首都メリエルダへの道
今月2話目となります。
来月からまた現場が変わることになりまして、また土日祝日を中心とした休日になりそうです。
それに合わせた投稿ペースになると思います。
――世界暦380年 5月16日 エルメリス王国港湾都市 アルフロイ
デリティーとの接触から2日後、エルメリス王国港湾都市のアルフロイ(先述の通り旧世界のバークタウン辺り)では官民問わず蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
「なんだあれは!?」
「あれは……船なのか!?」
「バカな! まるで小島が浮いているようだぞ‼」
エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、哺乳類系獣人、鳥類系獣人、そして港の水の中では魚人族がポカンと口を開けながら日本の船舶を眺めていた。
自分たちの軍船が付き添っているようだが、むしろ『付き添われている』感が出ているようにすら見えるほどに大きさに差がある。
あれではまるで、大人と子供どころか、大人と赤子だ。
「我が国の軍船が玩具のようだ……あんな船、見たことあるか?」
「そもそも、どこからあんな船が来たんだよ?」
超大型船3隻は見事な隊列で港へ入ると、ゆっくりと停泊した。港の様子からすると、むしろ大型船の大きさは『ちょうどいい』ようにすら見える。
場所を確認した『えど』が扉を開けてゆっくりとスロープを降ろすと、これまた示し合わせたかのようにピッタリであった。
武藤はスロープを降りる軽装甲機動車のスムーズな様子を上部から見て、あまりにもあっさり接岸できたことに驚いていた。
「これは凄いな……まるで初めからこんな大型艦が停泊できるように作られていたみたいだ……」
この港であれば、戦闘護衛艦としては最大級の『やまと』はもちろん、300mを超える『あかぎ』のような空母でも停泊できるだろう。停泊してもガントリークレーンがないので荷物の積み下ろしは難しいだろうが。
「2佐の仰っていた通り、先史文明の遺産なのかもしれないぞ、武藤」
「そうっすね。普通に『あづち』が停泊できる時点で目に見える文明と全く合いませんし」
武藤はMINIMIを持ってはいるが、引き金には手をかけていない。先導する高機動車の覆いを外し、デリティーたちを乗せていることで敵意がないことをアピールしているのだ。
お陰で周囲の人たちは遠巻きに眺めはするものの、あくまで驚きが優先しているようで敵意の類はほとんど感じられなかった。
ちなみに今更だが、補給艦と強襲揚陸艦だけの調査団というのはいかがなものかと思った方も多いだろう。
だが、回せる艦艇も人員もない。その中での苦肉の策だった。
『たざわ』型補給艦が『自衛用』と称して武装しているので、基本はほぼそれ頼りである。あとは『あづち』と『えど』に搭載されている『F―3B』、そしてヘリ3機が即応できる戦力だ。
デリティーが高機動車を運転する中村1曹に話しかける。
「港から川沿いに遡上していくと首都に到達できる。この『自動車』なら3日もあれば到着するだろう」
「本来なら1日で楽勝ですよ。ただ、ケンタウロスの方がいらっしゃるので、そのペースに合わせると明日以降の到着になってしまいますが」
実際、距離的には200kmから300kmの間とみられているので今日中には到着できると考えられていた。
ちなみに、ケンタウロスたちは補給用のトラックに乗ってもらおうとしたのだが、『人が乗らなければもっと長距離を走れる』と言われて彼女たちも走っている。
人が乗らず、余計な荷物さえなければケンタウロスの巡航速度は時速30kmから35kmほどになる。
要するに、飛行機や船もそうだが、重い物を持つと色々と厳しいのだ。
「結構速いですね」
「下半身の形状を見るとサラブレッドよりは多少骨太のようだが……それでも古い日本の馬と比べると結構細いな」
「元々サラブレッドって、イギリスが品種改良(英国面)で生み出した競走特化型の馬ですしね」
「少なくとも、サラブレッドと違って長距離もしっかり、それも長時間を走れるタイプなのは間違いなさそうだが」
前話でデイノニクスに追いかけられていた時は全力疾走を30分近く続けていたため疲労困憊の状態であったが、巡航速度ならば3時間以上走っていられるのである。
それから更に2日後の5月18日、エルメリス王国の首都メリエルダは港湾都市以上の大騒ぎとなっていた。
いきなり見慣れない物体に乗った、見慣れない民族が多数、首都に入ってきたからである。
多種多様な種族が、自分の家から自衛隊の車両を覗き見ていた。
「なんだありゃ?」
「新種の恐竜か?」
「でも中に人が乗ってるぞ?」
「竜車(馬車のこと)のようなものか?」
人々のざわめきを受けながら車両は進むが、その視線の多さに武藤は港に着いた時以上に緊張していた。
「武藤、大丈夫か?」
「す、すみません。港の時と違って、相手の腹の中なわけですから、いつなにが起こるかと思うと……」
「そうだな。緊張するのは分かる。だがもう少し肩の力を抜かないと、いざという時にロクな仕事ができないぞ?」
「は、はい」
先輩の早坂はこれまでにも大陸開拓の警護やフランシェスカ共和国での要人警護などにも当たったことがあるベテラン1曹であり、経験豊富なことから後輩たちからも頼りにされていた。
もっともそんな彼も、武藤には先程のように余裕があるように言ったものの、緊張していることは変わらなかった。
「五里霧中、か。何も分からないという意味では今までと変わらないけど、なんとも言えない緊張感があるな」
首都メリエルダはやはり中世ヨーロッパのような街並みだが、割と清潔感がある。オーストラリア大陸が旧世界と同じ気象条件なのだとすれば、割と温暖で乾燥した気候なのだろう。
だが、1つ気になることがあった。
「城郭のような防護設備の類が……見当たらない?」
首都に入ろうとした時は木の馬防柵があった程度で、この水準でも作れる石の壁などではなかった。
だが、建造物も中央付近はしっかりした石造りになっている。しかし、首都の外縁部は木造建築が多い。このちぐはぐさがなんとも異様なのである。
このことは早坂や武藤のような下級隊員のみならず、坂口のような上級幹部も訝しんでいた。
「なぜ建築物にこれほどの差があるんだろうな……樋渡君はどう思う?」
自分の傍らで周囲を観察していた樋渡3等陸佐に聞いてみると、『そうですねぇ』とメモを取りながら話し始めた。
「はっきり言って、『分からない』のが現状です。貧富の差というには違うような気もしますし……偉い方に聞いてみるしかないんじゃないでしょうか?」
確かに、下手に推測して間違っていても仕方がない。
ならば、外務省の楯山にその辺りの追及は任せるしかないだろう。
「分かった。それにしても、城がないというのは少々寂しいな」
「私もてっきり、城くらいはあるかと思ってたんですが……あれば衛星で分かりますしね」
「町もやたらとコンパクトな作りだし……日本の商店街と住宅街を足して毛が生えたレベルだ」
そう、首都ですら日本の地方都市に毛が生えた程度の『大きさ』しかなかったので、衛星での事前情報でも『石造りの建物は存在するが、まだ国として成り立っているか怪しい集落』程度に考えられていたのだ。
だが、デリティーから聞いたことが確かならば、間違いなく国として成立しているのだろう。
それからさらに10分後、陸上自衛隊と外交官は一際大きな館……といっても、日本人で言えば『豪邸』に近い洋館の前に到着した。
「ここが、陛下のおわす『王の居館』だ」
「!?」
楯山も思わず目を丸くしてしまった。まさか、いくら文明水準の低い国家だと言っても、城でなく館住まいとは思わなかった。
「(これじゃまるで一地方の弱小領主じゃないか……)」
デリティーから聞いた話が確かならば、この首都と港湾都市以外にも多少は集落があるそうだが、それだけらしい。
ハッキリ言ってこれでは、日本のテコ入れが入る前のフランシェスカ共和国『以下』であると言わざるを得ない。
フランシェスカ共和国ですら、建造物や街の規模はもう少ししっかりしていた。
楯山は樋渡と、デリティーと直接接触した武藤の2人を護衛につけ、館へと入っていった。
坂口は現場の最高指揮官なので残っていてもらわないと困るのだ。
「(彼女、デリティーさんは第3戦士団の団長だと言っていたけど、そんな程度の人物がアポなしで国王の居館に入れるとは思わなかったわ)」
想像以上に、この国の王族と家臣の距離感は近いのかもしれない。
デリティーは館内で働く者たちに構わず奥へと進んでいく。
中には、会釈してくる者すらいる。
そして館の中でも大きな部屋に到着すると、扉を3回ノックした。
『誰だ?』
「デリティーであります。陛下はおられますか?」
『しばし待て』
扉が開くと、ドワーフ族の老人がデリティーの前に立っていた。
「おぉデリティー、偵察はどうであった?」
「それについて、お話ししたいことがございます。メガロドン様、陛下は?」
メガロドンと呼ばれたドワーフの老人は立派な口ひげを撫でながら答えた。一方の日本側は『メガロドン』という物騒な名前に少し驚いていた。
ご存知の方も多いだろうが、メガロドンとは現存するホホジロザメよりもはるかに大きい、体長15m近くになったと言われる超巨大サメである。
当時の海では敵なしと恐れられたであろう風貌とその巨大な『牙』の化石は、日本人にもかなり印象が強い。
もっとも、とあるネコ型ロボットアニメの映画で主人公たちが本物のメガロドンに襲われた際には、『ガキ大将の〈ボエ~〉な歌よりメガロドンに襲われるほうがマシ』と言ったらしいが。
ちなみに、現在の日本やアメリカ大陸の近海にも生息しているが、生息域が遠洋漁業の漁船以外には引っかからないこともあって被害はほとんど出ていない。
既に研究者たちの手によって1匹が捕獲され、研究が始まっている。
ただ、メガロドンやかつて『P―1』哨戒機で退治した巨大ワニのこともあって、海上保安庁からは『大型巡視船の拡充と対潜能力の付随を』とかなり切迫した声が上がっているのだが。
それはさておき、本題に戻る。
「陛下は奥で書物に目を通しておられる」
「お会いできるでしょうか?」
「後ろにいる者たちが関係しておるのか?」
デリティーが黙ったまま頷くと、メガロドンは『分かった』と言って奥へ引っ込んでいった。
ほんの数分ほどだが、日本人には何十分も経過したように感じられた。
やがて、再びメガロドンが顔を見せた。
「入りなさい。ソルデス陛下がお会いになられる」
部屋の中に入ると、国王の住む部屋とは思えないほどに乱雑としており、あちこちに本が置いてあった。
そして部屋の中央には、壮年と思しきホワイトエルフの男性が座っていた。
「おぉ、デリティーか」
「『父上』。ただいま戻りました」
父上という言葉が聞こえたことで、日本側は思わずギョッとしてしまった。何故ならデリティーはダークエルフであり、座っている国王であるソルデスはホワイトエルフなのだ。
デリティーはソルデスに近付くと、熱い抱擁を交わしていた。その雰囲気は、親子という話を本当であると裏付けるような感覚を日本側にもたらしていた。
「父上、この者たちは遠い場所……世界の外である別世界から来られた日本という国の使者と軍人です。帝国の竜兵団に襲われた私を助けてくれました」
「なに、南の辺境にまで帝国の竜兵団が……どうやら、帝国の影響力はかなり大きいようだな」
この時、漫画やラノベなども読む樋渡は疑問を覚えた。
「(国王陛下は、我々が外の大陸から来たことを疑問に思っていない?)」
「敗戦に次ぐ敗戦ですので……」
一瞬曇った表情を見せたソルデスだったが、すぐに日本側へ向き直った。
「使者殿の前で失礼をした。私はエルメリス王国20代目国王、ソルデスという」
「日本国外務相より派遣された、楯山万莉と申します」
「護衛の陸上自衛隊所属、樋渡3等陸佐です」
「同じく、武藤2等陸曹と申します」
そのキビキビした動きに、ソルデスは娘同様に『見た目のような蛮族ではない』と素早く判断していた。
「楽にされよ、日本の使者殿。この世界の外ということは、かなりの遠路を渡ってこられたはず。このような閉ざされた場所へ、わざわざお越しくだされたこと、礼を申します」
すると、樋渡が『失礼します』と手を挙げた。
「どうした、樋渡?」
「いえ、その……少々気になったことがありまして、お許しを頂ければ、陛下に1つご質問が……」
メガロドンがソルデスを見ると、ソルデスは『構わん』と許諾した。
「樋渡殿と申されたか。質問とは?」
「恐れながら、陛下は我々が外の大陸から来られたことを疑問に思っておられないのでしょうか? そのような世界が存在するのか、など……」
これまでもニュートリーヌ皇国やスペルニーノ・イタリシア連合王国など、『国ごと転移してきた』と言って信じてくれたのはグランドラゴ王国など、ほんの少数であった。
しかし、ソルデスはそんな今まで接触してきた人たちに比べると、はるかに柔らかい笑みを見せて穏やかに答えた。
「そのことですか。なんということはありません。書物で『知識としては』この世界の外にも別世界があると知っていただけですよ」
「書物で?」
「えぇ。我が国に現存する、超古代文明人の遺した書物です」
それを聞き、日本側は再び驚愕した。どうやら、この人物は先史文明についての知識があるらしい。
「(もしかしたら、ここにある本はそういった古代関連の本なのかも……)」
「遅ればせながら、宰相のメガロドンと申します。それにしても、所蔵本にあった『外の世界』の住人が実際に現れるとは想定外でしたが……皆様の格好と持っている道具の洗練された様子……かなり高い文明の持ち主と見受けます」
「よろしくお願いいたします」
楯山とメガロドンが握手する。どうやら、他の地域同様に握手をする感覚があるようだった。
「よろしければ、会議室でお話をしませんか?ここは私の居室ということもあって少々散らかっておりまして……」
本があちこちに散乱している様子は、確かにお世辞にもきれいとは言えない。
「お気遣いありがとうございます」
楯山と自衛官2人、そしてエルメリス王国の3人が歩いて移動する。
気になったのか、武藤がデリティーに問いかけた。
「あ、あの……デリティーさん」
「なんだ? えぇっと……ムトウ、という名前だったか?」
「あ、あの……武藤は苗字……姓でありまして、和也が名前です」
「そうか。ではカズヤと呼ばせてもらおうかな。で、なんだ?」
武藤は先程から気になっていた疑問をぶつけてみることにした。
「父上であるソルデス陛下はホワイトエルフですよね? でも、デリティーさんは……その……」
彼女が王女という地位を名乗らなかったのは別に気にしていなかった。ファンタジーな物語ではよくあることだからである。
だが、ホワイトエルフの父親に対してダークエルフの娘というのは違和感を覚えていたのである。
「あぁ、確かに私はダークエルフだ。私は母がダークエルフだったのでな。恐らくその血が濃く出たのであろうな」
日本でも亜人族の女性と結婚して子供が生まれた家庭では、女の子が生まれた場合は母親と同じ種族になりやすいという統計結果が出ている。
それと同じ現象がこの国でも起きているようだ。
現在政府が関係機関に研究を進めさせているが、DNAの配列上の問題か、それとも染色体そのものになにかあるのかということがまだ調査途上なこともあって、中々詳細は判明していないのである。
「そう、でしたか」
「そういうお前たちは何族なんだ? ドワーフでもホワイトエルフでもないようだが……」
それには外交官の楯山が答えた。
「私たちは元々、この世界に存在しない人種で構成された、異世界の国家でした。それが10年ほど前に、国ごとこの世界へ転移してきたのです」
宰相のメガロドンも国王のソルデスも驚いたようにこちらを振り返った。
「国ごと転移? そんな御伽噺みたいなことが起きたと言うのか?」
「国ごと転移……そのような話は古文書にも記載がなかったな……」
そのようなことを話し合いながら会議室へ到着すると、大きなテーブルが置かれていた……あくまで一般感覚からすると大きいモノであって、国王と宰相が会議に使うような物ではないと楯山などは思ってしまった。
「(それだけこの国は規模が小さい、ということなのだろうか……?)」
疑問に思いながらも椅子を勧められ、座り込む。
「それでは、先ほどデリティーさんにはお見せしましたが改めて……こちらをご覧ください」
楯山はデリティーに見せた映像をもう一度、ソルデスとメガロドンに見せた。
約1時間以上、彼らは唖然としたままであった。
「これは……なんともすさまじいな」
「まさか、これほどの血塗られた、しかし深い歴史を辿ってこられた国家であったとは……驚きです」
「褒められるようなことばかりでもありません」
敗戦と、その結果がもたらした列強の意のままになる半属国状態で75年以上を過ごした日本。
その実情を知る者からすれば、日本の平和と繁栄は、無意味に等しい砂上の楼閣だったのかもしれないとすら思えるからだ。
「とはいえ、あなた方の国のことは大体理解できました。しかし、これほど高度な文明を持つ国家が、我が国のような小国家に御用がおありなのでしょうか?」
「実のところ、この大陸に国家があるという認識すら、我々は持っていませんでした。デリティーさんたちとお会いして初めて知った、と言えばお分かりいただけると思いますが……」
ソルデスは『ふむ』と言いながら顎に手を当てて考え出した。
「確かに、我が国は『世界』の四分の一しか領有できておらず、他は全てバルバラッサ帝国が支配しておりますが……そもそも、どうやってこの精巧な『写真』という絵を作ったのですか?」
詳細は難しいだろうと思いつつ、分かるように説明する。
「我が国には空の彼方……宇宙という空間に観測のための機械を打ち上げる技術があります。それを用いることで、この地図を作成することができました」
「空の彼方……まるで、『神の眼』ですね」
「『神の眼』?」
「超古代文明が保有していたと言われる、空の彼方から全てを見通す『目』です。それを管理するために、『神の御手』と呼ばれた、管理施設もあったと言いますが……」
技術端にも詳しい樋渡がピンときたらしく、楯山に近付いて耳打ちした。
「恐らくですが、宇宙ステーションのことではないかと」
楯山も納得がいったらしく、説明を続ける。
「我が国でも似たような物を現在考案中です。前世界では国際的な管理下に置かれて使用しておりましたが、この世界では我が国が中心となって打ち上げから建設まで行わなければならないので」
「ほぅ……それは凄いですね」
日本は現在、宇宙研究のためのステーションも開発しており、将来的には有人スペースシャトルを打ち上げて宇宙ステーションを完成させようと考えている。
宇宙開発を行えば、先史文明人類に対抗する未来への道が開けるのではないかと考えているのだ。
「日本は未来を見据えています。旧世界では……考えられなかったほどに。そうしなければ、この星に生きる人々が自由に、平和に暮らしていけないと判断したからです。傲慢かもしれませんが、日本がなんとか世界を『導かなければ』という思いで皆頑張っているのです」
「そのような状況で我が国に接触してはさらに労務を増やすだけでは……あぁ、『想定外』と仰ってましたね」
「そうなんです。この後本国に報告する必要がありますが、本国は恐らく、優先順位の問題から貴国を少々後回しにすると思いますが、様々な支援を行うと思います」
『支援』の言葉を聞いた瞬間、ソルデスとメガロドンの顔が変わった。
「支援……支援ですか。それは、『軍事的かつ直接的な』支援も頂けるのでしょうか?」
楯山も予想していたらしく、毅然とした態度を崩さないまま答えた。
「それは政府の判断になりますが、必要とあれば現在の我が国は介入を厭いません。その代わり、失礼な言い方ではありますが『見返り』も要求させていただきます」
「いえ。逆にそれを聞いて安心しました。このような言い方をするのはよろしくないのですが、『無償の善意』はあまり信用できませんからね。相互に利益のある話ということであれば、こちらも安心して交渉に乗り出せます」
どうやら、交易、交渉の概念もこちらの想像以上にしっかりしているらしい。
「(先史文明の本からなにかを学んでいるのかもしれませんね)」
「こちらとしては多くの支援を求めます。デリティーから簡易的ですが聞いた報告が確かならば、あなた方は強烈な力でオーガ・ドラゴンを葬ったそうですね」
「はい。我が国の守護者である自衛隊が、私たちに危害が及ぶと判断した『正当防衛』であると同時に、あなた方から情報収集をするべく武力を行使しました」
「理解しました。では、そちらのお望みはなんでしょうか?」
「私たちは……この大陸の、この『世界』の情報を知りたいです。お話しいただけるでしょうか?」
ソルデスは柔和な笑みを浮かべると、『はい』と頷いた。
……笠三です。続きのネタがなかなか思いつかないとです……一応あと30話くらいはストックしてありますが、少しずつでいいから書いていかないと……。
気晴らしに次の作品なども手掛けながらやっているのですが、とにかくエタらないようにはしたいです。
次回は6月の12日か13日に投稿しようと思います。