表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ天使の成長記  作者: 九条九重


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

天使とテン

テンはユキとナツの亡き骸を通り過ぎて隊長を越え最深部へと、そこにはただ壁があったがテンは押し通る

その先に感じるから

崩れ去る壁の向こうあったのは大人二人分程の高さをした白い木、葉は黄金に耀き一本の枝だけが垂れ下がり白い人間の体の様な形をする聖樹

白い体の腹は膨れ張り実が成っている


テンは火を放つ、それが何かは知らない

ただ決着を付ける為だけにそれを燃やした


黄金の葉が焦げ付くだけで聖樹はテンの炎がほとんど効果が無い


「魔法が効かないとは」

そう呟き刀に手を掛ける

「まて、何故天使であるお前がこの木を傷付ける」

そこに現れたのは天使、背中に二対、腰に一対の翼を持ってテンの前に神々しく現れた

「て…天使が生きてる?」

テンはあまり驚いていない様子

「私はただのデータ」

さも当然の様に言うが

「デー…タ?どういう事か説明してもらおう

 そのデータって物とこの木についてもな」

テンは事の真実を知ろうとしていた

天使はそんなテンに近づき頭に手を添える

優しい空気に撫でられる様な感覚がした

「お前は未熟児で産まれてきたんだな

 その刀は龍の物、それのお陰で生き残りここまで辿り着いたと」

「一人で納得してないで、説明してもらってもいいか」

「ランシェル•リゼザゼータいやテン、データとはこの木が持つ記憶の様な物だ

 今の私はその残滓に過ぎない。

 そしてこの木は聖樹、天使を造る為の木

 だがもうこんな惑星ではまともに産めもしないだろうな」

テンは話は聞いているが余り気にしてない様に見える

「まぁ私達は聖樹によって生み出された科学の粋を仕込まれた兵器、君の言うところの生まれながらの魔法使いと言う訳だよ

 もうこんな惑星を捨てたらどうだテン、私達は惑星を支配する為のただの兵器だ、造り物だ」

「自分が造りものと知りそれで何が変わると言う」

「まだ自分は人間だ、とでも言ってるように聞こえるな」

天使は可笑しそうに言う

「そうだ、自分がどんな物でも今まで生きて事を否定して生きようとは思わない」

そうかそうかとテンの言葉を譫言の様に聞いている

「お前は自由に生きると良い

 この木に魔法の力は効かないがその龍の力なら切れる

 刀が待ち侘びているよ、復讐の時を」

そう言うと消えていく



テンが着いてから十数分後に兵隊の応援が来た、暗い路は既に崩れ去り焦げ臭い

 我々は負けたのだな

静かに悟った



テンはセイラを担ぎユイを連れてユキとナツの家に戻って来ていた

「ユイ、セイラを頼む」

セイラをベットに寝かせユイに身守らせ、一人で夜の闇に消える




テンは三対の翼で壁を越えて最上階に来ていた

足音だけでが響く人気の全く無い聖堂街の階段を上がって行く

それは一番上に立つ古い神殿に続いている

神殿の中は大きな穴が空いていいるだけだ

神殿に近づいて行くと辺りは雲で囲まれ

気付くと雲の上にいた

下では風の渦が雲を巻き上げる

雲海は波を立て天を裂く


右も左もわからず地平線まで続く雲海を歩いて渡る

テンは迷っているのでは無い

道を切り拓いているのだ


隣から穏やかに老人の声が聞こえる

「まだいたとはな」

見ると羽の付いた老人がいつの間にか一緒に歩いていた

「天使か?」

「ちがうよ、私は天使達を造った者の末裔だ」

「…君が僕を呼んだのか?」

「それも違う」

「何しに来た」

鬱陶しそに吐き捨てる

「それは私が君に聞きたいな」

「…」

鬱陶しさにシワがよる

「テン、君はなぜ産まれたのか知りたかったんじゃないのかな」

「興味無い」

老人を振り向く素振りも無く

ただ歩みを進める

「そんな事はない、必ず興味を持つさ」

「わかったよ、聞くよ」

先に折れたテンは渋々話しを聞いた

「私はね昔に自分の祖先が建てた聖堂を訪れたんだ

 その時にはもう言い伝えしか無かったんだ

 それを頼りに飛行船で辿り着いた時、私は感動した よそこには魔法が溢れていた

 地上はもう枯れた大地が広がって終わりを待つだけ しか無かったからやっと希望を見つけたと思った

 そしてそれを大地に還した、天使を贄に使って雨のように降らせ大地 を潤したんだけれどね

 それは段々と生き物達に蓄積されていた、魔物や魔法使い達、異形種が産まれ、私利私欲の為に使いだした

 もう一世紀もしないうちに魔法も無くなるだろう

 そしたら今度はもっと酷い、だからね私達は魔法をまた返すだ、あの聖堂に、祀られる神に」

「神に返すとどうなる?」

「また聖堂は天へと昇り星を渡るだろう」

考える事も無くテンは言った

「僕を使ってこの星から逃げたいって事か」

「違うよ、希望だよ

 私達はこれからも生き続ける」

「それが僕の産まれ意味」

「その通りだ」

笑みを浮かべテンにすり寄って手を掛ける

「興味無いね」

間髪入れずにまたもいい放つテンに

柔らかな老人の顔が深く眉間にシワを寄せて

髪は逆立ちそうになりながらスウッと消えていく


テンは遺跡の祭壇へ踏み入る

テンの前にもう一人のテンが現れて言う

「もうこの世に諦めて来ているんじゃ無いか?」

テンは凛として応えた

「いいや、僕はやっと理解し始めたばかりだ」

「嘘だね、知っていたろ

 義父が死にセイラも死した、この世は理不尽であると知っていてそれを突きつけられただけだ

 感じたらだろ希望を、義父の時とは違った

 クマの死には希望があったんじゃないか

 次は僕の番なんだよ」

テンには思う所があったのは事実だ

誰かの為に犠牲になれるならそれは良い事かもしれない

大切な人なら尚更に

「わかるよ、確かにそれで良いならどんなに世界は素晴らしいものか

だが、クマを見てそれではいけないとも思った

 希望では進めないんだ」

テンは思わず熱くなっていた

「ほんとにそうか?」

もう一人のテンは嗜めるように言う

テンは何処も行き止まりに気づき,翼を広げた

「テン僕が居る限りは進めないよ

 そして人間として生き様とするテンに僕は消せない」

その言葉を聞きテンは構えた、それが何かはわからないが両の手をつき出す

ただ出来る、その確信が天使である自身にそうさせるのだ

背中の一対の翼の骨だけが伸びて地面に突き刺さる

もう一対、そしてまた一対、テンの体は固定され

放たれた

詮無き伝達砲

その威力に驚き、気がつけば流れ星の様に消えていく姿だけが見える

一体何処まで、どんな速さで、そんな事はわからないが目の前の部分はスッキリと空間が切り取られた様に消えていた



テンは辿り着いた、呼び声に

まず感じたのは自分でも凄く、本当に凄く意外だったのだが忌避感だった、まるで害虫を見てしまった様な忌避感

後ろ姿だけだが皮膚が無い、腕の関節がおかしい

頭部は長く、目は肥大化したのか?違和感は沢山あった

それが振り返る、何も言わずテンをじっと瞬きもせず

目を見開いて見つめている


テンの心の内にある

不安や恐怖を体現した様な表情で

その目は今までの事を見透かしている

覚悟をわかっていて催促している様にも感じた


「やめろ神で無くなってしまう」

あの老人が喉を大きく震わせて叫んだ


「良いよ、人間としての矜持を持てば」


神聖な狂気は何処へと向かう?


テンは三対の白く優美な羽を出した

右の翼を顔へと運び

翼に喰らいつき両手で下の両翼を握りしめ

引き千切る

次は左の翼と残った両翼


神聖さは矜持と新たな狂気を得て姿を変え

新たな神を産んだ

そして神は天へと飛び立つ


「お前ふざけるな!」

老人とは思えぬ激しい怒号が飛ぶ

「神様だって笑いたい日もあるさ」

テンから笑みを返され真っ赤な顔から食いしばる白い歯が見える

「お前も生きて帰さんぞ」


テンは元いた場所に戻っていた

大きく変わっていたのは大蛇だ目の前にいる事くらいだ

黒い鱗に紅いの紋様の体で夜の闇に潜んで静かに周りを囲み、殺意と怒りに満ちた鋭く細い瞳だけが隠しきれずにる

蛇は毒牙を剥き出し迫る


一瞬で切り落とされた蛇の頭はテンを最後まで睨み付け聖堂街の階段を転げ落ちる

体は諦めず動こうとする体の内から無数の触手が皮膚を破る

「これは大きなムカデだ」

無数の触手が騒めき一直線にテンへと襲い掛かろうとする


テンはふと天を仰ぐ、そこには月へと続く光の道がさしている

その声はテンにだけ届いていた


テンはうねるムカデを軽々躱しテンのいたその場所の床は一気に斬り崩れ

大穴へと堕ちていく


「君は期待しすぎだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ