第7話 見つけてあげる
小川が流れる静かな場所。水面に朝の光が反射し、薄い霧が揺れる。
「ここは……あなたがよく来た場所なのよね」
ミオは静かに尋ねる。
「……ああ」
淡々と答えるが、その視線には懐かしさと微かな胸の痛みが混ざっていた。ヴォイドの感情が見えない以上、まずは過去の記憶を辿っていき、彼の心が動くように仕向ける必要がある。記憶に残る場所をまわっていき、そこで夢糸で紡ごうとする。各地でそんなことを繰り返していたのだ。
ミオは夢糸を胸に触れさせ、光を揺らす。
「今日も、記憶に触れてみるね」
光が揺らめき、戦場での訓練の映像、仲間たちの声、湖で遊んだ幼い日の記憶――ヴォイドは無表情を保つが、胸の奥で微かに揺れる心の糸が光に反応していた。
「どう?何か見えた?」
「あぁ、昔の記憶だ・・・夢なのかわからないが、幼いころの記憶だったと思う」
「ホントに!?」
ミオは驚きと喜びで胸が高鳴る。自然とヴォイドの手に自分の手を重ねた。
「……お前のおかげだ……」
手が触れ合い、肩の距離も自然に近づく。
「少しずつでいいのよ。また、違う場所でも試してみよ」
ヴォイドは一瞬、視線をそらす。
「……ミオといると……落ち着く」
無表情の奥に、微かな笑みと感情の芽生えが見えた。ミオは微笑み、そっと肩に触れる。
小川の水面が揺れ、二人の影が重なる。胸の奥で芽生えた微かな期待霧がさらに薄れ、朝日が二人を包む。ヴォイドはわずかに視線を下げるが、心の奥で芽生えた温かさを隠せない。
「少しずつでいいの。あなたが夢を観られるように、私は頑張るわ」
ヴォイドが静かに頷く。それは、彼の心が初めて他人の手に触れ、温かさを受け入れ始めた証だった。ミオは胸の奥で熱いものを感じる。
「見つけてあげる、私が……あなたを、絶対に」
言ってて自分が恥ずかしくなり、自然と頬が赤くなる。
「……ありがとう」
ヴォイドの短い呟き。無表情の奥に芽生えた微かな感情。ミオは思わず笑顔をこぼす。
「まかせて、さぁ次の場所に行くわよ!」
朝の光が二人を包み、森の霧が完全に溶ける。心の糸はさらに絡まり、二人の物語は確実に進んでいた。