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レッドとブルーの合い言葉

作者: 無刻カイ
掲載日:2025/12/22

 羽山紅輝(はやまこうき)湊葵(みなとあおい)は幼馴染である。女子でありながら戦隊ごっこに興味を持つ葵を、紅輝は相棒とみなした。二人で遊んでいるうちに、レッド、ブルーというあだ名が定着してしまい、高校生になった今でも、そう呼び合っている。


 そして、二人の間には、秘密の合い言葉がある。


「ブルー!」


 昼休み中に、紅輝が教室に乱入してくると、葵が嬉しそうに立ち上がる。


「レッド!」


 紅輝は葵に駆け寄り、彼女とグータッチをしながら、共にこう叫んだ。


「ガンジュ!」


 互いを鼓舞し、勇気づけるための、特別な言葉。この言葉があれば、どんな困難も乗り越えられる。そう信じてきたのだ。


 しかし、ある夕方、学校の帰り道、葵が突然こぼした。


「実はね……明日、死のうと思ってるんだ」


 しばらくの間、沈黙が続いた。下を向いてとぼとぼと歩く葵を、紅輝が隣でじっと見つめる。


「…理由を聞いてもいいか?」


 葵は唇を噛み、拳を握りしめた。


「あたしさ…昔から女子力ゼロじゃん?制服もスカートじゃなくてスラックスだし…趣味とか、振る舞いとか、全体的に男っぽいし。でも…時々ね……本当に男みたいな気持ちになるんだ。いや、むしろどっちでもないっていうか…」


 頭をかき、鼻を啜る。一向に紅輝と目を合わせようとしない。


「わかんないよね。レッドはどこからどう見ても、ごく普通の男子だもの。あたしだけがおかしいんだ。あたしだけが…」


 感情を抑えられなくなり、涙がボロボロと溢れた。これ以上進めず、道のど真ん中で立ち止まると、紅輝も同時に足を止めた。声を押し殺して泣く相棒を、ただ見ていることしかできないのだろうか、と思いながら。


 そんなの、嫌だ。


「なあ、ブルー」


 彼の温かい手が、葵の肩に触れる。


「俺はな…お前が男っぽいとか、女っぽいとか、そんなのこれっぽっちも気にしちゃいねえ。たとえ何者であっても、俺の相棒だっていう事実は一生変わらない。今までも、これからも…お前は、俺だけのブルーだ」


 葵がようやく振り向く。目を丸くした状態で、紅輝を見上げる。


「だから生きろ。ずっと一緒に戦おう!」


 紅輝はニッと笑い、拳を差し出した。


「ガンジュ!」


 今日放たれたその言葉には、これまでよりも遥かにたくさんの感情が込められていた。ただ勇気を与えるためだけでなく、片割れの生を願うための言葉と化していたのだ。


 葵は微笑み、紅輝と拳を突き合わせた。


「ガンジュ…!」


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