国交締結、更に拡大へ
今月2話目の投稿です。
本日、護衛艦『てるづき』に乗艦してきました!
予想以上に揺れなかったですね……日本国召喚などで『揺れが少ない』と書かれているのも納得でした。
――2024年2月27日 午後14時半 日本国 東京都
横須賀を出発した使節団一行はマイクロバスに乗せられて高速道路を走りながらその大きさと高さ、そして周囲の景色に目を剥き続けていた。
これほどの巨大な建造物を作れる日本という国の、実質首都である東京都に入った時、その驚愕は恐怖へと様変わりした。
「こんな……こんな巨大な建造物を作れるのか……」
彼らの国ではレンガ造りの堅固な建物が中心だが、自分たちの目の前に広がるその建造物の雄大さはその比ではない。
高さは圧倒的であり、高い物では100mを優に超えているように見える。それだけではなく、『ビルディング』と呼ばれるその建造物の側面には大量のガラスが使われている。その透明度や量は、列強国であるグランドラゴ王国を以てしても用意することは難しいだろうと思わせるだけの威容を見せていた。
また、傍目には石のような、しかし石とはまた違う材質でできている建物や道路を観察してさらに驚いていた。
そして、都会の中でも異様な大きな石垣の近くにある巨大なホテルも非常に巨大だが、それでいて快適であった。
この時期はかなり冷え込むため、かなり厳しい環境であった。だが、そんな厳寒期にもかかわらず建造物の中は車や船同様にとても暖かかった。
ホテルに入って園村が手続きをしている間、ファルコは真っ蒼になりながら技術開発部のホグノに話しかけていた。
「想像通り……いいえ、想像の遥か斜め上を行くほどに、日本の技術は高かった。これほど発展した国が今まで確認できなかったことから考えるに、やはり日本国が突然現れたという主張は正しいのでしょう」
「そうですね。これほどの透明なガラス……作るのに技術が必要なのももちろんですが、これほどの『数』を揃えるとなると、どれほどの工業力が必要になるか……少なくとも、我が国で同じ物を同じ数だけ作ろうと思えば、かなり時間がかかるうえに、同じ質の物が出来上がるかどうか保証できない。間違いなく、日本という国は今、我々が認識している国家の中では最大の実力を有していると思われる。イエティスク帝国ですらこのような芸当は不可能だ」
ホグノは自身の研究者としての経験と知識から完全に自分たちが日本に比べて劣っていることをこれまで以上に痛感していた。
「ファルコ君はどう思ったの? 外交官として、日本人という存在を見て」
ファルコもまた、同じように敗北感を味わっていた。その顔は蒼白を通り越して土気色と言ってよかった。
「これまで観察した限りですが、日本人は非常に謙虚で人に気を使える民族のようですね。我々の世界基準では、どれほど高圧的に振る舞い、弱い相手から搾取するかが求められる部分が多いですが……日本国民はそうではない者が中枢を占めているらしい。そのように感じました」
ファルコたちのいるこの世界では、とある理由から一部の国が集まってちょっとした近況報告及び経済活動の確認を行なう会議の場が存在するのだが、それとて協調という路線からは遠い。
グランドラゴ王国はこの世界の他国に比べるとかなり先進的と言える国家であり、既に自由経済の活発化による国家隆盛の意識がある。
王国は他国に比べると新製品の開発や新技術の開発に常に重点を置いているため、一部の技術力や規模こそイエティスク帝国という東の大国に劣るものの、技術や情報の重要性はこの世界で誰よりも理解しているという自負があった。
だが、それを日本の存在が覆してしまった。
一行は案内されたホテルの割り当てられた部屋でようやく一息ついたのだった。
ファルコは部屋で呟く。
「明日は日本の外務省との会談だが……果たしてどのようなことになるのやら」
その夜は日本側が王国使節団のためにと盛大な食事会を開いた。
和洋中仏様々な料理が楽しめるようにバイキング形式となっており、園村と国本が傍についてマナーなどを教えている。
使節団の者たちはその繊細な味と種類の豊富さに驚かされるのだった。
竜騎士キトゥンは和食と呼ばれる料理の味付けを堪能していた。
「な、なんだこれは……この味付け、どうやって出しているんだ……?」
彼女が今食べているのはいわゆる揚げ豆腐に餡をかけた物であった。
様々な食材を餡に混ぜ込んでいるため、その味はこれまでグランドラゴ王国に存在したどの料理よりも繊細で、尚且つ舌にとても強く働きかけてくる美味しさがある。
元々グランドラゴ王国は技術開発や工業はとても盛んな国であったが、料理などは二の次となっていた。
そのため、これほどに繊細な料理を味わったことが無かった使節団の面々にはかなりの刺激を与えていた。
「この豚肉の炒め物もとても美味しい。卵を使っているのか……このソースとの相性が絶品だな」
キトゥンは食事に夢中になっていたことに気づいてハッと周囲を見回した。だが、誰も見ていなかった。皆日本の様々な料理に思い思いに舌鼓を打っていたからであった。
「何これ……柔らかい皮の中から熱い汁が!?」
総合技術開発部門のホグノは中華料理の点心を味わっており、海軍で艦長を務めているダイルスはパンにカレーをつけて食べている。
「美味いぞ……これは美味いぞ!!辛いのに、どこか舌へ働き掛けてくるこの美味しさはなんだ!?」
ファルコは外交官という職業柄周辺国の料理も食べたことがあったが、どの国の豪華な御馳走よりも、目の前にある様々な料理の前では霞んで見えた。
「これほどの卓越した技術が存在する……それはつまり、長い年月の研鑽が必要だ。日本国……どれほどのモノを積み重ねてきたのだろうか。少なくとも、技術と料理という2つにおいては、我が国は日本に全く敵わないな」
余談だが、この時カレーの詳細を聞いたダイルスがそのあまりの美味しさと栄養価の高さに感動したことで、後に王国へ帰還してから日本にカレーの作り方を教わり、海軍に広めていくことになる。
皮肉なことに、明治時代にイギリスから伝わり、現在も海上自衛隊に受け継がれているカレー文化は、ここにおいて異世界ながらイギリスへと帰るのだった。
後にダイルスは『王国における海軍カレーの祖』と言われるようになるのだが、それは別の話。
その日、使節団の面々はこれまで経験したことの無い料理に満足し、満腹感と彼らの想像をはるかに超えるほど寝心地のいいベッドでぐっすりと眠ることができたという。
――2024年 2月28日 日本国 外務省
この日、使節団の内外交官であるファルコともう1名は外務省で外交官との会談を行なうことになっていた。
それ以外の使節団は東京スカイツリーやすみだ水族館、東京国立科学博物館等の施設を案内されている。
自分たち以上の国力や技術を誇る日本国の外務省との対談に、ファルコたちの顔は終始強張りっぱなしであった。
「では、以下の条件での締結でよろしいでしょうか?」
外務大臣が口頭で説明し、日本語及び彼らの言語(文字としては英語の文体と同じであった)で書かれた文書と合わせて確認する。
「はい。こちらも問題ありません」
非常に早いが、国交開設及び通商条約の締結により、日本国とグランドラゴ王国との間には自由貿易が推奨されることになる。
グランドラゴ王国側はその条項の中で、気にしている一文があった。
○武器輸出に関して、日本国側はこれまでの武器輸出禁止の三原則を廃止し、国交締結国に対しては侵略行為に用いないという約定を守るうえで一部の武器の輸出を許可することとする。
前話でも述べた通りだが、日本はこの世界において旧世界で言う所のアメリカとある程度同じ立場になるであろうと予想されていた。
そのため約束を交わし、履行され続ける範囲においては一部の武器輸出を許可することにしたのだ。
「本当によろしいのですか? 今まで日本が70年以上にわたって守り続けてきたことを、破棄しても……?」
ファルコの窺うような言葉に、外務大臣が少し言い辛そうにしながらも答える。
「……そうですね。今でも国内では根強い批判があります。ですが、これまでのように列強国に守られてばかりだった日本ではダメだという意見も多くありました。日本は……変わらなければならないと、私個人は思っています」
その目には固い決意が宿っていた。日本をかつてのアメリカのように、しかしアメリカとは違った形の強大な国家にするために、今は大きく動いている。
そのためにも、変わるべき所は変わらなければならないという意見も官民問わずに多数出ているのが現状なのだった。
実は極秘にだが、既にグランドラゴ王国へ輸出するためのとある兵器を選定中であった。それは現代日本でお目にかかることはまずあり得ない存在であったが、日本が後に保有することになる物を作るための『肩慣らし』の意味も込めてこの6年ほどの間に1隻だけ『建造』された物である。
グランドラゴ王国については外務省職員2名の調査により信頼性が高い国家ということが政府内でも確認されたため、彼らの基準からすれば超兵器と言っても過言ではない存在だが、日本からすればそれほど脅威ではない『それ』を作ることになったのだ。
「分かりました。この条件で本国に報告させていただきます」
ファルコともう1人の外交官が頭を下げると、外務大臣もそれに続くように頭を下げる。
こうして日本国はこの世界でも上位に位置する列強国、グランドラゴ王国と国交を締結することに成功したのだった。
――西暦1738年 4月4日 グランドラゴ王国 王都ビグドン
日本と国交が結ばれてから1か月と少し経過していたが、グランドラゴ王国は日に日にこれまでとは比べ物にならないペースで発展しているように国民は感じていた。
「凄い、凄すぎる。我が国の諸技術は一気に進歩しようとしている。これならば、イエティスク帝国を超えることも夢ではないぞ」
まずは国民のためのインフラ整備として、日本からプロパンガスや水道技術、更に工業で排出される有害な排煙を軽減するフィルターなど、これまでの生活を大きく変えるような物が多々輸出され始めていた。
特に工場の排煙を抑制するフィルターは大人気であった。これまでグランドラゴ王国では工場の排煙により非常に濃い霧が立ち込める事が多く、そのせいで気管支系の病気に罹患する者が続出していたのだが、日本からフィルターを導入しただけで工場の排煙は大きく減少した。
近々排煙の有害物質を除去する方法に加えて、水質改善についても日本から指導が入る予定であり、これが正しければ1年から2年ほどの間に王国の環境は大幅に変化するという試算が既に出ていた。
港湾設備も大きく改造が施される予定であり、将来は日本の超大型タンカーが多数停泊できる巨大な港にするべく王国政府主導で開発企業に資金を出して日本の技術を学ばせている。
既に富裕層は日本の優秀な自動車の情報を聞いて発注を開始しており、港湾都市エルカラの大開発を急がせる要因となっていた。
これに伴い、日本からは更に信号機システムや横断歩道など、交通設備の整備も進められることになる。
また、電力確保のための風力発電や、日本では今は実験段階の潮力発電も導入される予定であり、王国での潮力発電の運用が成功すれば日本でも正式に導入する予定となっている。
更に日本の通信技術に目を付けたグランドラゴ王国は、すぐに電話の整備を始めた。これまでにもモールス信号での通信技術は存在したが、日本が輸出する予定の携帯電話ならばこれまでよりもコストが安く、更に正確な情報を伝えることができるようになると王国軍司令部は大喜びしていた。
ちなみに王国側から何か輸出できる物はないかとも探られたが、日本では珍しいワイバーンの鱗やその牙などが装飾品として高値で取引されるようになっており、一部のマニアが高い金を払って購入するようになっている。
また王国では次期航空戦力として日本の指導を受けながら飛行機械を製造する計画を立案し始めている。
今の予定では時速300km程度の速度が出る複葉機を製造する『予定』であり、その後は日本の指導に合わせて順次技術を発展させていくことになっている。
兵器に関しては、大局を左右するほどの兵器(日本の基準では護衛艦や戦闘機など、製造及び運用に精密な電子技術を要する物)の輸出及び技術提供は禁止されることになった。
だが、そういう技術を必要としない一部の兵器に関しては輸出をしてみることにした。
ただし、その国に現在国交を結んでいる他国に対する不可侵条約を交わすこと、日本に対してその条約書の写しを預けることを条件とした。
これにより、無用な争いを起こす火種を撒くことを良しとしない姿勢を保ちつつ、旧世界のアメリカのように武器輸出で外貨を稼ぐ種を増やすことができるようになった。
今回日本が輸出を許可した兵器・武器類を挙げると、以下の通りとなる(()の中身は種類名)。
○89式5.56mm自動小銃
○5.56mm分隊支援火器MINIMI
○12.7mmブローニングM2重機関銃
○9mm拳銃
○手榴弾(MK2、発煙、催涙、閃光)
○06式小銃てき弾
○81mm迫撃砲L16
○110mm個人携帯対戦車弾
○84mm無反動砲
○偵察用オートバイ
○軽装甲機動車(転移後改良された航続距離延長型)
○高機動車(転移後改良された航続距離延長型)
○ユイルKー1伸縮式警棒
○防弾盾
○JM61―M 20mm多銃身機関砲(手動型)
○M870ショットガン
など、多岐に渡る。
しかし当然のように誘導弾や、74式戦車などの電子能力を持つ兵器は輸出が許可されなかった。
賛成派からは『さすがに74式程度ならば今の日本にとっては恐れる必要はないのではないか』という意見が出たのだが、試験的な意味も込めるので当座はこれくらいで十分ということになった。
しかも、これはあくまで『グランドラゴ王国向け』の輸出品なので、他国に対してはさらに細かく設定していくことになると言われているのだ。
しかし、王国側はこれを輸出される時点で大喜びであった。
『これまでとは比べ物にならない性能の兵器だ』、『貴国の高い技術をぜひ研究させてもらう』など、かなり好評なのである。
そんな中で、日本大使館に日本担当外交官のファルコが尋ねてきた。在グランドラゴ王国大使は、彼らとの接触と交渉を行なった園村誠であった。
「朝早くから対応いただきありがとうございます」
「いえいえ……それで、本日はどのようなご用件ですか?」
ファルコは持ってきたカバンから地図を取り出すと、一部を指差した。そこは旧世界で言う所のフランスとドイツとスイス、更にベルギーとオランダを領有していると思しき大きな国であった。
「随分大きな国ですね」
「この国はフランシェスカ共和国と言いまして、我が国にとって随一の友好国です。国力や技術はそれほど優れているわけではありませんが……高い誇りと、礼儀正しさを持つ国です。もし日本国がお望みであれば、この国に対して我が国から紹介状をお書きしようと思うのですが……いかがでしょうか?」
これは日本からするとかなり有難い申し出であった。
なんの後ろ盾もなく飛び込んでいくよりも、事前に紹介状など、有力な手札を用意してもらえれば国交締結に際しても大きな力となる。
だが、なんの見返りも要求しないとは考えられない。園村は緊張しながら問い返した。
「……何をお望みですか?」
だが、ファルコは慌てて首を横に振る。
「いえいえ。はっきり申し上げて、今日本から供与・輸出してもらっている物だけでも我が国の常識を根底から覆しかねない物ばかりです。これ以上高度な物をもらっても、扱いに困る部分が多々あります」
実を言えば、現状のグランドラゴ王国ではこれ以上新たな物を与えられてもそれを受け入れるだけのキャパシティがない。
王国側も自分たちの技術を発展させていく必要があるため、あまりあれこれと渡されても困る部分があったのだ。
国王からの要請で、これほどの技術を渡してくれた日本に対する礼のような物と思ってほしい、ということであった。
「ですので、今回のことは我が国が愛する友好国のためにもなると思っての推薦だと思ってください」
「そういうことでしたか。では是非、紹介状の発行をお願いしますよ」
園村がファルコの手を取ると、ファルコもしっかりと握り返して笑顔を見せる。
日本政府は園村から報告を受け、グランドラゴ王国の紹介状を受け取る。
こうして日本国はグランドラゴ王国の紹介を受けて、南にあるフランシェスカ共和国へ赴くことを決定した。
――2024年 4月8日 日本国 東京都 首相官邸
日本本土では園村を中心に共和国についてグランドラゴ王国から情報を集めていた。
「総理。概要と言える情報が集まりましたので報告いたします。フランシェスカ共和国は名前の通り民主国家で、人口は約2300万人。狼のような特徴を持つ狼人族と、エルフと呼ばれる種族が住んでいる国だそうです」
「エルフという種族はなぜか他の種族に比べると長命らしく、120年以上が平均寿命だそうです」
「なんだそりゃ……? どこをどうやったらそんなに長生きできるんだ……?」
「さぁ。火の鳥の生き血でも飲んだんですかね?」
後にネット上に上がった報告で、『エルフ族は魔法に長け、1千年を超える寿命を持つ非常に長命な種族。むしろこの世界のエルフは短命』という記事を見て、予備知識のない政治家たちは度肝を抜かれることになる。
それはさておき、外務大臣や補佐官から報告を受けた総理大臣が気になる点を問いかける。
「技術レベルはどれほどだ?」
「衛星写真とグランドラゴ王国からの情報を総合すると、王国とのやり取りがあるお陰か、近世に近いまでの技術力は持っているようです。ただ、彼ら……特にエルフ族という種族はどうも火器を嫌う性質があるらしく、遠距離攻撃の主力は弓矢だそうです」
「そんな物でグランドラゴ王国のような近代的な軍隊に太刀打ちできるのか?」
「フランシェスカ共和国は大半が森林と農地になっているようでして、その中に潜んで樹上から奇襲攻撃を仕掛けるという戦法を得意としているらしいです。実際、守りに入った彼らを崩すのはグランドラゴ王国でさえ容易ではないとのことでした」
一番身近な列強国であるグランドラゴ王国の大砲の射程も最大で10kmほどなので、内陸部へ進攻しようと思うと森林でのゲリラ戦術にはかなり苦戦すると考えられる。
実際、静粛性と隠密性という意味では弓矢は銃火器に大幅に勝っている。もちろん、かさばることや矢をたくさん持ち歩かなければならないこと、射程は銃火器に遥かに劣るなど不便な点はたくさんあるがそれでも奇襲をかけるという点では十分に使えるのだろう。
旧世界においても、ベトナム戦争において国力・技術力などではるかに劣るはずのベトナムに対してアメリカが森林地帯を利用したゲリラ戦術に悩まされたのは有名な話である。
「また、狼人族も脅威ですね。今我が国に居住している獣人族同様に身体能力に優れているため、エルフ族同様に森の中に潜んで、刃の薄い曲刀で一気に斬り込むという戦法を得意としているようでして、この奇襲力を生かせば、わずか100人ほどで3000人以上の部隊を翻弄することも可能らしいです」
戦法自体は原始的だが、森林という天然の要塞を用いているという点がかなり手強いのだろう。
「ちなみに、我が国がもし戦うとしたらどうするかね、防衛大臣」
問われた防衛大臣はレポートを見ながら答える。
「そうですね……まず、森その物が厄介ですので、遠距離から特科大隊による榴弾砲の一斉砲撃を用いて隠れる場所を削ぎます」
日本は大規模爆撃の能力を保有していないため、森を少しずつ端から削る戦法を取らざるを得ない。
「更に、あくまで現状の話ですが空自の『F―2』戦闘機の『JDAM』によって拠点を破壊し、最終的に装甲車両で正面から攻めることがベストかと。もちろん環境破壊は望ましくないため、戦争後に森を再生させるためのプランなども必要にはなるでしょうが……」
要するに、弓や剣を受け付けないような装甲車両を上手く使えば損害なく勝てそうなレベルということらしい。
「それならば、彼らの基準で武器となりそうな物を輸出しても我が国にはそれほど問題なさそうだな」
「はい。防衛装備庁や防衛省、法務省などで議論は進めますが、こちらのリストに関しては問題ないかと考えます」
防衛大臣が差し出したリストを見た総理大臣は満足そうに頷いた。
「よし、では直ちに使節団の編成をしてくれ。相手は誇りと礼儀を重んじる種族らしいから、一挙一動に十分留意するように現場への徹底を頼むぞ」
総理大臣の指令を受けた官僚達はすぐに使節団編成のために動き出す。
こうして、日本側は着々と準備を進めるのだった。
新たな国へ派遣されるとあって、その準備はかなり手が込んでいる。
相手国へ献上する品物や、日用品などのリストをピックアップし、どういった船を用いて相手国の近くまで向かうか、そういった手段で上陸するかなどを議論する。
今回はグランドラゴ王国が話を通してくれたため、フランシェスカ共和国への飛行許可が下りた。そのため、沖合までは船で移動し、そこからヘリコプターを使用することを決定する。
多くの権限を持たされていたグランドラゴ王国の外交官たちにより、日本と異世界の英国は国交を結べました。次回はフランス編になります。
少しずつ大陸の事にも触れますので、どうかお楽しみに……