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皇国復活  作者: waka
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情報戦・電脳戦線の拡大

 戦後の九州・四国地方は中国の統治下に入り、東海省として支配された。支配地域では「平和維持」「再教育」「安定化」を名目に、中国語を使用すること、日本史を否定して中国史を正当なものと認めること、日本文化に関する全ての建物や図書資料、料理などを排除することを強要された。

 共産党は、中国統治領土から一切の日本の遺物を取り除こうとしたのだ。

 彼らは約100年前に、日本人の底力______かつての世界大国であった米国さえも怖気づいた精神力を身を以て体験したのだから。

 

 しかしながら今回の戦争は、彼らにとって不思議なことに以前体験したことのある日本人の恐ろしい精神力を感じさせるようなものではなかった。

 米国に骨抜きにされたのか、戦後の平和主義という日本の戦勝国統治を有利に進めるためのプロパガンダ作戦が成功したのか、それとも単に、日本人の精神力が弱まったのか______理由はともあれ彼らは二度と日本人が歯向かわないようにするため、大和精神を取り戻すことのないようにするため、日本文化の弾圧を行ったのだ。



 第二次日中戦争勝利から約15年が経った。もはや東海省内に日本人を名乗るような者は一切いなくなった。このことは共産党にプロパガンダの勝利・日本文化の敗北を感じさせるような出来事であった。地下反抗活動(レジスタンス)もなくなった。

 

 自らの野望に近づくため、中国はもう一段階先の作戦を考えていた。

 

 それは______日本完全占領だ。


 米国不沈空母と言われる日本を完全支配することは対米反抗を掲げる中国にとって巨大な意味を持つ。日本を支配したら、太平洋周囲に残る潜在的国はフィリピンのみとなる。そうなれば中国の完全なる太平洋への自由進出は簡単だ。重要な資源やシーレーン、軍事適要所さえ押さえれば米国は中国の敵ではない。それは前回の戦争で明確になったことだ。

 

 だが、いくら前回の戦争で勝利を収めた中国とはいえ、日本を完全占領するとなると難易度は格段に高くなる。

 前回の勝利は、日本国内の政治の腐敗や、米国における厭戦気運、連合軍の人民軍に対しての有利性慢心など、偶然の理由の重なりにより、なし得たものであった。

 前回同様、日本国内には親中政党が政権を握っており、日本を降伏させること自体は簡単だろう。問題はそれを米国が黙って見ているかということだ。

 第二次日中戦争の敗戦後、米国はさらなる軍事力強化や法律の改定により、戦争持続性の向上を図った。敵である中国に対抗するためでもあるが、これ以上中国の太平洋進出を許さないためである。同じ敗戦国である日本も相対的に地政学的重要性は高まってしまった。米国は何としても日本を守らないといけなくなった。 

 日本と再び戦火を交えるのであれば、米国との衝突は不可避である。どうにかして米国との戦いは避けたい。


 そこで、中国が目をつけたのは日本の情報陽動活動への脆弱性と米国への敵対意思だ。

 

 今の日本人の米国への感情は親を殺された子供が持つような感情に近しい。日本は主権国家でありながら、前回の戦争時、米国が日本の宗主国という立場で和平交渉を行ったからだ。彼らは日本の米国不可欠性を利用したのだ。

 裏切られたという言葉では表現しきれない。日米安保条約というのは、米国が日本の主権を敵国の軍事的脅威から守るという条件で日本を非武装化し、日本国内に米軍駐留を認めたものだ。

 それを提案してきた米国から条約を破ったのだ。日本人にとっては憎んでも憎みきれないだろう。

 

 中国は、この日本人の反米意思を利用してSNSに、米国へのヘイトスピーチや、日米安保条約の解消などを訴える投稿をAIを利用して連続投下した。

 日本のSNSには、「#YankeeGoHome」「#戦後は奴隷契約だった」「#日本の独立を米軍が妨げている」などの米国を糾弾する投稿が数分おきに現れ、拡散された。中には“日米合同陰謀論”や“核の傀儡国家”という刺激的なタグもあった。


 裏方から影響を与える必要がある皇国再建委員会と、表立ってプロパガンダを普及できる共産党では電脳世界においても戦力差がありすぎる。真っ向から情報戦を繰り広げても勝負にならないことははっきりしているだろう。

 

 皇国再建委員会は日本統合の際、米国の協力は必要不可欠だと考えていた。そのため、委員会は日本人のナショナリズム精神の向上のほかに中国による対米意識を煽るような陽動に対してまで対策をしなければならなくなった。このまま電脳戦線が拡大し続ければ委員会は確実に負けるだろう。

 委員会の電脳世界での影響はなくなってしまい、中国のプロパガンダで埋まってしまう。

 また、実際に反米デモ等が行われ、米国側に反日感情を生んでしまえば完全敗北_____日本再統一は夢の彼方に消えてしまうだろう。

 

 このことは委員会内に議論を巻き起こした。

 情報戦はあくまでデジタル世界においてだけではない、現実世界まで作戦を広げるべきだというアナログ戦線派と、現実世界で活動をすれば委員会は捕まってしまう、これまでと同様に地道に影響を与えるべきだというデジタル戦線維持派に分かれてしまった。

 

 中国の陽動より日本人に大きな影響を与えるにはどうしたらよいか。


_____議論で、委員会メンバーの一人が発言した。


 「天皇を利用したら良いのではないか」と。


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