大晦日と新年
大晦日の夜、煌びやかな街の灯りがオフィスビルに反射し、ポチ太郎の瞳に映る。今日は大晦日だ。例年なら家族と過ごす日だが、今年は違う。取引先のトラブル処理で、ポチ太郎はオフィスに一人残されていた。
オフィスはいつもの賑やかさとは裏腹に、静まりかえっていた。時計の秒針の音が大げさに響き、刻々と迫る新年へのカウントダウンが、ポチ太郎の心を重くする。
机の上には、積み上げられた書類の山。今日中に片付けなければいけない。取引先からのクレーム、契約書の見直し、来年の営業計画…。やるべきことは山ほどある。
窓の外には、人々が賑やかに新年を迎える様子がうかがえる。人混みの音が響き、遠くから聞こえる歓声。それらの音が、オフィス内に響き渡る寂しさを際立たせる。
ポチ太郎は、何度も窓の外を眺めた。いつまでここにいるのだろう。いつになったら、家族と一緒に新年を迎えられるのだろう。孤独感が、ポチ太郎を襲う。
日付が変わる瞬間、ポチ太郎は一人、オフィスで年を迎えた。シャンパンの代わりに、デスクの上にあるコーヒーを一口飲んだ。
「今年も、精一杯頑張ろう…」
ポチ太郎は、そう呟き、再び書類の山に向かった。
ポチ太郎は、コーヒーカップをデスクに置くと、再び書類に目を落とす。しかし、集中できない。頭の中には、家族との温かい食卓や、愛魚との触れ合いがよぎる。
窓の外では、花火が打ち上がり、夜空を華やかに彩っている。その光景が、余計にポチ太郎の心を打ちつける。
「こんなはずじゃなかったのに…」
ポチ太郎は、自嘲気味に呟く。営業マンとして会社に貢献してきたつもりだった。会社が好きで会社を第一として考えて行動してきたつもりだった。しかし、大晦日の夜、こうして一人でオフィスにいる現実を突きつけられ、虚しさを感じていた。
ふと、ポチ太郎は、子供の頃のクリスマスを思い出した。家族みんなでプレゼント交換をし、ケーキを食べて、幸せな時間を過ごした。あの頃、こんなに寂しい思いをしたことはなかった。
「ポチ太郎、来年はもっと家族と過ごす時間を増やすからね」
父親の言葉を思い出したポチ太郎は、思わず涙をこぼしそうになった。
しばらくして、ポチ太郎は気持ちを切り替えた。
「よし、残りの仕事を片付けよう!」
そう心に決めたポチ太郎は、再び書類に集中する。