東京観光、それから日本の変化
明けましておめでとうございます。
新年1発目のお話です。
今後も『日本時空異聞録』を、どうぞよろしくお願い致します。
――2019年 1月9日 午前9時 東京スカイツリー
園村と別れた国元は、他の外務省職員らと共にガルソンたち以外の集落の人のために、東京の各所を案内していた。
「皆さん、これが我が国の誇る建造物、東京スカイツリーです」
その高さは634mもあり、日本では最大の建造物である。電波塔としても運用されているが、観光名所としても名高い。
集落の人たちはそのあまりの高さに口をあんぐりと開けて唖然としている。
「い、いったいどうやればこのような物を作れるのだ?」
「もしやこの建造物は、神の世界へと続いているのではないか?」
まるでバベルの塔扱いである。国元は苦笑するが、『とりあえず』と集落の人たちを案内する。ちなみに、事前に根回しをしていたことで、集落の人たちがいる間は貸し切りになっている。
中に入ると、普段ならば行列ができているエレベーターの入り口が、ガラガラに開いている光景が目に入った。
「(普段ならばぞろぞろとした行列が名物なんだけどなぁ……)」
国元はそう考えながら苦笑しつつ、人々を招き入れた。
既に根回しが済んでいるため、東京スカイツリーの職員たちも案内に協力してくれている。
そして、エレベーターに乗れる人数ごとに乗せて、上へと送り出す。ちなみに、一団ごとに外務省の職員が付いているので混乱してもすぐに治められるようになっていた。
そして、上った者たちはとてつもない光景を目にする。この日は幸い快晴だったこともあって、遠くまでよく見える状態だった。
「な、なんという高さだ!?」
「あんな……あんな遠くまで見られるのか!?」
老若男女問わずに驚きを隠せずに、ただただ感嘆するしかできないようだ。
だが同時に、気付く者は気付いたようだ。ここから見える中でも、いくつかの建造物はとても巨大であるということに。
「(これほどの建築物を作り出すとなると、相当な人手がいる筈だ。いや、あれほど大きな建造物となれば、中に住んでいる人間の数もとんでもない……つまり、この日本という場所にはそれだけの数の人間が住んでいるということでもある……)」
それが何を意味するのか分かる者は、一部だけであった。
「す、すごい!! 地上で見た時はあんなに大きく見えた建造物が、まるで小さな石ころのようだ!!」
人々の興奮はまだ冷めやらない。中には、あまりの高さに気分が悪くなる者もいたが、多くはその高さ、そして技術力に圧倒されていた。
30分ほどスカイツリーを楽しんだ集落の人々は、スカイツリーの根元にあるすみだ水族館を訪れ、その多様な生物の数々に驚かされた。
「ま、真っ赤な魚がいるぞ」
「これは食べられるのか?」
真っ先に食べることに直結している彼らの思考回路は、それだけ普段の生活に余裕がないことを示していると国元は直感した。
「これは鑑賞用……見て楽しむための魚ですので、食べることはできませんよ」
「見るための魚!?」
「魚を、食べる以外の目的で採ったというのか……?」
「正確には、これは鑑賞用のために品種改良……様々に交配させた魚なのです」
彼らの集落の基準からすれば、ただ見るためだけに魚を育てるなど、正気の沙汰ではない。
すると、子供の1人が別の方向を指差した。
「あっち! 黒と白の鳥が水の中を泳いでる!!」
大人たちは、子供の言うことに呆れるように言った。
「はぁ? 何を言っているんだ。鳥が水の上を泳ぐならともかく、水の中を泳ぐなど……」
そんな彼らが振り向いた先には、透き通った物体(先程、『ガラス』という物体だと説明を受けた)の中を、まるで飛び回るように泳ぎ回る白と黒の鳥が泳いでいた。
「そ、そんなバカなぁっ!?」
驚く集落の大人たちに、国元が説明した。
「これは、『ペンギン』という鳥でして、空を飛べない代わりに水の中を飛ぶように泳ぐことができる鳥なんですよ」
子供たちは無邪気にはしゃいでいるが、大人たちは唖然とすることしかできない。
「本当はもっと寒い所に住んでいる鳥なんですが、飼育下ならばこうやって気温が高い場所でも飼育できるんですよ。色々と配慮は必要になりますが、違う環境でもある程度人間が工夫してあげれば住めるようになるんですよ」
すると、子供が国元の袖を引いた。
「じゃあ、他にも日本にはいない魚や鳥がいるの!?」
「うん。これから色々見せてあげるからね」
1時間以上をかけてすみだ水族館を見終わった一行は、バスに乗って上野へ移動した。
――30分後 上野 東京国立科学博物館
ここでは、日本の様々な歴史や、産業の成り立ち、日本で産出する鉱石や各種資源などの展示も行われている。
「我が国の歴史はもちろん、我々が今まで作り上げてきた様々な物も展示されてありますよ」
人々を案内し、まずは日本の歴史を展示しているエリアへ行った。
そこを見た人々はまず驚いた。そこに描かれた展示物や絵に描かれていたのは、自分たちの集落に似ている建造物や人々の様子だった。
「これが……昔の日本だというのか?」
「クニモトさん。これは今の日本から数えて、どれくらい前のことなのだ?」
国元はどう説明したものかと思いつつ、言葉を捻り出した。
「皆さんは、『1年』という概念はありますか?」
集落の人たちは首を傾げる。やはり、まだ年月の概念はないらしい。
「えぇと……日本では、日が昇り日が沈み、また日が昇る時間までの区分のことを『1日』としておりまして、それを365回繰り返すことを『1年』というのです」
集落の人たちは頷く。
「その区分の基準で、2000年前くらいのことになりますね」
途端に人々がざわつき始めた。
「そ、そんなに昔のことなのか!?」
「我々が低い能力しかない存在だと判断されるわけだ……」
そこから段々と時代が進んでいき、飛鳥時代や平安時代、室町時代から戦国時代、江戸時代を経て文明開化に至った経緯などが様々に描かれている。
集落の人たちは文字が読めないので、国元が解説しながら進む。
明治維新後の文明開化後のことは色々高度な説明になっていたこともあり、理解半ばではあったものの、日本が国際社会という開けた世界を相手にし、そこから100年以上もの間苦労を続けていたことを、皆真剣に聞いていたのだった。
もっとも、途中から子供たちは展示されていた零戦や様々な物に触りたがったのでなんとかそれを止めるのに苦労していたのだが。
2時間以上をかけて博物館を出た面々は、表へ出て外務省の職員たちで用意した食事をとった。
「クニモトさん、食事の後はどこへ行くのですか?」
「水族館でも話したと思いますが……日本のみならず、我々がかつていた世界に生息していた数々の動物を展示している、動物園という施設があります」
「そこもさっきの水族館の……キンギョ、だったか? あれらと同じように、食べるためではなく見るためだけに動物を飼育しているということか?」
「えぇ、そうですよ」
「……日本は、とても余裕があるのだな……我々は動物を見れば、食べられるかそうでないかの2つしかないというのに」
集落の中でも良識ある人からすれば、動物を捕まえるということは、うまく動物を活用し、保存できるように加工することこそが大事なのだが、先程の水族館といい、日本ではそんな常識は通じないと分かったらしい。
「分かりました。どんな動物がいるのか、楽しみですよ」
――上野動物園
博物館のすぐそばにある上野動物園に入った集落の人たちは、その多様さにまた驚かされていた。
ある者はライオンに見惚れ、ある者はゾウの大きさに驚き、ある者はツルの美しさに驚き、ある者はリスやネズミなどの小さな生き物の愛らしさに騒いだのであった。
だが、その中でふと気づいた若者が国元に問いかけた。
「クニモト殿。我々の集落の近くに住んでいた暴れ竜はいないのか? これだけ多くの動物が揃っているなら、もしかしているのではないかと思ったのだが……」
「残念ながら、あの暴れ竜……恐竜と呼ばれる生き物は、我々の世界では遠い昔に絶滅……滅んでしまっていたんです。化石と呼ばれる石になった骨が見つかるだけで、生きた暴れ竜はいなくなってしまっていたんですよ」
国元が残念そうに語るのを見た集落の人たちは、見たことがないはずなのにあっさり暴れ竜を倒してしまった日本の戦闘能力に改めて恐怖を抱くと同時に、そんな日本が自分たちと仲良くしたがっていることにホッとするのだった。
そして、それを知ったことで集落の中でもガルソンやガロンなどに次いで知識のある者たちは震える。
「こんなに数多くの動物を飼育する……つまり、日本はそれだけ多くの動物について調べ、知っているということでもあるのだな」
「当然だ。大昔に滅んだはずの生き物のことですら色々と学べるほどの技術があるんだ。とんでもない能力を持っているものだよ、日本という場所は」
今後、日本と付き合っていくうえでどう対応するのが正しいのか、集落の大人たちは分からなくなるのであった。
上野動物園を出た一行は、暮れ始めた夕日を感じながらバスに乗り込んでいき、ホテルへ帰る途中、大人を含めた多くの者たちが疲れて眠る姿が見られたのだった。
ちなみに、国元たちが去った後のスカイツリーでは、会談で遅れてやってきた園村と総理大臣が族長ガルソン、戦士ガロンを案内してその高さで驚かせたのであった。
後にガルソンは『我らは神に導かれたのだ』と、感動の言葉を述べたという。
――2019年 1月10日 首相官邸
総理大臣はハガン族の長ガルソンと話し合い、先の取り決めを有効化することをお互いに約束、書状を取り交わした。ちなみに、書状を取り交わす概念が彼らにはなかったため、証拠としてガルソンの写真を貼り付けた紙と、ガルソンの手形を付けた紙が互いに保存されることになった。
「……わしは、こんな顔をしていたのか?」
写真に写った自分の顔を見たガルソンがそう問いかけたことが、対応した園村にとって最後に印象深い出来事となった。
これを受け取ったガルソンたちハガン族は、新幹線と船を乗り継いで一度、自分たちの集落へと帰るのだった。
その後ガルソンは急いで自分の知る集落2つに使者を送り、日本の傘下に入って保護してもらうように働きかけるのである。
そして、ハガン族の協力を得ることで日本は大陸へ向けて大いに漕ぎ出すための準備を行なうことになる。
だが、それにはもう少し時間がかかるのだった。
――2019年 1月12日 日本国 国会議事堂
「しかし、この突然の事態とはいえ、政府がよくここまで大胆な決断を下したものだな」
とある若手議員の言葉に、中堅議員が答える。
「それだけ、現在日本が置かれている状況が切羽詰まっているということだな。それに、新大陸を領有下に置くなんて、南極以外は開拓できていた今までの常識ではありえない話だ」
日本が今後、文明が存在しないであろう新大陸の開拓を始めるにあたって、これまでの常識では考えられない巨大害獣(主に恐竜)が数多く生息していることが確認されたことから、それに対応する様々な軍備拡張政策も多数が可決されることになった。
野党や左翼派など、一部の強硬な者は反論を見せたが、日本が生き残るためには未開拓の大陸を手に入れる必要があり、同時に開拓と防衛の両方を行なうためには現在の米国を遥かにしのぐ武力が必要になるという総理大臣の意見に引き下がらざるを得なかったのであった。
当然軍事予算も大幅に増大が決定しており、今までの国内総生産の1%から一気に5%まで引き上げることに決定した。
その幾つかを示すと、以下の通りになる。
○開拓の際に構築する都市は、それなりの防衛能力を持つ要塞都市として建築する
これは、現地に派遣された自衛隊及び、彼らが持ち帰ったサンプルから恐竜と思しき巨大生物の生息が確認されたことにより、それらが建設された都市に侵入しないようにするためである。大型の肉食恐竜はもちろんのこと、体重が70tを超える超大型の草食恐竜(ブラキオサウルスのような体長25mを超えるタイプ)が存在すると推測されることからも急務である。旧世界の南アフリカのように、人と猛獣の生息圏がかなり近いことから、街造りの際は互いの生活圏をうまく擦り合わせたうえでかなり工夫をする必要が生じると予測される。
○米大陸東側海岸に対する港湾都市優先建造
我が国から最も近い場所に存在する米大陸の東側海岸に、大規模な港湾都市及び各自衛隊の基地を建設し、円滑な開拓を行うための前線基地とすること。その際は旧世界でよくあった悪例のように、干潟の干拓をできるだけ抑えて生物の生息圏に配慮した港湾都市造りを進めること。
○西側山脈の調査と、鉄道網の敷設計画推進
衛星写真を確認した結果、西海岸部分には旧世界でいうところのロッキー山脈様の大型山脈が連なっていることが明らかになっている。その山脈に資源があるかどうか、なければトンネルを通して鉄道を敷くことが可能かどうかを速やかに調査すること。大陸の各所に鉄道網を敷くことで、迅速かつ大量の物資を安定的に輸送できるようにすることが求められる。また、この鉄道網は大型害獣の侵入を防ぐためにも高架橋の上に建設するべし。
○各種資源の捜索及び食糧生産に向いた土地の捜索
もはや日本が必要とする資源の多くは、日本国内および領海内で採取することは非常に困難である。そのため国内の備蓄が尽きる前に、新大陸では各種資源を採取できる場所を優先的に捜索し、発見次第採掘プラントを建設し、採掘、及び精製を急がせること。同時に、日本人の年間食糧消費総量5000万t以上をこの狭い国土で賄うことは実質的に不可能なため、大陸各所で食糧生産に向いた土地(主に自給率の低い小麦、大豆用)を探し出し、開墾すること。またこの開墾した土地は、最初は政府所有という形で生育実験をし、定期的な生育が可能になったと判明した時点で民間に払い下げるものとする。こちらも農業の専門家を中心に優先的に土地を捜索する。また、資源が採掘できる場所、及び食糧生産が可能だと判明した土地が見つかり次第、その土地に巨大な都市を建築し、備蓄できるようにすること。
○自衛隊に害獣対策のための専門部隊を設立する
これまでの日本における常識と異なり、陸海空を問わず害獣の大きさとその生息域の広さ、生息数は現在日本列島に生息するヒグマやサメの類とは比べ物にならないほどのモノとなる。そのため、派遣される部隊にマタギや猟友会のような生物相手のハンター及び古生物学の専門家を招き、対象の鳥獣によって柔軟な対処出来るようにする事。
○大型の害獣増加に伴い、装甲車、装甲戦闘車及び携行対戦車兵器、対潜魚雷や空対艦誘導弾を増数すること。
これは、大型の害獣を駆除する場合、自動小銃や一部の装甲車両に搭載されている重機関銃だけでは追い払えない、或いは倒せない場合を考慮したものである。これらについても、備蓄の資材を使用し増産を急がせるが、大陸で各種資源が見つかり次第採掘を急がせることで数を確保する。
○自衛隊員の増員
今後、大陸各地に隊員を派遣することが考えられるため、隊員の待遇を改善することで、大幅に増員を実現する。
最低でも、5年の間に定数40万人とするべし。
また、大陸を領有下に置き、保護しようと思うとそれでも全く人数が足りていないため、後に積極的な子作り政策を推し進めて人口を増加させ、将来的には大陸全土を掌握することを考えて最低でも150万人規模を確保するものとする。
○航空護衛艦(DDV)の建造と、航空護衛艦隊の整備
仮に北中南全てのアメリカ大陸を制することになった場合、大陸があまりにも広すぎることから、沿岸部に基地を作るだけでは有事に対応できない場合を考慮して航空護衛艦、即ち空母を建造し、運用する体制を作る。予定艦数は『今のところ』4隻であり、それに付随して護衛艦も新規に建造すること。同時に、現在保有の『ひゅうが』型護衛艦及び『いずも』型護衛艦の甲板や設備を改装し、『F―35Bライトニング』のような垂直離発艦に耐えられるようにすることで軽空母化する。
○各種護衛艦の増数、及び新規護衛隊群の設立
大陸が広大過ぎることから護衛隊群を大幅拡大、可能な限り早期に12護衛隊群とする。最新型の『あきづき型』、『あさひ型』をベースに、対空、対潜能力を持つ護衛艦を建造、更にシーレーン警護用のフリゲート級護衛艦を新たに開発する。小型の船体に最大限の装備を詰め込み、沿岸部における最大限の戦闘を可能にすることが求められる。これらの護衛艦については、大陸の中でも領有下に置いた順番に建造をすることとする。
○退役した兵器の整備による再稼働
大陸が広大なため、これまで狭い国内で運用することを想定されていた現有兵器の数々では対応が難しくなる場面が多くなることと予測される。質よりもある程度の量を確保するために、まずは予算の問題から実施されなかった『74式戦車』の近代化改修や『73式装甲車』、『F―4EJ改』などの退役した旧式兵器を投入し、大陸の安全を確保する。また、この兵器投入の枠組みには本土防衛に際して少々微妙な扱いを受けている『89式装甲戦闘車』や『87式自走高射機関砲』などの一部現役兵器も含めることとする。
○超弩級戦艦2隻の建造
新世界各国の技術にもよるが、新大陸で得られた情報、更に衛星写真による情報を精査した結果、この世界は旧地球基準で進んでいても第二次世界大戦並みの技術が最新であるというのが現在の予測である。そのため、それらに対応しようと思うと既存の兵器だけでは足りない部分が存在するため、敢えて砲艦外交、対地攻撃を主目的とした超弩級戦艦を2隻、建造する。ただし、建造は大陸を領有下に置いた後のこととする。
○次期主力戦闘機の開発
日本の主力制空戦闘機『F―15J改』の非近代化改修機が老朽化していることを受け、その後継機となる新型戦闘機の開発を進める。目標としては、旧世界で米国が採用していた『F―22ラプター』と同性能を持つ機体を開発し、各種誘導弾を含めてステルス性などに見合う兵器も新規に開発すること。また、空母打撃群で運用する新型戦闘機も新規に開発を進める。これについては、導入が始まっていた『F―35』、及び実験飛行が成功している『X―2』先進技術実証機をベースに、艦上で運用できること、そして推力変更ノズルによる高機動が可能な戦闘機というコンセプトを持つものとする。
○新型輸送艦の開発
他の項目同様に、大陸において現状の戦力では様々な運用が難しくなると判断されたことから、米国が採用していたワスプ級強襲揚陸艦とほぼ同性能を持つ船の建造が求められる。当面の間は現有する『おおすみ型』及び民間船を徴用して大陸に開拓のための様々な物資を運ぶが、それだけでは足りないため、この艦の建造が当面の急務となる。また、甲板に耐熱処理を施すことにより、新型艦上戦闘機のある程度の離着陸を可能とすることでわずかながら空母打撃群の補助を行なうことも想定する。
○新型対地攻撃ヘリコプターの製造
日本国が現在保有している対戦車ヘリコプター『AH―1S』コブラは老朽化しており、それより新しい『AH64―D』アパッチ・ロングボウは既に調達が打ち切られていることから、現在保有しているアパッチ・ロングボウをベースに日本独自の対戦車ヘリコプターを製造する必要性が出た。また、搭載する対地レーダー及び空対地ミサイルも日本独自の物を開発し、装備することとする。最終的には大陸全土に行き渡らせることを想定して200機以上を生産する計画とする。
○航空機の多目的運用思想に関する研究
未開拓の大陸を領有した場合、航空機の絶対数が不足している。そこで、現在運用している『F―15J改』を改良し、ノルウェーから試験導入された『ASGM』をベースに国産の長距離空対地ミサイルを開発し、長大な航続距離と空戦性能を活かし、それを装備した対地攻撃用要撃機とすること。更に、当面の戦力不足を補うべく、練習機として運用されている航空自衛隊の『T―4』を一括発注で大量生産を『再開』し、近空警備用の要撃機『FT―4』として次期主力戦闘機量産までの間配備して『繋ぎ』とすること。また、日本に比べて原始的な軍備を持っている国が存在しているというガルソン族長の発言から、どうやら日本はこの世界の軍事的常識からかけ離れた装備を持っていると予測される。そのため、現状の『F―2』戦闘機の爆撃だけでは達成困難なミッションに対して、現在保有している一部の航空機を改良する形で広大な軍事基地を絨毯爆撃できるような機体を完成させること。
防衛装備庁には、日本が保有している航空機で多目的に使えそうな機体の選定と、その場合の機能を考えてもらう。
○新型輸送機の研究
巨大な大陸を手に入れることを想定すると、災害派遣や迅速な大部隊の輸送のための手段を、現在の自衛隊は保有していない。そのため、関連企業に依頼して旧世界の『C―5』級の能力を持つ超大型かつ超長距離を飛行できる高性能輸送機の開発が求められる。これは陸海空全ての自衛隊で必要となると想定されるため、超大規模一括発注で単価を抑えることにする。
○偵察衛星の早期大量配備
日本は元旦に打ち上げたGPS衛星と高性能カメラを内蔵した衛星が現在稼働しているが、地球全体をカバーしようと想定すると全く足りていない。そのため、ある程度情勢が落ち着いたところで新型の偵察衛星を大量生産し、星全体を見張れるようにすること。
これらは旧世界の米国の軍備拡張政策に近い部分もあるが、新大陸の開拓及び防衛を考えた場合、足りない事案はまだいくつも出てくると予想される。
「これから全国的に過酷な環境になるだろう。まだまだ法整備が必要なことが……」
防衛省の幹部は頭を抱えつつも、これから日本に起こるであろう様々な変化を予想して少し楽しみになるのだった。
まさか本当に『いずも』が空母改修する事になるとは……世の中とはわからない物です。
本作中の『超弩級戦艦』及び『FT-4』に関しては実現性も低い、効率が悪いと言う意見があるようですので、ただの空想ネタと思ってご覧下さい。
『T-4』練習機のあのデザインが好きな事もあって個人的にやってみたかったんです。
日本国召喚の発売再び延期に……また待ちましょう。