特警隊VS韓国警備隊 竹島の戦い
今回は竹島編です。
韓国人に対する偏見や差別などはないつもりで書きました。
海上保安庁の船員達の発言などからそれを察して頂けると幸いです。
――2019年 1月4日 東京都 外務省
時間は少し戻り、園村達が集落で待機していた1月4日まで遡る。
外務省では、北方領土及び竹島との接触を急いでいた。
幸いなことに、尖閣諸島は海上保安庁が購入した後に船団を配置していたおかげで事なきを得たが、第二次世界大戦後から北方領土に対して実効支配を続けているロシア人と、竹島を占拠している韓国人をどうするかが、目下の問題であった。
「どうだ、ロシア側からは何か連絡があったか?」
「それが、少なくともこちらに対して連絡を取ってきた様子はないですね。ロシア大使館にも確認を取りましたが、大使館にも連絡を取った形跡はありません」
「おかしいな……彼らも自国との連絡が取れないことは既に把握しているはずだ。そして冷静に考えれば周囲に味方がいないことはもうわかっているはず……なのに、なぜ日本に接触してこないんだ?」
幹部の言葉に若手の職員が首を横に振った。
「わかりません。とりあえず政府では既に、竹島に在住する韓国人を拘束……失礼、保護するために海上保安庁の巡視船『しきしま』や、『おき』を中心とした艦艇を何隻か派遣しました」
「『しきしま』か……思い切った船を派遣したな」
「まぁ、あの船なら第二次世界大戦くらいまでなら航空機にだって対処できますからね。対空レーダーが装備されているだけでも、利用価値の高い船ですよ」
海上保安庁所属 巡視船『しきしま』
総トン数 7175t
全長150m
最大幅16.5m
速力25ノット
武装 エリコン社35mm機関砲 2門
JM61―RFS20mm多銃身機関砲 2門
ヘリコプター2機搭載可能
日本が保有する巡視船では最大のサイズを誇り、船体規模だけならば『こんごう』などのミサイル護衛艦に匹敵するほか、武装も巡視船としては充実している。
元々はフランスからプルトニウムを輸送する船を護衛するために1992年に竣工した船である。
堅固な軍艦構造であることに加えて、海上保安庁の船舶としては唯一対空レーダー『OPS―14』を装備しており、不審な航空機への対処や、搭載している2機のヘリコプターの正確な位置を把握できるようになっている。
2艇の警備救難艇を搭載しており、警戒監視や特別警備隊の輸送を主な任務としている。
一般的に改『しきしま』型と言われる『あきつしま』(現在は独立した『あきつしま』型となっている)同様、未だに一般公開されたことがなく、対テロ対策の意味合いから船長以下の乗員が名簿にも載らないほどの秘匿性を持つことでも有名。
平成29年の3月までは横浜の第三管区に停泊していたが、現在は鹿児島に母港を移しているため、今は鹿児島まで行かないと『しきしま』は見られない。
「ロシア人の方が危機意識ははっきりしているだろうから、北方領土は遅かれ早かれ安全な接触ができるだろうな。ただ、韓国人は日本人に対する意地だけで反抗してくる可能性があるからな……それが心配だ」
元々竹島は日本の領土であったにもかかわらず、海底資源などの問題から韓国及び北朝鮮が領有を主張していたグレーゾーンでもあった。
現在は韓国が警備隊という名の軍人40人を乗り込ませ、実効支配を敷いてしまっているのである。
コンクリートで作られた韓国国旗は、当時かなり物議をかもした。
「だから政府も、騒動になることを想定して海上保安庁の巡視船を派遣したみたいです」
日本は転移によって旧世界とのしがらみや国際関係が一気に消滅したため、それなりに自由な行動ができるようになっている。
それでも平和ボケと言われるほどの慎重な部分は抜けきっておらず、今回も多人数を収容、保護できるようにと大型の巡視船である『しきしま』を派遣している。
『しきしま』ならば、騒動になった場合でもそうでない場合でも、対処が柔軟にできるようになっているという想定からである。
また、海上保安庁本部及び国土交通省は、今回の竹島への巡視船派遣に際し、万が一韓国の警備隊が歯向かうような行動をとった場合は実力行使を現場の判断で許可することをあらかじめ認めている。
これは、万が一彼らが抵抗した挙句逃亡して、大陸に逃げ延びた場合に原住民になんらかの被害を及ぼす可能性があることから、少々強引と言われることを覚悟の上で政府が国交省及び海上保安庁本部に超法規的措置として指令したのだ。
大陸に乗り出すうえで今後のことを考えれば、竹島は一種の補給基地のような形で確保しておきたいというのが政府の本音のようである。
「さて、と。鬼が出るか蛇が出るか」
「相手は韓国ですし、鬼どころじゃない気もしますけどね」
旧世界の残り少ないしがらみを断つため、海上保安庁は動き出していた。
――同時刻 竹島 沖合1km
巡視船『しきしま』を中心とした巡視船団は、すでに竹島の沖1kmにまで迫っていた。
巡視船『しきしま』の船長、島津衛士は双眼鏡で艦橋から竹島の様子を窺う。
「うん……? 船が集まっているな」
「どうやら、一部の者が帰ってきたようですね。転移から数日経つというのに、まだ哨戒をしていたのでしょうか?」
同じく双眼鏡を覗き込んでいた航海長が応じた。
「どうしますか、船長?」
「ふむ。実力行使に関してはあくまで韓国側が『歯向かった場合』に限定されている。とりあえずはもう少し近づいて声をかけてみるか。応援に来た『いなさ』に、もう少し港に近づいて声をかけるように伝えてくれ」
「了解」
今回の竹島接触においては、『しきしま』が作戦の総指揮をとっており、船長の島津が司令官同然の立場にある。
だからと言って、やることは普段と変わらない。あくまで慎重に、低姿勢にファーストコンタクトを図らなければならない。
『こちら『しきしま』。『いなさ』、応答されたし』
『こちら『いなさ』。どうぞ』
『『いなさ』はこれより竹島沖30mまで接近し、拡声器による声かけを開始してほしい。なお、その場合相手を刺激するような文言を慎むように配慮してほしい』
『こちら『いなさ』、了解。直ちに島へ接近する』
巡視船『いなさ』は、2001年に発生した『九州南西海域工作船事件』において出動し、工作船に対して攻撃を行い、更に反撃を受けた実戦経験のある巡視船であることも考慮されて、今回の派遣に際して『しきしま』以外で唯一の他管区からの応援であった。
指令を受け、『いなさ』が竹島へゆっくりと接近し始めた。緩やかな速度なのも、相手を刺激しないようにという配慮である。
巡視船『いなさ』の船長は緊張しながら指示を出す。
「『しきしま』からの指示通り、相手を刺激するような文言を慎むように。絶対に『占拠』や『不法在住』のような言葉を使うなよ。怒らせたら面倒なことになるのは間違いないんだ」
「了解しました」
『しきしま』からの指令通り、竹島沖30mという近距離まで接近した『いなさ』は、拡声器のスイッチを入れた。
――ここからの記述は日本語ですが、韓国語で乗組員が声をかけているとお考えください――
『こちらは日本国海上保安庁です。竹島在住の韓国の皆さん、聞こえているならばそのままお聞きください。我が国は国及び周辺の島々と共に、別の時代の地球へと転移してしまいました。皆さんも本国と連絡が取れなくなっていることで大変困惑しているだろうと思われます』
一息おいて、また喋りだす。
『よって、海上保安庁は皆さんを保護するために参りました。我々に皆さんと敵対する気はありません。保護した後は皆さんを東京にある韓国の大使館までお送りし、政府が今後の対応を検討いたします。どうか、過激な真似をしないようにお願いいたします』
拡声器のスイッチから手を離すことで、沈黙が船内に漂う。
「これで、よかったですかね?」
「さぁな。後は、向こうの出方次第だ」
船長の言葉に、乗組員達も頷くことしかできなかった。
すると……
――ダダダッ! ダダダッ!
連続した炸裂音の直後、『いなさ』の艦橋に火花が散った。
「こ、攻撃です! 竹島の沿岸から、攻撃を受けました!! 自動小銃のようです!」
すぐさま船長は通信機を取って『しきしま』に連絡する。
『こちら『いなさ』。竹島の韓国人が発砲してきた! やはり彼らは武装していたらしい! 『しきしま』に、正当防衛射撃の可否を問う!』
通信している間にも、数多くの火花が『いなさ』の船体に弾けた。
『こちら『しきしま』。そちらの状況は確認している。ただいま全巡視船で距離を詰めている。もう少しだけ待ってほしい。』
『こちら『いなさ』、了解!』
防弾ガラスや艦橋の装甲がなんとか銃弾を防いでいるようだが、こう何度も銃撃されては乗組員の精神的な不安が募るばかりである。
ものの5分もしないうちに『しきしま』を筆頭に『きそ』、『せっつ』、『おき』、『さんべ』の巡視船5隻が姿を現した。
だが、それと同時に韓国側の船が1隻、出港準備に入っていた。
『しきしま』から島津の通信が入る。
『こちら『しきしま』。港湾部において多数の人影を確認。一部は船で出港し、逃亡しようとしている模様。『きそ』及び『さんべ』は出港する船の確保に向かえ。『おき』、『せっつ』はこの場で待機。これより『しきしま』から『うみたか1号』で特別警備隊を送り込む。目的は竹島の『武装勢力』を確保すること。そのための『正当防衛射撃』を許可する』
『『おき』、了解』
『『さんべ』、了解』
『『きそ』、了解』
『『せっつ』、了解』
全ての巡視船が、それぞれの目標に向けて動き始めた。
竹島に住む韓国人は間違いなく旧世界の人々なので、旗信号なども通じるのだが、それらを掲げる前に先制攻撃を受けてしまった。
「まさか彼らがいきなり攻撃してくるとは……もしかして、何か勘違いでもしたんですかね?」
航海長の言葉に、島津は首を傾げた。
「確かに……こちらが何もしていないのに攻撃してくるなど、いくら過激な者たちを送り込んでいたとしてもおかしいな」
考え込んでいた航海長が、はっとしたように顔を上げた。
「もしかして……」
「どうした?」
「彼らは、まだ自分たちが転移したことをわかっていないのかもしれません」
「どういうことだ?」
「恐らく、『本国と連絡がつかないのは日本が何かしらの妨害工作を行っているから』と考えているのではないかと。それで、保護に来た我々を『その混乱に乗じて独島(竹島の韓国名)を乗っ取るために海上保安庁を送り込んできたのではないか』と推測して、本国の指示も仰げないことから我々を島に上陸させないように先制攻撃したのではないかと思われます」
――ダダダッ! ダダダッ!
航海長の説明の間も、『いなさ』のみならず『しきしま』にも弾が飛んでくる。幸い『しきしま』の艦橋は堅固な軍艦構造になっているため、拳銃や小銃程度の攻撃ではびくともしない。
だが、頑強な船体を持つ『しきしま』と異なり、『いなさ』はそうはいかないようだ。既に船体の各所に傷がついている。
「やむを得んな……まずは敵の攻撃に対して牽制する。『いなさ』に通達。正当防衛射撃の許可を出す、と」
「了解」
通信士が通信機に話しかける。
『こちら『しきしま』より『いなさ』へ。ただいまより敵の攻撃を減衰させるための正当防衛射撃を許可する。ただし、機関砲は威嚇のため、人に当てないように。周囲の建造物を中心に狙うこと』
『こちら『いなさ』、了解!』
すぐに『いなさ』の船主に備え付けられている20mm多銃身機関砲が岸壁の方を向き、目標追尾型遠隔操縦機能(RFS)によって正確に狙いを定める。
「目標、武装勢力右横手に存在する建造物屋根部分! 正当防衛射撃を実施せよ!」
――ダダダダダッ!
発射された機関砲弾が、曳光弾を交えて次々と武装勢力のそばにある建物の屋根に命中した。20mm以上の機関砲弾になると、人体に当たれば蒸発するほどの威力と言われている。そんな物が連続して着弾した建物の屋根は、乾いた破裂音を響かせながら吹き飛んだ。
これで少しは相手の戦意を削げるかと思った乗組員たちだったが、更に密度を増した銃弾が『いなさ』と『しきしま』を襲った。
『敵勢力、更に発砲!』
「船長、逆効果だったようです。様子を見る限り、韓国人はかなり興奮しているようですね」
「そのようだな。もっと穏便に済ませたかったんだが……直ちに特警隊に竹島の武装勢力確保に動くように指示してくれ」
「わかりました」
数分後、『しきしま』の後部甲板から『スーパーピューマ332』型ヘリコプター、『うみたか1号』が離陸した。
離陸した『うみたか1号』は素早く敵武装勢力のそばにある廃屋の横に着陸した。大阪特殊警備基地から派遣され、今回『しきしま』に搭乗していた特警隊16名2個隊が、素早く降りて射撃体勢を整える。
警備隊の一部はこちらに向かって発砲しているようだが、こちらは幸いなことに遮蔽物で見えない状態のため、弾道からそれた場所にいれば安全である。
彼らの腕には陸上自衛隊の空挺部隊でも使われている『89式自動小銃』が抱えられており、遮蔽物の陰から素早く狙いを定める。
「敵武装勢力を確認。未だ威嚇射撃に応じて発砲している模様」
『了解。『しきしま』より各隊員、適切な火器使用の下で武装勢力を確保せよ』
「了解」
遮蔽物の陰から銃口を突き出して、照準装置を覗き込む。
そのレンズには武装勢力が映し出されており、腕に照準が定まると同時に隊員が引き金を引いた。
「撃てっ!!」
――バンッ!!
5.56mmNATO弾が、乾いた破裂音を立てながら1発で敵の腕を貫いた。
腕を撃ち抜かれた警備隊は、呻き声をあげながら小銃を取り落とし、腕を押さえてうずくまった。
それを見た特警隊は次々と発砲し、的確に足や腕を撃ち抜いていく。
相手は韓国語でこちらを罵っているようだが、そんな事は意にも介さずに己の為すべきことをする。
ものの30分とかからないうちに、発砲していた警備隊所属と思われる20名のほとんどは地面に倒れ伏すことになっていた。ただし、海上保安庁は相手の撃破を目的とした集団ではない、警察組織であるため、どの攻撃も腕や足を撃ち抜いて継戦能力を奪うことに終始していた。
とどめと言わんばかりに隊員の1人がレミントンM870ショットガンを手に突撃し、至近距離から散弾の射撃で一気に2人を動けなくする。
特警隊の隊長は、敵のほとんどが動けなくなったことを確認して飛び出していった。残っていた武装勢力も、すっかり戦意喪失していたようで、特警隊が隠れていた場所から飛び出すと、すぐに銃を捨てて両手を挙げたのだった。
隊長が残った者たちに韓国語で声をかける。
『公務執行妨害、及び銃刀法違反などの容疑で、緊急逮捕する』――「総員、確保せよ!」
普通の法執行であれば令状などをきちんと取ってから逮捕するのだが、今回韓国人が武装勢力と化した場合を想定した政府は、あらかじめ緊急逮捕を許可する旨を伝えてあった。
『しきしま』から『うみたか2号』が飛び立ち、『しきしま』に乗っていた他の隊員たちも降りてきた。負傷した者の応急手当てを済ませ、急いでヘリコプターで搬送させる。
大型の巡視船である『しきしま』には医療用機材の充実した医務室も存在するので、中で治療するために搬送するのであった。
『しきしま』船長の瀬戸内は、『しきしま』の、海上保安庁としては異例の重火力を使わずに済んだことを心から喜んでいた。
「後は『きそ』と『さんべ』ですね。船で逃亡しているそうですが、取り押さえられるでしょうか?」
航海長の言葉に、瀬戸内は険しい顔をした。
「難しいかもしれないが、彼らを信じよう。一応、航空機も出動して船をしっかり追跡しているからな」
一方、巡視船『きそ』と『さんべ』は、逃亡しようとする船の航路を先読みして先回りするという行動でなんとか動きを抑えていた。
相手はわずか1隻だが、『きそ』と同じくらい大きいことに加えて中々速度が出るようで、既に出港からわずかな時間で28ノットの速度で航行している。
だが、巡視船『きそ』は30ノット、『さんべ』は35ノットの高速で航行できる船であった。
小回りの利く『さんべ』がうまく相手の船の行く先へ立ちはだかるように回り込むことで動きを封じ、『きそ』が拡声器で呼びかけている。
『こちらは日本国海上保安庁です。直ちに停船しなさい。繰り返す――』
先程から日本語と韓国語で何度も声をかけているが、韓国の船は一向に止まる気配がない。旗信号も掲げているが、全く従う気配がない。
『ストップエンジン! ストップエンジン!』
「仕方ないな……『SN旗』を掲揚しろ!」
巡視船『きそ』の船長は、やむを得ず『SN旗』の掲揚を命じた。これは、『停船せよ。従わなければ発砲する』という意味で、九州南西海域工作船事件でも使われた旗である。
「これで停船してくれればいいが……」
船長はできる限り発砲したくないという願いを込めて韓国船を見つめたが、儚いその願いはあっさりと裏切られることになった。
韓国船の中から、多数の銃声が響くと同時に『きそ』に着弾したのだ。どうやら、12.7mmの重機関銃を装備していたらしく、先程使われた物よりも明らかに着弾音が強い。
「韓国船、発砲!!」
「やむを得んな……正当防衛射撃を実施する!」
『撃つぞ、撃つぞ!』
最後の警告をしたところで、『きそ』の艦橋付近に装備されている20mm多銃身機関砲が韓国船の船首部分に向けて火を噴いた。
――ダダダダダッ! ダダダダダッ!
しかし、それでも韓国船は速度を緩めず、更に機関銃を放ってくる。
――ガンガンガン! ガギャガギャン!!
甲高くも鋭い炸裂音が響くと同時に、ついに『きそ』の防弾ガラスを貫いた。弾丸は幸いなことに人には当たらなかったものの、『きそ』の乗組員たちは青ざめる。
「ま、まさかここまでやるとは……」
「連中、本気でこちらとやりあう気ですよ」
「くっ……これは使いたくなかったんだが……40mmに切り替えろ!」
今度は『きそ』の船主に搭載されているボフォース社製40mm単装機関砲が、FCSで正確に韓国船の船首部分を向いた。
「正当防衛射撃、撃てぇっ‼」
――ドドドドドッ! ドドドドドッ!
遂に、海上保安庁が保有している艦載砲では最大の威力を誇る40mm単装機関砲が、秒間5.5発の速度で機関砲弾を射出した。
「現在、正当防衛射撃中!」
その威力は凄まじく、対戦車ヘリコプターにも搭載されている30mmチェーンガンですら正面の重装甲以外ならば戦車でも撃ち抜けると言われるほどなので、それより10mmも口径が大きいという時点で、その威力は推して知るべしである。
――ガンガンギャン!
これまで自分たちの船に着弾した音よりも遥かに高い音が響き渡り、韓国船に次々と大きな穴を空ける。
「どうだ?」
すると、ようやく韓国船は速度を緩め始めた。銃撃もやんだので、抵抗する気がなくなったらしい。
「やれやれ……やっと治まったか……」
最初は韓国人を保護するという目的(半ば建前でもあったが)で来たにもかかわらず、結局は抵抗されてしまった。どうやら、竹島にいた韓国人はかなり反日的な強硬派だったらしい。
『きそ』は万が一船内で攻撃を受けることを想定し、伸縮式警棒やMP5サブマシンガンを持った特警隊を韓国船の内部に突入させた。
「確保! 確保!」
内部に乗っていた韓国人を、次々と逮捕していく。普段から海賊及び不審船の取り締まり任務に就いているだけあって、非常に手際よく相手を武装解除していった。
それなりに大きな船だったにもかかわらず、突然の逃亡を企てたからか、船内には15名しか乗っていなかった。
これにより、日本は完全に竹島を領有下に置き直すことに成功するのだった。
――翌日 首相官邸
官邸に集まった閣僚たちは、大陸からの報告を待ちつつ竹島奪還成功の報せに歓喜した。
「なんとか大陸に被害を出さずに済みましたね、総理」
「あぁ。少々抵抗があったようだが、それでもよくやってくれたな」
そして、全閣僚会議で竹島の今後について話し合った。
その条項は、左記の通りになる。
○今後竹島は海上保安庁の新たな基地を設置し、ヘリコプターの発進も可能な地点として整備すること。
○竹島周辺の海底資源の再調査を行い、採掘できる物があるならば即時採掘を始めること。
○これに伴い、海上保安庁の巡視船を増数し、竹島を管理する部隊を創設する。
○海上保安庁の待遇を更に改善し、増員を急務とすること。少なくとも、これまでの2~4倍の人員を確保すること。
○船舶で使用するエンジンの燃費効率を更に上昇させ、低燃費化のための研究予算を大量投入すること。
「これらはまだまだ序の口……これからどうなるんだろうな」
総理大臣は嘆息しつつも、日本の新たな可能性について思いを馳せるのだった。
今月は物語の設定上『転移した年の転移した月』という事になりますので、記念という訳ではありませんが、『2019年』の『1月』のみ、4話投稿させて頂きます。
ちなみに、作者は『日本国召喚』の影響で巡視船『しきしま』が大好きです。
単行本4巻のあの獅子奮迅の活躍を見れば誰だって感動するだろうと思いたいです。
次回は北方領土編です。