終わりと始まり、新たな道へ
どうも、今月2話目の投稿です。
いやはや……シンフォギアが!ジオウが!……もう、目が離せないものばかりで楽しいですね(笑)
間もなく日本国召喚コミックスの2巻発売です。こちらも楽しみですよ。
――西暦1738年 7月30日 スペルニーノ王国 セメンタール砦
ここにはスペルニーノ王国の歩兵約1万と、イタリシア王国の有翼戦士団1000名が駐屯していた。
彼らは4日前にフランシェスカ共和国の城塞都市ジラードに派遣されていた派遣部隊が全滅したことを受けて、有事体制を敷いていた。
石造りの砦の各所には王国最新鋭の大砲がその砲口を並べており、見る者によっては恐ろしさを、見る者によっては頼もしさを感じさせる作りとなっている。
城門は王国の基準で最高レベルの鉄門扉を使用しており、同水準の大砲ならば簡単には落とされない強度を誇る。
見張りの兵士カクトは、夜明けと共に押し寄せる眠気をこらえながらしっかりと地平線の彼方を見つめていた。
だが、死神は既に彼にその手を伸ばしていた。
――ヒュルルルルルルルルルルルルルルル……
「ん? なんの音だ?」
彼が音の正体を確認しようと周囲を見渡した直後、猛烈な閃光と共に彼の意識は永遠に閉ざされることになった。
その後も連続した爆発が砦内部では相次ぎ、頑丈なはずの石造りの砦はあっという間に瓦礫の山と化す。
兵士はもちろん、指揮官も含めて何が起きたのかまるで理解できないままに多くの兵が死んでいった。
残ったわずかな兵も、砦がズタボロになって右往左往しているところに、唸り声をあげて迫る茶色の角を生やした獣のような存在が発射する光弾に薙ぎ払われて何もできぬままあの世へと旅立った。
陸上自衛隊は、この砦とほとんど変わらぬ方法で、王都マドロセオに至るまでの防衛設備を次々と陥落させていった。
どの砦も本部へ連絡する時間すらも与えられずにあっという間に殲滅させられていくため、なんと王都に至るまでの5つの砦が落ちたことは王都の誰にも知られなかったという。
もちろん砦の周辺やそれまでの道中に住む住民たちは圧倒的な力で砦を陥落させたことを理解していて、自衛隊に歯向かう者は存在しなかった。
逆に自衛隊側も無関係な一般人を怯えさせたり反感を買ったりするわけにはいかなかったため、道中で困っている人がいれば助ける、怪我人がいれば治療してあげるなど、人道的措置を施していたために一般市民からは『あれが敵対している国の軍隊なのか?』と疑われたほどであったという。
この自衛隊のお人好しとすら言ってもいいほどの対応は、後にスペルニーノ王国内部でも話題になる。
それはさておき、自衛隊は砦の攻略を含めてほぼ問題なく進行し、時に人助けをしつつ王都へ向けて進んでゆくのだった。
――西暦1738年 8月5日 スペルニーノ王国 王都マドロセオ北東部15km
ここに陸上自衛隊スペルニーノ派遣部隊は陣地を構えていた。戦車などの砲撃は届かないものの、ヘリコプターなどの観測があれば榴弾砲は十分に届く距離である。
王都へ通じる最も大きな街道は日本側が封鎖しているため、王都の出入りは塞がれていた。
それ以外の細い街道や確認できる限りの裏道なども含めて、わずかながら車両を配置して敵が出ないようにと徹底した封鎖を行なっていた。
自衛隊の接近は既に王都側も察知しており、王都の直轄軍が王城にこもって迎撃態勢を整えていた。
この王都マドロセオは城塞都市の様に城壁で覆われてはおらず、海に面した広い港町となっている。
町中には大きな石畳の道路が通っており、戦車も余裕で通れるほどの幅がある……重量の都合から、通れるかどうかは不明だが。
そのため、日本側は敵が不利になった場合に海上から逃亡する可能性も考慮して沖合15kmに海上自衛隊の第一護衛隊群を配置して監視している。
必要とあれば彼らも支援に回る予定である。
「綺麗だな。のどかな港町って風景が感じられる」
王都の風景を見た楠はそう感嘆した。それほどにこの港町は美しかったのだ。
建造物はイタリア南部の島の様に純白で、温暖な気候であると推測される。それでいて湿度は低く、とても過ごしやすい。
寒い場所が苦手だという蜥蜴人や有翼人にとっては、とても過ごしやすい環境に違いない。
だが、彼らは心を鬼にしてこの王都にある王城を陥落させ、敵の指導者に『日本には勝てない』ということを分からせなければいけない。
そのために、敵の殺傷制限も解除した部隊を派遣しているのだ。
「さて、と。まずはこちらからお見舞いするか?」
楠は傍らに立つ副官の石川に話しかける。
「そうですね。まずは榴弾砲で王城の外縁部城壁『のみ』を徹底的に破壊しましょう」
それからの作戦も既に多くが立案済みである。万が一敵が想定外の攻撃をしてきた場合に備えて様々な兵器を持ってきているため、大概のことならば対処できるであろうと自衛官たちは判断していた。
「よし、特科連隊に攻撃開始の指示を」
「了解」
指示を受けた特科連隊は速やかに自分たちの車両が撃つべき場所の割り振りを部隊で共有し、狙いを定めていく。
特科連隊の指揮官は部下から報告を受ける。
「発射準備完了しました。各車照準、問題ないです」
「よし……射撃開始。繰り返す、射撃開始」
「全車、射撃開始。撃てッ!」
――ダンッ‼
周囲の空気が震えるほどの音を立てて榴弾砲から撃ち出された榴弾は、それぞれが照準を合わせた目標へまるで誘導されているかのように飛んでいく。
『着弾10秒前。8,7,6,5,4,3,弾着、今‼』
――ドガァンッ‼
壮麗な作りの王城外壁が、ものの見事にガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。
陸上自衛隊の特科連隊は、榴弾の爆発した煙で空中に富士山を描き出すほどの精密な砲撃を行うことができる。
特に99式自走155mm榴弾砲は戦術ネットワーク『野戦特科射撃指揮装置(FADAC)』とリンクすることで他の砲と連携して同時に着弾するようにする、指揮所から遠隔操作で発射するという高度な砲撃を行える。
怪獣王の頭部を狙い撃つことに比べれば、それよりはるかに巨大で動かない城壁などただの的であった。
後継車両である火力戦闘車がまだ量産できていないこと、耐用年数は十分残っていることもあり、まだまだ現役である。
「続いて20榴の砲撃、有翼戦士団の屯所を殲滅せよ」
指示を受けた退役寸前の兵器、203mm自走榴弾砲が、一斉に照準ポイントへ砲撃した。
――ダンッ‼
『着弾10秒前。8,7,6,5,4,3、弾着、今‼』
――ドガアァァァンッ‼
99式自走155mm榴弾砲よりも、威力の高い、口径だけならばかつての重巡洋艦の主砲に匹敵する砲弾が一斉に着弾したことで、有翼戦士団の屯所は完全に崩壊した。
これで敵航空戦力はほぼ壊滅できただろうと自衛官たちは判断する。
「さて。まずはここまでだ。敵の動き次第だが……どう動くかな?」
楠は敵の王城を焼き付けるように見つめる。
一方、旧世界でいう所のイタリアはローマの『コロッセオ』のような外周部が破壊されたバルムンク城は大混乱であった。
敵が王都から15km離れた所に陣を張っていることは知っていた。だが、敵がどのような攻撃手段を持っているかまるで未知数だったこともあり、これまでこちら側からは手を出させなかった。
てっきり敵は様子を窺っているのだろうと思い、下手に手札を見せることは下策と国王が判断したのだ。
実際には日本側は偵察衛星の写真で王城の外部構造を完全に把握しており、出発前にどこをどの車両が砲撃するなどの手順を何度も確認していたのだが。
そしてその結果、15kmも離れた所からいきなり砲撃を食らって右往左往している間に、有翼戦士団も壊滅してしまったのだ。混乱するなというほうが無理がある。
「いったいどうなっている!? 敵は何をしたのだ!?」
国王スペルニーノ6世の居住部分は外縁部になかったため砲撃を免れていたが、一瞬で自分の王城の一部が崩されたことに彼はひどく狼狽していた。
「様子を窺っていた有翼人の見張りによると、一瞬ですが砲撃の煙らしき物が見えたとのことでした。恐らく敵は超長射程の、しかも非常に高威力の大砲を所有しているものと思われます!」
更に別の将官が続ける。
「また、破壊の痕跡から察するに真上に近い角度から砲弾を撃ち込まれたものと判断できます! これほど長射程かつ高威力で、しかも全弾命中させる砲撃など、イエティスク帝国ですら不可能です!」
イエティスク帝国には真上から砲弾を落とす曲射砲撃の概念があり、それが他国にもわずかながら情報として伝わっていた。
だが、それほど離れていない距離で行われたという情報も得ている。
今回のような、10km以上も離れた地点からの砲撃など、まるで予想もしていなかった。
「くっ……我らが……この世界で強国すら手を出さないスペルニーノ・イタリシア連合王国が、このまま負けるなどあってはならぬ! 兵たちに伝えよ! 最後の決戦用意だ‼日本軍に、我が国の意地を見せてやれ‼」
国王の命令は素早く伝達され、多くの兵士たちが様々な武器を持って王城中央広場に集合する。
バトルアックス、メイス、大型火縄銃など、まさに雑多と言わざるを得ない種類だった。
だが、そこに並ぶ者たちの顔は引き締まっている。
この世界でも特に勇猛果敢を謳う蜥蜴人が、敵の軍勢が迫っているのを見て逃げるわけにはいかなかったのだ。
「さぁ、いつでも来るがよい。叶わぬまでもせめて一撃入れて、我らの意地と誇りを示してやる……!」
スペルニーノ6世もまた、王家に伝わる鎧を身にまとい、手には巨大なハルバードを握りしめていた。
だが、現実は彼らの想像の斜め上を行く。
――バタバタバタバタバタバタバタバタ‼
空気を叩くような物音が響くと、空の彼方から粒粒とした何かが見えてきた。
「な、なんだあれは!?」
よく見れば、その物体の真上では羽のような物が回転している。
「まさか、羽を回して飛ぶ羽虫だと!?」
しかも、太陽光を反射するその姿を見れば、それが鉄でできているらしいことが分かった。
「あんな物を動かすとは……おのれ、化け物め! 残存有翼戦士団に、奴らへ特攻するように伝えよ!」
スペルニーノ6世の命令を受けたわずか10名弱の有翼戦士団が風を掴んで空へと舞い上がる。
彼らはなんとか空飛ぶ鉄の羽虫に近づこうとするが、近づくにつれて気が付いた。
その物体はあまりにとてつもない暴風をまき散らしており、付近では滑空することすらも難しくなっている。
「そ、そんな!?」
ヘリコプターのダウンウォッシュは、滑空することを主体にした軽量な有翼人を近づけないほどの風量を起こしていたのだ。
すると、前方を飛行していた鉄の羽虫の口元についている細長い物がこちらを向いた。
――ダダダダダダダダダッ‼
放たれた光の筋によって、わずかな有翼戦士団は粉微塵にされてしまった。
陸上自衛隊の戦闘ヘリコプター『AH―1S』15機と、『AH―64D』5機、そして『UH―60JA』5機と『UH―1J』20機が、編隊を組んで敵王城へと向かっていく。
先行するのは『OH―1』2機であり、敵上空でホバリングする。
そして『AH―1S』と『AH―64D』が二手に分かれて敵を挟み込むようにする。
『全機、一斉射撃開始。繰り返す、一斉射撃開始。』
――ブオオオオオオオオオオオオオオオンッ‼
――ダダダダダダダダダダダダダダダダダッ‼
指令が各機に通達された直後、『AH―1S』の20mm機関砲と、『AH―64D』の30mmチェーンガンが一斉に火を噴いた。
最後の戦いに備えて密集していたスペルニーノ王国の蜥蜴人たちは、飛来する機関砲弾を食らって次々と粉々に打ち砕かれていく。
機内のガンナーも、機関砲が発射される振動を感じながらしっかりと敵兵を狙い撃った。
――バシュバシュバシュッ‼
更に70mmハイドラロケット弾も次々と撃ち出して残った兵たちを片っ端から吹き飛ばしていく。
わずかな時間で粗方の掃討戦が終了すると、『OH―1』が上空から観測結果を報告する。
『こちらオーガより司令部。敵残存戦力わずか。降下して敵国家元首を確保すべきと判断できる』
『こちら司令部、了解。これより部隊を降下させる』
観測ヘリコプターの報告を受けた司令部は部隊の降下を指示する。
『全部隊降下せよ。黄金の鎧を身にまとい、長大な戦斧を持っているのが国王である。総員確保に当たれ。繰り返す、総員確保に当たれ』
『UH―1J』や『UH―60JA』に搭乗する隊員が次々とロープを地面に垂らしていく。
『降下‼降下‼降下‼』
指令を受けた陸上自衛隊の隊員が素早く懸垂下降して89式自動小銃を構える。そしてわずかに生き残っている兵士たちに銃を突き付けて無力化していく。
先程の圧倒的な制圧力を目の当たりにしたからか、敵兵はすっかり戦意喪失しているようだった。中には土下座のような体勢で震えている者さえいる。
「敵国家元首は?」
すると隊員の1人、雑賀1等陸曹が奥で片腕を押さえている黄金の鎧をまとった蜥蜴人を発見した。
「黄金の鎧、そばにあるのは長大なハルバード……こいつか‼敵国家元首発見!繰り返す、敵国家元首発見!」
雑賀の通信を聞いた隊員たちが集まっていく。
そして、王城に通じる市街地の道路を『10式戦車』と『90式戦車』に護衛されながら『82式指揮通信車』が進んできた。
崩れ落ちた城の手前で停車すると、中から楠陸将が姿を見せる。
「敵国家元首を発見したそうだな」
「はい。既に残存敵兵力も戦意喪失しておりますので、事実上これまでと考えられます」
「よし、敵国家元首は?」
「こちらです」
隊員の案内を受け、崩れた王城の広場へと楠は赴いた。しばらく進むと、隊員に応急手当てを受けている蜥蜴人がいた。
「スペルニーノ・イタリシア連合王国元首、スペルニーノ6世殿ですね。私は日本国陸上自衛隊、楠譲治陸将と申します」
蜥蜴人は青白い顔を怒りに歪ませながら楠の方を睨みつける。
「西方の蛮族の分際で……」
部下たちが銃を構える腕に力を込めるが、楠が手で制した。
「もうお解かりいただけたでしょう。貴国の戦力では、我が国には勝てません。我が国と『講和』してください」
「……」
スペルニーノ6世とて愚かではない。実を言えば城塞都市ジラードに派遣した陸軍6万があっさりと壊滅させられた時点で……いや、それ以前にポワソン沖海戦で敗北した時には『勝てないのではないのか』という疑問があった。
だが、仮にもこの世界で列強国すら容易に手を出せない強国であるという自負が、退くことを許さなかった。
その結果が、この有り様であった。
「我が国は決して貴国を侵略、占領したりはしません。ですので、貴殿が戦争終了を宣言していただかない限り、我が国も後に退けないのです。このままでは、貴国のみならず貴国の同盟国であるイタリシア王国にも戦火が及びます。どうか、ご英断を」
日本側はどこまでも丁寧であったが、有無を言わせぬ迫力があった。本当ならば邦人を殺害したということも含めて様々な事情聴取などを行わなければならないのだが、日本としても戦争を長期化させることを望んでいない。
大陸を手に入れたとはいえ、様々な諸情勢はまだ安定しているとは言い難い状況で、戦争が長引くことはその不安定さに拍車をかけかねない。
だからこそ日本は圧倒的な戦力で短期決戦を望んだのだ。
「……分かった。貴殿らの望む条件で『講和』しよう。イタリシア王国にも私から話す」
スペルニーノ6世が講和を承諾したことにより、ようやく戦争の終結と相成った。
ちなみに日本側が既に用意していた講和の条件としては
○スペルニーノ・イタリシア連合王国は国内の資源採掘地を一部日本主導で採掘させる。
○あるいは両王国通貨を金に替えて殺害した邦人及びフランシェスカ共和国人の遺族及び関係者に賠償金として金を用いて支払う
○スペルニーノ・イタリシア連合王国はフランシェスカ共和国及び日本国と講和条約を締結し、以後は正常なる国家関係構築のために尽力する。
○今後はフランシェスカ共和国との関係を友好的に改善する。
○関係改善のため、戦後復興の一部は日本が主導で執り行う。
○今後は為替レートに従って諸取引を開始する。
など、多岐にわたる。更にはイタリシア王国側に提出する分も含めてスペルニーノ6世に渡しておいた。
こうして、日本国はスペルニーノ・イタリシア連合王国との戦争に、実質的な勝利を収めた。
両王国の死者数十万人、日本側の死者0人という圧倒的戦果を残して。
――西暦1738年 8月25日 フランシェスカ共和国 首都パリン
今日は日本国からフランシェスカ共和国に対して今回の戦争の総合報告が行われていた。
「――以上のことから、日本国はスペルニーノ・イタリシア連合王国に対して勝利を収めました。今後は両王国共に貴国とも関係改善を申し出てくるでしょう。これで、フランシェスカ共和国に対する戦争の危機は去りました」
日本の外交官である松下から報告を受けたフランシェスカ共和国の首脳陣は、自らの座る席で完全に脱力していた。
首相であるクリスティアでさえ、肩から力が抜けていた。
「……日本国からの報告、死者が0人とのことだったが、本当なのか? いくら日本の力がずば抜けているとは言っても信じられん」
在日大使となった者からも同様の報告が上がっていた。
「日本国内では戦争が終結したことを国民皆が喜び、同時に亡くなった兵士たちに対して鎮魂の念を捧げているようです」
日本ではこれでゼロからスタートするという意味を込めて、官民問わずにスペルニーノ・イタリシア連合王国の兵士を弔おうという話題が持ち上がっていた。
遺族に対しても様々な手当てが政府主導で行われており、『罪を憎んで人を憎まず』の標語を掲げた一部の若者たちにより、『戦争はもう終わったのだからこれからは対等の存在として関係の改善を』という声が多く高まったのだ。
政府としてもズルズルと負の感情を引きずられることに比べたらはるかに良いと判断されたこともあって、日本国内は一気に融和ムードへと進んでいた。
「日本がそうするというのであれば、我が国もそれに乗るのが上策でしょう。すぐにスペルニーノ・イタリシア連合王国に対し、戦後復興の支援をする旨を伝えなさい」
首相の号令を受け、大臣や議員が一斉に動き出した。
「……前線の兵士たちからも既に多数の報告が上がっているが、今後何があろうとも、絶対に日本に逆らってはならない。万が一の時にはかの国の傀儡となってでも……民を守らねばなるまい」
クリスティアは今後の外交において、日本国に対しては絶対に失礼にないように後々の代にまで伝えていくことを決意した。
――同日 グランドラゴ王国 首都ビグドン
こちらでもグランドラゴ王国国王、ドラゴニュート19世が外交官の報告を受けて真っ青になっていた。
「では、日本側は本当に一切の犠牲なく戦闘を完遂したというのか……? 我が国ですら、有翼戦士団を前にすれば多少の犠牲は避けられないというのに」
外交官は駐日大使となったファルコから送られてきた報告書を読み上げる。
「はい。日本側は戦術を駆使し敵航空戦力を誘導して殲滅したとのことですが……どうも、巨鳥以外に『誘導弾』は使用していないようですね」
「誘導弾も万能ではないということだな。それで、開発局のほうはどうだ?」
「既に日本側から有線方式での通信手段については技術供与が始まっておりますので、それを中心に解析を進めさせております。まずは試験開発した魚雷に搭載し、わずかな距離ではありますが誘導性能を付けようと考えております」
グランドラゴ王国では日本から誘導弾の概念が入ったこともあり、ジェットエンジンの実現には程遠いということもあってか、まずはつい最近開発された『魚雷』に搭載してみようという結論になったのだ。
「うむ。今後とも日本とは友好関係を続けよう。こちらが下手に出ることも厭うてはならぬぞ」
「ははっ」
国王は手元に置かれている書類を見た。
そこには、日本から近い将来に輸入及び共同開発する予定の兵器が記されている。
どちらの兵器も、現在の王国では夢のような性能を誇るものであり、ドラゴニュート19世は喜びつつも内心は冷や汗をかいていた。
「これが導入されれば、我が国は大きく変わる。だが、これほどの兵器を輸出しても問題ないとは……日本国、絶対に逆らってはならない国であるな」
竜人族はとてもプライドの高い種族である。だが、日本に関してだけは礼節をもってしっかり対応する必要があると思わされてしまったのだ。
「開発局には更に頑張ってもらわねばな。いずれ日本に追いつくためにも……」
国王の手元には王国側のネーミングで『ダイヤモンド級戦艦』と、『ファルコン型戦闘機』という文字が記載されている……。
これらの詳細については、もう少し後に判明することになる。
詳細は書きませんでしたが、この後様々な人々が行き来して両王国と講和しました。
残念ながら私はそう言った外交のやり取りについてはさほど詳しくないので、こちらはご勘弁ください……
いよいよ来月1日から、『令和』ライダー、ゼロワンの始まりですね。
このように、令和が希望と楽しみの溢れる年代になることを祈りたいものです。