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初営業

ポチ太郎、初めての営業。

ポチ太郎は、犬丸商事に入社してまだ日が浅い。そんな彼が、いきなり大役を任された。それは、犬嫌いで有名な猫山商事の社長、猫田氏との接待だ。


「ポチ太郎、君はまだ会社に入ったばかりだが、君の誠実さは誰にも負けない。きっと猫田氏も君なら気に入ってくれるはずだ。」


上司の言葉に、ポチ太郎はドキドキしながらも、やる気満々だった。犬の気持ちなら誰よりも分かる。きっと、猫田氏の心も動かせるはずだ。


当日、会場となる高級レストランに到着すると、そこには猫田氏がすでにいた。猫田氏は、いかにも偉そうな態度でポチ太郎を見下ろす。


「ふむ、君が犬丸商事の営業マンか。犬の臭いがするね。」


猫田氏の言葉に、ポチ太郎は顔が真っ赤になった。初めての接待でいきなりこんなことを言われるとは、思ってもみなかった。


「あの、すみません。猫田社長。私は、犬の気持ちを代弁できる人間です。きっと、猫田社長のお役に立てると思います。」


ポチ太郎は、必死に気持ちを伝えようとする。しかし、猫田氏は聞く耳を持たない。


「犬の気持ち? ふざけるな。犬なんて、ただのエサをねだるだけの生き物だ。」


猫田氏は、そう言って冷たく言い放った。猫だって同じだろう。そう思っていた。ポチ太郎は、言葉に詰まった。初めての接待で、こんなにも戸惑うとは。


「猫田社長、少しお話をお聞かせいただけますか?なぜ、犬をそこまで嫌いになったのか、理由を教えてください。」


ポチ太郎は、猫田氏の心に寄り添おうとした。


猫田氏は、少し考え込むと、過去の辛い経験を話し始めた。子供の頃に信じていた友達の犬に裏切られ、心を深く傷つけられたという。


ポチ太郎は、猫田氏の話をじっと聞き、彼の心の痛みを感じ取った。


「猫田社長、過去に辛い経験をされたのですね。でも、全ての犬がそうではありません。私は、猫田社長を裏切るようなことは絶対にしません。」


ポチ太郎は、誠意を込めて猫田氏に語りかけた。


猫田氏は、ポチ太郎の言葉に心を動かされた。そして、少しずつ心を開いていく。


「君のような誠実な人間なら、もしかしたら…」


猫田氏は、まだ迷いながらも、ポチ太郎に期待を寄せているようだった。


ポチ太郎の誠実な言葉に、猫田氏は少しだけ心を動かされたようだった。しかし、過去の傷はそう簡単に癒えるものではない。


「君の気持ちはよく分かる。だが、犬に対する不信感は簡単には消えない。」


猫田氏は、そう言うと、再び硬い表情に戻った。


その後も、ポチ太郎は諦めずに猫田氏と話し続けた。犬の可愛さ、飼い主との絆、犬がもたらす喜び。様々な角度から、犬の魅力を伝えようとした。


しかし、猫田氏の心はなかなか開かない。


「犬は、我々猫を裏切る。そんな生き物と、私は二度と関わりたくない。」


猫田氏は、そう言い放ち、席を立とうとした。


「猫田社長、どうかもう一度だけ、私にチャンスをください!」


ポチ太郎は、猫田氏の腕を掴んだ。


「私は、猫田社長の心を必ず開かせます。犬は、人間に喜びと感動を与えることができる素晴らしい存在なのです!」


ポチ太郎の熱意に、猫田氏は少しだけ迷いを見せた。しかし、最終的には、


「君の気持ちは分かるが、今回は見送らせてほしい。」


そう告げ、レストランを出て行ってしまった。


ポチ太郎は、力なく座り込んだ。初めての接待で、契約を取ることができなかった。悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。



「必ず、猫田社長の心を動かしてみせる!犬丸商事のためにも!」


ポチ太郎は、再び前を向いた。今回の経験は、彼にとって大きな学びとなった

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