何だかイメージと違った
断言しよう、私、黒埜 卑弥呼は周りに馴染めていない、と。
理由も様々ある、コミュ症、内気、上がり症、恥ずかしがり屋、潔癖症…と、最近では、厨二病を拗らせ…さらに人が寄らなくなった。
それは仕方がない、自分のせいなのだから。
「ふわぁ〜やっと授業終わったぁ。このあとゲームを、ふふ」
そう今日は、予約をしていたゲームの発売日なのだ。私は密林で予約しましたが。
VRMMORPGって種類のゲームでPVを見てみるとなんと、人がゲームの中に入って遊べるゲームらしい。
とと、思わず声に出しちゃってた。まずったな。
周りの視線を見ると、こちらに向けてクラスメートがひそひそ声で何かを言ってくる。更に、少し嘲笑滋味た笑いも聞こえてくる。
卑弥呼は思わず自分の失態に、顔を赤くしてしまった。顔を隠そうにも、もう遅いので諦めた。
うぅ、早く…帰りたいよぉ…
卑弥呼は心の中で泣き言を吐いた。
◇ ◇ ◇
掃除も終わって(空気扱い)、SHRも終わった。
さて、家に帰るか。待ってろー、今帰るからなー。
席を立ち(いつも通り周りの視線を感じる)、学校を出て、真っ直ぐに帰路についた。
そして、
「わ、届いてる!」
さて、嫌なことはゲームをやって忘れよう。
「えーと、なになに…『暗い部屋で寝ながらゲームをしましょう』……お、おう」
体に悪そうですな。でも、寝ながらって引っかかるな。どんな感じ何だろう、本当に寝る系なら目は悪くならないよね。
卑弥呼はベッドに寝っ転がり、頭に機械を付けた。
すると、頭の中に何かが流れ込んできた。そして、だんだん眠くなり…ついに意識が途絶えた。
『目をお開けください』
ふ、と、耳元で囁かれた気がしたので目を開けた。
そこは見慣れた寝室ではなく、見慣れない真っ白な空間だった。
「ん、ここは?私は確か…」
たしか、頭に機械を付けて、それから…
『ここは、ゲームの中の世界です。では早速、名前を決めてください』
うーん、と一瞬唸って、 Kurohimeと打ち込んだ。
『名前の変更は出来ませんので、問題が無いのならシステムウインドウのOKのところをタッチしてください』
問題ないので、OKした。
『次に、自分がつけたいスキルを選んでください。スキルスロットは現在は5つです。これはレベルが上がると増えます。次にSPです。スキルポイントといって、スキルを獲得する時に消費するポイントです。これもレベルが上がると増えます。さて、ご自由にスキルを決めてください』
うお!ひみ…いや、クロヒメは表示される膨大な量のスキルを前に、少し顔をひきつらせた。
取り敢えず、自分が予め決めたスキルを5つ取ることにした。
調教師、魔法適正、魔力増加、錬成、細工。
うわぁ、まんま、生産職じゃないか。
『では、最後に自分の容姿を変えてください』
「んー、と顔は変えられないのか、性別も。なら、髪の毛は真っ白にしてー、目は紅くしよう」
『お決まりですか?それでは、いってらっしゃい』
行ってきますと、心の中で叫び、また意識を失う。
地面に足が付く感覚がしたので目を開ける。
「ん、ここは?」
目を開けると、そこには街が広がっていた。洋風な感じがし、ここがゲームの中だと実感した。
「君、可愛いね」
何だか感覚になれないけど、歩けるから大丈夫なのかな。
まぁ、これから戦闘も生産も私にお任せですよ、はい。
「ちょっと」
さて、これからホーム決めて、頑張ろう。
「無視するとか!」
「え?私?」
ていうか、顔近い…
「そうだよ、折角俺が声かけてやってるのに反応もしないとか。それより、きみは可愛いな、そうだ俺とパーティ組もうよ。絶対飽きさせねーから」
「結構です、お断りします」
お、ちゃんと言い返すことが出来た。これが、ゲーム補正なのか…
目の前の男はというと、顔を赤くして震えている。そんなに目の前の男には私を堕とす自信が合ったのだろうか…引くわー。
「それでは!」
なんだか、気持ち悪くなり始めたので、走って逃げることにした。
「お、おい!」
後ろから声が聞こえるが、無視してひたすら駆けた。
そろそろいないだろうと、周りを見ると、異世界なのに息を切らしている私を見ていた。
少し恥ずかしくなったので、また走り出そうとしたその時、周りで見ていた一人の青年が声を掛けてきた。
「あ、あの、俺とパーティ組みませんか?」
…と、は?(笑)
そして、一人が言い出しと思ったら周りの人達も次々と声を掛けて来る。
「おい、ずるいぞ。お嬢さん、こんな奴よ「なんだと、こら」り俺と組みませんk」
「いや、私たちと!」
そんな感じで他人が他人を押し退け、手を差し出してくる。
うわぁ、私ってもしかして人気?嬉しいなー(棒読み)興味ない。
なんだか、人が集まり過ぎて空気が悪くなったような気がしたので、クロヒメはわざわざ人を押し退けて、森林エリアがある方角へと走った。
街エリアを出て森林エリアに着き深呼吸した。空気に味は無いが、さっきの人だかりよりは空気が美味しく感じた。
「はぁ、バーチャルゲームってここまで現実に近くなるように作ってるんだ。凄いなぁ」
虫のざわめきや、ちょっとした風の流れで草が揺れたりと、現実に近くてクロヒメは感動した。
ほわぁ、と感嘆しながら地面にお尻を付いて座っていると、ぽよぽよっという音を出しながら何かが近づいてくる。
それは、少し青みがかかったスライムだった。
「この世界に来てから初めてモンスターとエンカウントかー。わくわくするな」
取り敢えず、魔法使っとけば、スライムくらい…ね。
「よーし、火の初級魔法のファイヤーボール!」
手のひらから、火の玉を出してスライムに向かって投げつける。スライムは一応水っぽかったので、蒸発するかなという魂胆だった。
案の定、スライムに魔法が当たるとジュウゥゥという音を出し、火の玉はスライムの体の水分を奪っていった。
「凄い、無駄にリアルだ」
そう、考えているうちにスライムが死に、死体は空間に溶けるように消えていった。
そして、スライムからはスライムボールという何に使うか良く分からないアイテムを手に入れた。
「おぉ、流石スライムだ。雑魚だね」
そう考えていると、
「「グルオォォォ!!!」」
という、2つのモンスターの鳴き声を聞いた。
「え?」
鳴き声の方向に顔を向けると、そこには2匹のゴブリンが。一匹は私の方を向いているが、2匹目は全く違う方向を向いていた。その方向を見ると2匹の獣が寄り添うようにして体を丸めていた。
その時、クロヒメの心に火が付いた。あの2匹を救わなきゃ、と。
まずは状況確認。声に出し、自問自答をする。周りから見れば滑稽だが、声に出すことは大切だ。
Q、あの獣たちは私とゴブリンBどちらが近いか。
A、私だ。
ということは危険になったらすぐに助けに行くことが出来る。
そして、
Q、ゴブリンには、何の魔法が効くのだろうか。
A、今、確認している魔法の属性の種類は、火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。その内で効きそうなのは、ゴブリンの肉を焼く、火属性と肉を切る、風魔法だろう。
バーチャルゲームだから、そこまでグロ要素は無いだろう。
最後に、
Q、ゴブリンの体長は?
A、多分、130cmくらいだろう。
うん、小学生のぐらいの大きさだね。
行ける。そう確信をし、手のひらに魔力を宿し、ゴブリンから少し距離を離した。
だが、クロヒメは、この時はまだ分からなかった。この後の戦闘で、まさかあんなことが起きることになるとは。
「よし、まずは肉を断つ!エアスラッシュ!」
そう叫び、ゴブリンに向かって風の刃を直進させる。
ゴブリンに当たり、腕が切断される。血液が噴き出し…中からはゴブリンの腕の肉がはみ出ていた。
え?血液…?頬に付く、どろりとした感触と鼻をつく鉄の匂い…
「え?は、え?………エアスラッシュ!ファイヤーボール!!エアスラッシュ!」
クロヒメは怖くなりゴブリンに向けて無茶苦茶に魔法を放った。変な方向に飛ばしたはずだが、ちゃんとゴブリンに当たっていた。どうやらゲーム補正らしい。
魔法がゴブリンがゴブリンの腹を切り、頭を焼き、更に足を切り飛ばす。血液やら見慣れない液体をゴブリンは撒き散らして死んでいった。
…まずはは1体目……
「うぇぇ、おぇ…ぐす…帰りたいよ…」
だんだん、クロヒメは泣き言を漏らすようになった。
だが、今逃げ出すことはクロヒメの精神が許さなかった。
そう、あの2匹を救うまではまだ落ちることは出来ない…。
クロヒメは今にも獣たちに襲いかかりそうになっているゴブリンを見て、全力で駆けた。
そして、両手を広げて、ゴブリンと獣たちの前に立つ。
右手に水の魔力を、左手に雷の魔力を宿した。
まずは水をゴブリンにかけた。ゴブリンの全身に水が行き渡ったのを確認し、雷の魔法をゴブリンにぶつける。
「ゴルルラァァ!?」
ゴブリンはびっくりしたような悲鳴を上げてその場に崩れ、絶命した。肉が焼ける嫌な匂いを振りまいた、空間に溶けた。
クロヒメは敵がいなくなったのを確認した。いないことが分かると、膝から崩れ落ちた。