本当に欲しかった物。―契約完了― 中編
「そうだなぁ、まずは服だな。服。」
「えぇー!?首輪じゃないの?」
「まずはちゃんとお洒落してからな。」
ガロの頭をくしゃりと撫でる。そして、目に入った適当な服屋に入った。武器屋や装備品の店ならある程度よく知る店があるのだが、女物の服となると正直行ってよくわからん。
「この子達に似合いそうな服を幾つか仕立ててやってくれ。後は、大人用の女服も頼む。」
リーフも歩いている内に人間の姿になったようだ。
「はーい、了解です!お客さんは初めてのご来店ですねぇ、冒険者さんですか?」
「えぇ、まぁ。」
「へぇー、そうなんですか!この娘達は奴隷ですか?首輪をしていないようですが。」
「はい。結構前から一緒に暮らしてはいたんですけれど、今回本契約しようと思いまして。獣人の服も大丈夫ですか?」
「勿論ですよ!うちの店、結構獣人のお客さん来ますから。あ、それと、大人用の方はせめてざっくりした身長とかはお願いします。口頭で大丈夫なんで」
感じのいい店で良かった。店員さんも明るい、中年くらいの女性だ。よく口が回るなぁ、と考えながら、ヤナを思い浮かべてみる。よくよく考えてみると、そんなにまじまじと観察したこともないからよく分からんな。
「えーと……立ったときに確かに顔が俺の首くらいで……あ、俺の身長は178センチ位です。」
「とすると、165センチ位ですかね。ちょっと大きめに取っときますね!ちなみに、スリーサイズは?」
そう話しながらも腕はてきぱきと3人のサイズを計っていく。リーフはリラックスしているが、二人は直立不動でカチコチだ。
……スリーサイズ?
「いやいや!流石にそれは分かんないっすよ!」
「え~?お若いんだから、夜に触るくらいするでしょう?ほら、手に収まるか収まらないかとか~。」
ぶふぉッ!と盛大に吹き出してしまった。表現が生々しい!
「そういう関係じゃないですよ!」
「ははーん?さては、それで今回契約するんですね?話を聞く限り、その娘も獣人でしょう!」
図星を突かれて分かりやすくギクリとしてしまう。さすがの洞察眼だ。だてに客とも喋る職業してないな。
「今夜はハッスルするんでしょう?ほら!男なんだから、妄想!何となくでいいから!」
なんだか段々口調が大雑把になっていくな。だが、不快感を感じないからこの人が口上手なのだろう。
妄想と言われても……仕方なく血を吸わせたときのことを思い出す。あれは結構密着するからな。
たまに、仕方なく当たる。仕方なく。
「たぶん、たぶんですよ!?大きくはないですけれども……まぁそこそこ……その……うん。あとは、基本的に細身なんで腰は細いです。」
その辺でなんの話をしているのか察した二人が口を開いた。何故か二人とも少しむすっとしている。
「「……スケベ。」」
不可抗力なんだ!だが、言い返せないのが悔しい。
「はいはい。何となくわかってきましたよ。それで、肝心要のお尻は?」
ここまで来たら、遠慮するのもなにか変だ。ヤナの服のためだ。二人の冷たい視線に耐えろ……!すまんヤナ!
「まぁまぁ、大きいです……」
「分かりました!身長からで大体わかるので、これでピッタリに仕立てられると思いますよ!ざっくりなら推測できるんですが、やっぱり似合う服を作ってあげないとねぇ。」
よしっ、といって立ち上がり、メジャーを巻き取った。
「これで終わりです!お任せで、と言うことだったので、夕方ごろに取りに来てください!」
「分かりました。ありがとうございます。」
頭を下げて店を出た。二人がやけに密着してきているのは気のせいではないだろう。心なしか表情も不機嫌そうだし。
相手の話し方が大雑把になるのと反比例して、俺は敬語になっていったな。完全に相手のペースに巻き込まれていた。
服屋の店員、恐るべし。