空母出航と誘導砲弾実験
遅くなって申し訳ありません。
4日からずっと仕事で朝から晩までいなかったもので……
読者様の中には私の物語にツッコミどころが多いという方もいらっしゃるようですが、それも含めての物語と思って、温かく見守って頂けると幸いです。
何せ、この小説が文字通りの処女作となっておりますので……
――西暦2026年 3月3日 日本国 東京都 霞が関 外務省
桃の節句で賑わっているこの日、霞が関の外務省を訪れたアヌビシャス神王国駐日大使のカペルは、担当外交官の加也と面会していた。
「加也さん、おはようございます」
「おはようございます、カペルさん」
両者は挨拶を交わし、本題に入る。
「カペルさん、政府は決断しました」
カペルは『遂に来たか』と目を輝かせた。
「お願いします。シンドヴァン共同体への仲介を、本国に要請してください。もちろん、見返りは用意してあります」
カペルが本国から日本へと派遣されるにあたり、最も重要な役目と言われていたのが『日本国からシンドヴァン共同体への外交仲介の役目を負うこと』であった。
彼は、本国から託された最重要ミッションを請け負うことができると意気込んだ。しかも、日本側は見返りを用意してくれるという。
「そのお言葉、お待ちしておりました」
加也は書類を取り出してカペルに手渡した。
「……では、1週間以内に返答させていただきます。共同体から何か要望があるようでしたら、そちらも含めてお知らせいたしますので、どうかよろしくお願い致します」
「はい、宜しくお願い致します」
短時間ながら日本が新たな道へ進む一歩が決定した。
ちなみに大変余談だが、カペルは任務達成の嬉しさのあまり大使館(旧エジプト大使館)に帰るまでの車の中でずっと鼻歌を歌っていたという。
1週間後、アヌビシャス神王国側を通じてシンドヴァン共同体からの返答文書が政府に届いた。
曰く、
○国を挙げて歓迎させてもらう。
○通商条約、自由貿易の協定についても急いで議論したい。
○平和主義を謳い、それでいて専守防衛を旨とする日本国の武器・兵器をぜひ見てみたい。我が国首都の外れにある広大な敷地と港湾施設を利用して、大規模な軍事演習を行なってほしい。
○叶うならば日本の民生品を幾つかでいいので持ってきてもらえると助かる。どこへどう売り込めばいいのかを検討し、貴国と協力体制を取りたいと思っている。
などであった。
首相官邸では『大規模軍事演習を行なってほしい』という点に疑問を持っていた。
「シンドヴァン共同体は平和主義で非武装国家なのだろう?何故兵器に興味を持つのだろうか?」
首相は防衛大臣と経済産業大臣に問う。
「そうですね……収集した情報を総合すると、シンドヴァン共同体は『非武装』状態を貫くことで平和を保ってきました。それ故に『武装することで守られる平和』な国がどういう兵器を運用するのか、気になっているのだろうと判断します」
防衛大臣に続いて経済産業大臣も手を挙げる。
「もし叶うならば、日本の兵器を始めとする諸技術を見ることでどれほどの商売になるかを判断したいのかもしれません。相手は商売と信用でその多くを決める国だと聞いています」
「ふむ……だとすると、もし仮に派遣するとした場合、どうすればいいと思う?」
防衛大臣は手元のタブレット端末を操作して検討する。
「そうですね……これは陸・海両者に言えることですが、高度すぎることと安全性を確保しづらいという意味で誘導弾の演習はやめましょう。海上自衛隊及び陸上自衛隊に関しては射撃演習と艦船及び車両の機動性を中心に見てもらうことがよろしいかと」
「『あかぎ』はどうする?」
「そうですね……やはり、砲艦外交の意味も含めるならば『あかぎ』は派遣したいです。もし理解できる国の諜報関係者がいるならば、我が国にもこれほどの物が存在するということを窺わせることができますので。また、強襲揚陸艦である『あづち』型輸送艦も『おおすみ』型輸送艦と共に派遣しましょう。VTOL機能を持つ『F―35B』の性能を見てもらうのです」
既に日本では空母『あかぎ』が稼働を開始しており、超音速機操縦の離発着並びにマルチロール戦闘を行う隊員が日夜訓練を行なっている。
この内、超音速機操縦と離発着の技術は在日米軍から教導を受け、マルチロール戦闘は『F―2』戦闘機や『F―35A』を操っていた者たちから教導を受けている。
「また、陸上自衛隊は普通科、機甲科、航空科を中心に派遣し、運用を見てもらいましょう。特に、『10式戦車』や『16式機動戦闘車』のスラローム射撃技術はこの世界からすれば隔絶した性能のはずです」
前世界では『変態戦車』とも呼ばれ、スラローム射撃を可能としていた『10式戦車』は、装甲能力こそ90式戦車とそれほど大差ない(あくまで一部の話)と言われているが、専守防衛の範疇で運用するならば非常に強力な戦車の一角に数えられる存在である。
「また、航空自衛隊に関しては空港がないことを踏まえて今回は派遣するべきではないと判断します。その代わり、輸送艦で運んで対空機関砲VADSの模擬射撃とパトリオットミサイルの展示を行いましょう」
『F―35B』及び『C』は共に海上自衛隊の所属となっているため、航空自衛隊が操ることはできない。
シンドヴァン共同体に空港が存在しないことは事前に衛星からの情報で知っていたため、主力戦闘機である『F―15J改』戦闘機の派遣は不可能と判断されたのだ。
「いずれにしても、これで日本を知ってもらい、『驚異に』思ってもらっても『脅威に』とられることのないように宣伝しなければいけません」
防衛大臣の発言に経済産業大臣も外務大臣も頷いた。
「では、陸上自衛隊もこの編成を中心に……」
「向こうには3か月ほど待ってもらうとして……」
日本政府ではこうして、着々と派遣の準備が進められる。
――西暦2026年 4月6日 日本国 陸上自衛隊某所駐屯地
「え、あれを持っていくんですか?」
「そうだ。上からの指示で、一部のテストを兼ねて持っていくとのことだ」
そこは、陸上自衛隊が運用するヘリコプターの格納庫であった。
ここでは、日本が新開発したヘリコプターの一部が収められている。
「『やんま』が外見だけならほぼアパッチだからって無茶言いますねぇ……あれなら確かにヘリコプター搭載護衛艦で運べますけど、色々手間ですよ?」
「仕方ないだろう。お役人がそれをお望みなんだ」
彼らの前に駐機しているのは、以前にも解説した、『AH―64D』をモデルとして日本で独自開発した初の本格的な戦闘ヘリコプター『やんま』型対戦車ヘリコプターである。
この機体、開発当初は『OH―1』の重武装改造型でもいいのでは?という声も上がっていたのだが、やはりアパッチシリーズの完成度が高かったこともあって、それを日本流に作ってみようという話になったという経緯がある。
武装の内容だけならばアパッチシリーズとほとんど同じ(対地誘導弾の射程が延伸され、赤外線・画像複合誘導方式になった点が異なる)だが、最たる変更点として、上部に設置してある探索用レーダーの日本製品採用が挙げられる。
何せロングボウ・レーダーはアメリカから引き渡されていた精密機器であったことが災いして、調達は不可能な状態にあった。
それを憂慮した防衛装備庁及び研究部が『なら自分たちで作るか(旧世界ならアメリカに怒られる話)』と言い出し、『P―1』にも搭載されているフェイズド・アレイ・レーダーを参考に水上・対空などの探知能力も持つ、ロングボウ・レーダーのパワーアップ版とでもいうべき物を作ったのだ。
流石に『P―1』のレーダーをそのまま搭載することは不可能だったので、小型化及びロングボウ・レーダーの形状に近い物として新規開発する必要があったことも含めて、ようやく最近になって量産機の生産にめどが付き始めたという難物であった。
また、日本の『AH―64D』に搭載されていたスティンガー対空誘導弾の代わりに、『91式携帯地対空誘導弾』の改良版(OH―1にも搭載されている)である対空誘導弾を搭載することで自衛目的ならば対空戦闘も僅かに可能となっている。
この世界では第二次世界大戦レベルかそれより少し進んでいると予測される文明力を持つ国家が存在すると既に判明しているため、対戦車、対地攻撃を有効に行うためには、どうしても攻撃ヘリコプターが必要ということから生まれた、最新鋭の存在である。
付け加えると、アパッチシリーズは軽装状態ならば宙返りもできるが、この『やんま』は対空誘導弾装備までならば宙返り可能といわれている。
余談だが、エンジンなども含めて日本が一から開発を進めた結果、エンジンの低燃費化による航続距離の延伸など、旧世界の米国が至らなかった部分も含めて研究がされたこと、そして複合装甲を用いた防御力も強化されていることから、『日本初の完全国産ができた変態武装ヘリコプター』、『どうしてこうなったヘリコプター』とも一部では呼ばれている。
また、旧世界で米国からライセンス生産していた『UH―1』をモデルにした汎用ヘリコプターも既に配備が始められている。
政府は最新兵器のお披露目もかねてこのヘリコプターを派遣したいようだ。
「ようやく部隊での訓練飛行が始まったばかりだっていうのに……無茶なことを言いますね」
「そう言うな。お偉方にはお偉方のやり方、考え方がある」
「まぁ、そうでしょうね」
ならば、と彼らは念には念を入れて整備をする。
最高のパフォーマンスを見せつけるため、皆普段より更に細やかな所まで手を入れて整備するのだった。
現場においても、派遣の準備は粛々と進められる。
――同日 横須賀 海上自衛隊基地
「一佐、弾薬の搭載、完了しました」
「こちらもヘリコプターのチェック終了です」
こちらでも派遣される予定の第一護衛隊群が準備を進めていた。
今回は呉から『あかぎ』と、艦載機の『F―3C』がやってきて臨時の空母機動部隊となるのだ。
空母の完成と艦載機の開発は急ピッチで進められていたために、とりあえず1隻だけだが空母の運用が可能な状態にまで海上自衛隊はこぎつけていた。
他にも、『ふぶき』型の建造予定が一区切りしそうなので、3000t級次期護衛艦(掃海艇も兼ねているタイプ)が改めて大量発注されることになった。
これらに関しては注目度もそれほど高くないだろうと政府が高を括り、『せんだい』級護衛艦として発注されたとすぐに報じた。
ところが、その後発表された当面の3隻の名前が『じんつう』、『なか』であったことから、一部の提督業を営んでいた者たちの心に火をつけたらしく、それらの強い要望があったからなのか、『蘇りし華の二水戦』というタイトルで一部漫画雑誌に読み切りが掲載されるという事態が発生したほどであった。
余談だが、『じんつう』など一部の護衛艦は新規建造艦が増えたことによって老朽化とともに引退していた『あぶくま』型護衛艦(名前を除籍しただけで動態保存状態だが)の名前をとっている。
他にも『おおよど』や『くま』、『たま』、更に『きたかみ』、『おおい』(それぞれ3代目)など、川の名前であり旧日本海軍の艦艇でも比較的小柄とされていた特殊な船の名前をメインにするつもりらしいと判明すると、更に話題になった。
将来護衛艦に関しては既にCG想像図も一般に広く流布していたことから、擬人化イラストなども多数インターネットにアップされるなど、ちょっとしたブームになったのである。
だが、そんな事情は現場の隊員には関係のないことである。彼らは与えられた任務をこなすため、黙々と仕事に励むのみであった。
今回臨時で航空護衛艦『あかぎ』を横須賀の第一護衛隊群に編入することが決定され、『いずも』の代わりに艦隊司令も搭乗することになっていた。
今回の派遣艦隊司令を命じられた磯垣海将補は、準備に勤しむ部下たちを眺めながらコーヒーを口に含む。
「司令、市ヶ谷からです」
「どうした?」
「はい。今回の派遣に際し、万が一海賊の類に出くわした際の警察権行使のことを考えて、海上保安官を2名搭乗させてほしいとのことです」
もともと旧世界でも、海賊対策で派遣される際には海上保安官を搭乗させていた。確かに、未熟な制度ばかりの世界であることを考えると、派遣途中で海賊に出くわした場合、警察権を行使する存在が乗っているというのは、『日本政府の内部事情』という意味で都合がいい。
「なるほど、万が一偶発的戦闘になったとしても、海上保安官がいれば現場判断で逮捕が可能ということか」
「事前情報によれば、シンドヴァン共同体には軍事力は存在しない、とされていますが、警察権を行使する警ら隊は存在するらしいので、その者たちに引き渡せばいいとのことです」
非武装とは言っても、流石に国内で犯罪が発生した際に取り締まるための存在は必要である。そのため、グランドラゴ王国からリボルバー式拳銃や警棒などを輸入して運用させていた。
あくまで武力ではなく警察目的なので、他国からも問題視されていないという。
「そういうことだったら、海保の方にご同行頂いても問題ないだろう」
磯垣はすぐに連絡し、海上保安官の同行を『依頼』することにした。
また、今回の派遣演習についてだが、新入隊員及び新人幹部の研修も兼ねているため、『あすか』に続いて新たに建造された試験艦の『ゆうばり』(こちらも3代目)が護衛隊群に同行することとなる。
到着までの一部でできる試験を1つこなしておきたいというものであった。
色々と詰め込んでいるあたり、今の自衛隊にはスケジュールという意味で余裕がないということが窺える。
今回は『ゆうばり』建造に際して製造された日本製鋼所製作の127mm単装速射砲の試射及び新規対潜器具の試験が行われる。
「全く……お上も色々と無茶を言ってくれるものだ」
「仕方ないですよ。転移して既に7年以上。しかし、開拓や組織拡大に伴って何もかもが足りていないんですから」
磯垣も『まぁな』と苦笑いするしかなかった。
7年という歳月は、これまででは考えられない様々な物を日本にもたらした。
だが、それに伴う課題はまだまだ山積みである。
「陸さんのほうも新型ヘリコプターの試験があるっていうし……いつになくバタバタした遠洋航海になりそうだ」
自衛隊の準備は進む。
――西暦2026年 6月7日 ジブラルタル海峡 日本国シンドヴァン共同体派遣部隊
陸・海・空のシンドヴァン共同体派遣部隊は、スペルニーノ王国とアヌビシャス神王国の間にあるジブラルタル海峡へと差し掛かっていた。
余談だが、どうやら一部の名称には旧世界と同じ名前が使われているらしく、日本がこの海峡について質問した時、返ってきた名称は『ジブラルタル海峡』だったのだ。
試験艦『ゆうばり』艦長の茨木友梨は、穏やかな海面を見つめながら航海が順調に進んでいることを確認する。
副長の杉宮が予定確認表を見る。
「海峡を通過して、イタリシア王国支配下のサルシニア島沖50km地点で、『ゆうばり』の各種試験を行います」
茨木は女性としてはまだわずかしか存在しない海上自衛隊所属艦艇の艦長である。
しかも、まだ38歳と若齢であった。幹部自衛官として入隊し、順調にキャリアを重ねていたのは確かであった。だが、異世界転移により人員が不足する中で、女性ももっと登用するべきという声が高まった中で新たに建造された試験艦『ゆうばり』の艦長に抜擢された。
副長の杉宮も女性であり、男性社会の中で新たな風を起こす存在として注目されていた。
「ありがとう。今回の試験では50km先と100km先にある目標にGPS誘導砲弾を命中させること。そして新世界対応型の対潜哨戒器具の試験だけど……乗組員たちの様子はどうかしら」
「はい。色々と初めて尽くしなこともあって皆緊張しているようです。ですが、映画でも言っているじゃないですか。『訓練通りやればいい』って」
「その後自衛隊は怪獣王に敗北するのよ?」
茨木は苦笑する。
日本であまりにも有名な怪獣映画の多摩川における防衛作戦のシーンでは、陸上自衛隊と航空自衛隊のリアリティある自衛隊のやりとりが話題となった。
その作戦の直前に、若い隊員が不安を口にしたところでベテランがこのセリフを口にしたのである。
恐らく杉宮はそれが『失敗フラグ』にならないように、という意味で口にしたのだろうが、それでも不安は残る。
「ですが、何ごとにも初めてはあるものです。旧世界ではアメリカがその点については独走していましたけど、ここからは我々がアメリカのように実験と実践を繰り返さないといけません」
新たな技術の確立とは、膨大な実験とそれに伴う失敗、やり直しの上に成り立っている。日本とて例外ではなく、これまでに様々な実験と失敗を繰り返してきたのだ。
「そうね。私たち幹部が必要以上に動揺すれば、それは下にも伝わる。せめて皆の前では平静を心がけましょう」
2日後、旧世界で言う所のサルシニア島沖に到達した護衛艦隊は早速『ゆうばり』の試験を開始する。まずは対潜哨戒器具。これは全く問題なく作動した。ソナーなどの不具合も見られない。これは今まで積み重ねてきた日本の技術を応用したことから、信頼性も高かったからだ。
だが、GPSロケット誘導砲弾は初めての試みである。
航空自衛隊の『F―2』戦闘機や『F―3』戦闘機にはGPSによる座標固定慣性誘導を行う『JDAM』があったが、艦砲をGPSでコントロールし、ロケット噴射で飛行させることは全くの未経験である。
常にデータリンクを行なっている人工衛星からは問題なく信号が届き続けている。
通信状況が良好であるならば、後はロケット砲弾がしっかり作動してくれるかどうかである。
もしこれが成功すれば今度はこれを巨大化し、『やまと』型護衛艦の46cm砲弾に応用する。
余談だが、転移直後の国内では陸上自衛隊で採用されている火力戦闘車の155mm以上の大口径砲を製造する施設は存在しなかった。
国内では新たにその様な施設を用意する余裕もない。
しかし、転移してから間もなく手に入れたアメリカ大陸東岸部(現ベイナリタ地区)に日本製鋼所が大口径砲製造用の設備を整えたことから、大口径砲も製造できるようになっていた。
これにより、まずは突貫的に試験で作られた『ダイヤモンド』級戦艦(日本では建造当初、最初の弩級戦艦にあやかって『かわち』と呼ばれた)のための41cm砲を製作し、それである程度の技術が確立したことで今度は46cm砲身の研究および製造を始めたのである。
また、この46cm砲身は砲撃時の消耗も激しいと考えられていることから、既に予備砲身も30本以上の製造が決定している。
いずれにしても、46cm砲弾という絶大な威力を誇る兵器の将来のためにも、この実験は成功させなければならない。
茨木は穏やかな海にもかかわらず緊張の表情を崩さなかった。
「間もなく、主砲発射試験を開始します」
「分かったわ」
茨木はマイクを取り、全艦に達する。
『これより、本艦は日本初となるGPS誘導砲弾の発射試験を行う。50km、そして100kmと距離を延ばして射撃します。なお、着弾観測は本艦及び〈あかぎ〉より発艦した〈SH―60K〉で行います。皆さん、よろしくお願い致します』
すると、旗艦の『あかぎ』から通信が入る。
『こちら艦隊司令の磯垣だ。茨木艦長、成功を祈る』
『ありがとうございます』
通信を終え、茨木が砲雷長に指示を飛ばす。
「主砲発射用意。弾種、破片調整榴弾」
「了解。主砲発射、用意」
『ゆうばり』の艦首部分に搭載された127mm単装速射砲が旋回し、目標の方角を向く。
この127mm砲はこれまで日本が採用していたOTOメララ社及びMk45をモデルにしているため、その2つを足して2で割ったような形状となっている。また、『はやぶさ』型ミサイル艇の76mm砲同様に砲塔部分はステルス性に配慮されている。
そのため角ばった、しかしどこかのっぺりとしたデザインとなっている。
「測的よし、GPS位置情報リンク完了」
「主砲、撃ちぃ方始め!」
「撃ちぃ方始め!」
――ダンッ!
破裂音と共に砲弾は目標に向かって飛翔を始める。発射時の爆発で速度を得た砲弾は、速度が乗ったままの状態でロケット噴射を開始、GPSで補足している目標へと誘導されていく。
「6,5,4,3,弾着、今‼」
何も聞こえない。当然だ。50km先と言えば、水平線より遥か彼方だ。
「ヘリコプターの観測は?」
『こちら〈SH―60K〉1号機。観測結果を報告する。標的への初弾命中を確認した。繰り返す、初弾命中を確認した』
艦内に『おぉ』というどよめきが上がった。
「騒がないで。まだ1発目よ。次弾発射用意」
「りょ、了解。次弾発射用意……準備完了」
「撃てぇっ!」
――ダンッ!
先程と同様にロケット噴射をしながら飛翔する砲弾。今度は100km先の目標である。
「8,7,6,5,4,3,弾着、今‼」
「2号機、弾着観測報告」
今度は100km先の標的を観測していた『SH―60K』の2号機から通信が入る。
『こちら2号機、目標命中を確認。繰り返す、目標命中を確認した』
今度は先程よりも更に大きなどよめきが上がる。
茨木も表情をようやく緩めた。
日本の技術はここに、更なる進歩を見せるのだった。
途中に登場する『せんだい』級護衛艦に関しては、完全に私のロマンと妄想です。
私、『華の二水戦』の曲が大好きなもので……スマホ持ってないのでゲームはやったことないのですが、アニメは見ていたのでキャラソンがあると聞いて聞いたら好きになりました。
ちなみに『加賀岬』も大好きです。