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混乱。そして、大好きだよ

一先ず、心を落ち着かせ、取り敢えず未だ震えている、獣たちに、大丈夫と?、声を掛ける。

不意に、手が眩い光を放ちびっくりした。

一応、状態異常かとステータスを見ると、明らかに調教スキルの文字が光っている。


影狼と空狐がテイムされました。


お、おおう、突然のことで頭の回転が追い付かなかったためにこういうリアクションしか出来なかった。


『名前を付けましょう』


頭の中に声が響く。そして、獣たちを見ると期待するかのような眼差しでこちらを向いている。

やめて、私のネーミングセンスに期待しないでっ。


うん、決めよう。まずは、影狼の方から、影だよね。シャドウ?Shadoシャドで、行こう。

次は空狐。うん、単純にKuuクーかな。ごめんね、クー、単純でゴメンネ。


「ほら帰ろうか」


と声を掛けた。

それぞれの獣がそれぞれの鳴き声を放ち、コクンと頷いた。

まぁ、正直私も先ほどの戦闘をしてから、早くこの森を出たいと思っていた。だって、怖いじゃん?適当に魔法射ってもゲーム補正で当たっちゃうし…。

あ、でも補正って逆らうことは出来るのか?今度、試してみよう。

とにかく、帰ろう。


クロヒメは2匹を腕の中に抱え、森林エリアを出た。

そして、街エリアに戻ってからNPCから家を購入した。

そこで2匹を預け、クロヒメは一旦ゲームを辞めることにした。


いつものようにシステムウィンドウを出し、ログアウトの欄を探す。

確か、一番下の段にあるはずだよね。


…えっと?

ちょっと待て…何かがおかしい。ログアウトの欄が無い。何コレ?別ゲー?


「えっと、出られないのか?」


クロヒメは周りに聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。そして、その声を偶然拾った者がいた。


「えっと、すみません。あなたは今なんといいましたか!?」


その人は大声で私に状況を聞いてきた。なんだこの人は…


「え?えっと、出られないって」

「もしかして、このゲームからですか?」

「はい、ログアウトの欄が無いんです」


一応…。一応だよ、本当の事を答えておいた。

そして、目の前の人もステータス画面を見ていた。


「お、おい、どうしてだ、どうしてなんだ!何故、ログアウトが無い!?」


そして、その周りにいた人にもログアウトの欄が無い驚きが伝染していく。

馬鹿め…何故この状況で叫ぶんだ。周りがパニックになる…ということも分かっていただろうが。

クロヒメは一先ず買ったホームに帰ろうと思い、後ろを向きかけたその時、


ピーーンポーーンパーーンポーーン


という、電子音が街のスピーカーを通して私たちの耳に届く。

そして、スピーカーの向こうからは切羽詰まった男の人の声が響いてきた。


『私は、このゲームの開発者の一人の岩澤だ』


…この人、知っている。確か、このゲームの開発リーダーの男の筈だ。


『今、このゲームは原因不明のウイルスの襲撃を受けている。恐らく、このウイルスを全て排除しなければ君達がゲームから出られる可能性は無い』


周りからは、ふざけるな、いい加減にしろ、別ゲー?、お家帰りたい…

多数の声が入り混じる。


『本当にすまない。だが、外にいる者達ではウイルスを排除出来ないのだ…。そして、現在、探知しているウイルスは1つ。それは、この世界のラスボスのプログラムに乗り移っている。だから、皆に協力をしてもらいたい』


ふむ、外でも、影響は大きそうだな。


『最後に頭に付けている機械を無理矢理取ろうとしないでくれ、した場合は精神が仮想世界に残り、現実では肉体だけになるからな。ジ、ジジ…ちっ、時間が無い!それでは皆、検討をいのr………ザァァァァァ』


開発者さんの話の途中で放送が切れた。

恐らく、今のは外からの最後のメッセージと考えて良いだろう。

そして、永遠にも等しい時間が過ぎ…、誰かが


「ウワァァァァァ!」


と叫ぶ、いや悲鳴と言った方が正しいか。

そこから、順に、伝染していった。四方から大音量の悲鳴、叫び、怒り声を聞いた。


クロヒメはまっすぐお家帰ることにした。

シャドとクーが迎えてくれるが、今は精神的にまいっているため、獣たちには悪いがそのままベッドに入った。

そして、この世界に来てから、何回目の…嗚咽…。


「うぅ…ぐす、ぅ…」


◇ ◇ ◇


目を開けると、目の前は真っ暗だった。


「えっと、あれ?」


焦って、手を伸ばすと何かに触れた感触がした。布団だった。

布団を退かしてみると、外の風景は夜になっていた。


あぁ、私はそのまま寝ちゃってたんだぁ。


「あ、ご主人さまおはよ」

「うん、おはよー………?は?」

「どうしたの?ご主人さま」

「えっと、君誰?」


目の前には、黒目と黒に近い灰色の髪を持つ美が付く少女がいた。

そして、ベッドの傍らには、頭をベッドに預けてスウスウと幸せそうに寝息を立てている空色の髪を持つ少女が寝ていた。

他人が見れば、ロリ…コン?と感じてしまうかもしれない。そして、私から見ると犯罪起こした覚えは無いんだけどなぁ、疑ってしまう。


「あ、私としたことがごめんなさい…クロヒメ様のベッドで寝てしまいました…」

「う、うん。あのね、一つ確認したいんだけど、君たち誰?そして、ここにいた獣たち何処やった?」

「獣たちって私達の事ですよね。ほら」

「あ、わ、私も」


と、一瞬、2人が眩い光に包まれた。そして、光が消えると2人の姿は無く、代わりに獣たちがいた。

えっと…?つまり、擬人化というやつですか?

何故、今なのか…システムエラー、ウイルスによるバグなのだろうか。


考えていると、2匹は2人に変わって自己紹介をした。


「私はシャドだよ、ご主人さま」

「私はクーです…クロヒメ様…」

「うん、よろしく2人とも、一応人になってくれてありがとう。正直、1人じゃ心細かった」


2人はNPCだが、感情は豊かで本当の人間のようだ。これもシステムエラーによる恩恵なのだろうか。感謝します。


グゥぅ………。あ、お腹空いた。


「あ、このゲームって空腹システムなんてあったんだね。2人ともお腹空いた?どこか食べに行こう?」

「うん、お腹空いた」

「私もです、クロヒメ様…」

「決まり!では適当に歩いて探そうか」


そう言い、家を出た。何だか周りの視線を感じるが気にしない。え?家は施錠しないのかって?聞いてくれ、何とオートロック機能が付いているんだと、良い世界だ。


さて、NPCが経営しているレストランを探す。10分くらい歩き、そして…


「ん、ここが良いんじゃない?ファミレス」

「クロヒメ様…私は床に座っていますね」

「私も」

「ちょっとちょっと、店に入る前なのに何言ってんの。そんなの私が許さないよ。一緒に座って美味しいご飯食べよう?」

「ですが、私達は…」

「私が飼っているペットって言いたいの?」


クーはこくん、と頷いた。


「では、私からの最初の命令ね。床に座ってご飯食べないで、私と一緒にご飯食べよ、ね?」

「分かりました」

「分かった」

「さて、入ろうか」


クロヒメ達は席につきメニューを眺める。最初の街とはいえ、メニューの種類も多いしなかなか当たりではないか。

そう思い、クロヒメはパンとシチューを、続いてクーはパンとスープ、シャドはシチューを単品で頼んだ。


「あり?シャドとクーはそれだけでいいの?」

「うん、ご主人さまの懐を軽くするわけにはいかないから」

「それに、私達、その女の子ですし」


あっれー、私も女の子なんだけどなー。


「そっかそういうことなら了解したよ。でも、足りないって思うなら私のあげるよ」

「「はい (うん)、ありがとうございます」」


◇ ◇ ◇


結局、彼女達は追加で料理を頼まなかったが満足したそうな顔をしていた。

適当に歩いているといつの間にか家に着いており、どのルートを通ったのかも憶えてはいないため、今日は相当疲れていることが分かった。

ロックを解除し家に入り、電気をつける。その足でベッドに向かって倒れ込む。

玄関の方を見ると、クーとシャドが突っ立っていたので、彼女達においでおいでと手を振った。そして、人間の姿のまま一緒に寝よ、と頼む。

2人は迷うようにしていたが、クロヒメが主人命令というと嬉しそうに駆けてきた。


「じゃぁ、私の命令、その2!ね。これからずっと人の姿のまま私と過ごしてね。で、その3!。私と一緒に寝よ」


2人をベッドに招いた。クーとシャドに挟まれるように寝て、いつの間にか、クロヒメは幸せそうに寝入っていた。


「あ、ご主人さま寝てる」

「何とも幸せそうな顔してますね。では、私達も寝ましょうか」

「うん、じゃ、お休み」

「お休みなさい」


クーとシャドはクロヒメと同じく幸せそうな顔をしてベッドに入った。

ついでに、クロヒメの匂いを嗅ぎそのまま寝入った。


◇ ◇ ◇


ちょんちょん…

ん、誰だ、指先で私の鼻をつついているのは…

ちょんちょん…

ぐしゅ…ん、やばい、くしゃみ出そう。

ちょんちょん…


「はっくしゅ」

「あ!」


くしゃみをして、目を開ける。横に誰かいたような気がしたが誰だったのだろう。

あ、そうか、今日も学校があるのか。いつまでだったっけ、それはいいや取り敢えず起きよう。


「ん………ふぁ〜」


ぐしぐし、とクロヒメは目元を掻いた。


「おはよう、おかあさん!?」


誰だ、ここに寝ている美少女達は…。ていうかここはどこだろう。何か見たことがあるな、と。


あ、そうか、昨日からゲームに閉じ込められているのか。

取り敢えず、さっきいたずらをしていたのは誰だろう。多分、クーだろう。多分…。

一応、彼女達に気付かれずに布団を勢いよく退かした。2人ともビクッとなっていたがすぐに、


「おはよー、ご主人さま」

「おはようございます、クロヒメ様」

「や、2人ともおはよう」


笑顔で言ったら彼女達は嬉しそうな顔をした。

そして、笑顔のまま、口元を釣り上げた。クーの方を見て、笑う。

彼女はドキッと頬を引きつらせ同じように笑う。


「おはよう、クー。今日は早起きだったね」

「え?そうなの。シャドはご主人さまにお布団退かされるまで寝てたよ?」

「は、はい、少しクロヒメ様より早く起きました…です」

「何か言うことはあるのかな?私はもうちょっと寝ていたかったかな」


といい、また笑う。

決して、虐めているわけじゃないんだよ?うん。


「ごめんなさい、クロヒメ様…。私、少し遊びたくなったんです。それに、私はクロヒメ様のことが大好きなんです。体を張って私達を守ってくれた時からずっとです」

「何の話してるか分からないけど。クーだけずるい。私だってご主人さまのこと大好き。ご主人さまもクーも大好き」


あは、は、何か照れるな。現実世界でも言われたことがない、セリフだ。


「ありがとう。私も2人のことが大好きだよ。やっぱり調教スキル取ってよかった。こんないい子達に出会えたんだもん。………久しぶりに泣きそうだ」

「泣かないでご主人さま」

「そうです。私も泣きそうですよ。嬉し泣きです」


そして、1時間、またベッドに潜った。もう目が覚めてしまったので彼女達の頭を撫でることにした。獣の状態もそうだったが、とにかく髪の毛が柔らかく枝毛も無く、綺麗な髪だった。

そのことを言ったら彼女達は嬉しそうに口元を綻ばせた。クーはもっと撫でてくださいと、甘えてきた。シャドはクーの言葉に驚いていたようだ。クーが甘えたところなど見たことがなかったからだ。

意外だ、とクーに言ったところ。


「失礼ですね。私だって甘えたい時は甘えます。だって甘えたいんですから」


その言葉でクロヒメとシャドは顔を合わせ、ぷっと吹き出してしまった。


「なっ!?いきなり笑って何なんですかー」


取り敢えず必死になっているクーが可愛くてもっと撫でていた。シャドもクーのことを撫でる。

当のクーは、と言うと真っ赤にして顔を枕に埋めて、本当に何なんですかぁ…とくぐもった声で唸っていた。

そんな、クーが可愛くて、またシャドとクロヒメは一緒に笑ってしまった。

擬人化なので、獣人化ではないです。尻尾と耳は無いですよ!

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