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7 服を買いました

俺の希望とは関係なく、爺さんとおっさん、ギルマスが額を寄せて話し合っている。

俺は床の上でシロを抱きしめながらゴロゴロ。

一応遠慮はしたけど、俺には反論出来るほどのコミュ力がない。

3人に悪意は感じられないので、難しい話は大人に任せることにした。

俺はシロと一緒なら幸せ、余計なことはしたくないけど練習は結構好き。

練習すると自分でも判るほどどんどんと実力が上がるのは体験済み。

練習はすぐに成果が実感できるからめっちゃ楽しい。

シロも俺と一緒で練習が好き。

魔法や剣術を学べるのは俺としてもありがたいけど・・・。


「どうしても嫌か?」

辺境伯の家来となり、騎士爵として城に勤めるように言われた。

「貴族は嫌い。」

自分勝手だし、平民を勝手に罪人にするし、気に入らないと人殺しだって平気。

俺が読んだファンタジー小説やゲームに出て来た貴族は大抵がそうだった。

貴族には絶対に関わりたくない。

「確かに酷い貴族も多いがそれはよその国だ。この国の貴族は殆どが良い貴族だし、領主の伯爵様は本当に良い人だから大丈夫だ。」

「家来の言葉、信用できない。」

自分の主人は良い人だと言われても信用出来る筈がない。

「・・・・。」

3人にあれやこれやと言われ、妥協点として冒険者の空き時間に魔力の基本練習と隠蔽魔法、基本的な剣術と護身術を教えて貰うことになった。


とりあえず今直ぐに必要な“隠蔽“を教えてくれた。

「隠蔽の魔法陣はこれだ。」

大きな魔法陣が宙に浮かんだ。

「この魔法陣に魔力を流せば隠蔽魔法が発動する。」

初めて見る魔法陣、細かい字が一杯書いてある、ってこれ日本語だ。

日本のゲームだけに魔法陣の文字も日本語なの?

「まずはわしがやって見せる。」

魔導師長のおっさんが杖を掲げると魔法陣が青白く光っておっさんを光が取り囲む。

他には何も変化は無い。

「・・・・。」

「今度はレオに隠蔽魔法を掛けるぞ。」

また空中に魔法陣が浮かんだ。

細かい文字までは覚えきれないが、大体の感じは掴める。

魔導師のおっさんが杖を掲げると魔法陣から青白い光が俺の体に伸びる。

体を何かの膜が覆うと同時に体の中を流れる魔力の道がはっきりとした。

アナログ画面がデジタル画面になった感じ。

魔力の道がくっきりと見えている。

「どうだ、魔力の流れがはっきりしたであろう。」

「うん。」

「魔力は本来このようにはっきりとした流れなのだが、レオは魔力が多すぎるので魔力の道から溢れ出て周辺がぼやけていた筈じゃ。」

「うん。」

「この流れの感覚を覚えれば魔力が駄々洩れになることは無いが、それでもレオの魔力は大きすぎるから目立つ。いつも隠蔽魔法を掛けておれば練度が上がって普通の人間程度に見えるようになる、と思う。」

俺って普通の人間じゃなかった?

今が楽しいからまあいいか。

「感覚を覚えたら、今度は自分でやってみろ。」

おっちゃんが魔法陣を出してくれた。

おっちゃんの魔法陣を真似して魔法陣のイメージを固める。

魔法陣のイメージを強めながら魔力を脳に集めて行く。

”隠蔽“

心の中で叫ぶと魔法陣が消えた。

あれ?

「それでよい。発動しなかったが、ほぼ出来ていた。今度は発動までに1呼吸おいてみろ。」

もう一度魔法陣をイメージして魔力を集める。

1呼吸おいて魔力を放出した。

その1呼吸で頭上に魔法陣が現われ魔法陣から俺の体に光が注いだ。

「そうじゃ、その感覚を忘れるな。もう一度やってみろ。」

もう一度と言ったのに、5回も練習させられた。

おっさんの言葉を信じてはいけない事が判った。

「今度はシロに掛けてみろ。」

俺の横でじっと見ていたシロに隠蔽魔法を発動した。

シロの体を青白い光が包む。

「良く出来た。1度で上手く行くとは驚いたぞ。」

褒められた。


「竜は飛行魔法以外の魔法が使えぬからレオが掛けてやらねばならぬ。隠蔽魔法は1日持つから毎朝掛けてやれ。」

「うん。」

って、竜は魔法を使えないの?

レオは石弾も風刃も俺より凄いんだけど。

「竜は魔法を使えないの?」

「竜は飛行魔法を使う為に大きな魔力を持っているが、その他の魔法は使えない。黒竜の中には稀にブレスを吐くものもおるが、ブレスはスキルであって魔法では無い。魔導士が竜騎士となるのは上空からの攻撃には魔法を使える魔導士が騎乗する必要があるからだ。」

そうなんだ。

って、シロはどうなんだ?

怖いから聞くのはやめた。

シロには当分の間は人前で魔法を使わせないようにしよう。

「魔力の道がはっきりすれば魔力の流れる速さも自覚出来る筈だ。毎日魔力の流れを意識しながら少しでも早く流れるように練習しろ。」

「はい。」


「ここならすぐに着られる服があるわ。」

ギルドのお姉さんに連れられて服屋に来た。

少しお金がある庶民向きに既製服や貴族のお下がりを引き取った古着を売っている店らしい。

貴族のお下がりは生地も良いし、傷む迄着る事は無いので新品と殆ど変わらないからお買い得だとお姉さんが教えてくれた。

少なくとも猪革の貫頭衣よりはずっといい。

子供用の服と下着、靴をお姉さんに選んで貰った。

下半身がスース―しなくなった。

祝ノーパン卒業。


お姉さんと分かれ、シロと一緒に街を歩く。

シロは小さいので街を歩いても問題ないとギルドが許可してくれた。

街の人が皆振り返り、中にはついてくる人もいるが、許可なく竜に触ったり接近しすぎることは王国法で禁止されているので遠巻きに眺めている。

視線は気になるが、邪魔されなければ問題は無い。

凄く良い匂いにつられて屋台に寄った。

「串焼き2本。」

「あいよっ。白い竜って珍しいな。」

「うん、賢いよい子。」

「何歳だい?」

「3か月。」

「もう飛べるのか?」

「うん。」

「それは凄いな。頑張って街を守ってくれよ、これは挨拶代わりのサービスだ。」

焼きあがった串焼き2本を只で貰ってしまった。

シロに差し出すと器用に前足で串を持って肉を食べている。

うん、可愛い!

周りで見ていた街の人々もあまりの可愛さに頬を緩ませている。

おいしいという感情が伝わって来て俺も嬉しくなった。

俺も食べてみる。確かに美味しい。

調味料無しの肉ばかり食べていたせいもあるかもしれない。


肉を食べながら門を出て、ギルマスに教えてもらった竜騎士専門の道具屋に行った。

竜騎士が竜と一緒に出入りできるよう街壁の外に店がある。

竜のにおいが染みついているので街壁の外でも魔獣は殆ど近寄らないそうだ。

柵で囲われた広い敷地に倉庫のような大きな建物が建っていた。

「こんにちは。」

何か作業をしているおっちゃんに声を掛けた。

俺と同じくらいの背丈だが幅が3倍くらいあって髭がモジャモジャ。

ファンタジー小説の挿絵通り、ドワーフで間違いない。

「おう、騎乗具か?」

シロにつけられている不格好な鞍?を見ながら聞いてきた。

「うん、ある?」

「中古でいいなら格安で良い物が沢山あるぞ。」

「そうなの?」

「竜は5年から10年で成竜になる。それまではどんどん成長するからサイズが合わなくなるたびに新調するのさ。竜騎士は貴族の子供が多くて金があるからな。だから小さいサイズの騎乗具は新品同様なのが沢山余ってる。とりあえず良さそうなのを出してくるから見てくれ、気に入ったのが無ければ作るが新品は高いぞ。」

親父さんが奥から沢山の騎乗具を持って来た。

「気に入ったのある?」

シロに聞いてみると、シロは騎乗具を一つ一つ確認し始める。

「ほう、賢いんだな。」

「うん、めっちゃ賢い。」

「野良卵だったんだろ?」

「野良卵?」

「感応の儀式ではなく、偶然見つかった卵のことさ。」

「うん、洞窟。」

「坊主は運が良いのう。卵を見つけるのさえ珍しいのに、見つけた本人が感応出来るなんて10年に一人くらいしかいないぞ。」

「そうなの?」

「せっかくの幸運だ、無茶して死ぬなよ。」

「うん。」

「キュル!」

「あっ、それが気に入ったの?」

「ほう、これを選んだか。本当に賢い竜だな。」

「そうなの?」

「竜はキラキラしたものが好きだから派手なものを気に入ることが多い。だが、この騎乗具は地味だろ?」

「うん。」

「だが性能はこれが1番なんだ。ずれにくいし座り心地もいい。竜への負担も少ない特注品だ。辺境伯が息子のために作らせたものだからな。」

「高い?」

「元値は断トツで1番高いが、キラキラしていないから人気が無い。他のものと同じ金貨5枚だ。」

金貨5枚って50万円くらい。ギルドで支度金を貰ったから十分買える。

「じゃあこれ。」

さっそく装着の仕方を教わってシロに着けてみた。

「どうだ、重心が竜の前足に掛かるから首への負担が少ないだろ。乗ったまま長距離を走ることも出来るぞ。アジャスターもしっかりしているから3mくらいに育つまでは充分に使える筈だ。」

「そうなの?」

「走ったり飛んだりして自分で試してみろ。」

おっちゃんに言われてさっそく試してみる。

首の長い大型犬に乗っている感じ? 

走っても前足の邪魔にはならないし、翼の動きにも問題は無い。急発進、急旋回、急停止でもずれることはなかった。

「うん、お尻が楽。」

「クッションも最高の素材を使っているからヘタることもないぞ。何か具合が悪いところがあればいつでも来い。」

「うん、ありがとう。」

代金を払い、シロに乗ったまま街に戻った。


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