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日本時空異聞録  作者: 笠三和大
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新幹線、東京、総理大臣対談へ

どうも、今月2度目の更新です。日本国召喚発売延期は待ち遠しいですが、その直後にコミックスも発売するので楽しみにします。


――2019年 1月8日 午後2時 広島駅

 ガルソンたち98人を連れてきた園村は、新幹線が来るのを待つ。

「もうそろそろだな」

「ソノムラ殿、これから来るその……新幹線という奴は、今まで乗っていた船や、荷車とは違う物なのか?」

「はい。なんと説明すればよろしいでしょうか……決められた場所しか走れない代わりに、船や車よりも速く走れる乗り物なんですよ」

「ほほぅ……」

 ガルソンは園村の見ている方向を同じように見る。どんな形なのかは全く想像がつかないが、これだけの様々な技術や歴史のある国の、発達した乗り物というだけでも楽しみである。

 園村はチラリと電光掲示板を見る。

「何を見ておるのじゃ?」

「あぁ、あのぶら下がっている物に、次の電車がいつ来るのかが表示されているんですよ」

「ほぅ……あの『文字』とやらはさっぱり読めないが、いつ来るかが分かるというのはありがたいのぅ」

 『しかし』とガルソンが問いかける。

「そんなに速度があるのなら、何か事故が起きはせんのか? 荷車ですら、車輪が折れたりすれば危ないが……」

「いえ。運行を始めてもうかなりの期間が経ちますけど、運行上で故障や事故などが原因の死者は出ていないそうですよ」

「そうなのか。であれば、安心なのか?」

 園村は笑顔で頷いた。

「はい。少なくとも、我が国で最も安全な乗り物、と言われていますよ」

 すると、駅のアナウンスが鳴り響いて列車の接近を知らせた。

『まもなく、○○番線にのぞみ○○号が参ります。ホームドアには近づかないようにお願いいたします』

 アナウンスに集落の人たちが驚いた様子で周囲を見回した。

「ど、どこから人の声が!?」

 園村と国元が手を挙げて落ち着かせる。

「大丈夫ですよ。これは別の所から流されている声なんです。心配ありませんよ」

 録音と言っても彼らには理解できないであろうと考えたので、そのように説明する2人であった。

 そして、停車した新幹線を見て、人々は口々に呟く。

「なんという長さだ!!」

「蛇だ。まるで鉄でできた蛇だ!!」

「鉄蛇か。なるほどな」

 2人は停車した新幹線の中に集落の人たちを次々と誘導していった。

 中に入った人々は、その温かさと明るさに驚き、座った椅子の柔らかさに更に驚かされていた。

『間もなく発車いたします』

 アナウンスが車内に響き、駅の中にも発車ベルが鳴り響く。

『閉まるドアにご注意ください』

 バスの時と同じように、勝手に扉が閉まる。

 そしてゆっくりと、新幹線は加速を始める。駅を出てからそれほど時間が経たないうちに、その速度は彼らが今までに乗った船よりも速く、弓矢よりも速く加速していく。

 窓の外がとてつもない勢いで景色が流れていく様子を見て、集落の人々はその速度が自分たちの常識の範疇などとは比べ物にならないことを知る。

 今までの船や車と呼ばれる荷車もかなり速かったが、この新幹線という乗り物はそんな次元ではない。

「ソノムラ殿、この新幹線という乗り物は、どれくらいの速度が出るのだ? 我らの基準で分かるように説明してもらえると助かるのじゃが……」

 だが、園村も困ってしまった。彼らの集落には馬がいなかったので、時速350kmを『馬が全力で走る速度の6倍程度』という説明ができなかったのだ。

 それどころか、計算をするという概念があるかどうかすら不明なので、『何倍』という言葉が通じるかどうかすら怪しいのだ。

「なんと説明すればよろしいでしょうか……ただ、猛烈に速いということは理解していただきたい。この乗り物ならば、遠く離れた場所にも日が落ちてそれほど経たないうちに到着することが可能です」

「そうか、そうか。では、その間はどうすればよいかの?」

「ごゆっくりなさってください」

 園村の言葉に、ガルソンは目を閉じた。

「そうか。ではそうさせてもらうとしよう。年寄りには少々、この流れる風景は速すぎる」

 そう言うとガルソンは目を閉じ、眠りに落ちた。

 ガルソンなど一部の老人は、やはり流れる風景が速いせいか、目を瞑って眠りに入る者が多かった。

 だが、子供を含めた若い者たちはその流れる風景に興奮し、ずっと外を見続けていた。

 集落の戦士ガロンは、国元から飲み物をもらいながら、考えていた。

「(なんという速さだ……先程のソノムラ殿の話が本当だとすれば、この乗り物はこれほどの速度を出しながら、簡単に壊れることが無い。そして、脱落することも無く走り続けることができる……)」

 直後、ゴッ、という音が聞こえた。音のした方向を向くと、そこには同じ速度ですれ違った新幹線があった。

「(あれほどの速度ですれ違えば、その衝撃も計り知れないはず……それを物ともしないのか……彼らの技術とは、いったいどれほど進んでいるのだ……)」

 だが、ガロンももう考えることはやめることにした。考えても、全く想像がつかない埒外の次元にいるのだと、改めて実感してしまったからである。

「俺も、眠るか」

 好奇心はかなりそそられるが、それでもこの半日足らずで、一生分驚いて疲れてしまった気がしたガロンは、ガルソン同様に眠ることにした。



――同日午後6時40分 東京駅

『間もなく、東京、東京、終点です。お降りの際は、お忘れ物御座いませんように、十分ご注意ください』

 園村と国元は眠っていた集落の人たちを1人ずつ丁寧に起こしていく。

 子供たちなど若い人は流れる景色や、京都、名古屋などの大都市を目にしてずっと興奮しっ放しだったが、ある程度年齢を重ねた人たちは疲れて眠っていたからだ。

「皆さん、間もなく東京に到着いたします」

「そろそろ起きてください」

 眠っていた人々が次々に起き上がると、案内された扉の前に立つ。

 そして、停車すると同時に新幹線の扉が開く。

「さぁ、皆さん降りてください」

 園村たちが東京駅の外へ案内する。集落の人たちはその駅舎の豪奢さや、緻密な細工などを見て唖然としながらも、2人の誘導に従って歩いていた。

もちろん、平日なので仕事をしている人たちは歩いてくる、教科書に出てきそうなほどに原始的な格好をした人たちに驚きつつも、いつも通り仕事に励んでいた。

「(これが、良くも悪くも日本人、だな)」

 園村は苦笑しつつ、バスに乗り込んでいく。

「本日はこのままホテルへ向かい、そこで宿泊します」

 人々がバスに乗り込むと、次々にバスが走り出す。目的地は、国会議事堂近くにあるホテルである。

「今日はどのような家に泊めてもらえるのやら。楽しみだわい」

 ガルソンは、今までの経験だけで日本の家屋が自分たちの常識から外れていることは理解していた。

 そして走り出してから15分後、目的地のホテルに到着する。

 その日は外務省の職員達ができるだけ側に付いて、彼らにホテルの利用方法を教えたのだった。

 その日、園村は国元と共に同じホテルのある一室にいた。

「はぁ……さすがに疲れたな」

「そうですね。明日はいよいよ、ガルソンさんと総理の会談です」

 園村は明日、ガルソンに付いていって総理大臣及び外務大臣との会談を見守ることになっている。

「やっと帰ってこられたと思ったら、いきなり総理大臣との会談だからな。緊張がずっと押し寄せてきて胃が痛いよ」

「でも、俺はとてもワクワクしています。ここからどんな風に事態が推移するのか……楽しみで仕方ありません」

 国元の無邪気と言ってもいい意見に、園村は苦笑しつつもどこか救われるような気がするのだった。



――2019年 1月9日 午前6時30分 都内某所 宿泊施設

 朝の6時に起きた園村は、洗顔などの身だしなみを整えてから、改めて今日の予定を確認する。

「えぇと……まず7時に集落の人たちの朝食、朝8時30分にホテルを出発して首相官邸へ向かって、9時30分から首相及び外務大臣との会談。ただし、集落の人々の日本の合流に関する交渉のみならず、今後接触することになるであろう別の集落への紹介の根回しを含めた交渉も行なうため、会談の予定時刻は休憩を挟んで3時間の予定」

 更に手帳をめくる。その手帳には、この日の予定と、現地人達に対応するにあたって注意するべき様々な点が、事細かに書かれていた。

「午後は首相と共にガルソンさんとガロンさんを連れて東京スカイツリーを案内する。スカイツリー周辺の観光を終えた後、午後5時30分に戻ってきて夕食、か。改めて思うけど、今回が転移後初めての文明との接触というだけあって、相当気合が入ったスケジュールになってるよな」

 当然と言えば当然だ。この初接触の成否によって、今後日本が現地人たちに対してどのような対応を取ればいいのかが決まると言っても過言ではないのだ。

「……そろそろ降りるか。集落の人たちを7時頃に起こして朝食。それまでに俺たちは済ませておかないとな」

 園村はきっちりとスーツを着込み、部屋を出る。

 エレベーターで降りてホテルの食堂へ向かうと、既に着席して食事をとっている国元の姿があった。

「あ、先輩。おはようございます」

「おぉ。昨日は眠れたか?」

「いやぁ、久しぶりにフカフカのベッドでしたからね。ぐっすりでしたよ」

 緊張であまり眠れなかった園村とは違い、国元は快調その物である。

「今日は集落の人たちの案内、よろしく頼むぞ」

「はい。任せてください」

 国元は元気いっぱいに答える。この若さが、園村には眩しい。

 園村は席に座ると、モーニングセットを注文する。

「お前は今日、どうするんだっけ?」

「はい。主に観光名所の案内ですね。東京スカイツリーから始まって、東京国立科学博物館、上野動物園へ向かいます」

「おぉ、でも台東区近辺に集中してないか?」

「『日本』のことを学んでもらうには、技術や文化もそうですが、動物なども見てもらおうということじゃないですか?」

「なるほどな」

 2人は朝食を終えると、続くようにして外務省の職員に誘導されてきた集落の人たちに食事の方法を教えていく。

 原始的ながらフォークを使う文化があったようで、フォークやスプーンはすぐに慣れてくれたのが幸いであった。

 朝食を終えてから1時間30分後、園村と国元は別れた。

「では先輩、お気をつけて」

「お前もな」

 園村、ガルソン、ガロンの乗るリムジンは、溜池山王にある首相官邸に向けて走り出し、国元と外務省職員たちの乗るバスは東京スカイツリーへと向かった。



――30分後

 園村は首相官邸執務室の前で、ガルソン、ガロンと共に首相の準備が整うのを待っていた。

 扉が開き、首相補佐官が顔を出す。

「総理の準備が整いました」

 園村が頷き、ガルソンとガロンを案内した。これまで建物の構造にも驚いていたようだが、首相執務室の調度品などにまた驚く2人であった。

 部屋の中で、園村と同じようにスーツに身を包んだ中年の男2人が立っていた。2人はガルソンたちを見ると、緩やかに頭を下げる。

「お初にお目にかかります。海辺の集落、ハガン族の方。私は、この日本国の行政の頂点に立っている者、総理大臣と申します」

「外国……他の集落との交渉を担当している、外務大臣です。そこにいる園村のいる部署の、頂点に立っております」

 執務室の中にいた2人の男性が挨拶すると、それに続いてガルソン達も挨拶した。

「わしは海辺にあるハガン族の集落の長、ガルソンと申す。こちらは我が集落の戦士、ガロンじゃ」

「初めまして」

 ガルソンもガロンも頭を下げる。どうやら彼らの感覚でも、相手に礼を尽くす時に頭を下げるという行動があるらしい。

「外務大臣」

「はい」

 総理大臣の言葉を受けて、外務大臣が置いてあった書類を取り上げて説明を始める。

「では、単刀直入にいくつかの質問をさせていただきます」

 外務大臣の言葉に、ガルソンが頷く。

「まずは、皆さんが我々とは違う身体構造をしていることについてですが、後日、改めて調べさせていただいて構わないでしょうか?」

 これは、彼らも今目にしているように、集落の人たちの熊のような耳や鹿のような角のことである。

「うむ、構わぬ。お主たちとわしらとでは身体構造が異なるということからも色々事情があると見た。じゃが、民を痛めつけるようなことはしないと約束してほしい。頼めるか?」

「もちろんです。出来得る限り人道に配慮した調査をさせていただきます。それと、そちらに座っている園村から聞いたことですが、あなた方は我々日本国の領有下に入りたい。間違いはありませんか?」

「うむ。これほどの驚異的な技術力、それでいて驕らない謙虚な人間性。わしらが今まで接触したことのある他の人間たちとは比べ物にならぬほどの穏やかさの中に、守るために全力を尽くす勇敢さ。とても素晴らしいと思う……」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

 外務大臣が声を荒らげた。確かに、今聞き捨てならない言葉が聞こえた。

「『今まで接触したことのある人間』って……他の集落の人たち、というわけではないのですか?」

「うむ。少し前のことじゃが、大きな木製の、布を張った船に乗ってきた輩がおったのう。船の両側に、金属の筒みたいなもんが突き出ておったわ。奴ら、太陽が昇る方から来たと言っておった。ただ、かなり苦労してわしらの方に来たと言っておったな。少なくとも、お主らよりも長い距離を航行しておったようじゃ」

「(木製の帆船……ガレオン船? 金属の筒……大砲? 戦列艦のことだろうか? だとすれば、それなりの文明がヨーロッパの方にはあるということになりそうだ)」

と、園村は考えた。ガルソンは続ける。

「じゃがな、其奴らは不遜極まりない態度でのぉ。『我々がこの地の領有を宣言する! 我々に従え!!』とか抜かしおったんで……」

「お、追い払ったんですか?」

「いや、奴らは雷の如き轟音を放つ武器を持っておった。威力も飛ばせる距離もわしらの持つ武器などとは桁違いで、真正面からぶつかっては勝てるわけがなかった。そこで……」

 ガルソンは、今まで園村にも見せたことない少し意地の悪い笑みを見せた。

「お主らにも頼んだように、暴れ竜を追い払ってほしいと頼んだのじゃ。とはいっても、暴れ竜が出てくるまで集落の中で好き放題しておったがのぉ。全く、無礼極まりない連中だったわ」

「で……結果は?」

 すると、その意地の悪いニヤリとした表情を更に深めるガルソン。

「ま、言わずもがなじゃ」

「「「……」」」

 首相執務室の中に、奇妙な沈黙が流れた。

「どうやらお主らの使っていたような遠距離で攻撃する武器を持っておったようじゃが、お主らの持っていた物に比べると威力や命中率が劣っていたようでな、暴れ竜やその一族を怒らせるだけじゃった。結果、何人も食われたらしい。ほうほうの体で逃げていきよったわ」

「「「……うわぁ……」」」

 園村、総理大臣、外務大臣の声がシンクロした。某アメリカ映画でしか見たことのないような光景が、本当に起こってしまっていたらしい。

「まぁ、そんな奴らを目にしておったのでな。正直な話、お主らが初めてやってきた時もまた同じ話かと思っておった。じゃが、お主たちの戦士はとても礼儀正しく、明らかに様々な技術や能力が低いであろうワシらに対しても丁寧に接してくれた。それが、とても嬉しかったのじゃ」

 話す中で、最後にはガルソンも穏やかな表情になっていた。

「それに、じゃ。その無法者たちは『いずれまた、軍を整えてから来る』と言っておった。軍というものがなんなのか、そして奴らが再び来るのがいつのことになるやら分からんが、あんな連中にワシらの集落を好き放題されるのは我慢がならん」

「では、その前に我々の傘下に入りたいと?」

「そうじゃ。わしらの集落と交流のある2つの集落も、同じように無法者を入れるのは嫌だと言っておった。わしらを受け入れてくれるなら、すぐにでも他の集落に話を通そう。どうじゃ?」

 確かに、これで集落同士の繋がりから日本のことが大陸の各所に広がり、日本の領有化に入ることを受け入れてくれるというのであれば、この上ない条件である。

 外務大臣が手を挙げてガルソンに質問する。

「ちなみに、交流があるのは2つだけということですが、他に『存在すること』が分かる集落と、その規模はどれくらいですか?」

「確か……わしが知るだけでも15以上の集落が、それなりの距離の内にあると聞いたことがあるのぅ。どの集落も、わしらとそれ程変わらん規模らしい」

 つまり、多くても100人を少し超えるかどうかという程度だろう。仮に大陸各所の集落の数が万を超えていたとしても、百数十万人かそれに毛が生えた程度しか人類がいないという想定である。

 これは、外務省の想定よりも少ない人数であった。

「(恐らく暴れ竜……自衛隊曰く、『恐竜』がいたから、そこまで生存圏を増やすことができなかったのだろうな)」

 園村や現場からの報告を聞いていた外務大臣はそのように推測した。

「幸い、暴れ竜が多数存在して、その脅威があったから皆争うことなく交流できていたが、もしも暴れ竜のことが無かったら……わしらはお互いの貯えを求めて争っておったかもしれんな。そういう意味でも、争わぬうちに同じ共同体の中に所属してしまうというのは悪い話ではないとワシも思っておるのじゃ」

 ガルソンが嘆息する。余程ヨーロッパ人が傍若無人を尽くしたことと、暴れ竜の存在は彼らの中で大きな悩みだったらしい。

 外務大臣が再び切り出す。

「分かりました。ただしその場合、皆さんの若い世代に日本の教育を受けてもらうことなど、いくつか条件がありますが……よろしいでしょうか?」

 日本はただでさえ転移前に在日外国人の多くが自国へと帰国していたこともあって、既に各所で労働者不足の悪影響が出始めている。

 もしこれで大陸の各所に存在する集落の人たちも取り込んで労働人口を確保することができれば、質はともかくそれなりの数を確保できることになる。

 また、今なにも知らない子供たちを教育することで、後に日本に対してより帰属しやすい意識を作る目的もある。

「うむ。それでこの集落が……いや、全ての民が発展できるというのなら、この上ない条件じゃ」

 そして、遂に総理大臣が切り出した。

「ガルソンさん。日本国は、あなた方ハガン族を大歓迎いたします。どうか、今後も末永いお付き合いができるよう、お願いいたします」

 総理大臣が手を差し出す。

「?……これは?」

「我々の世界では、手を握り合うことで、友好を深めるのです」

「ほほぅ……いい文化じゃな」

 ガルソンは微笑むと、総理大臣の手をしっかりと握ったのであった。

 日本は、『新』アメリカ大陸で最初に接触した集落の部族、ハガン族と友好を結ぶことに成功した。

 日本とハガン族の集落の間で交わされた取り決め(国家間で言うところの通商条約締結前の同意事項)は、以下の通りになる。


○ハガン族は今後、日本の保護下におかれ、日本国内(大陸を含む)に住む限り基本的人権など、各種権利の適用可能範囲となる。日本国はハガン族を保護し、彼らを『日本国民』として受け入れると同時にそのために必要な教育を彼らの若い世代に施すこと。

○ハガン族は交流のある集落に対して日本の存在を宣伝し、日本と他の集落の橋渡しになること。ハガン族は日本が人々の安全を保障する、人道的な考え方を持つ国家であることを他の集落に教えること。またこれらの同意事項は、後に友好を結べた集落の人たちにも適用されるようにする。

○ハガン族の一定の年齢以上と判断できる人々については、今後発生するであろう日本の過疎化した農村地で過ごしてもらい、農地の保護及び運用に従事してもらう。これは、一定以上の年齢に達している(この場合は、集落の者たちの中でも大人と扱われている人たちのこと)人たちでは柔軟な思考ができず、日本の様々な勉強に付いていけない可能性が高いことからの提案である。また、ガルソン族長もそれを受け入れていると同時に、他の集落の人たちにもそれについて説明をしてくれるとのこと。

○大陸各地の集落の人たちを受け入れると同時に、日本から開拓のために自衛隊、土木関係者を中心とした官民一体の開拓団を送り込み、まずは沿岸部の開発及び、化石燃料の探索を行う。なお、この際の開拓及び開発は旧世界で起きた悪い方の事例を参考に、自然及び生物の生息圏を破壊しすぎないことに注意する。

○大陸では既に『恐竜』と思しき巨大生物が確認され、更に集落の人たちが我々の常識にある『人類』とは別の進化を遂げていることから、現地における研究体制も確立させ、病気やケガが発生した際の初期対応をスムーズにできるようにする。


以上である。

これにより、日本は最初の部族と友好関係を構築することに成功した。

以後、ハガン族は日本が接触する各地の集落の人たちを率先してまとめ上げ、日本と友好関係を構築するように説得する役目を担うことになる。

次回は東京を観光するハガン族と、日本の軍事事情の変化についてです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一般人が利用する新幹線ルートなら一般人が彼らを見かけた感想も欲しい所ですね。
[気になる点] >時速350km 彼らの身体能力もまだ不明ですが、子ティラに勝てなかったから、ファンタジー獣人みたいに人間の数倍と言うことは無さそう。 隣村迄の距離と日中(1日24時間?)に移動出来る…
[一言] 一時撤退したとはいえヨーロッパ人がアメリカ大陸を勝手に無主の地として領有権を主張してきたら衝突は避けられ無さそう。まあ日本にとって避けては通れない道でしょうか。
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