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第2話

民家がすっぽりと入ってしまいそうな大きな部屋。

細かな装飾が施された繊細な窓枠から差し込む光が、真っ白な壁をオレンジに染めている。

俺はため息をつく。

明日(あす)だというのに……。姫はどこにいるんだ?」

俺は明日に結婚式を控えている。

その相手は、隣国、アリウスの第二王女、ルイ・アリウス・ミュラー。

彼女は姿を消してしまった。

隣国ということで、幼い頃からよく会っていた。……というよりも、見ていた、の方が正しいかもしれない。

父であるローシェル国王に連れられて、アリウスを度々(たびたび)訪れていた。

ルイは俺より二つ年下だが、そうとは思えないくらい綺麗で、触れると壊れてしまいそうなくらい儚くて、小さかった俺は気恥ずかしさからか、お馴染みの挨拶をするだけで精一杯だった。

目が合った時の彼女の瞳は、朝露のように澄んでいた。

俺の途方もない質問に応えたのは、親友でありローシェルの宮廷魔術師長でもあるアレン・ウォルス。

「申し訳ありません。ルイ様はうまくご自分の痕跡を消されているようで、宮廷魔術師の半数を派遣しても見つからないのです」

宮廷魔術師といえば、国内の精鋭揃いだ。

そんな魔術師達の目を欺くには、桁外れな魔力と才能が必要だ。

それほどまでに、ルイは魔術に()けているのだ。

ルイを連れ戻さなければならないが、宮廷の警備を考えるとこれ以上宮廷魔術師を派遣することはできない。

彼女の17歳の誕生日に結婚するという政略結婚にかこつけて、素直に気持ちを伝えなかったからか……。

しばらく黙りこんで目を伏せていたアレンが、顔を上げ言った。

「サリアス様、ひとつだけ結婚式に間に合わせる方法を思いつきました」

「っ! 本当か!?」

思わず大声を出していた。

アレンは構わず続ける。

「はい。しかし、今すぐに取りかからねば、間に合わないかもしれません。……許可をお願いします」

ルイが戻ってくるなら、手段などどうでもよかった。

「分かった。必ず間に合わせてくれ」

彼女が帰ってきたら、一番に伝えよう。

――幼い頃から抱き続けてきた、たったひとつの感情を。


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