水と空の翼・US-2飛翔
遅くなりました!仕事終わりに新幹線で金沢まで来て、やっと投稿できる態勢が整いました……
今回はダークエルフと日本人の接触回になりますので、派手な場面はありません。
しかし、マニアな方にはニヤリの飛行艇が登場です。
――日本国 海上保安庁特殊警備救難艇『さざんくろす』
海上保安庁の中でも小笠原諸島を警備する任務を負っている特殊警備救難艇『さざんくろす』は、レーダーに映る不審な船舶を発見し、基地からパトロールに出ていたヘリコプターから『未登録船舶を確認に行く』と報告を受けていつでも出動できるようにと待機していた。
そして受けた報告が『木造の船舶を発見、漂流している模様』とのことであった。
『ヘリコプターによる救助は可能か?』という質問に対しては『収容人数が30人を超えていること、同時に風雨に晒されていたようで船舶がボロボロになっているため不可能』との報告を受けたため、『さざんくろす』は漂流者救助のため地元民の協力を得て船舶2隻を借り上げ、同海域へと向かった。
そこには確かにヘリコプターの報告通りの木造船が漂流していた。まるで歴史の教科書にでも登場しそうなほど作りが古いと言えばその骨董品度合いが窺える。
『さざんくろす』の船長を務める北山はコンタクトを取るべく拡声器のマイクを手に取る。
『こちらは日本国海上保安庁特殊警備救難艇『さざんくろす』です! 漂流船の方、手を挙げて返答してください! こちらは日本国海上保安庁特殊警備救難艇『さざんくろす』です! 漂流船の方、手を挙げて返答してください!』
すると、船の縁からわずかながら伸びる手が見えた。どうやら、相手側はこれまで国交を結んできた他国同様に言葉の通じる存在らしい。
「これより本船は漂流者の救助に向かう。彼らを脅かさないように対応は慎重に行うこと」
「了解」
木造船に横付けした『さざんくろす』から、乗員がゆっくりと乗り込む。かなり風雨に晒されて傷んでいるようにも見えるので、床が抜けることも考慮したのだ。
そして、船の床に力なく横たわっている人々を発見した。
「要救助者発見!」
バイタルを確認すると、多くの人が脈は若干弱っている程度であった。だがそれ以上に明らかなのは、顔色の悪さであった。
「壊血病か……それとも脱水症状か……? 急がないと命に関わる者もいるぞ!」
北山は報告を受けると素早く数名の乗員を乗り移らせ、連れてきた民間船1隻に移送した。
幸い観光用の船だったこともあり、50人以上を乗せられる規模があったことから船内の人物を余すことなく収容できた。
「よし、1隻はこの木造船を曳航してくれ。彼らにとって何か大事な物が積載されているかもしれないからな。後で確認してもらわないといかん」
「了解」
人々の収容を終えた民間船を先導するように『さざんくろす』が先頭を走る。木造船を曳航する船は最後尾で後から付いてくる。
収容作業に当たった班長の川上は、彼らの顔立ちや体つきを観察していた。
「……肌が黒いが、ヨーロッパ人みたいな風貌だな」
それを見た若い富塚が顔をのぞかせる。
「この耳……エルフ耳ってことは、ダークエルフ族じゃないんですか?」
「ダークエルフ?」
「はい。ファンタジー作品ではエルフの対極に立つ存在としてよく登場してきます。作品によって描かれ方は様々ですが、基本的に肌の白いエルフ族に比べて頭が回り、策略に長けている、そして男女問わず美形ながら、スレンダーなエルフ族に比べて肉付きがいいというイメージがありますね」
「そ、そうか。オタク知識ともはや馬鹿にできない時代になってしまったんだなぁ……」
川上は若干呆れつつも説明をしっかり耳に収めておいた。そして思い出していた。以前政府が発表していた、名称が判明している国の中に、アフリカ大陸を治めるダークエルフ族がいるという話があったのだ。
「もう本土には連絡が届いているだろうが……中央は今頃蜂の巣をつついたような騒ぎになっているだろうな」
「既に海上自衛隊の基地に連絡して、飛行艇を離陸できるようにしてもらうそうです」
それを聞いて川上は青い機体を思い浮かべた。
「US―2、か」
「あれが使われると思いますよ。重病人もいますし」
「だろうな」
その、現代ではなかなかお目にかかれないであろう雄姿を思い浮かべた川上は納得した。
「あれなら乗員以外にもそれなりの人数を乗せられますね」
「急を要する容態の人物、重要人物以外は船でゆっくりと本土に向かってもらうとして、重病人はどのくらいだ?」
富塚は急いでまとめられた報告書に目を通す。
「医務官の見立てでは、処置に急を要し、島で手当て不可能なのは5人ですね。『US―2』は12人分の担架を乗せられるとのことですから、それを考えればもう少し余裕があります」
「ちなみに、我々に手を振っていた若い男性だが……お前は彼をどう見る?」
「彼の衣服は潮に晒されて少し崩れてはいましたが、他の者たちより豪奢な作りになっていました。恐らく、高貴な身分にある方なのでしょう」
「彼らの意識がはっきりしたら、すぐに連れていく者を選別しないとな」
「はい」
港に戻った乗組員は急いで診療所にダークエルフたちを運び込んだ。
診療所の老医師が目を丸くしている中で、海上保安庁の若い女性医務官が改めて確認を取る。
「何年も医務官をやっていますが、まさかこんな人たちを診ることになるとは思いませんでしたね」
「具合はどうです?」
「さっき見た通りですね。5人は急いで治療を要するレベル、残りの方は船でゆっくり向かってもそれほど問題ないでしょう」
すると、富塚も目を付けていた豪奢な服の男性が目を開けた。
「あ、目が覚めましたか」
「ここは……どこだ?」
富塚は男性に手を貸すと、起き上がった男性が『ありがとう』と言ってきた。
「ここは日本国の小笠原諸島の1つ、父島ですよ。あなたのお名前は?」
「私は……アヌビシャス神王国第二王子、ケルウス・アヌビシャスという」
「アヌビシャス神王国、ですか。フランシェスカ共和国からの情報にあった国の1つですね」
「我が国のことをご存知でしたか?」
「はい。本土の第三管区からそのような国があるとは伺っていました」
横浜の海上保安庁第三管区では既に国交を結んだ2国から周辺諸国の情報を仕入れていた。
小笠原諸島と文明圏の位置が(前世界と比較して)かなり変わっていたために、その文明圏付近を根城にする海賊の横行が影響を及ぼすのではないかと考えたが故の話であった。
その情報網の中に、アヌビシャス神王国の名前があったのだ。
「本土、ということは、この島は属領のようなものなのか?」
ケルウスの顔に警戒の色が浮かんだ。相手が覇権国家かもしれないと危惧したのだろう。
「いえいえ、この小笠原諸島は我が国固有の領土ですよ。占領地などではありません」
富塚もそのようにとられたとすぐに感じたのか慌てて否定する。
「そうか」
ケルウスはあからさまにホッとした顔をしていた。王族だけあって、自分の理解の及ばない物を扱う日本人を警戒するのは当然のことだと富塚は考えていた。
「これから我々をどうするつもりだ?」
これには川上の上司である千代田が答えた。
「殿下を含めて、10人ばかりを急いで搬送する必要がございますので、海上自衛隊の基地から飛行艇という空を飛ぶ機械を飛ばして、我が国の本土へ向かいます」
「かいじょうじえいたい? ひこーてー?」
「我が国の海を守る海軍のような存在です。飛行艇は……見ていただいたほうが早いでしょう。自衛隊側の準備は?」
千代田の後ろに立っていた別の男性が答えた。
「はい。現在飛行艇を緊急出動できるように準備しているとのことですので、それほどかからずに離陸できると思われます」
ケルウスは彼らがなんの話をしているのか、さっぱり理解できていない。だが、自分をどこかへ連れていこうということらしい。
それから2時間ほど、点滴を受け続けたダークエルフたちの顔色は少し良くなっているように見えた。
「とりあえず危機的状況は脱した、ってところですね」
「そ、そうなのか?」
医術に疎いケルウスには、顔色が少し良くなったようには見えたが、本当に助かるのかがわからない。隣に座る若い女性の顔をすがるように見ていた。
「えぇ。今日中に本土へ移送できれば、後遺症もなくきちんと助けられますよ」
「そ、そうか。よかった……そういえば、貴殿は医者なのか?」
聞かれた女性はニコリと笑いながら答える。
「そうですね。海上保安庁で医務官……医療従事者を務めている、黒川美月と言います」
眼鏡をかけた、ふっくらとした面立ちの可愛らしい女性である。だが、先程までは患者たちを目の前にしてとても真剣な表情を浮かべていたのだ。
ケルウスはそのギャップに違和感をぬぐえない。
「ミヅキ殿、か。この者たちは不明な私のためにと身命を賭してくれた。助けてくれたこと、深く礼を言う。この通りだ」
いきなりケルウスが頭を下げてきたのを見て美月のほうが慌ててしまう。
「い、いえ、そんな。これが私の仕事ですから」
穏やかな美月の笑顔は、ケルウスの心の奥をドキリとさせていた。
すると、扉が開いて海上保安庁の職員が飛び込んできた。
「自衛隊側の準備が整ったそうだ。彼らを基地へ移送するぞ」
「はい。分かりました」
「それと黒川」
「はい」
職員は少し言い辛そうにしながらも口を開いた。
「お前は彼らを最初に診た医療関係者だ。本土まで付いていって、彼らのバイタルを移送完了までチェックしてほしい」
「私が、ですか?」
「あぁ。頼めるか?」
美月は一瞬逡巡するような表情を見せたが、『……分かりました』と意を決したように頷いた。
「私が最後まで、責任をもって彼らを看護します」
「よし、頼んだぞ」
「はい」
こうして、王族であるケルウス、そして彼の護衛であり軽度の症状である近衛騎士の4人、そして緊急処置が必要な5名は、車で海上自衛隊の父島基地へ向かうことになった。
そんな彼らは、外へ出て車に乗ろうとしたところで今まで気にしなかった足元、つまり地面を見る。
「この地面……まさか、貴殿らもアスファルトを実用化しているのか?」
今度は海上保安庁の職員が驚愕の表情を見せる。まさか、中世ヨーロッパ前後の文明だと考えられていた国からアスファルトなどという単語が飛び出してくるとは思わなかったからだ。
「アスファルトを知っているのですか?」
「あ、あぁ。我が国では2千年以上前に元々ミイラの防腐剤に使われていたものを道路の整備に使えないかと研究していたんだ。今、王都だけではあるが主要街道を整備し終わったばかりだ……」
彼はまじまじと地面のアスファルトを見つめた。
「さぁ、こちらへ」
北山から声をかけられたケルウスは名残惜しそうにしながらも視線を車に戻した。
ダークエルフ一行は馬もなしに動く荷車のような物に目を白黒させていたが、しばらくして巨大な港が見えてきたことに気付いた。
「な、なんだあの巨大な港は!? こんな狭そうな島なのに、我が国よりも優れた設備が各所に見えるぞ!」
そこには、真っ青な体に大きな翼を持つ鳥の様な物が鎮座していた。翼には、風車のような羽が付いている。
「これは……?」
「これが我が国の飛行艇、『US―2』ですよ。これで空を飛び、我が国の本土へと向かってもらいます」
巨大な物体が空を飛ぶ。そんなことが起こりうるのかと、思わず口をあんぐりと開けて見つめていたが、中から海上保安庁職員よりもさらに引き締まった服装の人物が姿を見せた。
「どうも、海上自衛隊父島基地司令の三枝と申します。こちらは、『US―2』パイロットの渡辺一等海尉です」
引き締まった風貌の女性が敬礼した。まるで宝塚にでも出てきそうな凛々しい人物だが、こう見えて剣道3段、更に女性初の飛行艇パイロットとして少し前に有名になった人物なのだ。
「彼女の飛行艇に関する操縦技術は海上自衛隊でも非常に高いものであります。安心してフライトに臨んでください」
三枝司令の言葉が響いたわけでもないだろうが、ケルウスとしても早く部下達を医療設備の整った所へ運んでほしかったため、素早く頷いたのだった。
「それでは、傷病者をすぐに飛行艇内部へ」
三枝の指示を受けた海上自衛隊員が素早く担架を『US―2』の中へ運び込んでいく。
ケルウスたち一部の者も自衛隊員の指示を受けて飛行艇に乗り込んだ。
「なんとも広いな……確かにこれならば10人以上を一気に運べる」
ケルウスの隣では美月が彼の点滴棒をしっかりと握っていた。
「そういえばミヅキ殿、このテンテキとやらはまだ外してはいけないのか?」
「えぇ。これは必要な栄養素を直接血管の中へ送り込むための道具なので、私が外すまでは手を付けないでください」
美月の穏やかな、しかししっかりとした態度に、ケルウスはそれが必要なことなのだと改めて理解した。故に、これからは彼女の言うことに従うことで自分たちが助かるのだろうとも判断する。
すると、機内放送が流れ始めた。
『間もなく離陸します。皆さん、シートベルトをしっかりと確認してください』
ケルウスはシートベルトがなんのことかよくわからなかったが、美月が自分の体を押さえつけるようなモノを指さしてくれたのでそのことだと理解した。
――ブルン、ブルン、ブルルルルルルルルルルルルル……!
唸るようなエンジン音と共に両翼に装備されているプロペラが回転する。
「と、飛ぶのか?」
「はい。これから離陸しますよ」
『US―2』はゆっくりと滑走路を走るが、その先は海になっていた。
「こ、このままでは海に落ちてしまうぞ!?」
「大丈夫ですよ」
美月がなぜ穏やかな顔をしていられるのか、ケルウスにはさっぱり理解できない。このままではこの飛行艇なる物体は水に突っ込み、そのまま海の藻屑と化してしまうだろうと思ったのだ。
――ザブンッ!
「うわっ!」
ケルウスはとっさに目をつぶった。だが、不吉な水音などは聞こえてこない。
「?」
――ブルルルルルルルルルルン!
彼は恐る恐る目を開けてみると、飛行艇と呼ばれたこの物体は、まるで船のように水の上を疾走しているのだ。
「な、なんて速さだっ!? 我が国の軍船を遥かに凌いでいるじゃないか‼」
すると、しばらくしてから『ふわり』という浮遊感を覚えた。
「え?」
そして、水面がだんだんと離れていくことに気付く。そして彼は実感した。今、自分は空を飛んでいるのだと。
「す、すごいっ‼ こんな……こんな技術があるなんて‼」
――ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‼
『US―2』のAE2100Jターボプロップエンジン4基は、唸り声のような音をあげながら巡航速度で空を飛ぶ。
その速さは、ケルウスが今まで見たことのあるどんな物よりも速かった。
「なんて速度だ……こんな速度、機械技術に優れたグランドラゴ王国ですら出せないぞ」
彼は王族という立場上、親善のためにグランドラゴ王国やフランシェスカ共和国に赴いたこともあった。
だが、自分たちと同じくらいの技術水準のはずのフランシェスカ共和国より上ならばともかく、世界第2位の列強と言われているグランドラゴ王国ですら持ち得ていないような技術を目の当たりにしたのだ。
「(もしかすると、彼らの技術は最強の列強国、イエティスク帝国すら凌いでいるのではないのだろうか……?)」
イエティスク帝国に『飛行機』と呼ばれる空を飛ぶ機械が存在するという話は、噂程度ではあるが知っていた。
だが、水の上を疾走したのちに飛行する存在など聞いたことがない。水鳥ならばともかく、これはそんな物の比ではない大きさと速度なのだ。
「本土、か。離島らしき島ですら我が国とは比べ物にならない技術があちこちに見えたんだ。本土はその比ではないはず。今のうちに……心の準備を……」
だが、ケルウスの精神はここで限界だった。これまでの疲労と、驚愕に次ぐ驚愕は彼の意識を強制的にブラックアウトさせたのだった。
彼が眠ってしまったことを、隣に座っていた美月はすぐに気が付いた。彼の右手の甲に挿入してある点滴に異常がないように手をしっかり安定する位置に据えてあげると、彼女は柔和な笑みを見せた。
――数時間後
「……ください。ケルウスさん、起きてください」
ケルウスは、自分をゆさゆさと揺する感覚と優しい声で目を覚ました。
「ん……いかん、眠ってしまっていたか」
ケルウスが目を覚ますと、美月の出発前と変わらない穏やかな顔が目に入った。
「もうすぐ羽田空港へ到着しますよ」
「ハネダクウコウ?」
「はい。分かりやすく説明すると、羽田という土地に存在する、空を飛ぶ機械が多数訪れる港のような施設です」
概念のない者にもわかりやすいようにと非常に噛み砕いた説明だったこともあり、ケルウスはどのような用途の施設なのかをすぐに理解できた。
「なるほど。こういった空を飛ぶ機械が多数存在する港のような所か。つまり、このユーエスツーなる飛行機械が多数存在するのだな」
彼の脳裏には、出発前に見た父島の港を更に拡大したような、多数の飛行艇が水面にある桟橋で人を乗り降りさせている様子が浮かび上がった。
「そうですね。あ、でも……」
美月の言葉は途中で途切れてしまった。『間もなく、当機は着陸態勢に入ります』という放送を耳にしたからだ。
「日本国の本土、か。どれほどのもの、なの、やら……?」
ケルウスの眼下に広がっていたのは、彼の想像を遥かに超える、様々な建築物が立ち並ぶ街並みであった。
そして、自分たちが乗っている飛行艇の視線の先に、この機体には不必要と言っていいほどに巨大な滑走路が見えた。
――ドンッ!
衝撃と共に着陸した『US―2』は、管制塔からの誘導を受けて停止位置へと向かう。
「な……な……?」
その間、ケルウスの視線は彼方に見える真っ白な物体に釘付けとなっていた。
「あ、あれも空を飛ぶと、言うのか……?」
「えぇ。あれが我が国の旅客輸送の主力航空機です」
正確にはボーイング系の航空機を含めた旅客機の多くは海外の物であったが、転移して既に6年。旧世界から引き継いだ旅客機の整備のみならず、自国における旅客機の大量生産を始めていた。
元は軍事用である『P―1』哨戒機を参考に大型化し、強力なターボファンエンジンの製造と、大規模輸送に耐えうる頑丈な機体を持つ航空機『ノア』を製造することに成功したため、日本はそれを一気に量産させていた。
『ノア』という機体名は、新大陸へ乗り出す、新境地へ乗り出すという意味で『ノアの箱舟』にあやかったのである。
今やアメリカ大陸各地の開拓都市にある空港をせわしなく行き来している、旧世界のボーイング社最新鋭旅客機に匹敵する、燃費効率などの一部に関しては上回ると言っていい性能を持つ機体である。
「こんな……こんな巨大な鉄の塊が空を飛ぶなど、信じられん……」
「そうですよね。私も小さい頃に海外旅行へ行くために飛行機に乗りましたけど、怖くて仕方なかったです。なんでこんな大きくて重い物が空を飛ぶんだろうって、ずっと疑問でした」
ケルウスの疑問を吹き払うように美月が明るく話しかけたので、ようやくケルウスの意識は彼女のほうへと戻った。
それからしばらくして彼らは『US―2』から降りると、待機していた車に乗せられた。
「他の者たちは?」
「他の方たちは命に係わる傷病具合ですので、病院で緊急処置を行います。皆さんも病院に行きますけど、恐らく入院はせずに済むと思います。壊血病の治療と投薬さえすればすぐに良くなると思うので、それから外務省の方に会っていただくことになると聞いています」
「……ミヅキ殿、貴殿は、その……一緒に来てくれるのか?」
「はい。ケルウスさんのそばにいることが、今の私の役目ですから」
はにかむような美月の表情に、再びドキリとさせられるケルウスであった。
そして、彼らは病院へ搬送され、急を要すると判断された5名は処置室へ、残った10名も採血などの検査を受けた後に外務省の職員と面会し、ホテルへ案内された。
「またご案内に伺いますので、本日はこちらでお過ごしください」
こうして、アヌビシャス神王国第二王子ケルウスは日本国へ上陸したのだった。
いよいよ明日は小松基地航空祭!
なんだか話では74式戦車が来てくれるとか……F-16も楽しみですが、動いている74式なんて見るの初めて(と言うか動く戦車自体見るの初めて)なので、ワクワクが止まらねぇ、という感じです‼




