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バグ

あいつは、どこまでも追ってくる。逃げても逃げても奴は見逃してはくれないだろう。

確信した。私はこの魔物から逃げることは出来ない。大人しく喰われるしか……。

魔物はゆっくりと近づいてきた。いきなりパクリと私に噛み付いた。舌がねぶるように私の体を楽しみ、絡みつき…だんだんと、思考が鈍っていき……、そして、感覚が無くなっていき………。


◇ ◇ ◇


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?!!?」


…クロヒメはベッドから飛び起き、鏡の前に立つ。

自分の顔をぺたぺたと触り、何も異常が無いことを確かめる。

異常が無いことを確認し、クロヒメはそのまま地面に経たり込み、息をつく。


「はあぁぁぁあ〜。……それにしても」


それにしても、と、今見ていた夢を振り返る。

まさか、現実になるのか、これ。

…考えすぎか…まさか、街エリアに入ってくることも不可能だろう。だが、普通のモンスターとは違う故に可能だろうも思えてくる。

クロヒメは考える。はてさて、どうしようか、と。

確か、街エリアにギルドがあっただろう。そこに報告でもすれば、最近、前線で活躍している攻略組とやらが、討伐してくれる筈だ。


「あれ、ご主人さま、また考え事してる」

「あぁ、まぁ、うん。昨日の魔物について、ギルドに報告しとこうかなって思って」

「へー、ご主人さまが行ってくるの?」

「いや、私は大勢の人の目があるところには行けないから。クーに言ってもらおうかなと思う。私はクーに言い寄る者がいないか、影の中でチェックしたいと思う」

「わかった。起こしてくるね!お〜い、クー!」


シャドがいきなり大きな声を出したことによりもりりんの寝起きの頭に響く。

そんなもりりんを気にせず起こしに行ったシャドは2分後、まだ眠そうにしているクーを引っ張って連れてきた。


「では、クー。主人命令だよ。ギルドに行って昨日の報告に行ってきてね。もちろん昨日の魔物についてだよ。道草食べないでちゃんと戻ってくるんだよ」

「では、護衛としてもりりん連れていきますね。では、行ってきます」

「「いってらー」」


クーが部屋を出ていって数秒後、がちゃんと玄関の扉が閉まる音が聞こえた。


「さて、よろしくシャド」

「分かった。『我等、闇を好み、受け入れられる事を所望する。影受』これで、入れるよ」

「ありがとう。前から思ってたけど。一々詠唱って必要なの?」

「必要じゃないよ。私が好きでやってるだけだよ、ご主人さま」


そう言い、シャドは影の中に入る。クロヒメはそうなのかと思いつつまだ慣れない影の中へと入っていく。

毎回思う、何故この中は暖かいのか。


◇ ◇ ◇


その時、クーはもりりんと一緒にギルドに入っていった。後ろから、クロヒメが着いてきてるのも知らずに。


ギルド 『聖豊の掲げ』


ここですね、念のためもりりんも連れていきましょうか。


「こんにちは、今日は報告したいことがありここに参りました」


あれ?何故この人たちはこちらを向いているのでしょうか?私の顔に何か付いてますかね?


「えーと?」


固まっていると、ギルド員の1人が声を出した。


「俺、セイって言うんだ。よろしくね。で、今日は何しにきたの?ほら、こっち来て座って」

「あ、はい」


妙に馴れ馴れしい。それに触られた。


「で、何しにきたの?それともナニしたいの?」

「は?…いえ、今日は、森林エリアに魔物……違うか……バグが発生していたので報告しにここへきました」

「ふーん、どんな?」

「えーと、外見はライオンですが、体から黒い魔力が溢れているモンスターです。レベルは10といったところです」


セイという、男はソファに深く座り込み、


「へぇ、興味あるね。でも、君の方が興味あr……ぶげ!?」


男が言いかけているところに、青い魔力が顔に当たったのを見た。まさか、クロヒメ様?

クーは少し、辺りを見渡すと1つ不自然な影を見つけた。そして、なんとなく指が見えた。

シャドの仕業ですね、理解りました。


「なん…あ?」


セイは一瞬、何が起こったのか分からなかった。

そして、


「キサマァァァ。僕の顔に何をする。美しいこの僕に!」

「当たり前のことをしたまでです」


…クロヒメ様が…。

見回してみると、他のギルド員もうわぁ…という顔をしていた。呆れていた。

そして、奥の部屋でドンっと大きな音がし、扉が開いた。そこからは、いかにもここにいる誰よりも年長者っぽい男が出てきた。そして、口を開く。


「いい加減にしないか!馬鹿者が!!」

「ひ!?ギルド長…」


そして、ギルド長と呼ばれた者はクーを一瞥し、口を開いた。


「すまんな、うちの者がほら、お前も謝れ」

「ちっ、ごめん」


言い終えてから、鋭い眼光でこちらを見てきた。


「いえ、良いんです。それよりも森林エリアにバグで現れたと思われるモンスターが。言わずとも分かると思いますが、バグは修正しないとこのゲームに影響が生じると思います」

「そうだな、ふむ…。では、すぐに前線に出ている者は呼び寄せ、そいつを倒さねばならんな」


そして、男は顔を上げ、叫んだ。


「では、各自!レベル、装備、全てを整えろ!バグが生じたゲームなどいつ崩壊するか分からん。2日後、そいつを倒しに行くぞ!」


そして、ギルド長と呼ばれる者は拳を天高く上げる。


「「「「「おぉぉぉーーー!!!!」」」」」


そして、30人近くいるギルド員は一斉に天高く拳を突き上げる。

あ、さっき怒られた人も同じにようにしてますね。少し意外ですね。

そして、静寂した。すぐに、それぞれが動き出す。


「あぁ、紹介がまだだったな。俺はアギトだ、よろしく」

「私はクーです。よろしくお願いします。では、私は帰っていいですか?」

「あぁ、今日の報告はありがとう」

「失礼します」


クーはぺこりと頭を下げ、扉を開け外へ出た。

外へ出るとそこにはやはり、クロヒメとシャドがいた。

あぁ、やっぱりですか…。


「クロヒメ様?あのセイとか言う人に魔法当てたのクロヒメ様ですよね」

「えーへへー、えーななな、何のことかなー」

「クロヒメ様…嘘が下手ですね。でも、大丈夫ですよ、私もあと少しでひっぱたく所でしたから」

「おーピースピース。私の行動は当たっていたんだね、良かったー。……、で、予定通りギルドが動くね。これで良かったのかなぁ」


◇ ◇ ◇


…あいつは、僕の顔に何かした。僕は何もしてないのに怒られた。怒られた、だが僕は悪くない。悪いのは全てあいつ…。クー、とかいう女。絶対、の下に付かせてめちゃくちゃにしてやる。

何かいい手は………………。…そうか、あいつが言っていたバグとやらを倒せば、奴は絶対に感謝と、共に俺を慕うはずだ。それだ。


では、向かうするか。確か森林エリアだよな。



セイは森林エリアも歩いていた。普段ならば気づいていたはずの不穏な空気などは、感じず、平気そうだ。怖い、と思う気持ちよりも怒りの方が上回っているからだろう。


…いつもより暗いな。だが、いつももこんな感じか。


ガサっ


「!?」


…その木の向こうにいるのか…?…、俺は強い。大丈夫だ。あいつに謝らせるためだ。

セイは呼吸を整え、飛び出した。


「がぁ?」


何かが声を出した、その方向を向くとそこには、ライオン型のモンスターがいた。

だが、なんだこの魔力…。これがバグというやつか面白い。

と、思った瞬間に、頭の中で声が響いた。


『バグとのバトルが発生しました。ペインコントローラシステムが発生しました。痛みレベルは5です』


「?」


何やら、不穏な単語と数字が聞こえた。ペイン?痛覚?それがレベル5?

だが、魔物もそんな思考を巡らせる時間も与えてくれる訳もなく。


「がぁぁぁぁぁ!!!!」


1つ吼えた。

と、とにかく、剣を構えて初撃を与えないと。


と、セイは片手剣のレベル1の技、スラッシュの構えを取った。そして、風の魔法を剣に纏わせ、振った。


「っ、エアスラッシュ!」


風の刃は直進して魔物に届く。


だが…、届く前に魔物は何も無いように右前脚を振り下ろす。魔法は掻き消えた。


「な!?」

「グルルル?」


こんなものか?というふうに魔物は唸った。

クーだけではなく、ゲームに出てくるモンスターにまでも、馬鹿にされるとはセイのプライドが許さなかった。

そして、怒りがまた溢れてきた。セイは考えるのを止め、突っ込んだ。


「グルル」


だが、魔物はそう来ると分かって、口の中に魔力を溜め始めた。

セイは上段に振りかぶって思いっ切り剣を降ろした。


「ガァァァァ」


魔物は1つ吼えて溜めていた魔力を吐き出し、セイの全身を覆った。


「あぁぁぁぁ!?!!??!」


現実でも、感じたことがないほどの痛みをセイを襲った。

…たかが、ゲームなのになんでこんな痛み…。


あっ、もしかしてあのペインとか言うの、もしかして痛みを変更していたのか。

そして、セイはHPを全損させ、意識を失った。



………………、あの……………馬鹿息子が!……。

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