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日本時空異聞録  作者: 笠三和大
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外伝・とある飛空士のモフモフ

今月2話目となります。

今回からの合計4話は、ちょっとラブコメ風にしてあります。

ただし、私自身がラブコメというものを書いたことがないのでうまく書けているかどうかはわかりませんので、その点はご了承ください。

ついでに、この外伝シリーズはこの世界の謎に少し踏み込む話になっています。

――2023年 9月13日 日本国 北米大陸 ベイモリオカ地区

 これは、日本国が大陸と国交を結ぶ少し前の話。

 アメリカ大陸の北東部、旧世界でいう所のカナダのモントリオールとほぼ同じ地点に、航空自衛隊の新たな基地が建設されていた。

 ここでは、万が一起こり得るであろうヨーロッパからの攻撃に備えて、本来であれば陸上自衛隊に配備されている『88式地対艦誘導弾』や旧式化した『96式多目的誘導弾システム』、『中距離多目的誘導弾』に加えて、『基地防空用地対空誘導弾(11式短距離地対空誘導弾)』や、要撃用の『FT―4』戦闘機が15機、マルチロール要員の『F―4EJ改』ファントムが2機、そして練習用及び要撃用に、民間企業が製造したものを購入した『零式艦上戦闘機二一型』及び『艦上攻撃機 流星』とほぼ同じスペックを発揮する航空機がそれぞれ10機、攻撃可能な機体として配備されていた。

 練習用であるはずの零戦がいざとなれば実戦に使用できるという点は、全ての兵器が不足している現状で『とりあえず使えるものは使ってしまえ』という、防衛省及び自衛隊の、半ばやけっぱちに近い感覚があった。

 実際のところ、零戦レベルでもほとんどの国家相手に大立ち回りをやってのけるくらいの性能差があるのだが。

 ちなみにこの零戦はコクピットに多数の電子機器を装備しており、武装には自衛隊でも使用されている12.7mm機銃を2丁、そして胴体下に新造された60kg爆弾を装備できるようになっている。

 元祖の零戦に比べれば火力はかなり落ちているものの、安定性は大幅に増している一品である。

 また、基地付近の沿岸部には旧式然とした使用・運用方法ながら、迎撃用の『OTOメララ127mm単装速射砲』が砲台として計8門、並べられている。

 これは基地のほうで海上自衛隊員によって管制され、敵を見つけて指令が下り次第、レーダーによる目標振り分けに応じて迫る船舶、航空機を迎撃できるようになっている。

 基地固定配備型自動迎撃システムの中には、VLS型の対空誘導弾発射装置が新開発された物の中に組み込まれている。

 これはいわゆる護衛艦に搭載されているVLSを応用して地面に発射装置を埋め込んだものであり、地下に存在するコンテナからミサイルを補充できるようになっており、1つの基地に180セル存在している。

 使用する弾種は、この当時は発展型シースパローの国産版ができていなかったこともあって11式短距離地対空誘導弾にロケットブースターの延伸改良を加えて射程を30kmまで延ばした新型の『23式短距離地対空誘導弾』であり、その迎撃能力は巡航ミサイルや大陸間弾道弾の終末期迎撃にも使えるほどの正確さという評判であった。

 これはとある日本転移小説において、『中距離多目的誘導弾』の射程を延伸するための苦肉の策として取られた方法が、急造品としては存外効果的であると防衛省で結論付けられたためである。

 もちろんVLSであることからアスロックの発射機能も残っているので対潜ロケットを発射することも可能になっている。

 これを運用するために作られた基地の超大型アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーは、一度に500までの対空・対水上目標を探知し、一度に18の目標と交戦できるようになっているという、最新鋭の装備であった。

 このレーダーは航空自衛隊が保有する高さ34mの『J/FPS―5、7 固定式警戒管制レーダー』、通称ガメラレーダーよりも大きな40mに達するものとなっているが、そこに様々な機能を詰め込んで対水上目標も探知できるようにしているため、性能的にはガメラレーダーを遥かに上回るものとなっている。

 また、後にだが対艦ミサイルもこの形式で発射・管制できる垂直固定発射装置を製造し、基地で全てのミサイルを管制できるようにするという計画も持ち上がっている。

 それもこれも、車両発射型にしてしまった場合、自衛隊側に運用できる能力を持つ人員がとにかく少ないことから、できうる限り省力化を求められて関連企業がこちらも人手も、そして時間もない中で開発した結果である。

 このような基地が大陸東部沿岸に多数建設されつつあり、万が一ヨーロッパ圏から攻撃された場合に常時備えているのである。

 当然、どこかの基地が攻撃を受けた場合、他の基地から多数の航空機が応援に駆け付けることになっている。

 もっとも、その前に日本本土東部に来る可能性が高いので、ここに配備されているのは超が付く退役寸前のベテランと予備役、そして彼らに指導される側の新人たちである。

 このベイモリオカ基地所属の『FT―4』のパイロットを務めている鳴坂慧太二等空曹は、この日は非番であった。

「ふぅ……」

 彼はまだ24歳だが、転移から1年後の18歳の時に周囲の反対を押し切って航空自衛隊に入隊している。

しばらくは本土で訓練を受けていたが、短期間で非常に優秀な成績を収めたことから3年後に建設されたベイモリオカ基地に配属され、新鋭機(本当の最新鋭機が登場するまでの繋ぎだが)のパイロットに任命されていた。

 彼には休日の際、ある楽しみがあった。

 それは基地の近くにある海辺へ出かけて、釣りをすることだった。幸いなことに、近くにできた小さな町に釣り餌を売っている店があるため、そこで餌は手に入る。道具は元々趣味で持っていたものだ。

「……おっ、来た来た」

 引き上げると、旧世界のホウボウによく似た魚が釣れた。彼はこれが好物で、釣れると持って帰っては刺身や煮付けにして食べるのだ。

 本当は同じ地球とはいえ色々な検査など色々複雑な手続きが必要なのだが、そこは目こぼししてもらっている。

 それ以外にも雑魚を含めて何匹も釣れる。

「今日はすごいな。これなら色々楽しめそうだな」

 この付近は日本でいう所の北海道より北に位置するせいか、日本では北で見られるような魚がよく釣れる。

 一度、イルカのような形をした魚竜と呼ばれる生物の小さい奴を釣り上げてしまったことがあったが、釣り上げた直後に浅瀬まで来ていた古代ワニのような生物に喰いつかれて頭しか残らなかったという、ちょっとしたパニックホラーの一幕のような経験をした覚えがある。

 それでも今のところ凶暴な生物に襲われることもなく過ごせているので釣りをやめる気はないが。

 余談だが、その魚竜はすぐに本土の研究所に送られ、調査をされた結果地球基準では中生代に生息していた魚竜類に近い特徴を持つ爬虫類であることが明らかになった。

 彼は基地の中にある寮住まいだが、なにせ敵が来ることはほとんど想定されていないため、訓練こそ厳しいものの、雰囲気自体はのんびりしているのだ。

「大漁、大漁」

 気が付けばもうお昼近くになっているため、寮に戻って調理するために本日の釣果がぎっしり詰まったバケツを持って立ち上がった。

 といっても、自室内にはキッチンがないので寮の食堂を借りるか、食堂の調理員に頼まなければいけないが。



――ガサガサッ



 近くの茂みが蠢いた音を感じ取り、鳴坂は護身用に携帯が許されていた9mm拳銃を引き抜いた。

「……なんだ?」

 この地点は比較的荒涼とした地域なためか、小型で毛の生えた恐竜以外は目立った生物が確認されていない。

 だから、肉食の羽毛恐竜の類かと思って引き金に手をかける。

 だが、飛び出してきたのは予想だにしない存在だった。

「……は?」



――みゃぁ……



 真っ白と黒い斑点の毛に覆われた、どこかユキヒョウを思わせる『それ』は、モフモフという表現が的確だろうと思わせるほどのポワポワした産毛に包まれており、ポテポテ、という擬音を立てそうなほどのヨタヨタした歩きを見せている。

 大きさはイエネコの成体より少し小さいくらいであろう。

「……大型ネコ科動物の子供、か……?」

 ぶっちゃけ言えば、非常に可愛い。獣人たちが見つかった日本だが、動物自体の人気が廃れたわけではなかった。

 むしろ、海外産の動物はいずれ見られなくなる可能性が高いということもあって非常に高い人気を博している。

「……ん?」

 見ると、その大きなネコみたいな生物がこっちに寄ってくる。大きさ的に考えれば、毒でも持っていない限りは危険ではないだろうと思われるので、鳴坂もすっかり警戒を解いていた。

 そして近づくと、鳴坂の脇に置いてあるバケツの傍で鼻をヒクヒクと動かし始めた。

「もしかして……お腹が空いているのか?」

 試しに、釣った中でも小さなアジのような魚を取り出して目の前にぶら下げてみると、再び鼻を動かしたと思ったらゆっくりと噛みついた。



――ハグ、ハグ、ハグ……



「おぉ、やっぱお腹空いてたんだな。食えてよかったな」

 思わず手を伸ばして頭を撫でると、気持ちよさそうにゴロゴロと鳴いた。

「アハハ……本当にモフモフだな」

 魚は釣った時点で素早く血抜きをしていたため、その時の血の匂いに惹かれたのかもしれない。この付近に生息する生物の中でも大型生物の多くは基地建設の際に駆除、或いは別の所へと避難させられていたため、今は人に危害を及ぼさないであろうとされている中型以下の生物しかいない。

「危ないから、間違えて基地に近づくなよ……じゃあな」

 鳴坂が最後に頭を撫でてから立ち上がり、帰路へと就く。

 基地の入り口からは20分ほどしか離れていないため、少し歩けばすぐに到着する。

 基地の入り口では歩哨の隊員が『64式自動小銃』を構えて立っている。

「お疲れ様です。鳴坂二曹」

「お疲れさま」

「本日はいかがでしたか?」

「ははは、大漁だよ。ほら」

 鳴坂がバケツの中身を見せると、隊員もニコリと笑う。

「良かったですね……おや、それは?」

「え?」

 鳴坂が振り返ると、足元に先程のネコもどきが座っていたのだ。

「あ、こら。しょうがないなぁ……」

「なんなんです?」

「や、さっき釣りをしていたらお腹が空いていたのか寄ってきましてね……こら、付いてきちゃだめだって言っただろう?」

 だが、ネコもどきは構わずに『みゃぁ』と鳴く。そして鳴坂の足元にすり寄ってきた。そして上目遣いで鳴坂を見る。

「弱ったなぁ……」

「どうしたのかしら?」

 声を受けて鳴坂が振り返ると、基地の中から身長170cmを超える大柄な、しかしすれ違った人がほぼ必ず振り向くであろうと言えるほどに非常に端正な顔立ちの女性が顔を見せた。

「あ、鴨沼三尉!」

 彼女は鴨沼愛実(つぐみ)。幹部自衛官にして鳴坂同様に腕が認められたことで、齢28歳という若さでベイモリオカ基地の『FT―4』小隊長を務めている、鳴坂直属の上司であった。

 美人で気は強いが、どこか豪快な一面を持っており、必要とあれば多少の無茶も厭わないという評判がある。

「あら、鳴坂二曹じゃない。今日の釣果は……あら?」



――みゃぁ……



「あらあら、随分と可愛い子を釣ってきたわね?」

「ひ、人聞きの悪いことを言わないでください」

 まるでナンパでもしたかのような言われようである。

「どうしたの? お父さんとお母さんは?」

 そう言いながらなんの躊躇いもなくヒョイとネコもどきを抱きかかえた。

 すると、ネコもどきは鴨沼の言葉を理解したのか、少し悲しげな声色で『みゃぁ……』と鳴いた。

「……もしかしてこの子、親とはぐれたか死に別れたのかもしれないわね」

「そうか、でなければこんな子供だけで歩いているわけがない……」

「そうね……ちょっと待ってなさい」

 鴨沼は素早く駆け出すと、司令部のほうへ走っていった。

「三尉、何するつもりなんでしょう?」

 鳴坂は冷や汗を流す。

「嫌な予感しかしないな……」

 30分後、鴨沼が再び走って戻ってきた。

「待たせたわね。鳴坂二曹、一緒に来てちょうだい」

「え?」

「司令が会いたいそうよ」

「し、司令が!?」

「ほら、いいから来る」

「え、え、えぇぇぇぇぇ!?」

 女性とは思えない剛腕で鳴坂はズルズルと引きずられ、ネコもどきはその後について普通に基地に入っていったのだった……。

 5分後、鴨沼と鳴坂は基地の司令官、矢代の前に立っていた。鳴坂は普段ほとんどお目にかかることができない身分の人物の前に立たされていることもあってガチガチに緊張している。

「で、その子が鳴坂二曹の連れてきたというネコもどき、かね?」

「はい。私が相対して思ったのは、非常に高い知能を持っていること、豊かな感受性を持っていることでした。そして、司令にも確認していただいた通り、今のところ発見されていない生物でもあります」

 鴨沼はこう答えるべきということを既にシミュレーションしていたのか、スラスラと答えてみせる。

 矢代は少し考えるような仕草を見せたが、不意に電話に手を伸ばした。

「私です。はい、はい。先ほどお話ししておいた件なのですが……えぇ。お願いできそうですか? そうですか。ありがとうございます」

 何回かのやり取りを終えた後、矢代は電話を置いて鳴坂の顔を見た。

「鳴坂二曹」

「は、はいっ!」

「君は、ネコを飼ったことがあるかね?」

「は、はい。幼い頃に姉と一緒に3匹ほど……」

「そうか」

 矢代は『仕方ない』と言わんばかりの顔をすると、いつの間にか目の前に出されていたらしい書類に判を押した。

「鳴坂二曹。君を一等空曹へ昇格とし、新たな任務を与える」

「はい」

「3日後、環境省の方から研究員が派遣されてくる。君はその人物と協力して、この生物の生態を記録すること」

「はい。謹んで拝命しま……え?」

「分からんか。君を、このネコちゃんのお世話係にする。もちろんパイロットとしての任務もあるので、基地の人員にも手伝わせるが、基本的には君が面倒を見るんだ」

 あれよあれよという間に上司である鴨沼も判子を押していたため、はっきり言って拒否権はなかった。

「本土でも動物保護団体がうるさいからな。彼らに対するパフォーマンスの意味もある。見つけた以上、知らんぷりはできんということだ」

 もっとも、許可が出たのならば鳴坂としても異存はない。トラやライオン並みに大きくなれば危険かもしれないが、その時はその時である。

 何より、鴨沼の言う通り知能が非常に高いのならば、危険性を最小限に抑えることもできる可能性が高いと判断されたからである。

 まだ乳離れしてそれほど経っていないならば、世話することで人間を襲わないように教育することもできるかもしれないという点も大きかったようだ。

「分かりました。鳴坂二曹、いえ鳴坂一曹、改めまして拝命いたします」

「うむ」

 司令室から外へ出て移動すると、当たり前のようにネコもどきは付いてきた。

「ねぇ鳴坂君。この子、名前はどうするの?」

 鴨沼が今までの凛々しい表情から一転して、優しげなお姉さんの顔になって話しかける。

彼女はこの4つ年下の後輩のことをどこか弟のように思っている節があり、プライベートでは親しげに呼び掛けるなど、気にかけてくれるのだ。

「そうでしたね。名前、名前……あっ。ミクなんてどうでしょうかね?」

「ミク……ボーカロイド?」

「いえ。俺の好きな戦闘機がJAS―39っていいまして、そこから取りました」

「JAS―39……あぁ、スウェーデンのグリペンね。中々マニアックじゃない」

JAS―39グリペン。

スウェーデンが国土防衛のために開発した、単発ジェット戦闘機である。

 かつては軍事面で中立政策を取り続けていたスウェーデンが、主要な装備品は自国で開発するという理念の基に製造した戦闘機なのだが、新世代戦闘機に対する費用対効果の疑問などから開発中止を防ぐために小型多用途戦闘機とすることで開発費や価格の高騰を抑えるという手段で開発したという経緯がある。

スウェーデンはこの機体を輸出しており、チェコ、ハンガリー、南アフリカやタイ、ブラジルなどがこれを輸入している。

 日本では一部のゲームやライトノベルの影響もあって軍事マニアやアニメオタクの間ではそれなりに知名度のある戦闘機だが、自衛隊の運用思想にはそぐわない部分が多々存在するため、日本での導入は考えられていない。

「確かに、小型で単発だけどカナード翼のお陰で運動性能は高いし、短距離離陸能力のお陰で国内の各所に存在するシェルターから高速道路を通じて即座に出動できるという即応性の高さは面白いものね。マニアックだけどファンも多いって聞くわ」

 スウェーデンは常に東のロシアの脅威に晒されていたため、先制攻撃を受けた際に即応できる体制を整える必要があったためにこういった設計思想になっていると言われている。

 ちなみにグリペンは小柄だが、何気に最大速度マッハ2を超える速度性能を持っているのだ。小柄で軽量なボディが幸いしているらしい。

「はい。で、その39からとって『ミク』なんですけど……どうでしょうか?」

「そもそもこの子、メスなの?」

 鴨沼がその場で確認すると、メスであることが分かった。

「じゃあいいんじゃない? 可愛い名前だし」

 食堂へ連れていくと、既に多くの隊員が集まっていた。

「おぉ、そいつか!」

「可愛いな!」

 近寄ろうとする隊員たちを、鴨沼は手で制止させた。

「こらこら、ガタイのいいのがいきなりわらわら押し寄せたらびっくりしちゃうでしょう?」

 そう言うと、調理員に近づいて二言三言話しかけると、調理員から何かを受け取った。

「それは?」

「鶏肉を茹でたものよ。まだ子供だから、魚はともかく肉類は生じゃ食べにくいでしょうしね」

 そういって茹でた鳥の胸肉をバラバラにほぐして食べやすくしてからミクの目の前に置くと、ミクがクンクンと臭いをかいでから食べ始めた。

「この子の名前はミク。今日から皆でお世話するわよ? いいわね?」

「「「はい!」」」

 隊員たちは皆、いきなり現れた愛玩動物に興奮しっ放しである。

 とはいえ、先ほど鴨沼に制止されたこともあって皆少し距離を置いているが。

 彼女はパイロットであると同時になぜか格闘徽章の持ち主で、上司以外は彼女を止められないとさえ言われているほどの猛者でもある。

 とはいえその美貌も相まって半ば基地の顔とでも言うべき存在にもなっている。

「詳しいことは3日後に学者さんが来てからだけど、その間は鳴坂一曹の部屋に置くわよ」

「トイレとか水飲み用の道具はどうするんですか?」

「今あるもので代用するしかないわね。塵取りとか、深めのお皿とかで」

 何かが起こるまでは挙動の遅い自衛隊だが、起こってしまえば……正確には、上層部が良しと言えばその即応性は世界の軍事組織の中でも迅速と言われている。

 動く方向性が間違っているような気がしないでもないが。

 そんな彼らは、素早くミクのために色々なものを用意した。

「鳴坂。これ、ちょっと古いクッションなんだけど使えるかな?」

「慧太、毛布持ってきたぞ」

「この時期夜は冷えるからな、カイロでも仕込むか?」

 瞬く間に隊員が持ち込んでいた私物などで、使えそうな物をあれこれと持ってきてくれる。

「っていうか、なんで皆さんそんなに用意がいいの……?」

「「「何かあってもいいように!」」」

「……そっすか」

 だが、その用意の良さに救われているのも事実である。

 鳴坂は自室内にクッションと毛布を敷き詰めた寝床を作り、浅く切った段ボール箱に少し離れた所にある砂浜の砂を入れた簡易トイレを設置した。

 加えて、備蓄用のミネラルウォーターのペットボトルを3本もらっている。

「こんなに色々してもらってなんだか悪いなぁ……」

 そう言いながら鳴坂はミクの頭を撫でる。ミクは鳴坂にすっかり心を許したようで、ゴロゴロ言いながら甘えていた。

「……可愛い」

 なんだか子供でもできたような気分になってしまい、思わず頭を撫でまわしてしまった。

「本土の学者さんかぁ……この子に酷いことしないといいけどな」

 今まで見つけた生物にはそれほど情が湧かなかったくせに、ちょっと甘えられただけでそう思ってしまう自分のチョロさに、若干呆れつつも遊んであげる鳴坂であった。

 しばらくすると眠くなったのか、大あくびをして用意された寝床に寝転がる。

 即興で大きな段ボールの中に用意した寝床だったが、フカフカ具合と程よい狭さに落ち着いたらしく、たちまちスヤスヤと寝息を立て始めた。

 翌朝、目が覚めるとなぜか妙に暖かい感触があった。

「ん……?」

 目を空けて時計を見てみれば、まだ朝の5時半である。起床ラッパよりも早く起きてしまったので、起きるために動こうとした。すると……

「あれ?」

 ミクがいつの間にか鳴坂の布団に潜り込んで丸くなっていたのだ。

「あ、しょうがないなぁ……」

 だが鳴坂も思う。もし仮にだが、このミクがトラやライオン並みに大きくなるとして、今がイエネコの成体クラスの大きさだとすると、間違いなく子供なのだ。

 子供である以上、頼れる存在が近くにいれば甘えたくなるのも仕方のないことであると思わされる。

「……もう少ししたら起こしてやるか」

 彼は身支度を整え、布団に包んだままミクをクッションの所に寝かせた。

「……よし、これでいいだろう」

 支度を終えてミクのほうを見ると、既に目を覚ましていた。



――……みゃぁ



「あぁ、おはよう」

 それから2日、彼及び周囲の人々はミクのお世話に悪戦苦闘することになる。


今回登場しているメインキャラは皆マンガやラノベ、そのアニメの声優さんの名前をモチーフにしています。

元ネタに気づいた方は『しょーもない奴」と笑ってください。

次回、もう1人のヒロインが登場します。

次回は8月10日までには投稿しようと思っていますので、よろしくお願いいたします。

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