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不覚の運命  作者: Traitor
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第一章 不覚 4

 帰り道。桐谷は、一人絶望にふけっていた。

 このままでは、まずい……。

 そのことが、脳裏の中で延々と渦巻いている。そして、それが最悪の事態を想定する思考へと変わっていくのである。

 つまり、それは逮捕だった。

 それだけは、避けなければならない。だが、今日のやり取りを思い出すとその希望もどんどんと薄れていく。

 どうすれば……。

 桐谷は、再び今まで起こった出来事を振り返っていた。

 ――今考えれば、はじめから妙だったのだ。

 突然かかってきた電話。私立探偵の白崎竜輔と名乗る男。そして、黒川隼人が行方不明になったという通告。

 普通なら、誰かが行方不明になった場合はじめは警察に通報する。だが、警察はそれほど本気では捜そうとはしない、またはずっと捜してくれるわけではない。そうなれば私立探偵に頼むこともあるだろう。

 そのことに特に問題はない。だが、たとえ私立探偵に頼んだとしても、そして仮にその捜査の一環として彼の友人である桐谷に連絡することがあったとしても、なぜ直接会う必要があったのか。

 桐谷は電話の中で、彼が行方不明になったという事実を知らなかったと言ってはいなかったが、少なくとも会話の流れから察して理解できたはずだった。それなら、それでこれ以上話すこともないはずである。

 だが、彼は面会することを申し出た。そして桐谷も少しの疑いこそあったが、特に気にもせずにその申し出に乗ってしまったのだ。これは、完全に桐谷のミスだった。

 そして、面会してからの質問の数々。これが、行方不明に一体何の関係があるのかというと、全くないのである。

 妙な点は、他にもいくつも存在していた。

 一日中家に待機しろ、夜に黒川の家に行け、などという暴言とも言える命令が、その代表的な例である。

 だが、桐谷はその疑いを確信には変えられなかった。

 ――そして、騙されたのである。

 桐谷は、そんな現実と自分の無力さに落胆しながら到着した家の中へと入った。

「どうして……」

 桐谷はそう嘆いて溜め息をつくと、シャワーを浴びることにした。悪いものを洗い流して、すっきりしたかったからである。

 だが、そうもいかなかった。シャワーを浴びている間、桐谷はずっと消極的なことばかり考え、何度も落ち込んでいたのである。

 シャワーを浴び終えて身体を拭き、バスタオル一枚という格好で居間に戻ると、桐谷は隣の部屋――つまり、仕事の部屋に入ってパソコンの電源を入れた。

 桐谷はシャワー中のことあってか、最悪の事態を想定して、そのことについて調べたかったのである。

 桐谷は、いつも使っている検索サイトを開く。

まずは『殺人罪』と検索した。

 何十万件と検索結果が出る中、その上のサイトから順に最もわかりやすそうなサイトを探していく。

 良さそうなサイトが見つかり、その中の法定刑という項目を見てみる。

 そこには、『法定刑は死刑、無期懲役、又は五年以上の有期懲役のいずれか』とあった。

法定刑とは、ある犯罪に対して科されるべきものとして、法令が罰則により規定している刑罰のことである。

 桐谷はその死刑という文字を見た途端、目眩を起こしそうになった。それが、自分に関係することがあるかもしれないと思うと、恐ろしくて仕方がない。

 だが、それを無視するわけにもいかなかった。

 桐谷は心を入れ替えて、次に『死刑』と検索する。

 サイトを開くと、その死刑に関する情報のうちその歴史や目的などについて書いてある部分は飛ばして、その量刑基準についての項目を探した。

 ――それが今の桐谷にとって、最も知りたい情報だったのである。

 そこには、日本が死刑判決を宣告する際には、現在では永山基準というのを参考にしている場合が多いと書かれていた。

 そして、その基準として次の九つの項目が提示されていた。


 一、犯罪の性質

 二、犯行の動機

 三、犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性

 四、結果の重大性、特に殺害された被害者の数

 五、遺族の被害感情

 六、社会的影響

 七、犯人の年齢

 八、前科

 九、犯行後の情状


 桐谷はその個々の項目に対しても詳しく調べてみたが、一般人である彼にはしっかり理解したという確信は持てない。

 だが、それでも特に三や四の項目に関しては、十分死刑に値するものであるということくらいは理解できた。

 桐谷は身震いした。もし、本当に逮捕ということになってしまえば、そしてその最悪の事態は死刑ということになる可能性を秘めているのだ。

「そんな馬鹿なことがあるか……」

 そう自分に言い聞かせ、パソコンの電源を切る。

 居間に戻って一服し、洗面所に行って歯を磨く。用を足したあと、そのまま寝室に行きベッドに横になった。

 ――早く寝てしまおう。

 そうすることで、少しでも現実から逃避したかったのである。

 だが、彼はその夜も寝付けなかった。

 理由はきっと、その恐怖によるものだろう。

 桐谷は、自分が無罪だという絶対的な事実がありながらも、その証拠がなく、逆に犯人だと思われる証拠しか見つからないというもうひとつの事実を前にしては、前者の事実など、単なる気休めにしか感じられなかったのだ。


 そして、次の日……。

 その日も桐谷は署に呼び出され、再び事情聴取という形になってはいたが、明らかに彼の自白を待っているような態度に変わっていた。だが、確かに藤森はそんな態度だったが、野田だけは昨日とは少し違った雰囲気を見せていた。

「――まずいですね」

 藤森が桐谷に白状させようとしているとき、突然、野田が何か考えるように呟いた。二人は、彼の方に振り向く。

「何が、まずいのですか?」

 と、藤森が当然のように聞いた。

「このままでは、桐谷さんが犯人ということになってしまいます」

 一瞬の沈黙のあと、「え?」と藤森は目を丸くした。桐谷も、それが自分の立場を有利にする発言だとは理解できたが、彼の口からそんな言葉が出るとは微塵も思ってもいなかったので、その予想外の発言に少し困惑していた。

「……野田警部。警部は、彼の話を信じているんですか?」

 藤森は、両手を大きく広げて抗議した。

「現に、彼は白崎竜輔と会ったという嘘をついている。私たちとはじめて会ったときにも、嘘をつきました。それに、その話自体あまりに不自然ではありませんか? 私には到底信じられません」

 すると野田は、まるで独り言のように静かに言った。

「私もはじめ、そう思っていた。しかし、昨日よく考えて、わかったんだ」

「何が、わかったんですか?」

「桐谷さんが、犯人ではないという可能性が高いということが……」

 藤森は無言になる。野田は、座っていた椅子からゆっくりと腰を上げた。

「――なぜ、彼は白崎竜輔に会ったという嘘をついたと思う?」

 野田が、窓の外を見ながらそう問う。いつのまにか、彼は敬語ではなくなっていた。

「それは、自分の罪を隠すためではないかと……」

「では、わざわざ北海道にいる人間を。それに、年齢も間違えて答えたのは、なぜだと思う?」

 藤森はその質問に対して、あらかじめ用意しておいた答えを見るような感じですらすらと説明をはじめた。

「おそらく、彼は衝動的に黒川を殺してしまったんだと思います。だから、考える余裕があまりなかった。そこで、どうにかして考えようとしたときに、テレビか他の何らかの形で白崎竜輔という人物を知った、または知っていた。ある程度有名な方ですから、知ることに難はなかったと思います。しかし、住んでいる場所、年齢までは知らなかったので、そこは適当に言ったんでしょう。あとは適当にこじつけて、指紋が残ってしまったということにすればいいんです」

「……なるほど。しかし、それでは妙だと思わないのか?」

 藤森は、何がというような眼差しで彼を見た。

「なぜ、彼は指紋を残したんだ?」

 瞬間、藤森はあっと声を上げる。野田は振り向くと満足そうに頷いた。

「そうだ。もし、彼が本当に黒川を衝動的に殺してしまい、全く指紋も拭かずに帰ってしまったのなら、私もそれで疑わなかった。しかし、指紋が残っているのはごく一部のところだけだ。わざわざその指紋だけを拭かず、なおかつそれを知っていながら帰るなんて、普通では考えられない。指紋を残さないのなら全部拭くはず、拭き忘れなら、彼はそんな発言はしない、というより知らないはずなんだ。それに、指紋については彼の話に矛盾はない」

 なるほど、と藤森は納得した。桐谷はというと、二人のやり取りをただ黙って見ているだけだった。

「それに、どうも私には彼が嘘をついているようには見えないんだよ。長年の勘という奴かな。それに彼は一般人だ。こちらの知識もあまり詳しくはないはず。それなら、騙されても無理はないだろう。まあ、詐欺と似たようなものかもしれないな」

 藤森は、感心するように野田を見た。

 事件の状況をしっかりと把握し理解していなければ、彼のような的確な判断は下せない。藤森は自分の甘さを、そして彼との警察官としての差を改めて感じた。

 だが、そうなれば当然のようにひとつの疑問が浮かんでくる。

「では、一体誰が真犯人なんでしょうか?」

「そこなんだ……」

 野田は腕を組んで、考えるように唸った。

「桐谷さん、そのことで何か心当たりはないですか?」

 藤森が聞いてくる。先ほどまで白状させようとしていた彼が、違うとわかれば急に態度を変えてきたことに桐谷は少し気分が悪くなった。だが、疑いが晴れたことには満足している。当然のことなのだが。

「いえ、ないですね……」

 特に思い当たることもなかったので、そのまま素直に答えた。

「やはり、まずいな」

 野田が再び呟く。藤森は「そうですね」と相槌を打った。

「いや、そういうことではない。桐谷さんのことだ」

「私のことですか?」

 桐谷は、意味がわからないというように首をかしげた。

「そうです。私は、もはやあなたを疑ってはいません。藤森巡査もそうだと思います。しかし、上の連中はそうはいかないでしょう。もし、真犯人が見つからないとなれば、あなたを犯人にする、というより必然的になってしまう恐れがあります。指紋を残してそう発言したのも、すべて自分の罪から逃れるために行ったことなどということになってね」

「そんな……。無罪の人間を裁くなんて、それでも日本を守る警察なんですか?」

「事件が未解決のまま終わるよりはましなんです。現実とは、ひどいものなんですよ。それに、その可能性がないわけではないでしょう? だから、そう言っても何の支障もない。むしろ、他に誰もいないのだからそれが正しくなってしまう。今だって、本当は私たちの方が騙されているかもしれない。そういうものなんです」

 桐谷はその事実に幻滅した。今や日本の警察、いや社会は、すでに自分の思い描いていたものとは大きく異なっているのだろう。だが、そうだとしても本当にそこまでやるのだろうか。桐谷は疑問に思ったが、彼は警察としてそのことはよく理解しているはずだから、間違いないのだろうと思った。

「しかし、あなたが無罪だという証拠があれば、それはもちろん無罪になります。しかし、私たちが今まで調べたところでそれは見つかりませんでした。むしろ、あなたが犯人だという証拠しか出てきません。先ほどの指紋を残したという不可解な事実があったとしても、それが犯行の手口と言われれば……」

 そこまで言い終えたところで、桐谷は昨日まではないにしても、未だに自分の立場が危ういということを改めて思い知った。

「じゃあ、もっと調べて、早く無罪の証拠を探してください!」

「当然、そのつもりです。しかし、そう簡単にはいかないと思います。私たちも手は尽くしたつもりでしたから。その結果、あなたが犯人だと思ったんですよ」

 と、野田は困った顔をした。

「じゃあ、どうすれば……」

「もちろん、証拠も探します。しかし、それが薄いとなると真犯人を探す方が早いかもしれませんね。あなたは、その白崎竜輔と名乗る男に会ったんですよね。彼が事件に関係していることは間違いないですから、その男を探しましょう。顔は憶えていますか?」

「ぼんやりとなら……」

「ではまず、その男の似顔絵でも書いてもらいましょうか。あとで似顔絵技能員の方に来てもらいますから、憶えている範囲でできる限り答えてくださいね」

 そう言って野田が藤森に目で合図を送ると、彼は頷き部屋を出ていった。二人になったところで、野田が再び口を開く。

「では、もう一度詳しくお話を聞かせてもらいますか。話している途中にでも、何か思い出したことがあったら、遠慮なくいってくださいね」


 それから、三日たった。

 だが、依然として桐谷が無罪だという証拠は見つからず、真犯人の手掛かりも皆無だった。似顔絵は完成し、桐谷なりに手応えはあったのだが一向に情報は入ってこない。前科者のリストも調べたらしいが、特に怪しい人物はいなかったとのことだった。

 署の取調室には、野田と藤森の二人だけが残っていた。

「それにしても、あのときは言い過ぎたかな」

 野田が、タバコに火をつけながらそう痛言する。

「言い過ぎですか?」

「ああ。この間、桐谷さんに言ったことだよ。私たちは疑っていないが、上の連中はそうはいかない。そして現実はひどいものだ、と私は言ったよな。しかし、たとえ上の連中としても、無実の人間を裁くことはできないし、むしろ許されない。現実としても、実際に無実だとわかっている人間を無理に裁くわけがないんだ。しかし、私は彼らをまるで悪人のように扱ってしまった。無礼極まりないよ」

「しかし、それで桐谷さんが自分の立場に危機感を抱いてくれたんですから、大丈夫ですよ」

 藤森がそう言うと、野田は少し微笑んだ。

「まあ、そういうことにしておくか」

 だが、またすぐに表情が真剣になる。

「しかし、このままでは本当に桐谷さんが犯人ということになってしまうな」

「さすがにここまで手がかりがないと、厳しいですよね」

「ああ。しかし、その白崎と名乗る男は必ずどこかに身を潜めているはずなんだ」

「海外に逃げたかもしれませんよ?」

 いや、と野田は否定した。

「その可能性は低いな。犯人は、現場で金銭の方も漁っているんだ。つまり、奴はそれほど裕福ではないということになる。裕福なら、黒川を殺した時点でいつ誰が来るかわからない状況の中、指紋やその他の証拠も残さないという作業もある中で、そんな行動を取る必要はないだろう? 危険過ぎる。そして、そこで得た金も黒川の家の事情からして、大した額にはならないはず。そんな金で、わざわざ仕事をやめて海外に行くことは自殺行為になってしまう。必ず日本の中、いや都内にいると思う」

「しかし、それが正しいとは言い切れないのでは?」

「ああ、確かに言い切れない。しかし仮に海外へ逃げられたとなれば、ことらとしても打つ手がなくなってしまう。今は、私たちのできる限りの範囲で捜査を進めていくべきなんだ」

 すると藤森は、それで十分だという感じで頷いた。

「そうですね。そう考えないとやっていけませんよね。今回の事件の解決は、なかなか難題だと思いますが、期待していますよ、野田警部」

「ああ。必ず、真犯人を捕まえてみせるさ」


 桐谷はベッドに倒れこむと溜め息をついた。疑いが晴れたことはいいが、まだ犯人として逮捕されないと決まったわけではない。

 だが、たとえ逮捕されたとしても、最悪の事態――つまり、死刑だけは逃れられる可能性が高くなっただろうと、安堵しているのも事実だった。

「そう言えば、あの電話からだったんだよな……」

 と、桐谷はまた過去を振り返っていた。

 すべては、好奇心からはじまった。毎日の退屈を少しでも晴らしてくれると思い、行動したのである。

 ――不覚だった。

 そして何度も思ったことだが、もう少しは警戒できたのではないか、と桐谷は自分の未熟さを悔やみ、そして思い知った。

 桐谷は、自分はもう立派な大人だと思っていたのである。だが、事実は違っていた。警察のことはおろか、社会の仕組み、いや、身の回りのことについても全く知らないではないか。作家という仕事のせいにはしないが、あまりにも無関心で自分勝手だったのである。それが仇となってしまった。

「これから、どうなってしまうんだ?」

 桐谷は、天井に向かって呟いた。

 どこかで、今の状況から脱することができた機会はなかったのか。

 変えられるわけのない過去を色々とシミュレートしている自分が、そんな無駄なことを考えてしまう自分が、ひどく情けなく感じた。

 ――そのとき、白崎のある言葉を思い出した。

「もしもし、星野さん? どうしました?」

 桐谷は、はっとしてベッドから飛び起きる。

 星野……。

 確かに白崎はそう言っていた。もしそれが偽名ではなかったとしら、いや、あの感じは、偽名を使ったようには見えなかった。あまりにも自然な対応だったのだ。

 もしかすると、犯人は見つかるかもしれない。

 桐谷は急いで受話器を取ると、野田に連絡を入れた。


 翌日署に行くと、野田と藤森の他に一人の若い女性が一緒にいた。背は、二人より少し低いくらいだ。

 よく見ると、髪は肩にかかるくらいで整った顔立ちをしている。二十代なのは間違いなさそうで、桐谷は、綺麗な人だなと思った。

「こちら、婦警の澤田皐月さんです」

 桐谷はその名前に聞き覚えがある気がしたが、彼女が「はじめまして」と挨拶してきたので、気のせいだろうと解釈した。

「彼女、黒川隼人の古い友人でしてね。今まで他の捜査に当たっていたんですが、今日からは我々と一緒に行動することになります。あと、事件の概要は伝えましたので」

 彼女が再び会釈したところで、野田が話を切り出す。

「それで、昨日の電話であった星野という人のことですが……」

「何かわかりました?」

「いえ……。しかし、その情報は大きいと思います。おそらく、それは偽名ではないでしょうから」

「なぜですか?」

 藤森が聞いた。

「彼は、星野からの電話を出る直前に表情を曇らせたそうです。ということは、あらかじめ連絡すると伝えていなかった可能性が高くなります。つまり、突然の電話だったんです。そして、彼は迷いもなく星野さんと言った。そして、そのときもはっとした表情で桐谷さんを見たそうです。それなら、思わず星野という名前を口に出してしまい、しまったと思ったことが考えられます。そのあとトイレに行ったのは、話の内容を聞かれたくなかったからでしょう」

 でも、と今度は澤田が言った。

「はじめから、星野という偽名をその男に教えていたことは考えられませんか? それなら、自然に口に出しても不思議じゃないですよね? はっとしたのも、たまたまだと考えられますし」

 そうですね、と野田は賛同する。

「その可能性もあります。しかし、そうだと言ってしまえば、一向に犯人には辿り着けません。今は、それが本名だと考えていくしかありません。犯人の手掛かりとなる大きな情報ですからね」

 澤田も、まだ不服なのだろうが頷いた。

「それならきっと、その星野という人は比較的地位の高い人物でしょうね。大きいか小さいかはわかりませんが、どこかの会社の社長クラスでしょうか?」

 と、藤森は新たな手掛かりを得たためか少しやる気が出たようだった。

「それはまだわかりませんが……そうですね、まずはその辺りから調べていくことにしましょう。もしかすると、暴力団関係の類もあるかもしれませんね」

 野田がそう付け加えると、澤田は少し畏まったような表情になる。

「暴力団……ですか?」

「ええ。動機を考えると、個人的なものも考えられますが、複数の人間が絡んでいるとなると、何かの団体にとって、不都合が生じたことによる殺人も考えられます」

「なるほど。黒川隼人が、何か極秘の情報を握ってしまった。もしくはどこかの団体に対して、何らかの裏切り行為があったということですか?」

「そうです。そちらの可能性も考えて、調べていきましょう」

 すると、野田は桐谷へと振り向く。

「桐谷さん。必ず、真犯人を捕まえてみせます」

 桐谷は、その言葉に少なからず安心した。

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