機動部隊の威光(二重の意味で)
今月1話目となります。
ついに蟻皇国に対する迎撃作戦が発動します。
――西暦1750年 2月25日 ワスパニート王国 首都メコミン 港湾部
この日、日本から派遣されたという海上自衛隊の護衛隊群が来るということで、ワスパニート王国の女王ワスパニウム14世は楽しみに待っていた。
「日本の軍艦か……果たしてどのような存在なのかのう。楽しみじゃのう」
隣には若手の外務卿であり、ワスパニウム14世の秘書のような立場でもあるシフォンが控えている。
彼女もグランドラゴ王国やアヌビシャス神王国などの国々が絶賛する日本という国のことを、とても気にしていた。
「我が国に新型の銃砲火器や飛行機、それに軍艦を売ってくれましたからね……正直、中古品を含めてもかなり高い買い物だとは思いましたけど」
「それを言うな。兵器とは質が良くなるにつれて高くなるものぞ。致し方ないではないか」
実際、ワスパニート王国で外輪船の蒸気船と射程3kmの大砲が完成した際には、それだけで従来の戦列艦より遥かに金がかかっていた。
なにがかかったかと言えば、『質の向上』に金がかかるのだ。
より純度の高い金属の鋳造方法や、洗練された船舶の作り方もそうだ。
「そうですけどぉ……支出が見る見るうちに増えたせいで財務卿からぶちぶち文句言われる身にもなってくださいよぉ~……」
そうは言うが、これでも当の日本からすれば、この『ピストリークス』を4隻、さらにフランシェスカ共和国や再建中のニュートリーヌ皇国などが将来購入を決定していることもあって、量産効果で随分と安くなった方なのである。
ついでに言うと、アヌビシャス神王国も、同じくフランシェスカ共和国やニュートリーヌ皇国など戦車と自走砲を売却しているため、同じく量産効果の恩恵を受けているのであった。
「すまんすまん……ん?」
ワスパニウム14世は素早く双眼鏡(日本から買った)を覗き込んだ。
「あれ、か?」
シフォンも同じように双眼鏡を覗き込むと、巨大な艦で構成された艦隊が港に近づいていた。
平均的に見ても、『ピストリークス』型巡洋艦に似た風貌である。
ただし、主砲は三連装砲ではなく単装砲、しかもピストリークス級より細く、一見すると頼りなさそうにも思える。
「へぇ、結構大きいですね……でも、蟻皇国の戦艦と比べると若干頼りない気もします」
「そうか? 蟻皇国の戦艦は大砲と機関銃が主な装備だが、あの船は他にも訳のわからぬ装備が多数見受けられるぞ。恐らく、我が国に供与された『レーダー』や、潜水艦などを捜索するための『ソナー』も搭載されているのであろう。それにあの必殺兵器・『誘導弾』も搭載されているのではないか?我が国に供与されているのが輸出を目的とした劣化版だとすれば、自衛隊の装備している兵器の能力は遥かに高いはずじゃ」
「じゃあ……一見頼りなさそうに思えるのは、その見た目で敵を油断させるため、なんでしょうか?」
シフォンの的を外れた推測に、ワスパニウム14世は冷や汗をかく。
「……それは違うと思うがのぉ」
実際、その通りである。
昔の軍艦は誘導弾などという必中兵器が存在しないために『攻撃を正確に迎撃する』という概念が薄く、『撃たれて命中しても砲弾を弾き返し、撃ち返せるだけの装甲』と、『攻撃をかわせる速力』が必要だったのだが、現代は対空誘導弾の能力が大幅に向上しているため、大概の飛来物(さすがに超音速の対艦誘導弾などはかなり厳しいが……)は迎撃可能となっている。
そのため、日本の主力護衛艦はせいぜい大戦時基準で言うと軽巡と重巡の間くらい(一応分類は駆逐艦だが……人はこう言う。『お前のような駆逐艦がいるか』と……)、『いずも』型護衛艦も2万t足らずの軽空母(これも大戦基準では十分正規空母なのだが……)である。
しかし、そんな彼らの度肝を抜く存在が現れた。
「な、なんじゃぁありゃぁ!?」
「あれが……戦闘艦なのですかぁ!?」
現れたのは、『やまと』型砲撃護衛艦2番艦の『むさし』と、『あかぎ』型航空護衛艦の『かつらぎ』であった。
『むさし』の全長は260m、『かつらぎ』に至ってはニミッツ級と同じ332mもある。
おまけに幅を取るスーパーキャリアータイプの航空母艦なので、長さも幅も、とにもかくにも『デカい』の一言に尽きるのだ。
ワスパニウム14世もシフォンも、その巨体にあんぐりと開いた口が塞がらないようだ。
「……我が国にも日本の貨物船や『たんかー』が来たことはあったが……それに匹敵する……いや、ある意味それ以上の大きさかもしれんな……」
「この世にあんなバケモノが存在するのですね……」
日本からすれば『むさし』はともかく、『あかぎ』型航空護衛艦はアメリカのニミッツ級を参考にしているため、全てがオリジナルとは当然言えない。
しかし、初めて見ることになるこの世界の人間にとっては、そのようなことは関係がないのだ。
あのような巨大な軍艦を日本が作った、作れるだけの技術と国力があるということに、強い畏怖を覚える。
ちなみに余談だが、今回の護衛隊群はシンドヴァン共同体を経由して東の航路で航行してきている。
本当はパナマ運河が完成していればそれを抜けてオーストラリア大陸を経由するのが手っ取り早いのだが、当のパナマ運河が10年以上を経てまだ7割くらいしか完成していないのだ。
それもこれも、国内外を含めて建設業が地獄の如き忙しさなのが原因なのだが、こればかりは開拓もあるため仕方がない。
そもそも、日本からすれば先史文明の人々がパナマ運河を作らなかった理由がよくわからない。
アメリカ大陸に文明があったならば、パナマ運河の存在は不可欠だったはずだからだ。
強いて言うならば、地球よりも早く航空機が発達したのか、それとも大陸をぶち抜くという発想がなかったのかという辺りが日本政府の考える理由であった。
ただ、他国に(特にユーラシア大陸)存在した先史文明の遺跡からすると、先史文明は発展した技術力にもかかわらずアメリカ大陸にはほとんど手を出していなかった可能性が高い、と政府は考えていた。
もっとも、実際にはまだ北方のアラスカなど調査しきれていない箇所はかなり存在するため、その中になにかしら施設がある可能性も否定はできない。
それでも人工衛星が捉えていないのだから存在しないと考えるべきなのではないか、という意見も出ているのだが、政府は『それでは原住民である様々な亜人類が存在している理由が思いつかない』と発言したことで、未だに議論の最中なのだ。
その中で、一部の学者が『アメリカ大陸は亜人類及び古代生物生育の実験場だったのではないか』という可能性を指摘していた。
これによって説明がつくこととして、『なぜアメリカ大陸にだけ恐竜が存在したのか』ということと、『アメリカ大陸に存在しなかったダークエルフ族、アラクネ族、オーガ族、ミノタウロス族、蟻人族、蜂人族などこそが彼らの創造したかった存在なのでは』という話がある。
もっとも、これも推論の域を出ていないので反対意見などは根強いのだが。
ちなみに、アメリカ大陸にはドワーフ族や有翼人族、蜥蜴人などは存在していた。
このあたりの差別・区別の不明瞭さもまた、政府及び有識者の混乱に拍車をかけていたりする。
閑話休題。
「我が国の港をやたらと深く、大きくするということからどういうことなのかと思っていたが……あのような巨大な船を入れるのであれば納得であるな」
「あ、あの大きな大砲、何cmあるんでしょうか……我が国に供与されたのって、えぇと~……」
「船舶向けは105mm砲と155mm……15.5cmの三連装砲であったな。あと、日本から歩兵支援用の榴弾砲というのも買ったが、あれも確か155mmじゃ。それが最大口径の砲だったはずぞ」
日本は『FHー70』を参考にトラックで牽引可能かつ自走も可能な輸出用榴弾砲を製作していた。
砲身は『99式自走155mm榴弾砲』や『19式自走榴弾砲』と同じ52口径の長砲身では長すぎるという意見もあったため、『初めてだから敢えて砲身長も短く、軽量に』というコンセプトから、99式、19式のコンセプトを参考にしつつ、40口径に抑えた155mm砲と、三菱重工業製のエンジン及びサスペンションなどを搭載した『FHー70』モドキを製造し、輸出タイプの『31式40口径155mm自走榴弾砲』として採用し、各国にアプローチしたところ、ワスパニート王国はもちろんのこと、アヌビシャス神王国やフランシェスカ共和国など、榴弾砲を保有していない各国で採用されることになった。
だが、グランドラゴ王国は負けじと自国で新たな榴弾砲を作ろうと試行錯誤しているらしい。
これにはアヌビシャス神王国も一枚噛んでいるそうなので、この世界としては性能の高い物ができあがるだろうと日本は予測していた……結果、どこをどう間違ったのか開発中の戦車の車体に戦闘室と装甲をつけ、155mm榴弾砲を固定砲塔配置で装備した『38式駆逐戦車 ヘッツァー』と『KJPz.4―5 カノーネ駆逐戦車』の中間と言っていいほどによく似たなにかができあがった時には、日本の技術者たちがずっこけたのは別の話。
やはり英国面は世界を超える。
閑話休題。
「あの巨大な砲艦……主砲の口径が何cmあるのかまるで想像もつかんな。少なく見積もっても38cm以上……いや、ここからあれだけ大きく見えるということは40cm以上か!?」
正確には45口径46cm砲という、地球史の艦載砲としてはもちろんのことながら、この世界においても世界最大の艦載砲なのだが、そんなことは知る由もない。
「ひえぇ……イエティスク帝国には40cm近い口径の大砲を持つ戦艦があるとは聞いていましたが……もしそれ以上だとすれば日本はやはり帝国よりも強いということに……」
「もし、ではないだろうな。帝国は誘導弾がまだ対空用のみで、日本は劣化版とはいえ輸出している。つまり、日本には『輸出しても構わない』というそれだけの技術格差があるということじゃ」
実際、解析や真似をしようと思っても、そのレベルに達しているのは今ではグランドラゴ王国だけである。
アヌビシャス神王国ですら、車両技術や砲の製造技術はかなり向上しているのだが、精密機械に関しては一歩遅れている感が否めない。
そして、2時間もしない内に全ての船が港に接岸したのであった。
中からは引き締まった風貌の男たちが降りてくる。
女性の人口が多めなワスパニート王国にとって、『イイ男』は格好の噂話の種である。
「見てよ日本の軍人たち……」
「ウチのダンナとはえらい違いねぇ~」
「一見細いけど動きが違うわぁ。洗練されてるぅ♡」
「あんな男に抱かれたいわねぇ」
「やだぁ、あの膨らんだ肩とかイカスわぁ~……」
「ハァハァ……腹筋見たい……ハァハァ……」
「なに言ってんのよ……胸筋の方が……イイに決まってるじゃない……」
「バカね……男ならなんと言っても……」
自主規制。
一部危ない嗜好を呟いている者もいるが、海自隊員も全く気にしていない。
というか、『そんな程度のこと』を気にしていたら、地球基準で見ても人外の巣窟(誉め言葉)の海上自衛隊ではやっていけないのだ。
そこ、色々おかしいとか言ってはいけません。
今更手遅れなのですよ。
ひと際体格のいい中年の男性が、ワスパニウム14世の前に立つと、惚れ惚れするほどに美しい敬礼をしてみせた。
「お初にお目にかかります。日本国海上自衛隊第4護衛隊群司令の鮎沢省吾と申します」
「ワスパニート王国女王のワスパニウム14世じゃ。この度は遠路はるばるよく来てくださった。国を挙げて歓迎いたしますぞ」
「恐れ入ります」
第4護衛隊群は今日1日をこの港で休息を兼ねて過ごし、明日にも蟻皇国艦隊を迎え撃つべく出港する予定だ。
蟻皇国の艦隊が『明日辺りに』出港しそうだというのが偵察衛星からの情報で明らかになったため、明日でちょうど間に合いそうなのである。
その夜、ワスパニート王国の王城はどんちゃん騒ぎとなっていた。
援軍に来てくれた日本の自衛官たちをもてなすため、王国が色々な美食美酒を集めて歓待しているのだ。
例えば、蜂蜜果実酒はもちろんのこと、特産の魚料理や肉料理、現地では美食と言われる虫料理などであった。
ちなみに、蜂蜜果実酒はかなりアルコールの低いもの……ぶっちゃけた話、ほとんどジュース状態となっている。
これは、明日の戦いのために出港する自衛官たちにワスパニート王国の方が配慮したためだ。
彼らとて作戦行動の前にへべれけになってはマズいことくらいはわかっているし、そんなものを勧めても自衛官たちは飲まないだろうとちゃんと考えていたからだ。
最初こそ海上自衛官も虫料理にはギョッとしていたものの、陸自のレンジャー隊員が『虫やヘビ、カエルはご馳走だ』と言っていたことを思い出したので、『何事も経験だ』と思い食べてみることにした。
――バリッ、ムシャムシャ……
「(あれ? 意外と美味いぞ)」
それもそのはず。
虫料理はものにもよるが、意外とエビやカニに近い味だという。
まぁ、元々カニもエビも、そしてサソリやクモ、そして昆虫類は大枠で見れば同じ『節足動物』なので、ある意味当然と言えば当然なのだが。
「おぉ、あっさりした味が蜂蜜酒と馴染みますな」
「アルコールがほとんどないというのがまたなんとも……逆にイイ!」
自衛官たちも明日のことがあるので酒はほどほどにしつつ、料理の方をメインで味わっている。
中には米を使ったパエリアに近い料理もあったりするので、意外と馴染みやすかった。
「さぁさぁ皆様、まだまだお料理はありますよ」
見れば、10代前半から20代前半までの若い女性たちが次々と料理を運んできて、さらに取り分けて自衛官のそばに寄っている。
おそらく、少しでもご機嫌を取っておきたいのだろう。
独身でない自衛官でさえ、アジア人に近い風貌で親しみやすい女性たちについついデレデレしてしまうのは、無理もない。
もっとも、ワスパニート王国側も『あまり押しすぎるな』と女王から厳命されているため、非常に程よい距離感を保っている。
それが分かる一部の自衛官たちは逆に彼女たちの手管に舌を巻いていた。
「(なるほどな……交渉上手なことがこれまでワスパニートを活かしてきたと言っても過言じゃないかもしれないな……あとで上と外務省に報告しておくか)」
群司令の鮎沢がそう考え報告したことで、後に外務省ではワスパニートの交渉術を脅威と捉え、職員及び防衛省を通じて自衛官に対策をきちんととるように厳命するのだった。
もっとも、そうとはわかっていない隊員たちは美女の接待に現を抜かす会社員のようになるのだった。
翌日、海上自衛隊第4護衛隊群はワスパニート王国の港を出港し、一路蟻皇国の港町・香港へと向かう。
先頭はやまと型砲撃護衛艦2番艦・『むさし』であり、他の護衛艦は後方約40kmを航行する。
なにかあればすぐに『Fー3B』と『Fー3C』が駆け付け防空する予定。
だが、もし今回の作戦がうまくいけばの話だが、空母も他の護衛艦の援護も、必要ないかもしれない。
その頃、蟻皇国海軍南方派遣艦隊は10ノットの速度でゆっくりと香港を出港していた。
香港からフィリピンことフィリップ島までの距離は1千kmもないため、10ノットの速度でも2日ちょっとで到着するだろうと軍部では考えていた。
相手は駆逐艦とはいえ皇国の軍艦を蹴散らすだけの力を保有しているため、その艦隊の数も堂々たるものである。
○定遠級戦艦(イギリスのセント・ヴィンセント級戦艦に酷似) 8隻
○遼遠級戦艦(イギリスのロード・ネルソン級一等戦艦に酷似) 12隻
○遼寧級航空母艦(イギリスのイーグル(Ⅰ)に酷似) 8隻
艦載機として剣魚(イギリスのフェアリーソードフィッシュに酷似)が1隻につき25機
○楊威級装甲巡洋艦(イギリスのマイノーター級一等装甲巡洋艦に酷似) 16隻
○超勇級軽巡洋艦(イギリスのタウン級二等巡洋艦に酷似) 16隻
○広甲級駆逐艦(イギリスのメディア級駆逐艦に酷似) 24隻
○重慶級駆逐艦(イギリスのアカスタ級駆逐艦に酷似) 32隻
○香港級揚陸艦(日本の神洲丸に酷似) 8隻
総数124隻という、近代史上ではとてつもない『数』を誇る大艦隊である。
しかも、これで北のイエティスク帝国に対する守りのための艦隊を残してあるのだから恐ろしい話であった。
艦隊司令の超孔惇は、眼下に広がる大艦隊を見て頷く。
「なんという素晴らしい艦隊なのだろう」
新旧混成艦隊とはいえ、鋼鉄の軍艦が100隻を超える数で航行している姿は、圧巻の一言に尽きる。
「ワスパニートの動きはどうだ?」
「それが、情報によると軍部が『全く動いていない』そうです」
「ふむ……我が国の本格侵攻と勘違いしたかな? 本土防衛を優先したのかもしれんな」
「まぁ、それならそれでありがたいですけど」
「おいおい。これほどの大艦隊を引き連れているというのに、海戦の1回もないというのは寂しいではないか」
超の冗談めいた一言に、艦橋の人々が苦笑する。
彼らはあと1日ほどで、ワスパニート王国領土のフィリップ島に到着する。
だが、そうは問屋が卸さなかった。
――ブウウゥゥゥゥゥゥゥゥン……
「ん? なんの音だ?」
「さぁ……」
「司令!12時の方向上空より、飛来する『なにか』が見えます‼」
「『なにか』とはなんだ‼」
「ま、まだ遠距離なので……あ、見えました‼ あれは……」
すると、対空監視員が絶叫のような報告を上げた。
「飛行機械です‼ 『無人の』飛行機械がこちらへ向かってきますっ‼」
「む、無人の飛行機械だとっ!?」
超も双眼鏡を覗くと、確かに人が乗っているとは思えないほどの飛行機械が、かなりの速度で艦隊上空に飛来しようとしていた。
「直掩隊に通達し、迎撃に向かわせろ‼ あれは敵の偵察機だ‼」
指示を受けた空母から上空を飛行する直掩の剣魚部隊に連絡が飛び、12機の剣魚が190kmの速度でその偵察機らしい物体の方へと向かった。
だが、偵察機らしい無人機は剣魚より遥かに速かった。
剣魚のすれ違いざまに叩き込もうとする機銃をひらひらとかわし、あれよあれよという間に艦隊の近くまで来てしまった。
「おのれ……対空戦闘用意‼ 対空機銃で撃ち落とせっ‼」
各艦には魚雷が搭載されていない代わりに、甲板上に7.7mm単装機銃が12丁、12.7mm単装機銃が6丁搭載されている。
「対空戦闘準備完了!」
すると、なにやら上から声が響いてきた。
『……返す。こちらは日本国海上自衛隊。蟻皇国軍に通達する。ここから先はワスパニート王国の領海である。直ちに引き返せ。繰り返す。こちらは日本国海上自衛隊……』
耳のいい超ははっきりと聞き留めた。
「に、日本の偵察機だったのかっ‼」
「道理で速いわけですな……剣魚がまるで子供のようにあしらわれている」
「えぇい、たとえ日本の飛行機だろうが知ったことかっ‼ 対空戦闘開始ーッ‼」
――ダダダダダダダダダダッ‼
――ドドドドドドドドドッ‼
日本が投入したのは、レシプロ機のような低翼にターボプロップエンジンを合体させて飛ばしている偵察機兼警告機・『RQー3・彩雲』であった。
見た目は航空自衛隊の『Tー7』練習機をさらに小型にしたような感じで、乗員スペースが存在しない、平面的なボディが大きな特徴である。
空母から発艦できる軽量なボディに大出力のエンジンを搭載しているため、時速なんと600kmは出せるという優れモノである。
アメリカのグローバルホークに比べても加速減が楽でおまけに機動力が高いので、敵に見つかっても生存しやすいという利点がある。
ただし、警告機も兼ねているため万が一撃ち落とされてもいいように自爆装置も搭載されている。
艦隊から撃ち上げられる対空砲火は猛烈で、まるで光のシャワーであるかのようであった。
しかし、目視照準の銃撃は速度を落とした偵察機にさえ当たることはなく、時速350kmで飛行する『RQー3』を捉えきれていなかった。
やがて、反転した『RQー3』は、速度を一気に500kmまで上げて艦隊から離れていくのだった。
重大なお知らせです。
『100話目のあとに次の作品の連載開始を始める』と言っていた件ですが、今月26日か27日に投稿しようと思います。
その名前は……『転生特典に艦隊もらったけど、クセのあるやつばっかり‼』です。
神の手違いで死んだ主人公が、神から転生特典としてもらえるものとして、『自分が指揮できる艦隊が欲しい』と言ったことから始まる物語となっております。
私の知識がないのでリンク先を張ることなどはできませんので、できれば普通に検索してみてください。
また、それに伴いまして日本時空異聞録を月一投稿にします。
ちょっと詰めの方で悩んでおりまして、月一にすればエタることなく皆様にお届けできると思うのです。
また、『転生艦隊』も月一投稿とさせていただきます。
一応こちらは50話ほどストックしてあるのでしばらくは大丈夫だと思うのですが……できるだけ早く日本時空異聞録を完結させようと思います。
日本時空異聞録の次回は4月9日か10日に投稿しようと思います。