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ヤナのお留守番―命懸けの金稼ぎ― 中編


 気紛れで書いたバトル展開がここまで長引くとは……次回でできればキリつけてしっかりほのぼのを書いていきたいです。


 


「「なぁに……これ……」」


「ごはん……だよ?」


 明らかに失敗した。料理など生まれてこの方したことがなく、あまりにも無知すぎた。目の前に置かれた謎の物体に二人の疑問の声が重なる。

 まず一番の敗因は、「裏返す」事を知らなかったことだろう。


 フライパンに肉と魚を載せて火を付け放置。肉も魚もずっと片面だけ焼き続け、何故何時まで経っても生なのだろうと疑問に思って裏側を確認した頃には、裏側半分は既に炭になっていた……


 自分でも理解できる。私バカだ。しかし、触手ちゃんのに至ってはもっと酷い。


「これは……泥、ですねぇ……」


「ごめん……」


 マンドレイクの子が土を食べるようなことは知っていた。だが、どうすればいいのか分からずに……


 庭の土に水を……


 そうして出来たのが、この泥団子でも作るかのようなベチャベチャの泥だ。

 いくら私でもこれらが食べ物にならないことくらい理解できる。


 私は昨晩ソラからたっぷり頂いたから一週間くらいは余裕だが、この子達は普段から一杯食べるそうだからそうはいかないだろう。どうするか……


「「「お腹すいた……」」」


「ほんっとにごめんなさいぃ……!」


 ソラ、早く帰ってきてぇ……!


◆◇◆◇◆◇◆


 もう何体斬っただろうか。時たまドロップするレアアイテムを拾う暇もない。そして、俺の体力が尽きかけた頃、中央の石像から地鳴りのような音が聞こえ、ビシリとヒビが入った。


「うっそだろ……」


 この階層のボスが動き始める。しっかりした装備ならまだしも随分とラフな服装で来てしまった。ここまでは運良くほぼ無傷ですんだが、ボス戦はそうはいかないだろう。


 ビキビキと激しく音を立てその巨大な体躯を覆っていた岩石が剥がれ落ちてゆく。

 十秒ほどで目の前に姿を現したのは、孔雀のような鳥の頭に屈強な人間の腕がくっついた言った風貌の禍々しい魔獣だった。

 全身は鮮やかな鳥の羽に覆われ美しい色合いなのだが、下半身から生える鱗に覆われた刺々しい尾は明らかに殺傷を目的としている。


 覚悟を決めて最後の回復のポーションを一気にあおる。みるみる体力が戻るのを感じるが、この体力が切れたときは一巻の終わりだ。

 手汗を拭い剣を握り直す。剣自体はレアドロップの剣を一流の鍛冶屋に強化させた一級品だ。攻撃力、切れ味ともに申し分ない。

 だが、この無装備に等しい格好で一撃を喰らえば即死だし、かするだけでも致命傷だ。


 集中を極限まで高めろ……!


 敵はそのぶっとい双腕で近くの岩石を持ち上げ、大きく振りかぶった。その間にもモブモンスターは湧き続けるから、それをあしらいつつ攻撃をいなすかかわすかしなければならない。


 眼前に大きな岩石が投擲される。一度モブから視線を外し、落ち着いて岩石の中心に刃筋をたてる。

 カンッと小気味の良い音を立て岩石は俺をかわすように二つに切断され、周りのモブを巻き込んで俺の背後に落ちた。その隙にその巨大なボスの懐まで間合いを詰める。


 それに気づいたボスは慌てたように俺へ向かって腕を伸ばすが、一太刀で骨を断ち腕を切り落とす。


「ヴギィァアァギァァ!!」


 鳥とも怪物とも付かない雄叫びをあげるが、容赦せずに返り血を浴びながら腹部を斬りつける。だが即座に再生が始まり、危うく剣ごと巻き込まれて再生されかけた為一度間合いをとった。


 距離を置いた俺に対して間髪入れず刺々しい尾がが襲いかかってくる。反射的に切断したが、斬った表紙に砕けた刺の破片が左腕に突き刺さった。 

 次の瞬間には左腕はだらんと垂れ下がり、激痛と共に動かなくなってしまう。


「チッ、麻痺毒もかよ……ッ!」


 脈打つ度に激しい痛みが身体を貫く。だが、容赦なく再び岩石が投擲され、ギリギリでかわすことに成功するが既に体力も残り少なくなっている。


 冷静に努めて観察すると、額にコアらしき物が見える。紫色の宝石のようなものが一瞬キラリと光った。

 ダンジョンのボスと言うのは大抵宝を守るために意図的に造られた物のため、弱点が必ずあるものだ。

 だが、コアは頭の上で、こいつの体長は十メートルはありそうだ。だが、やらなければ100%死ぬ。


「やるしかねぇか……死にたくねぇし」


 ちぎった袖で使い物にならなくなった左腕を縛って固定し、剣は口にくわえる。


 最後の体力を振り絞って、全力でボスに向かって踏み出した。


 




 あと、日間ランキングで34位になってました。ありがとうございます!

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