼」
「お前の爺さんは誰だッ!?」
「ベトコン殺しのスカイレイダー‼ 音速機とは根性が違うッ‼」
「我等空自支援機‼ 機銃上等‼ ミサイル上等‼ 被弾が怖くて空が飛べるか‼」×3
最後の部分に至っては、3回も繰り返している。
「よーし‼ 以上でAー1訓を終了とする。解散っ‼」
「「「ははッ‼」」」
どうやら、前回とは少し違う訓に変えたようである。
そんなパイロットたちは素早く走り去っていくが、それを脇で見ている『FTー4』の鳴坂慧太はドン引きであった。
「あそこまで言うかフツー……」
「いいんじゃない? 頼もしそうで」
そう言うのは妻の鳴坂愛実。立場的には彼女の方が上であり、公私ともに未だに厳しくしごかれている慧太からすれば、結婚してもまるで頭が上がらない。
実際今も、訓練直後でありながら豊満な胸元に抱きしめられたアームロック状態での会話である。
そこ、『リア充爆発しろ』とか言っちゃいけません。
二股者には二股者の苦労というものがあるのです。
「……あの、つぐみん。流石に苦しいんだけど……」
「なによ~慧太ったら。私の匂いが不満だっての?」
「いや、匂いはいい匂いというかむしろもっと嗅いでいたというか……いやそうじゃなくて……そろそろ息が……」
それを聞くと流石に『仕方ない』と思ったのか、名残惜しそうに夫の首を解放したのだった。
「ゼェ……ゼェ……この戦い、恐ろしい結末が待ってそうだな……」
「そうかもね。前世界の『Aー10』のパイロットたちも、どこか世紀末じみていたっていうし。その影響を少なからず受けてるんなら、変なことじゃないでしょ」
慧太はドン引きだが、愛実はまるで気にした様子がない。流石に肝っ玉が据わっている。
「つぐみんはいいよなぁ……俺もつぐみんの1割でいいから肝っ玉が欲しい」
「あら、慧太のそういう繊細な所も私は可愛いと思うけど」
そう言ってまた抱きしめてイチャイチャするのだった。
他のパイロットたちは『また始まった』という風に見ており、嫉妬などというよりは某ネコ型ロボットの如き『温かい目』という奴である。
だが、緩そうに見えてもそこは自衛官。日々の訓練と、それによって培われた技量は本物である。
彼らはこの後、空の先鋒という形で帝国への一番槍を担うことになる。
そんな緊張から、『今だけは』と濃密な時を過ごしているのかもしれない。
日本側の準備は進む。
一方、今回自衛隊にはグランドラゴ王国軍が同行することになっていた。これまで日本から指導を受けて近代化してきた自国の軍が、どれほど強くなったかを見てもらいたいという思いがあったのだ。
グランドラゴ王国空軍第一連隊隊長、ライノス大佐は初の実戦に緊張していた。
彼は今回、本国から輸送されてきた『ファルコン』型戦闘機に乗り、日本が撃ち漏らした場合のワイバーンの掃討と、急降下爆撃を任務としている。
なにせグランドラゴ王国にはワイバーンが生息しているため、訓練相手としてはうってつけであった。
もっとも、普段は仲間との模擬空戦をしているだけにそれに慣れてしまったらワイバーンがいかに空戦戦力としては厳しいかを改めて思い知った。
「イエティスク帝国が今まで我らに仕掛けてこなかったのは、単に距離があったからなのかもしれないな」
ライノスは思わず自虐的に呟くが、実際に航空自衛隊のパイロットと話をした時、それを肯定された。
「そうかもしれませんね。王国と帝国はかなり距離がありましたから、そこへ輸送する物資というだけでも大変だったと思いますし、フランシェスカ共和国まで進軍して陸を固めようにも、反抗的でやたらと攻撃的なせいで征服するのも困難だったニュートリーヌ皇国や、単独ではそれ程脅威でないものの、船に多数で乗り込まれたら厄介なイタリシア王国の有翼人などがいました。そういったいくつもの要因が重なったからなのかもしれないと、私などは思いますね」
パイロットの認識があまりにも鋭かったので、ライノスはなにも言えなくなってしまった。
もっとも、その後で『ワイバーンといえど奇襲されたら被害が出ますから、それを嫌ったんですよ』と慰めてくれたが、あまりフォローにはなっていない。
そんなグランドラゴ王国では、現在ジェット戦闘機の研究を始めている。
日本の書籍に書いてあった『Fー86』セイバーや、せめて自国に近いという設計思想の『デ・ハビランド ヴァンパイア』か、それ以上と言うならば『スーパーマリン スイフト』レベルのものを作れるようになりたいと考えている。
特に、『デ・ハビランド ヴァンパイア』は木金混合構造なので、材料が他の航空機に比べても安いという利点がある。
だが、それではいつまでたっても技術が進歩しないため、『ファルコン』の時に手に入れた新世代の加工技術を生かすべく、『スーパーマリン スイフト』の研究を開始していた。
ジェット機の運用方法に関しては日本も考えており、当面は『FTー4』を供与することで基本的な動作や戦闘方法を覚えてもらおうとしていた。
最初こそ『Fー86』セイバーのライセンス生産版でもレストアするかという話があったのだが、『既存機体で近いことができるならその方がいい』ということで、初期タイプの古い奴(といってもまだ生産から10年しか経っていないが)から、あと数年以内には供与を開始することになっている。
その後日本は、対艦・対空迎撃を主任務とする『Fー6』を主力戦闘機に、首都であると東京の近郊には、切り札となる『Fー5』を配備することになるだろう。
『Fー6』は『Fー5』と比較すればの話だが、かなり安価になる(『Fー5』が1機110億円近く、『Fー6』は100億円を割った)と想定されているため、大陸にも主力として大量に配備されることになる。
将来的には陸海空自衛隊全てが合計すると数百万人(後方支援なども含めた人数)を超えるほどの規模になると想定されているため、今から色々と準備が進められている。
さらに、数が少ない自衛隊は万が一敵が大陸の離れた所に来たとしても対応できるようにと、陸上基地配備型で、2千kmを超える長射程の超音速巡行誘導弾を開発しようとしていた。
ただ、そんな物を作ろうと思うと、要求と問題が多々存在する。
○大型にして燃料を大量に搭載する必要がある。
○スーパークルーズ能力が長時間で負荷をかけやすい。
○燃費のいいターボファンエンジンを採用する必要がある。
○弾頭の威力は旧世界基準の巡航ミサイル(トマホークを基準)以上であること。
○民生品を多用して、さらに量産効果を用いることでコストを大幅に削減すること
○敵に見つかりにくくするために地形追従能力を持たせること
○既存の巡航ミサイルは水上艦や航空機から発射するものだったので、『Fー6』から2発は発射できることを想定して製造すること
○『Pー1』哨戒機による発射も考慮して改造を計画し、人工衛星によるGPSを連動させた攻撃ができるようにする。
○施設などの対地攻撃のみならず、空母や輸送艦、戦艦などの大型目標にも指向できるように監視衛星とも連動できるようにすること
など、要求も問題もかなり贅沢な内容である。
いや、兵器というのはその要求が優れているほど贅沢なので仕方ないのだが。
いずれにせよ、日本も現在の防衛体制を万全・盤石なものに整えるため、巡航ミサイルの配備は待ったなしであった。
だが、そんな日本でも絶対に配備できない兵器がいまだにある。
核弾頭を搭載した大陸間弾道弾である。
そもそも大陸間弾道弾は現在のロケットをある程度改良すればできなくはないと言われているが、そもそも核兵器の概念が存在していないらしいこの世界の国から深い恨みを買う可能性まで考えると、作る意義は薄いのである。
そんな事情もあって、ロケット関連は今まで通り衛星の打ち上げと、宇宙ステーションの設立に向けて動くことがほとんどなのだった。
次回は来月9日か10日に投稿しようと思います。
また、作者マイページの方から入れる簡易ブログも更新してますので、『見てやるか』くらいに思ったら見てください。
艦これアーケードのプレイ状況や推し艦などが記載されています。