ただの日常
急に書きたくなって書いた。後悔はしていない。
「――ねえ」
「んぁ……? 何だ、あんたか」
いつもの昼休み、俺はいつものように屋上で不貞寝をしていたのだが、急に揺さぶられた。
眼を開けてみれば、そこには長い黒髪を持った、いかにもな美少女。
その髪は、暑いんじゃないかと思うほどに黒く、綺麗で……彼女の瞳は奈落のように、底なしに黒かった。
「…………」
「……? 何かしら?」
「っ、あ、いや、何でもない。てか、話があんのはそっちだろ」
その容姿に一瞬見惚れたが、何とか応えることが出来た。
コイツは、1年の時に同じクラスだった女子だ。
特にこれと言って接点だなかったのだが、この美貌を見て、一目で記憶に焼きついたのだ。
彼女は、俺の言葉に鷹揚に頷き、話し出す。
「そうね。私は貴方に話がある」
「だから、その内容は何なんだよ」
「………………」
な、何だろうか。いきなり黙って俯いちまった。
表情は、少し長めの前髪で隠れて窺い知れない。
俺は、如何すればいいのだろう。
「…………その、ね」
「あぁ?」
漸く喋り出したと思ったら、最初の威勢は何所えやら、細い声で話しかけてきた。
コイツ、本当に“アイツ”なのだろうか。
本来のアイツは、もっとこう、毅然としてた筈で、どこか自己中心的な感じがした筈なんだ。
だけど、今のコイツは、まるで…………。
「私、前から貴方のことが…………」
「…………」
まるで、コイツは……。
「だい、大、大っ嫌いだったのっ!!」
「……だろうな」
宿敵に立ち向かう、主人公の様だ。
そう、つい最近からこんなことが始まった。
屋上での俺の貴重な睡眠時間を、コイツは見事に潰しに来るのだ。
俺の事が嫌いに決まってる。
そうじゃなきゃ何なんだよ……。
今までも、こんなやり取りを繰り返しているのだが、最後には決まってコイツが。
「あっ! やっぱ、今の無しで! ああぁっ!! どうして何時もあそこであんな言葉が出るのよ! 私のド馬鹿ぁ!!」
綺麗な黒髪を掻き毟り、訳の分からない状態になるんだ。
そして、俺はそれを何とか宥めようとして、昼休みが過ぎて行く。
これが、俺の日常の一幕。
何だろうか、私はこんな女子が好みだったのだろうか、とても不安だ。
ついでに、知っているか分かりませんが、女子の方のモデルは一乃さんです。