プロローグ
説明的なのは間違えて全部作品内に書いてしまいました。
俺は、先代から受け継いだこの施設を17歳で切り盛りしている。とはいえ、先代は「死んだと思え」の置き手紙を残して消えただけだし、15歳から大人のこの世界では、17歳は立派な大人だ。
流石に先代の遺してくれたお金だけじゃ足りないから、たまにダンジョンなんかにも入ったりしながら、のんびりと過ごしている。
その施設とは、『奴隷保護所』。ここ最近我が国の王様が魔族に対抗するためだとかとか言って、異世界から大量に人間を召喚しているらしい。
どうやら『地球』と言う惑星から召喚しているらしいのだがそこの文化がまたしょーもない物らしいのだ。特に「日本」という地域。
勇者に憧れて戦いに出る。ここまではいいんだが、何やら『奴隷』を買うことが好きらしい。
確かにこの世界の奴隷は獣の耳が付いていたり体から羽が生えていたりと、あちら側にはない姿をしているのはわかる。
だが、それを恋愛対象にする輩がアホみたいに多いのだ。たいした実力もなければ儲けることも出来ない。ましてや奴隷を養うことなど出来る筈もない。
結果、大量の奴隷が捨てられてしまう。まず奴隷と言うのは一部の貴族階級の者が身の回りの世話をさせるために雇うものであって、愛玩動物とはまた別のはずなのだ。まぁ奴隷は女の子だけだし、可愛らしいから仕方ないかもしれないけれど。
そんなこんなでこの店でも数体の奴隷を保護していて引き取り手を待っている状態だ。
「あっ、考え事してる間にもうご飯の時間だ……」
今日も俺は忙しい。
◆◇◆◇◆◇◆
「おきなさーい、朝だよっ!」
声をかけながら奴隷部屋の窓を開け放つ。本来奴隷は鉄製の檻で管理するものなのだが、あまりに可哀想だから一人一人にベッドを用意しているのだ。
「んにゅむ……おはよう、ご主人……」
「ガロ、俺はご主人じゃないって。寝惚けてんのか?」
「ご主人はご主人だもん……」
最初に目を覚ましたのは狼系の獣人、ガロだ。俺の事をご主人と呼ぶ癖は直さないといけないのだが、本人が止めないのだから仕方ない。どうやら理解した上でそう呼んでいるようなのだ。
「ガロ、他のみんなも起こしてくれるか?俺はご飯を作らなきゃ。」
「ん、わかった。」
ガロに任せて俺は台所へ走る。小さい体をしてる癖に皆大ぐらいで、食費も馬鹿にならない。
「ガロは肉で、マリは魚……リーフは栄養豊富な土と水……」
全員分それぞれ種類が違う。好みもあるが、種族別に食うものが決まっているのだ。最初のころは混乱していた作業も今では慣れてテキパキこなせる。
「みんなー、ご飯できたぞ!」
ペタペタと裸足の足音をならして3人が部屋から出てきた。まだ眠そうで、目を擦ったりあくびをしたりしている。
本当はもう一人いるのだが、コウモリの獣人は夜行性だから朝は起きてこない。
「おはよぉ~、ご主人……」
おっとりしているのはマンドレイクのリーフ。何を考えているのか良くわからないし、一日中ぽやっとしている。頭を撫でると喜ぶときと怒るときがあって良くわからん。
「おはよ……ご主人」
猫系の獣人マリはいわゆるツンデレだ。普段は目に見えて甘えることは少ないが、二人の時にはよくじゃれついてくる。
「皆起こしたよっ!ご主人っ、撫でてぇ~!」
ガロはすっかり目が覚めていつも通り元気はつらつになったようだ。膝の上に飛び乗ってきたのをよしよしと撫でると嬉しそうに尻尾を振った。
「お前らなぁ……ご主人は俺じゃねぇってのに……ホントにご主人になる人が来たらどうすんだよ?」
「私のご主人は……ずっとソラさんですよぅ」
「ご主人……私達の事を見捨てる気なの……?」
「えっ!?ご主人私達の事捨てちゃうの!?」
3人が潤んだ眸で見上げてくる。この目をされると、これ以上言うことはできない。結果的にいつもこいつらのペースに持ってかれて怒ることが出来なくなってしまうのだ。
「わかったよもう!捨てないし見捨てないから!ご飯食べるぞ!」
「「「いただきますっ!」」」
何だかんだで俺、結構幸せです。