第1話
「ん……夢?」
清家るいは自室のベッドで目を覚ました。
今日はいつになく変な夢を見たような気がする。
枕の横に転がっている目覚まし時計に目をやると、丁度午前三時を過ぎたところで針が止まっていた。
やった、二度寝できる−−。
……あれ?
朝方三時にしては外が明る過ぎるような……。
時計の針と明るさに違和感を感じて、ベッドの側のクリーム色のカーテンを引いた。
窓の外には綺麗な空。
憂欝な雲はひとつもなくて。
うん、今日もいい天気だ。
枕元のケータイを手に取り、メールチェック。
これはもう習慣になっている。
他県で暮らしている両親との連絡手段だ。現在ひとり暮らし。
高校入学を期に買ってもらった、サクラ色のケータイ。
この四ヶ月で既に手に馴染んでいる。
緩い曲線で囲まれた液晶画面を覗き込んで、ボタンを操作する。
その時、画面右下に小さく表示されている小さな数字−−現在の時刻−−が目に入って、るいはベッドから飛び起きた。
やっと気付いたのだ。
今が午前三時過ぎではなく、七時四八分だということに。
いつもわたしが家を出るのは八時過ぎ。
あと十二分しかない。
自分史上稀に見る速さで着替えを済ませ、荷物を持って階段を駈け降りる。
洗面所に着くと、歯を磨き、軽く髪を整える。
今日は髪括る時間ないな……。
いつもは高い位置でひとつに纏めているセミロングの髪に軽く触れる。
学校に着いたらなんとかしよう。
適当に何本かヘアゴムをポケットにしまい、家を飛び出した。