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日本時空異聞録  作者: 笠三和大
24/138

護衛艦隊VS鳥母機動艦隊、開戦

いつの間にかブックマークが480件超えました……なんだかこのところ、登録数の増加が著しいですね……期待に応えられるように頑張ります‼


――西暦1738年 6月18日 フランシェスカ共和国西部沖合 約50km

 港で一泊し、フランシェスカ共和国の港町を出航した護衛艦隊は、22ノットの高速で海の上を矢のように航行していた。

「は、速いっ!? なんという速さだっ!?」

 リュシオルは、自身の知る船の速度からかけ離れた速さを目の当たりにして愕然とする。

 彼は以前、グランドラゴ王国が王国東部にあるフィンウェデン海王国との小規模な紛争に巻き込まれた時に観戦武官として彼らの戦艦『クォーツ』に乗ったことがあった。

 その時の経験は筆舌しがたいほど厳しく、以後鋼鉄の船になんて乗りたくないと思っていたほどであった。

 しかし、今自分が乗っている船はそれよりも速く、そして遥かに大きい。

 そして何よりも、その揺れの少なさに驚いた。

 これが戦闘にどう影響するかも、彼は頭の中で既に可能性の1つとして導き出していた。

 彼の乗る『あづち』型強襲揚陸艦は、揚陸艦であるにもかかわらず艦隊行動にも付いていけるようにと最初から最高速を30ノットまで出せるように設計されていた。

 それでいながら揺れと呼べるものはよほど海が荒れなければ起こらないと言っても過言ではない。

 そして、戦闘までもうしばらく時間があるということで艦長の遠藤一等海佐に艦内の案内を受けていた。

 列強国であるグランドラゴ王国同様の鋼鉄艦であるにもかかわらず、中は快適そのものであった。

 王国の軍艦ならば内部、特に機関室に近い所にもなると石炭の燃える熱でかなりの高温になっており、ドワーフたちが汗だくになって作業をしているのだが、この軍艦はそうではない。

 乗組員達はテキパキと作業をしてはいるものの、汗だくな者や重そうな石炭を運んでいる者は見当たらない。何より、高熱と呼べる空気はない。

 リュシオルは日本と国交が結ばれた直後に進出してきた本屋で買った本(言語が旧世界のフランス語で通じるため、フランス語で出版された書籍)によって、この船に限らず日本の護衛艦と呼ばれる船の多くがガスタービンと呼ばれる機構で動いていることを知っていた。

 仕組みその物はまるで理解できなかったが、ただの動力という点で言うならば石炭などよりもはるかに優れていることもあり、以前から日本の艦を見学してみたいと思っていたところにこの観戦武官の話があったため、矢も楯もたまらず飛びついたのであった。

「これほどの能力……イエティスク帝国とて持っていないはずだ。そんな国と友好国になれたこと……これは天運ではなかろうか」

 彼の隣には、グランドラゴ王国から観戦武官として派遣されてきた防護巡洋艦艦長のダイルスの姿もあった。

 彼は日本の巡視船『しきしま』に乗船したことはあったが、護衛艦に乗ったことはなかったために、この話を聞いて日本の技術を研究するいい機会であると考えていた。

 だが、目の前に存在するこの技術は自分たちの理解を遥かに超えたものであり、全く追いつけていないことを改めて突き付けられただけとなったのであった。

 船は更に進む。



――4時間後 フランシェスカ共和国 南西沖200km地点

 連合王国艦隊、通称無敵艦隊司令官のトーロンは、10ノットほどの速度で進む連合軍艦隊を見て満足そうに笑みを浮かべていた。

「ふふふ……いずれこの青い海に浮かぶ我が艦隊が、勝利という名の杯を赤い酒で染めるだろう」

 打電によれば陸の方は少しばかり苦戦しているようだが、フランシェスカ共和国に大砲を用いる戦列艦の類はない。グランドラゴ王国から少し鉄鋼技術に関して支援を受けたお陰で彼らの技術水準からすれば厚めの装甲鉄板を張り付けた鋼鉄艦こそ有してはいるが、戦法は火矢と斬り込みである。

 アウトレンジから100門級を含めた戦列艦の砲撃で攻めれば、それほど労せずに敵の戦闘能力をほぼ削ぐことができると予測されていた。

 万が一白兵戦になったとしても、水辺での戦いを得意とする蜥蜴人と空から数の暴力で押し潰す有翼人の有翼戦士団がいれば、奴らの100隻もないであろう艦隊を殲滅することなど難しいことではない。

 確かにエルフや狼人族は武術に精通しているが、それとて数の暴力の前では限界がある。

 両王国はそれでも万全を期すためにと、念には念を入れて両国の本土も防衛できるだけの艦隊や陸上戦力も残しつつ圧倒的に勝てるようにと石橋を叩いて渡るかの如く戦力差をつけたのだ。

「多少時間はかかるかもしれないが、負けることはあり得んな。そうは思わんか? 戦士長殿」

 彼は隣に立つ鳥母艦隊司令兼有翼戦士団戦士長の女性、ゴリオに声をかけた。

「えぇ。私たちが本気で力を合わせた時、それはあのイエティスク帝国ですら警戒をするほど……たかがフランシェスカ共和国如きに、止められるはずもないわ」

 見た目は日本人基準で小学生程度しかない背格好ながら、既に16歳(有翼人や蜥蜴人は基本寿命が30歳かその前後なため、10歳で成人扱いとなる)のベテラン戦士であった。

 両種族は成長や成熟の速さ、思考回路や国の運用方法が似ていたこともあって互いに連合を組むことをスペルニーノ王国が提案したことで現在の形態を維持している。

 以前、東の果てにある蟻皇国が戦を仕掛けてきたことがあったが、その際には地の利と、連合して取った航空戦術によって勝利を収めている。

 軍事力というだけならばグランドラゴ王国と同等だと言われている皇国に勝利したことで、連合王国はかなり有頂天になっていた。

 自分たちが本気を出せば、世界の強国たちすら恐れ、簡単には手を出してこないであろうと彼らは考えていたのだ。

「きひひっ。エルフの男共よりは狼共の方が楽しませてくれるかもねぇ。どんないい声で啼くんだか」

「おいおい、あまりそっち方面ばかりやる気にならないでくれたまえよ」

「分かってるさ。歯向かう奴は皆殺しさ」

「報告!」

 会話を中断したトーロンは、マストの上にある見張り台に向かって大声を張り上げる。

「どうした!」

「前方に艦有り! 距離、約30km!」

 鳥母は普通の戦列艦に比べて大きく作られているため、それに合わせて大きなマストを設置している。そのため、そのマストの上の見張り台で望遠鏡を用いれば、戦列艦よりも更に遠くを見ることができるのだ。

トーロンとゴリオはスルスルとマストを登り、部下から望遠鏡を受け取った。

「あれか……ん!?」

「何だ……あれ?」

 2人は目を丸くしていた。てっきりフランシェスカ共和国の所有している大型帆船が見えると思っていたのだが、グランドラゴ王国の鋼鉄軍艦の様な灰色の船が見えたのだ。

「まさか……王国は既に援軍を派遣していたのか!?」

「こりゃ厄介だね。戦列艦の大砲はあまり通じなさそうだ」

 しかも目測でだが150mを超えており、形状もスマートで速力もかなり……自分たちの戦列艦の倍以上出ているように見えた。

だが、その船の武装らしき物で理解できるのはなぜか、艦首部分にある回転砲塔の大砲1門だけであった。

「確か、グランドラゴ王国には大砲を1門搭載した『防護巡洋艦』という船があったな? あれの武装に似ている気がするぞ」

「王国も早期に戦艦を派遣する事が出来なかったのかもね。だとすれば、乗員の練度もそれほどでは……ん!?」

 ゴリオが驚いたのは、その奥更に1kmほど先に、常識では考えられないほどの大きさを誇る船が見えたのだ。

「な、何よあの船は!? あんなに広い甲板を持った船なんて見たことがないわ!」

 トーロンも彼女の言葉を受けてその方向を見る。確かに、甲板が異常に広い船が見えた。

「あの甲板の広さ……まるで、我々の鳥母のようだな……まさか、あれからワイバーンを発艦させられるのか!?王国にそんな運用方法があるなんて聞いたことがないぞ!?」

「くっ……王国の技術と思想はいつの間にそこまで発展したんだっ!? こうなったら……航空戦力が出てくる前に、あの船を叩く!」

「あの船を?」

 ゴリオは頷いた。

「恐らくだけど、王国は私たちが採っている航空部隊と海上部隊が連携する戦法を見て有用だと気付き、艦隊と航空戦力の緊密な連絡を取れるようにとあんな船を建造したんだ。つまり、あれこそが全ての指令を発する旗艦の可能性が高い! だとすれば、航空戦力が出てくる前に対処した方がいい!ワイバーンは地上にいる間はそれほど脅威じゃない」

 ワイバーンは翼と手が一体化しているため、地上での機動力は動物でもかなり鈍い。それもあって、地上で休んでいる時のワイバーンを討ち取ることはそれほど難しいことではない。

 不意打ちさえできれば、一般人でもそれほど苦戦すること無く倒せるレベルと言えばその脆弱さが窺える。

「幸い相手の甲板にワイバーンの影は見えない。ならば、今のうちに巨鳥と有翼戦士団を出して、一気に攻撃を仕掛けるべきだ」

 トーロンも顎に手を当てて一瞬考えこんだが、確かに現状、相手側に航空戦力を持ち出そうとしている様子は見えない。ならば、対艦攻撃を確実に加えられるようにするためにも、先制して航空戦力を出すことは有用に見えた。

「よし、巨鳥部隊と有翼戦士団を送り込む。それに合わせて艦隊も前進し、一気に攻撃を仕掛けるのだ!」

「よし、総員に通達、航空部隊は全騎発艦し、敵艦隊旗艦らしき巨大船に攻撃を仕掛けよ!」

 彼女の指令を受けた通信員が『ハハッ!』と声を上げて打電室へ走った。

 わずか数分後、戦闘態勢を整えていた制空型・輸送型巨鳥と有翼戦士団が一斉に空へと舞い上がっていく。



――同時刻 日本国海上自衛隊 輸送艦『あづち』

 この船は元々様々な作戦において指令室を兼ねる事も想定されていたため、艦内の指揮所(CIC)はイージス艦などの主力艦のそれを上回り、『いずも』型よりも上である。

 内部では艦の動向や対空レーダー及び対水上レーダーの監視員からの報告が相次いでいる。

 今回の艦隊総司令官を命じられた葛城海将補は厳しい顔で水平線の彼方を見つめていた。

「司令、敵艦隊はさっそく航空兵力を出してくる模様です。既に艦対空誘導弾の射程範囲に入っていることから、対空戦闘を優先させます」

「よし、総員に通達する。これより我が艦隊は、戦後初にして転移後初の本格的な国家間の衝突に臨む。我々はこの戦いで多くの命を奪うだろう。だが、その責任は全て指示を出すこの艦隊司令である私にある。諸君らは我が国、そして我が国の権益を維持するうえで大切な友好国を守るために、持てる全力を出してほしい。ではこれより、『アネガワ作戦』の始動を発令する! 第1種戦闘配置!」

 『アネガワ作戦』の意味とは、かつて織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突した『姉川の戦い』から取っている。

 主力部隊の織田軍(フランシェスカ共和国の地上部隊)が奮闘している中で、側面では徳川軍が朝倉軍を突き崩したことから、それに例えたのだ。

 明らかに主力と援軍が逆転しているとか、突っ込んではいけない。

 全艦に指令が通達され、各員が持ち場で行動に移る。

『対水上、対空戦闘用意―』

――カンカンカンカンカンカンカンカン!

 今回は敵が多数の航空戦力を持ち出してくることが最初から分かっているため、対空レーダーも全力で稼働している。

 ついでに言うと、自衛隊の事情もあって彼らが明確な攻撃の意思、つまり『航空戦力を出す』ことをしなければ交戦ができない規定なのだ。

『CIC指示の目標―。』

 艦内では海上自衛隊独特の掛け声と共に、各兵器も始動を開始する。

 先頭を行く『こんごう』と『すずづき』の127mm単装砲が、敵艦隊の方を正確に向く。

 日本国が開発した『FCS』火器管制レーダーシステムが正確に、温度や湿度、風向きなども計算に入れて揺れる海の上ながら正確に敵を狙う。

『主砲、撃ちぃ方始めぇ』

『撃ちぃ方始めぇ』

 射撃主がトリガーを握る。

――ダンッ!

 『こんごう』の艦首部分に搭載された『OTOメララ127mm速射砲』と、『すずづき』の艦首部分に搭載された『Mk.41mod.4 62口径5インチ(127mm)単装砲』がそれぞれ火を噴いた。



「敵艦発砲!」

 相手の艦隊最前列を行く軍艦が、見えるかどうか危ういほどの小さな発煙を見せ、相手が発砲したのを鳥母のマスト上で見張る監視員は見逃さなかった。

「奴ら……まだ20km以上離れているというのに発砲したのか? 威嚇のつもりか?」

 トーロンの疑問にゴリオが再び推測を述べた。

「自分たちの持つ兵器の実力を見せつけて、少しでもこちらの士気を削ごうって考えかもしれないわね。まぁ、王国の戦艦の最大射程は8kmほどらしいから、この距離では恐れることは……」

 王国が流していた欺瞞情報(王国所属軍艦の最大射程は10km強)を口にした直後、最前列を航行していた戦列艦2隻が小刻みに揺れた気がした。

「ん?」

 直後、轟音と共に戦列艦が大爆発を起こし、轟沈していった。戦列艦の木造船体を食い破った護衛艦の主砲弾は、火薬庫内部で信管の様に熱を持った火薬に触れたことで誘爆を含めた凄まじい大爆発を起こしたのだ。

「戦列艦『セレーサ』、『アルビコッカ』轟沈! 今の攻撃は……敵の砲撃によるものです!」

 見張り員の報告に、トーロンもゴリオも顔を真っ青にする。

「な、何ぃ!? 砲の射程が……あんな小さいのに20kmもあるというのか!?」

「イエティスク帝国の戦艦の砲撃は20kmを遥かに超えると聞いたことがあるけど……あの船はそれよりはるかに小さいのに!?」

「それだけではないぞ。あの船……勘違いでなければ20km以上離れた所から1発で砲弾を命中させよった! あんな真似、グランドラゴ王国はもちろん、イエティスク帝国にも不可能だ!!」

 そもそも、彼らの常識において海の上で大砲というものはほとんど当たらない。

 洋上で船は波を受けて揺れるし、相手も揺れている。長距離になればなるほどその角度は大きくなり、わずか1度のズレでさえも大きなズレとなって命中しない。

 戦列艦などの砲艦は実際のところ、地球基準では近世、つまりは日本でいう所の江戸時代末期から明治時代に近づくまでは砲撃で相手を轟沈させるより、相手の船を弱らせるための物であった。

そして相手が弱ったところで接舷し、更にダメ押しの白兵戦を挑む。それが大航海時代からしばらくの時代のやり方であった。故に、同レベルに近い砲艦同士の撃ち合いともなると互いに相当な被害が出る。

 だからスペルニーノ・イタリシア連合軍はそこに有翼戦士団という航空戦力を加えたことで、戦列艦という前時代的な兵器が主力であるにもかかわらずその戦いを更に有利に進める戦術が生まれたのだ。

 少なくとも、フランシェスカ共和国程度の相手ならばアウトレンジから一方的に撃沈・撃破することも可能だったはず……であった。

「な、なんという威力! 命中精度! そして飛距離! あれは王国でも、帝国の船でもないぞ!」

「じゃ、じゃあ……どこの船だっていうのよ!?」

 トーロンには一国だけ心当たりがあった。だが、彼が今まで集めた情報を総合してもまるで当てはまらないような気がしていた。

「……恐らくだが、外務局がフランシェスカ共和国に宣戦布告するついでに喧嘩を売ったという、日本国だろう」

「日本国?小舟で来て、生首突き付けられただけで小便漏らしたっていう腰抜けの?」

 日本の情報は一部の軍人たちには既に流れていた。彼らの基準からすると『エルフ並みにひょろりとしていて肉体的にも精神的にも弱そうな蛮族』だったはずであった。

「外務局や情報部はどんな情報を掴んでいたのだ……あんな超兵器があるなど聞いていない!」

 そう言っている間にも既に6隻の戦列艦が轟沈していた。

「くっ……こうなれば、航空戦力で一気に旗艦を制圧して敵の指揮系統を乱すしかない! あれほど正確無比な砲撃を放つことができても、100を超える巨鳥と、数千もの有翼戦士団の波状攻撃を切り抜けるのは不可能だ!!」

 彼らの常識では、大砲は空を飛ぶ物には命中させられない。イエティスク帝国ですら、『高角砲』という対空専用の砲塔を開発しなければならなかったのだから、それらしい物が見えないあの艦隊ならば簡単に攻撃や着艦ができるだろうと踏んだのだ。

「ゴリオ殿、頼むぞ!」

「任せなさい!」

 既に発艦を始めていた巨鳥達に交じり、有翼戦士団の有翼人達も次々と甲板から飛び上がっていく。

 その声はまるでギャアギャアと騒ぎ立てるカラスの様にも聞こえ、慣れているスペルニーノ人以外が聞けば不快に思うだろう。



 一方、『あづち』のCICでも飛翔を始める航空戦力を既に確認していた。

 葛城海将補はその数の多さに目を丸くする。

「なんて数だ……これのほとんどが我が国の基準で言えば子供程度の大きさの存在だと思うとおぞましいものだが……これは戦争だ。仕方あるまい」

 グランドラゴ王国からの情報により、最前列を行くのが制空型の巨鳥で、ハヤブサに酷似しているとのことであった。

 その後ろに輸送型のアホウドリに似た巨鳥が続き、最後に有翼戦士団が続くという布陣だという。

 これは、グランドラゴ王国がスペルニーノ・イタリシア連合軍と蟻皇国の戦いを、諜報活動を用いて知りえた数少ない情報であった。

「よし、対空戦闘でまずは巨鳥を撃ち落とす。有翼戦士団はこの『あづち』が引き受けるぞ」

「了解。全艦に通達。繰り返す、全艦に通達……」

 葛城の指令がそのまま命令となり、各艦が対空戦闘の用意を始める。

 『こんごう』艦長の西山は、迫りくる敵の数の多さに冷や汗を流していたが、乗り込まれなければなんということはないと気を取り直した。

「よし、対空戦闘用意! 目標を間違えるなよ! 目標はあくまで最前列とその後方を行く隊列を組んだ存在だ! 撃てぇッ!」

「てぇっ!」

 直後、『こんごう』及び隣を航行する『すずづき』の垂直発射システムから猛烈な炎が吹きあがり、『発展型シースパローミサイル(ESSM)』が勢いよく発射された。



 ゴリオは巨鳥たちの後方を飛翔しながら満足げに笑っていた。

 自分達は一度空へ舞い上がれば相手の船を血で染めるほどの大暴れをやってのける、男女を問わない荒くれ者である。

 相手の運用している兵器は脅威だが、それとて空には当たらない。そう思いながら飛行していると、不意に最前列を行く船から炎が吹きあがる。

「え!? 何もしていないのに船が爆発したの!?」

 だが、その炎の中から白く、尾から光を放つ何かが飛んできたことで、それが自分たちに対する攻撃であると感じ取った。

「何あれ!? オナラで飛んでいるっていうの!?」

 理解できない彼女からすればそんな品のない表現しかできなかった。だが、ミサイルは情け容赦なく先頭を行く制空型巨鳥に突き刺さり、爆発する。たった1発であっという間に5騎もの巨鳥が撃墜されてしまった。

「そ、そんなぁ!?」

 だが、それは序の口にすぎなかった。

「あ、あんな高威力の爆発を起こすの!?」

 そういっている間にも相手の艦から次々と光の矢が飛んでくる。このままで同じ場所を飛び続けていては全滅してしまう。

「我が国の戦列艦の大砲よりも威力があるんじゃ……? くっ……散開よ! 散開!! なんとか避けなさい!」

 彼女の指示は大空の上であるにもかかわらず聴覚に優れた巨鳥乗りたちが伝言で受け取り、散開を開始した。

 だが、光の矢はその軌道を変えて追ってきた。

「嘘でしょ!? あの兵器、追ってくるの!?」

 誘導弾に追い回された巨鳥たちは乗り手共々、次々にミサイルの餌食となり、周囲の仲間を巻き込んで断末魔の叫びをあげながら海の上へと落ちていく。

 中には輸送型の巨鳥のように抱えている焙烙に誘爆して更に派手な爆発を起こす者もいた。

「なんでだ!? なんで矢が追ってくるんだよぉっ!! うわぁっ!?」

「来るな……来るなぁっ!! ギャァッ!!」

「ギャォス!」

 自分たちの同胞が、昔馴染みが、大切な人が、ただひたすらになんの価値もない存在であるかのように殺処分されていく。

 乗り手たちと鳥たちの断末魔は、これまでほぼ無敗を誇ってきた有翼戦士団に恐怖を植え付けた。

 だが、隊長であるゴリオは気付いていた。

「あの光の矢は巨鳥を狙っている! 巨鳥の爆発に巻き込まれないようにしながら敵旗艦へ向かうのよっ!!」

 隊長の指示はすぐに6千人もいる戦士団に徹底される。

 子供のような見た目に騙されてはいけない。彼らは種族的な特徴から子供のように見えるが、中身はしっかりとした軍隊の戦士たちであった。

 有翼戦士団は10人単位で素早く隊列を組むと、奥に見える旗艦らしき超巨大船に向けて、時速60kmほどで飛翔していく。

 


 『あづち』のCICでも、後方を飛行していた存在が軌道を変えてこちらへ向かって来ていることは分かっていた。

「どうやら思惑通りに動いてくれているようだな……よし、杉田一尉、後はお願いいたします」

 葛城は隣に立っていた陸上自衛隊所属杉田一等陸尉に声をかけた。

 彼は今回の切り札と言ってもいい普通科部隊を指揮する存在である。

 既に『あづち』の格納庫内には500人もの隊員が様々な武器を手に準備を終えている。

 敵の数は圧倒的である。しかし、それまでの間に一部対空火器を用いて数を減衰させておくとのことなので、額面通りの6千人近くを相手するとはならないだろうとも思われている。


次回、陸自隊員が奮闘します。

ちなみに私事ですが、9月16日開催の小松基地航空祭の旅行予約を取りました!

もし適えば、今度は宿泊先の金沢から投稿したいですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに読み直しー。 対空用の米軍のボフォースとかV信管入りがあればな。 あとは対空用の軽機銃をたくさん設置すればオーバーキル。
[一言] 日本人の民間人を犯して虐殺しておいてフランシェス国にも日本にも宣戦布告しておいて「先制攻撃させてからの反撃」は意味不明です。
[気になる点] ここは航空機で中間誘導した対艦ミサイルで鳥空母狙い撃ちにした方が無理ない設定だと感じました [一言] この小説好きですよ
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