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プロローグ
二〇三五年、日本。
一度は歴史の闇に消えたはずの存在があった。
忍び——かつて、影に生き、影に死ぬ者たち。
彼らは表舞台に姿を見せることなく、戦国の世から近代へと移り変わる時代の狭間に身を潜めてきた。情報戦、暗殺、諜報、破壊。すべてを任されながら、誰にも知られぬまま消えていった。
少なくとも、そう思われていた。
絶滅。
それが世間の認識だった。
だが、それは表の歴史における話にすぎない。
——影は、未だに存在している。
世界が技術で塗り替えられようと、人の欲と闇が消えることはない。
そして、闇がある限り、影は必要とされる。
火を操る忍。
死を呼ぶ者。
静かに、その物語が動き出す。