召喚
グルメオンラインーーー6
あれから弟を本気で切ってやろうと思ったが、プレイヤーを故意に攻撃するとPK職に堕ちるとのことだったので思い止まった。ちっ!
PK。プレイヤーキル、もしくはプレイヤーキラー。
ゲームじゃそういうロールを楽しむ人達もいるそうだが、PK職になるとデメリットが多い。
まぁこの世界での犯罪者扱いになるのだから、そういう扱いをされるうえに識別カーソルも色が変わっていて一目でバレる。
私は美味しい物を食べたくてこのゲームをしてるのだ。
わざわざPKになってNPCに相手されずにイベント消化出来なくなったり、町での衣食住に事欠いたら本末転倒だ。
でもまぁ、PKはPKで独自のイベントや入手アイテムがあるらしいのでPKしか食べれない美味しい物なんかがあるのなら…。じゅるっ…。
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「しかし、ステを見れば見るほど不思議だねぇ。オーク倒せる?普通」
「一撃死するようなダメージを受ける敵でなければ、時間はかかってもいずれ倒せるもんだ。ポーションもあったしな」
「いや〜。普通は初期段階じゃ回復が追いつかないくらいダメージ食らうんだけどね…あっ、そうか!召喚モンスターを盾に使ったんだね?スキルにあったし」
「いや。使って無いゾ。そもそも召喚魔法自体まだ使ったこと無い」
「おぅ…。普通さ…ハーフリングのステ見たら召喚モンスター前衛に立てて、後ろから弓だろ…」
「召喚って何が出て来るんだ?」
「色々みたいだよ。選べるらしいし、見てみたら?」
「そうだな。よし、《召喚》」
《召喚モンスター候補》
[召喚魔法LV1] スライム、ワイルドドッグ、リトルホーク、ウッドパペット
どのモンスターを召喚するか選択するようだ。
一度召喚するとたとえ召還(帰す魔法)で消しても違うモンスターは呼べないみたいだ。
【召喚魔法】のレベルが上がれば違う種類を喚べたり同時に2体以上とかもいける。
では、それぞれの詳細を確認してみる。
[スライム] ジェル状のモンスター、攻撃力は低いが敵に張り付いて消化攻撃が出来る(継続ダメージ)。防御力も低いが打撃耐性がある。
[ワイルドドッグ] 犬型モンスター、素早い動きと強力な噛み付きによる攻撃が特徴。嗅覚による索敵が可能。
[リトルホーク] 鳥型モンスター、嘴と爪を使ったヒットアンドアウェイ攻撃が魅力。飛行能力があり視力による索敵が可能。
[ウッドパペット] 人型モンスター、攻撃力と防御力共に低いので戦闘には向かない。プレイヤーと同じ道具を使用可能で手先が器用、掃除洗濯や料理など雑用要員として重宝する。
詳細を見ると簡単な特徴と所持センス、所持スキル、ステータス等がみえた。
ふ〜ん。モンスターもプレイヤーと同じようにセンスやスキルを持ってるんだな…。
流石にどのモンスターもユニークやレアのセンスは持ち合わせていない。
スキルにいたってはモンスターの特徴を反映してるようだ。
スライムには【ジェルボデー】のセンスと【消化攻撃LV1】のスキル。
ワイルドドッグには【嗅覚】のセンスと【索敵LV1】。
リトルホークは【飛行】【視力】【鳥目】のセンスと【索敵LV1】。
ウッドパペットは【雑務適性】のセンスと【空きスロット】のスキルが2つ。
ふむ。これだけ見るとセンスが3つもあるリトルホークが良さそうだが、【鳥目】のセンスはカースドセンスで【夜は目がほぼ見えない】というデメリットがあるようだ。う〜ん魅力半減…。
じゃ、スキルが2つあるウッドパペットはどうだ?
こいつのセンスの【雑務適性】とはそもそもなんだ?【空きスロット】?…と、思ったので詳しく見る。
…が見えない。
これ以上の詳細は実際に召喚しないと見れない仕様だ…。むぅ。
だが色々見る前から私の心は、ほぼ一体のモンスターに傾いてる。
何故かって?このモンスターの概略説明にあの事が書いてあったんだゾ!私は見たゾっ!
…ってな具合でもう決めた!こいつにしよう。そうしよう。
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「で?どうだったの。姉ちゃん」
「うむ!いいのがいたっ」
「へ〜。何を召喚するの?」
「ふっふふ。それはこいつだっ!《召喚》」
私が手を伸ばした方の地面で魔法陣が輝く。
魔法陣の上方に激しく光が噴き出したかと思うと、その光の中に何やら影が…。
光が収まり、そこに佇んでいたのは…そう!【ウッドパペット】。
書いてあったんだっ、「料理など雑用要員として重宝する」とな。
くっふふ。
いや、私だって料理くらいは出来るさ。一番得意なのは食材を切るところだ。
こないだでも、もう少しでギネス記録ってところまで長く梨の皮を剥けた。
だが味付けがなぁ…まぁ食べて不味くない程度には作れるんだが基本が出来てないようだ。
さ・し・す・せ・そ、の|【そ】はソース?
「いや!姉ちゃんこれウッドパペットじゃん!?」
「そうだよ」
「なんで!?姉ちゃんはハーフリングで後衛向きだから、ここはコイツじゃないだろ!?ワイルドドッグとか、鳥系のお供連れてる召喚能力持ちは見た事あるけどコイツ、戦えないじゃん!?」
「いいんだよ?料理出来るし」
「いやっ!料理なんて店でも食べれるよ。料理スキル持ちプレイヤーに材料持ち込めばやってくれるし」
「えっ、何!?…あ…いや、でも狩り後に直ぐ料理出来たりするし、出先でも美味しい物が食べられるゾっ」
「そりゃま、そーなんだけど。どんなけ食いしん坊なんだよ…」
「そ、それにコイツだって戦闘で役に立たないとはかぎらないゾっ!」
「ダメなんだって、ウッドパペットはこのゲーム中最弱のステータスなんだよ?スライムとかゴブリンより弱くて、この世界でも一部地域でしか出現しない色物なんだから…ネットでも情報が出回ってるから誰も召喚しないって」
「いやしかし…スキルも【空きスロット】って好きなスキルを入れれるんでは…」
「ないない。料理とか掃除洗濯とか、そんなのしかないから」
「ぐっ…。そ、そんな事ないもんねっ。コイツはやれば出来る子だもんねっ!」
「はぁ〜。【ネットにウッドパペットの使い心地】って載ってたよ、それ載せた人はウッドパペットを死蔵させて新しい召喚モンスターに賭けるってさ。」
「な、何故だ!差別だっ。へ、偏見だっ!」
「じゃ、ちょっとそいつ連れて狩りに行ってみる?」
「お、お〜ともよ。やれば出来る子なんだ、きっと」