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恐怖の具現化

「クロヒメ様!何故昨日、私の料理食べてくれなかったのですか?」

「い、いやぁ、昨日はもりりんと一緒に寝ちゃって、ねー?」

「がう」


隣にいるもりりんが吠えた。


「そ、それに、アイテムボックスに入れとけば、ほらこのとおり、昨日取れた薬草が萎れてない」

「分かってますよ、私だってアイテムボックスに入れときました。ですが、作った側としてはすぐに食べてもらって感想ほしかったんです!腐ってる腐ってない問題ではないです。それでは失礼します!」


そう言い、クーは拗ねたように家の外に走っていった。シャドは困ったように玄関の扉とクロヒメを交互に見ていた。

クロヒメは呆然としていた。だって…外は雨降っているんだよ?

すぐに戻ってくるだろう。クロヒメはここではない、遠いところを見ていた。


クロヒメの予想は当たり、1分後、びしょ濡れのクーが戻ってきた。


「クロヒメ様…寒いです。勝手に出てって、ぐしゅ、すみません」

「あーうん。戻ってくるの分かってたよ (棒)それより、頭から滴る水拭いておこうね。風邪ひいたら戦闘に影響する状態異常が発生するから」

「あ、あれー、私のことは心配してくれないのですか?」

「心配はしてたけど戻ってくるのは分かったよ?クーは寂しがり屋さんだもんね」


そう言って、クーの頭を撫でる。


「えへへ、クロヒメ様くすぐったいです」

「うるさい、私を心配させた罰だから」

「クロヒメ様、そこは、ひゃぅん」


…この後、めちゃくちゃ撫でた。そのうちシャドも巻き込まれ、百合百合しい光景がもりりんの前に広がるのであった。


◇ ◇ ◇


「さて、もりりん、行こうか森林エリア」

「わふ」

「クロヒメ様〜待ってください私たちも」


と、何故だか、ぐったりしている少女がそう言った。

でもなぁ、今から戦闘とかするかもなんだよ?

ねー、もりりん。連れて行けないよねー。ね、ねー?


「まぁ、森林の中を駆け回るだけなんだし、それくらいね」

「分かりました。出来るだけ早くお願いします」


なんだか、言葉が足りないような気がするが、早く帰ってこいという事だろう。

大丈夫、しっかり時間掛けて戻ってくるから。


「分かった、行ってきます」


◇ ◇ ◇


森林エリアの前に到着!

あれ、昨日より暗くなってない?森の中まで見えない辺り、そう思いまします。

それに、なんだか、静かどうしたんだろう。ま、まぁ、死に戻りはするから、1回中まで見に行こうかな。

クロヒメはなんとも曖昧な意思で森の中に入っていった。この世界で3回目の悪夢を見ることになるとは思いもしなかった。


…………、なんか、重い………。

森の中を歩いていてそう感じた。

空気が重い………、どんよりというか?

隣を歩くもりりんも何となく怯えている気がした。

本当は帰りたいのだが、何故かクロヒメの脳がその思考を拒絶し、仕方なく森を歩いているという感じだ。


ガサッ!


近くの木々が揺れた。


その向こうで、何かが何かの肉を喰いちぎる音が聞こえた。


クロヒメは、何故かこの時も、これから覗くという恐怖も消え、興味本位で覗いてしまった。

そこには…、


体長6mは行っているだろう、巨大な獣。だが、身体から真っ黒なオーラみたいなものが……。これは魔物?


ポキッ、


あっ、小枝踏んだ…。これは…テンプレ?


魔物 (?)がこちらを向く。具現化した恐怖がクロヒメを襲う。魔物 (?)からグルルルという呻きが漏れ、明確な殺意がクロヒメを捉えた。


やば…これは死ぬ。


死ぬならまだいいんだけど…死に戻りするからね。だけど、ここで死んだら一生のトラウマが…。

クロヒメは目の前の魔物 (?)が次の行動を起こす前に、回れ右をしてその場から駆け出した。


ゲーム補正もあり、足が速くて魔物 (?)から簡単に距離を離せた。

が、もちろん魔物 (?)もステータスが高い。簡単に私達に追い付いて来た。


――逃げても逃げても、アイツが追い掛けてくる…、どうやって逃げようかな。

くっ、と走りながら親指を噛んだ。すると横から、


「がう!」


と、もりりんが吠えた。クロヒメの方を見ながら、たまに背中の方を鼻で指していた。

もしかして、乗れと?

まぁいいや、そう思いもりりんの背中に飛び乗った。

「うお!?」


いつも走っている時より違う。風当たって気持ち良い。そんなこと思っていたのも一瞬で、魔法を使って逃げることを考えた。

使うのは、風属性で良いかな。追い風みたいな?


「グルル」


追い掛けていた魔物が急に足を止める。諦めたかなと思った瞬間に、


「ガァァァァ」


吠えた。魔物の魔力がそれに呼応し、空まで伸びる。


禍々しい珠みたいな魔力が昇っていく。

それは、空に届き、爆発した。すると、真っ黒な雲を生み出し始め、次第に雷までも。

その雷はすぐに、クロヒメに向かって落ちてくる。何本も。

最初のうちは、順調に躱していたが、だんだんと疲れてきてついには動けないほど消耗した。

そこをチャンスだと思い魔物が吼えた。


「ガァァァァ!」


魔物が迫ってくるがクロヒメは、


「っ、やば、死ぬ」


と思い、目を瞑る。



『其は、全てを受け入れ包む、漆黒の衣。影衣!』


と、どこからか、声が聞こえた。そして、クロヒメともりりんに何かが包み込む感触。それは、闇。それとも影か?

そして、クロヒメはその闇に対して、最初は抵抗していたが、何か暖かい物を感じて抵抗をやめた。もりりんも何かの気配を感じ取ったのか、大人しくしていた。

で、これはどこまで連れて行かれるのだろうか。


そんなことを考えていると、不意にクロヒメを呼ぶ声が、


「ご主人さまー、大丈夫?なんか、怖いのに襲われてたから」

「あ、ありがとうシャド。正直、助かった…。ところで、なんで私達の場所が分かった?」

「えーとね、ご主人さまのこと心配だったから、使い魔を」

「なるほどね。で、ここは?なんか、魔物に襲われないけど」

「えっと、影の中。私の能力だよ」


なん…だと…。影渡りだけが固有スキルだけじゃなかった?まさか、私たちも入れることが出来るなんて。悪用されたらまずいだろうな。


シャドは自分の能力を聞いたあと、黙々と思考を巡らせているクロヒメを見て、うん?と、首を傾げていた。何を考えているのかな、と聞きたい気持ちもあったが、色々と知らないシャドにとってクロヒメの邪魔になるだろうと思い、止めた。


顎に手を当てて考えている様子だったクロヒメも次第に顔を上げてどこか納得したような顔を見せた。

どのような考えをして、どこに考えが辿りついたのかが、気になったがシャドは、それよりも。


「ご主人さま、帰ろ?」


そう言った。とにかく今は酷く消耗している、クロヒメともりりんを休ませることを優先した。

そして、クロヒメも了解という顔をし、


「うん、帰ろう。案内は任せるよ」


その後、クロヒメはシャドの案内に従い、無事に家に着くことが出来た。クーは目に涙を浮かべ出迎えてくれた。そして、クーは言った。心配した、今度は私たちも連れて行って欲しいと。

クロヒメもそれについてはうん、頷くことしか出来なかった。元はと言えば、クーとシャドを置いていったクロヒメが悪いから。もりりんも、「わぅぅぅ」と泣いて、シャドに頭を擦り付けていた。同じ狼なので安心しているのだろう。

こうして、また再開出来たことを喜んでから、もりりんを除くみんなでベッドに入って寝入った。


◇ ◇ ◇


「ガアァァァァァ。グガアァァルルル」


と、夜の闇に潜み、高々に吼えていた。

そいつは、夕方、人間という獲物を逃した魔物だった。

今回は獲物を逃し、しかも夕食にありつけなかった。そのことに関しては、魔物の瞳には憎しみの光が宿っていた。

魔物は、もう一声、吼えた。近くにいたモンスターは逃げ出し、自分の周りに眠りを妨げる物がいなくなったことを確認すると、静かに眠りについた。

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