第1章 課長への階段は骨だらけ
昭和の東京、高層ビルの谷間に建つ巨大な会社。そこには、一匹の犬がいた。名前はポチ太郎。人語を操り、スーツを着こなし、営業部の敏腕社員として活躍していた。
朝のオフィス
「ワン!」
朝日が差し込むオフィスに、甲高い声が響き渡る。ポチ太郎は、今日も元気に机に向かっていた。周りには、人間社員たちが黙々と仕事をこなしている。ポチ太郎は、人間語で話せるため、他の社員と何ら変わらないように振る舞っていたが、内心では、いつかこの会社でトップに立ちたいと強く願っていた。
「ポチ太郎、今日も元気だね。昨日のプレゼン、素晴らしかったよ」
隣の席の田中さんは、ポチ太郎を褒めてくれた。ポチ太郎は、得意げに尻尾を振る。
「ありがとうございます、田中さん。でも、まだまだです。課長になるためには、もっと頑張らないと」
「課長か…。難しいだろうね。犬が課長なんて、聞いたことがない」
田中さんは苦笑する。ポチ太郎は、その言葉に闘志を燃やす。
ポチ太郎は、コーヒーブレイクの時間に、いつものように社内のロビーへ出た。そこには、若手社員たちが集まって談笑していた。
「ねぇねぇ、聞いた? あの犬、また何かやらかしたらしいよ」
「ほんと? 今回は何をしたんだ?」
若手社員たちの会話の中に、ポチ太郎の名前が出てくる。どうやら、昨日の会議での発言が話題になっているようだ。ポチ太郎は、少しだけ傷ついたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「気にしなーい。いつかみんなに認めてもらえるさ!」
ポチ太郎は、そう呟きながら、自動販売機に向かう。大好きな骨型のビスケットを選んで、ガジガジと食べ始めた。
その頃、社長室では、ポチ太郎のことが話題になっていた。
「あの犬、なかなかやるじゃないか。犬という枠にとらわれず、自分の意見を堂々と主張する。彼のような社員が増えれば、この会社ももっと活気づくはずだ」
社長は、ポチ太郎の才能を高く評価していた。