驚愕の真実
今月1話目となります。
アーケードやったら睦月を改装してその後改装艦建造で睦月改二が出た(意味不明)。
それと海風の中破ホロが出たと思った次に名取の中破ホロが出た(これも意味不明)。
運がいいのか悪いのか、コロナにも未だに負けておりません。
――2028年 12月20日 日本国 茨城県 大洗港
ヘンブを拘束した第1空挺団は、護衛の隊員及び『あかぎ』型航空護衛艦2番艦の『あまぎ』を含めた、北海道の釧路に新たな港を建設して本拠地とした、これまた新規護衛隊群の第6護衛隊群と共に日本の大洗港へ辿り着いていた。
そんな新大陸の一部には、『トモダチ作戦』で大きな役割を果たしてくれた『ロナルド・レーガン』に敬意を表し、『アメリカ共和国・レーガン州』として駐日アメリカ大使を暫定大統領とする新国家を樹立させていた。
これに伴い、日本国内で生活していた米軍及びその関係者のほとんどは新大陸へ移住している。
これまでは横須賀、佐世保に停泊していた米軍艦隊、さらに沖縄にも駐留していた海兵隊の一部も移している。
これを受け、辺野古問題が解決することになったのだが、余った土地をどう活用しようかということに悩み、結局自然環境回復のために官民総出で砂浜の復活をしたのだった。
もっとも、それによってこれまでの希少な固有生物のみならず、ハブクラゲのような危険生物や、温かい環境を好む魚竜や首長竜などが人間に興味を持って寄ってくるようになってしまっていた。
意外にも首長竜は大勢で遊んでいる人間を餌と認識していないのか、一部の愚か者による餌付けが功を奏したのか、むしろ彼らは人間との接し方を覚えていた。
とはいえ、大きい生物で危険なことには変わりない。
これにより、沖縄県からの要請を受けて見回りをしている海上保安庁は『対処が難しいから大型船舶と対潜装備が欲しい!』と言い出す羽目になるのだった。
後に、あきつしま型巡視船の3番船、4番船には『ピストリークス』級巡洋艦の建造経験からアクティブソナーと三連装短魚雷発射管が搭載されることになる。
閑話休題。
ちなみに、『あまぎ』以外の護衛艦は全て『あきづき』型、『あさひ』型をそれぞれ踏襲して生産されているため、名前もそれに準じている。
一度生産終了した『あきづき』型護衛艦を再生産できるかどうかという話はあったのだが、幸い転移後も『あさひ』型で『しらぬい』が建造されていたこともあって、システムを除けばノウハウは十分あった。そのため、延長は財源さえ確保できればなんとかなる、という雰囲気があった。
ところが、与党にとっても意外なことに国会でもほぼ全会一致に近い形で採択されてしまった。
背後には、与党側には『大陸を手に入れて諸々の利権が入ってくる』利益が大きいこと、野党側でも『アメリカがいなくなると自分たちでなんとかしないといけない』という自衛本能が働いていた。特に、転移直後に大陸の部族から知らされた内容に、ヨーロッパに覇権国家があることが判明したことも影響していた。
そのため、少なくとも汎用護衛艦による防衛力拡充のためにも、両タイプ併せて100隻以上建造しなければならないことになっている。
故に、この第6護衛隊群には『あきづき』型の延長として『はつづき』、『しもつき』、そして『あさひ』型の延長として『ゆうぐれ』、『ねのひ』が配備されている。
今後も大陸各地に第7護衛隊群、第8護衛隊群など、そして一部は辺境の地方護衛隊として配備する(『ふぶき』型を中心にした文字通りの小規模な部隊)など、まだまだ改良を加えつつ増産しないといけない。
そして国産イージス艦・『スサノオシステム搭載型護衛艦』こと、『スサノオ艦』と呼ばれる1番艦『たかお』、そして最後に『あまぎ』の計8隻が配備されていた。
『スサノオシステム搭載型護衛艦』・『たかお』型
備考・基本設計は『まや』型を踏襲し、機器類及び誘導弾は全て日本製に変更されている。
設計はシステム類や誘導弾を除けば冒険的なものはほとんどなく、既存の汎用護衛艦(この場合は『あきづき』型や『あさひ』型のこと)と『まや』型の大半を流用していることと、大陸で必要な資源(鉄鉱石やボーキサイト等)が産出するようになったため、建造コストは既存のイージス艦に比べて大幅に低下している。
具体的には、既存のイージス艦が1200億円~1400億円以上するのに対して、この『スサノオシステム搭載型護衛艦』は900億円まで下がっている。
もっとも、建造が決定した当初はこの『スサノオシステム搭載型護衛艦』をアメリカよろしく大量生産しなければならないことから『値段が高すぎる』、『旧世界の脅威はないのだから能力を落としてもいいのでは』という声も上がっていたが、この世界でもロシアが二次大戦から冷戦レベルに近い能力を有していることが判明したことで、核兵器や大陸間弾道弾が存在する『可能性』が浮上した時には国会でも反対意見はほぼ沈静化していた。
武装に関してもこれまでは既存のコピーに留めていたが、コピーと解析を繰り返して既に10年。日本なりに『ここはこうしたら射程距離が増大する』、『燃料の配合を変えれば燃費が向上する』などの改良が施された物が使用されている。
武装
○日本製鋼所製62口径127mm単装速射砲 1基
○JESSM(日本版発展型シースパロー)・射程80km
○JSM―1(日本版スタンダード・ミサイル)・射程300km
○アスロック対潜ロケット・滞空距離20km
○近接防御火器システム20mm機関砲『ヤシオリ』(日本版CIWS) 2基
○三連装短魚雷発射管 2基
○M2ブローニング重機関銃銃架(RWS) 6基
○チャフランチャー
等となっている。
日本は新大陸の各地に大型船舶建造用ドックを多数建設し、人員も大陸系住民を教育して単純作業に雇用するなど大幅に増大させて軍民問わず船舶建造ペースの促進を図っていた。
それにより、輸出用軍艦を含めて各地では毎日人々がせわしなく働いている。
また航空機部門に関しても、前回のニュートリーヌ皇国との戦争において近接航空支援が制空権の確保がしやすいこの世界では非常に有効であると考えられたため、『A―1』富嶽のみならず、『C―130』を日本流に改造・改良して生産している『C―3』輸送機をガンシップ化した『AC―3・彗星』の製造も決定した。
『C―3』の機体に既存の自衛隊で使用していた兵装を流用することで、ヘリコプターより重武装かつ、ジェット機よりも長く滞空していられる近接航空支援用のガンシップを作ることができると考えられていた。
ヘリコプターにも使用されている20mm機関砲を2基装備し、40mm機関砲はボフォース社の物を流用、『AC―130』最大の火力である105mm砲は、『16式機動戦闘車』の物を流用することが決定していた。
最初は専用の榴弾砲を製造しようかという話になったのだが、経費削減のために105mmライフル砲として生産されている『16式機動戦闘車』の主砲に白羽の矢が立ったのだ。
某早撃ちのコンバットマグナムガンマンも『経費ケチっちゃ、いい仕事はできねぇぜ』と言ってるんですけどね。
まぁそれはさておき、『16式機動戦闘車』の日本製鋼所製105mmライフル砲は市街地での戦闘を考慮しているためか、対戦車砲弾のみならず榴弾を含めた多種多様な砲弾に適応している。
そのため、対戦車戦闘のみならず、対歩兵攻撃の支援にも適していると判断された。
実際、16式機動戦闘車は運用する際にも仰角を取ることで対歩兵用砲として使用する一面もあるので、十分だと判断されたのだ。
ちなみにサラッとこの世界では制空権さえ取れれば戦車狩りすらできる火力のため、一部の人間からは『〈A―1〉作るよりこっちのほうが安上がりなのでは?』と言われることもある。
とはいえ、『AC―3』は今の所誘導弾の運用能力が一切ないため、それを考慮すると今後レーダーサイトや対空陣地を潰すのに必要になるであろう『アウトレンジ性』という意味では『A―1』に及ばないのだ。
近代的な対空防御陣地へ乗り込もうとなると、旧世界の『A―10』サンダーボルト並みの頑丈さ(一部の噂ではそれ以上とも……)を持つ『A―1』富嶽を突っ込ませたほうが安全という一面もある。
ついでに言うと、『A―1』富嶽には『A―10』にはないレーダーが装備されているのも大きい。
本家には装備されていない物だが、日本の防塵装備によって、砂漠の砂嵐の中でも、猛吹雪の中でも運用できるようになっているのだ。
要するに、適材適所というやつである。
どちらも本来のコンセプトとしては『対空陣地が減衰した後に突っ込ませて歩兵や装甲車両の掃討を行う』というものだが、生存性という意味では『A―1』の方がどうしても高く、旧式の対空誘導弾程度ならある程度耐えられるとまで言われているため(そもそも旧世界のサンダーボルトが『エンジン片肺になっても飛んでいる』だの、『主翼の一部が吹っ飛んでも帰還した』だのという伝説を持っているわけだが……)、安全性と対レーダー・戦車攻撃などを重視するならば『A―1』に軍配が上がるのである。
もっとも、この『AC―3』、開発当初は日本転移小説に登場した『魔改造された三笠モドキ』のように、『どうせなら16式の〈砲塔ごと〉乗っけて、ある程度旋回できるようにすれば射角も仰角も大幅に広がるのでは?』などという変態的な議論が防衛装備庁の一部技術者の間でなされたが、政府も良識ある人たちも『いや流石にそれは』と待ったをかけたため、仰角可能な砲身と砲弾、そして射撃指揮装置の流用に留めることとなった。
加えて、友好国にも近接航空支援が有効であるという概念を持ってもらうために、自衛隊の練習機を兼ねて日本は現地組み立て方式を用いるターボプロップエンジン搭載型単葉機を作らせていた。
これは旧世界の米軍が朝鮮戦争時代に使用して大活躍した悪名高い(褒め言葉)『A―1』スカイレイダーを参考にしており、新たに空軍が設立される予定のフランシェスカ共和国や、軍を再建することが決定しているニュートリーヌ皇国で採用されることになる。
武装は
○12.7mm重機関銃 2丁
○250kg爆弾 4発
○或いは無誘導型97式魚雷 2発
と、軽攻撃機としてはそれなりの武装となっている。名前はまだ決まっていないものの、旧世界でブラジルが製造し、アメリカが軽攻撃機として採用した『A―29』スーパーツカノに少し似た性能ということで、ひとまずだが『AT―9』と名付けていた。
また、これらの先進技術を使いこなせるようにと、日本は各国からの留学生を多く受け入れているのだが、教育するための人材がどうしても足りておらず、大陸系日本人の教育も必要とあって現場は非常に苦しい思いをしている。
以前『A―1』モドキを作って輸出しようとしたら『おいやめろバカ』になったな?それでもやった。そして恐らく反省していない。
先程も述べたように既に転移から10年ほどが経過していることもあって、大陸系日本人との間に生まれた子供も既に数千万人単位を超えるほどになっていた。この第四次ベビーブームに対応する教員も少ないため、『学校そのものの規模を拡大』することで政府は対応を図ることにしていた。
具体的にはこれまで50人弱だった一クラスを70人に拡大するなどである。もっとも、拡大に当たって『教室の広さが足りない』だの、『そもそも学校の校舎が老朽化していてそんな大人数は受け入れられない』だの、今まで薄々知りつつも無視してきた問題がまた噴出する事態に陥って政府及び関係各省庁は未だに日々混乱の渦中にある。
さて、話は長くなってしまったのでヘンブのことに戻ると、大洗港に到着した第1空挺団はそのまま移送部隊にヘンブを引き渡し、自分たちは本拠地の習志野へと戻っていった。
ヘンブはトラックに身柄を移し替えられ(日本が人物を移送することを想定している車両はアラクネ族を乗せることを想定していないため、トラックの荷台に乗せざるを得なかった)、東京の外務省へと運ばれる。
「ご苦労様です」
「こちらがガネーシェード神国の首長だ。くれぐれも傷をつけるなよ」
「はっ!」
ヘンブは口が塞がれているのでキッ、と眦を上げて団長の土師を睨むが、土師はそんな視線を受けてもニヤッと笑い返すだけであった。
「悪いな姐さん。俺もこれが仕事なんだ」
土師は余裕そうな飄々とした態度のまま、部下の待つ高機動車へ向かうのだった。
「……あれが第1空挺団ですか。噂通りのようですね」
「あぁ、言ってはなんだが、正に『第1狂ってる団』だ」
一般隊員に近いこの部隊は、ヘンブの放つ圧倒的強者の殺気にかなり怯えていたのだが、土師はそんなものはどこ吹く風と言わんばかりの余裕綽々の様子だったのだ。
「まぁ、我々はやれと言われたことをやるだけだがな」
車はパトカーの護衛も含めて一路、東京へと向かう。
――3時間後 東京都 某所
ヘンブは驚いていた。
自分たちの国が、国と呼ぶのもお粗末と言えるほどに発展していないことは『とある理由』から百も承知だった。
だが、この日本という国は、その『とある理由』を含めても驚愕の一言に尽きる。
「(まさか……『神域』以外にこれほど発展した場所があろうとは……)」
連れてこられる途中、ヘンブの目に飛び込んできた自動車や建物などの洗練されたデザインは、彼女の抱いていた『世界』の概念をぶち壊すには十分であった。
複数の警察官と自衛隊員に取り囲まれ、薄暗い部屋らしい所に押し込められた彼女だが、外と比較して全く寒くないことにも驚く。
「(優秀な暖房設備だ。神域のモノに比べれば……いや、近いと言ってもいいかもしれない)」
すると、重厚な音と共に扉が開き、眼鏡をかけた人物が入ってきた。
「初めまして。ガネーシェード神国首長のヘンブ殿ですね?」
「(何者だ? 随分と洗練された服を着ているが……)」
「私は日本国外務省の神と申します。あなたとの交渉を命じられ、派遣されてきました」
すると、傍に立っていた警察官がヘンブの猿轡をようやく外した。
「……随分なご挨拶だな」
「申し訳ありません。あなたにはこうしなければお話を聞いていただくことすらできないだろうというのが政府の見解でございましたので」
確かに、まさか『神域』にそれなりに近い発展を遂げていて、自分たちアラクネの能力を突破するだけの知恵と能力を有しているということを全く想定していなかった。
「沿岸部にお主らの基地らしきものがあった。沿岸部の村はどうした?」
「立ち向かってきた『村人』たちは、我が国の戦艦『やまと』によって倒しました。村に残っていた幼い子供や赤ん坊は、放っておいては死んでしまうと判断しましたので我が国で『保護』しております。なお、村の設備はあなた方に再利用されないように砲撃や爆撃、爆破で徹底的に破壊しておりますのであしからず」
さりげなく『やまと』のことを戦艦と呼称しているが、砲撃護衛艦などと言っても伝わらないだろうと判断しての外務省の配慮である。
実際には国内でも普通に戦艦『やまと』と呼ばれているうえに、メディアでさえも戦艦『やまと』と呼称しているのだが。
「戦艦だと? 妾が知る戦艦の砲撃程度では、1万人以上いる沿岸部の村人は崩せぬはず……?」
「我が国にはあなた方が想像するよりも高い技術があります。たとえ金属を弾く力を持っていても、対処法はいくらでも存在するのです」
神の目を見ると、とてもウソを言っているようには見えない。
ヘンブの脳裏には、グランドラゴ王国が開発した『クォーツ』や、蟻皇国が『彼女の記憶で』保有している戦艦の姿が浮かんでいた。
「こちらをご覧ください」
神が用意されていたプロジェクターを起動する。
ヘンブは再び驚いた。暗闇で映像を流麗に投射するような技術は、彼女の知る限り『神域』にしか存在しない。
「(やはり、日本の技術は一部神域に匹敵するものがあるようだ……)」
そして、映し出された映像に彼女は驚愕する。それは、上空から映された映像だった。
「な、なんだこの巨大船は!」
ヘンブはその大きさと、雄大さに思わず圧倒されてしまう。何よりも、その形状はヘンブの想像していた『戦艦』の概念を大きく崩すものだった。
「これが、我が国が保有する最大の戦艦、『やまと』です」
最大も何もこれしかないのは突っ込まないでほしい。
とはいえ、超弩級戦艦と弩級戦艦、そして前弩級戦艦とでは形状、大きさ、能力など、様々な部分に差が出ている。
故に、意外と『見ればわかる』のだ。
「この主砲……三連装だと? 噂ではイエティスク帝国にはそんな物もあるらしいが……砲塔の形状はもっと洗練されている。何より、この優美とすら言える船体……無駄がなく、それでいて余裕がないわけでもない」
そんな独り言を聞いた神はピクリと眉を動かした。
「(この人物……随分と近代知識に詳しいようですね。文明水準からすると信じられないですが……)」
とはいえ、もう少し様子を見るべくさらに映像を展開した。今度は『10式戦車』と『16式機動戦闘車』である。
「こ、これは戦車か‼ まさか……神域で見た戦車に近い形だ……こちらは装甲車に戦車の砲塔を載せているのか? こんなものは神域にはない係累だな……」
先程から聞こえてくる『神域』という聞き捨てならないセリフに、遂に神はツッコみを入れることを決めた。
「失礼、ヘンブ様。先程から耳にするその『神域』というのはなんなのでしょうか?お教えいただけると幸いなのですが」
神の言葉に我に帰ったヘンブは『コホン』と咳払いをして神のほうへ向き直った。
「よかろう。どうやら、日本という国には話してもよさそうじゃな。我が国が、なぜあれほど過激で異様な思想に染まった宗教で成り立っているかを」
神はヘンブの変わった姿を見て、自分の子供が読んでいた少々過激な描写の多い漫画を思い出していた。
『宗教という薬を処方する首長は、自分がその薬に酔ってはいけない』という文である。
息子が読んでいたそれは過激でエッチなシーンばかりなイメージがあったので軽視していたが、息子が呟いていたその条文のことだけは覚えていた。
「(やれやれ……オタク文化とバカにすることもできないとは転移からずっと思っていたが……また身につまされた)」
神は内心苦虫を噛み潰したような表情をしたかったが、相手が目の前にいるのでそれはこらえる。
「お教えいただけるのですか? ガネーシェード神国という国について」
「うむ。お主らは我が国のことを、『男を攫い精気を吸い尽くし、その後は骨の髄まで利用し尽くす』と他国から聞いているであろう」
大体その通りなので神はまず頷く。
「そうせねばならないのは、我らが与えられた能力も相まって『怖がられる』必要があったからじゃ」
「怖がられる必要が?」
よく意味が分からない神は思わず疑問符を浮かべてしまった。
「我らは他の亜人族にはない能力を持っておる。それが、『磁場発生能力』じゃ。それも知っておるから、対策を立てたのであろう?」
「はい」
「我らを生み出した創造主はな、とてつもない『イカれた』存在じゃ」
自分たちの創造主を『イカれた』と評したことに、神は内心戸惑いを隠せない。当然、どういうことかと疑問は膨れ上がるばかりであった。
「イカれた、とは……?」
「言葉のままじゃ。創造主は己の欲望を満たしたいがためだけに、我ら亜人を創造したのじゃ。いや、亜人ばかりではない。お主らが制しているという大陸に住まう巨竜や、海の海魔たちもそうよ」
これは衝撃だった。恐竜や絶滅動物たちは、人為的に作られたものだということらしい。
だが、1つ心当たりがあった。
「ヒトの染色体を持つ、それでいてヒトならざる生き物たち……」
「なんじゃ、そのことまで知っておるのか」
神の脳裏には、今も大陸のベイモリオカ基地でモフモフされながら飼い主とその妻『たち』の痴話喧嘩を子守唄に、惰眠を貪っているであろうサーベルタイガーのことが浮かんでいた。
「そうじゃ。この星に生きている生物は皆、創造主によって作られた存在じゃ。そしてそれは……我らも変わらぬ」
どこか自嘲するようなその言葉に、神は顔つきを険しくする。
「そして、ヒトならざる生き物たちがヒトに近い物を持っている……そのようなことをした意味が分かるか?」
「……いえ、皆目見当もつきません」
「簡単じゃ。『人とは違う、ヒトに近い者たちと淫らな真似に耽りたい』……そんな欲望を、我らの創造主は持っていたのだ」
そんな馬鹿な、と神は思った。
だが同時に、この世界の亜人たちが日本人と結ばれて問題がない理由の1つに納得がいった。
「つまり、この世界の生物は人と交配しても問題ないように改造されている、と?」
「まぁ、巨竜や海魔などは改造する最中で誕生した、偶然の産物だがな」
だが、これで非類人猿型生物がヒトの因子を持っていることにも説明がつく。
「……ヘンブ様、あなたはいったい何者ですか?」
神は遂に、核心に迫るであろう質問をした。
ヘンブは今までの頽廃に満ちた雰囲気とは違う……どこか厳かな空気を漂わせていた。
ここまでくれば、彼女たちが何者なのか、それは今後の日本が歩むうえで非常に重要な問題となる。
ヘンブは『はぁ』とため息をつくと、神の顔を見つめる。
「このこと、お主らの政府にしかと伝えるがいい」
神も、周囲の警察官や自衛官も頷く。要するに、政府以外には他言無用ということだ。
「我らガネーシェード神国は……古代文明の遺産を守る者だ。古より多くの外敵を排除するうちに残虐性が増し、今となってはこのような状態に落ちぶれてしまったがな」
「古代文明……?」
「うむ。我らを創造せし創造主『たち』は、我らを創り一通り楽しんだ。だが、残念なことに創造主側のほうに問題が起き、星の外へと出ていったのだ」
「星の外……」
「うむ。残されていた言語にはこうあった。『宇宙』と」
神たちは驚愕した。この地球はどうやら、人為的な操作の結果誕生した、歪な生態系の上に成り立っている星であるらしい。
「そして、我らアラクネは、創造主が自身に発生した問題を解決し、いつかこの星に戻ってきた時に神域の文物を紐解きお返しするという役目を仰せ付けられている」
つまり、神国は存在そのものが守護者だったということらしい。
「では……その創造主に、名前などありますか?」
「名前か……創造主は自らのことをこのように称していた。その名は……『人間』、学名をホモ・サピエンスというそうな。聞けば、環境への適応能力がなくなったとかで人為的な環境下でしか生きていけぬ体になったらしい。それを解決することと、己の欲望を満たす意味で我ら亜人族を生み出したようだがな」
どうやら、異世界の地球人は現代日本人同様、かなりド外れた美的・性的嗜好の持ち主だったらしい。
現実では少子高齢化の影響で公立学校のクラス総数が35人に減らされるとのことですが、この小説ではその逆となっております。
そして明らかにされたガネーシェード神国の秘密……古代人類の歪みと恐ろしさが伺えます。
次回は20日か21日に投稿しようと思います。