死之火―シノビ―
窓を開け放った教室に、昼下がりの陽光が差し込んでいた。
ざわめき、笑い声、椅子を引く音。
放課後直前の、あの妙に浮ついた空気が、教室という箱の隅々まで満ちていた。
真上焔は、そうした喧騒の中で、ひとりだけ温度の違う空気を纏っていた。
肩肘をつきながら、黒板の上に掛かった時計を、ぼんやりと見上げる。
秒針の音がやけに耳に残るのは、それ以外に意識を向ける意味が見当たらなかったからだろう。
「なぁ、真上〜。今日、カラオケ行かね?」
半ば叫ぶような声とともに、机に肘をつく男がいた。依田。
騒がしいクラスの中でも特に声の大きいその男は、真上の沈黙すらも軽やかに踏み越えてくる。
「うーん……疲れてるから、パス。」
返事は短く、熱のない声音だった。
真上は目を閉じ、まるでそのまま眠りに落ちるかのように息を吐いた。
ざわめき、笑い声、椅子を引く音。
放課後直前の、あの妙に浮ついた空気が、教室という箱の隅々まで満ちていた。
真上焔は、そうした喧騒の中で、ひとりだけ温度の違う空気を纏っていた。
肩肘をつきながら、黒板の上に掛かった時計を、ぼんやりと見上げる。
秒針の音がやけに耳に残るのは、それ以外に意識を向ける意味が見当たらなかったからだろう。
「なぁ、真上〜。今日、カラオケ行かね?」
半ば叫ぶような声とともに、机に肘をつく男がいた。依田。
騒がしいクラスの中でも特に声の大きいその男は、真上の沈黙すらも軽やかに踏み越えてくる。
「うーん……疲れてるから、パス。」
返事は短く、熱のない声音だった。
真上は目を閉じ、まるでそのまま眠りに落ちるかのように息を吐いた。