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目医者

作者:

最近目がかすむ。視力が下がったのだろうか。


もともと目はよくない方だが、さらに悪くなったのか。


数週間そのままでいたが、少し痛みもあったので医者に行くことにした。


目医者をしている友人のもとに。


友人というのは、中学校以来の友人であった。


友人の母親はほとんど目が見えないらしく、普段の生活もずいぶん苦労していたそうだ。


そんな様子をよく見ていたせいか、高校のころ友人は


「母親を普通に暮らせるようにしてあげたい」


と言い医学部を目指すようになった。


私はそんな友人を応援していた。


特待生だのという単語を身近に聞いたのも、その友人からが初めてであった。


友人は苦労の末念願の医者となり、眼科の病院をひらくに至った。


しかしながら、医者というものは忙しいらしく病院をひらいてからというもの


連絡も滅多に取らなくなってしまった。


なので、ひさびさに友人に会える喜びも一入に病院へと赴いた。



しかし、思いのほか友人の方はそうではなかったらしく


昔話などすることもなく、診察も淡々としていた。


痛みは疲労からくるものだそうで、病気ではないようだった。


薬を処方されて「お大事に」と一言であった。



友人はずいぶん様子が変わった。



それからというもの、薬をもらうため定期的にソコに通うようになった。


しかし、平素の疲れが目に来る体質なのか治ってはまた痛みの連続だった。


そのたびに薬をもらいに行く。



あるとき、仕事が重なり医者に行き損ねたときがあった。


目の痛みを押して仕事をしていると、数日たったあるとき


突然激しい痛みが私の目を襲った。


仕事を早退し急いで目医者に走った。


「普段の疲れが重なるとこうなるのです」


「定期的な薬の服用は忘れずにお願いします」


淡々と説明され、また同じ薬を処方された。


私は何気なく聞いた


「同じ薬でいいのですか?治るのですか?」


すると友人は言った


「これが一番長続きするんです。」


その一瞬、友人の顔にはあの頃の笑顔が見えた。


そして同時に私の脳裏には、友人の母親が金銭面でも苦労していたという話を思い出した。



私は一生、目医者に通った。











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