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喉が渇いた。

両手の掌を水を汲む形に重ねて水が溜まっているイメージをする。

何度もやったことが有るのでイメージし易い。

「ウォーターボール!」

掌に水が溜まった。

イメージし易い魔法は楽に出来るらしい。

掌から水を飲む。

シロがじっと見ている。

「シロも飲む?」

「キュルル。」

もう一度掌に水を出してシロにも水をあげた。

喜んでくれた。

竜に水が必要なのかどうかは判らないが、シロが喜んでくれれば俺も嬉しい。



4日目、魔獣の肉が少なくなった。

この4日間魔獣は現れなかった。

岩山には木の実も無いし魔獣もいない。

食料を調達するには危険な森に入らなければならない。

4日間ずっと魔法の練習をしたのでマグナム弾の威力も上がった。

今なら魔獣でも倒せる筈、シロが。


俺のマグナム弾もずいぶんと進歩したが魔獣を倒すのはまだまだ無理。

「ブレスを撃つと火事になるから、本当に危険になったときだけだよ。」

「キュル。」

判ってくれたらしい。

「魔獣が近づいたら教えてね。」

「キュルル。」

任せてという感情と共にシロの足元から微かな魔力が広がって行く。

じっと見つめていると薄い魔力が凄い速さで地面を広がって行きふわっと舞い上がる。

索敵魔法?


ずっと一緒に練習していたせいかシロの魔力がはっきりと見えるようになっている。

真似をしてみる。

目の前に実例があるとイメージが作り易い。

暫く魔力を広げていたら頭の中に丸い画面が浮かんだ。

薄青い画面の左半分が真っ白。

左にはシロがいる。

「シロはそこから動かないで。」

シロに声を掛けて1歩離れる。

真っ白な部分が半分になった。

もう1歩離れる。

白い部分が消えて全体が薄青い画面となった。

索敵魔法の発動に成功、索敵範囲は俺を中心とした1mと判った。

シロの索敵範囲は30m位。

「ぐぬぬ。」

「キュル~。」

シロが心配そうに体を摺り寄せて来た。


こんなことで落ち込んでいる場合ではない。

「大丈夫、一生懸命練習して追いつくから。」

1mと30mと考えるから差があるように感じるだけだ。

100㎝と30m、それ程大きな差ではない。

気合を入れ直してシロの索敵魔法をじっと見つめる。


シロの体の中を循環する魔力が細い糸となって4本の足元から薄く流れ出ている。

マグナムを撃つ時に比べると遥かに少ない量だが、広がる速度はマグナム弾と殆ど一緒。

体内の魔力循環速度を上げて細い魔力を勢いよく足元から発射する。

薄青い画面の左側の白い部分が細長くなった。

シロに動かないように言ってシロから離れる。

1歩、2歩、3歩、4歩。

白い部分が無くなった。

索敵範囲は約2m。

1回目が1mで2回目は2m、倍になった。

3回目なら4m、4回目は8m。

6回めで32mになってシロに追いつき8回目には100mを超える。

丸1日頑張った成果で索敵範囲が10m位になった。

予定は未定にして決定にあらず。


魔獣なら1秒で到達できる距離。

魔獣対策は当分の間シロに任せる事にして俺は食べ物のイメージを魔力に重ねる練習。

森に近づいて索敵魔法を発動すると画面の端に黄色い点が現われる。

何度も何度もイメージを作りながら練習する。

練習中はシロが警戒してくれているので安心。

索敵範囲もだいぶ広がった気がする。



6日目、とうとう食べ物が無くなった。

距離感がイマイチ判らないが、食べ物の方向は判るようになった。

魔獣が近くに来ればシロが警告してくれる筈。

シロに護衛を頼んで近い所にある食べ物らしい黄色い点に向かった。

森に入ると、5m程の所で黄色い点に着いた。

岩場がすぐそこに見えているので比較的安全?

大きな木の高い所に10㎝程の赤い実が沢山成っている。

“鑑定“

“ボコ 赤い実が食用” 

「枝の根元を撃ち抜いて。」

「キュルル。」

シロが実のなっている枝にマグナム弾を撃つと沢山の実を付けた枝が落ちて来た。

一つもぎ取って食べてみる。

甘酸っぱい味が口に広がる。

う~ん、食べられるけど味はイマイチ。

「キュルル。」

シロにも上げる。

「キュル。」

シロも微妙らしい。

格別美味しいと言うほどでもないが、食料は大事。

シロに枝を落として貰い、俺は枝ごとアイテムボックスに収納する。

全部取ると枯れてしまうかも知れないので適当な所でストップを掛けた。


まだ森の奥には行きたくない。

岩場に戻り、森の端を回りながら食料を探す。

黄色の点が見えた。

さっきと同じ位、森の端から近い場所。

森に入ると黄色い果物が沢山なっている木があった。

“鑑定”

“レカン 実は美味”

ボコは食用だったが今度は美味。

期待しながら手を伸ばして2つ捥ぐ。

一つをシロにあげて一つを齧ってみる。

口の中に苦みが広がった。

「キュ~。」

シロも美味しくなかったらしい。

皮が苦い?

皮を剥くとミカンのような感じ。

中の果肉は甘くておいしかった。

もう一つ採って皮を剥いてシロにあげた。

「キュルル。」

美味しかったらしい。

低い木だったのでナイフで実が沢山成っている枝を切ってアイテムボックスに放り込む。

実だけを採っていると時間が掛かるので危険。


「キュル。」

夢中になっていたらシロが声を上げた。

慌てて森の外に走る。

岩場に出ると後ろから大きな猪のような魔獣が2頭追いかけて来た。

“石弾” “石弾” “石弾”

マグナム弾という言葉は長いので石弾に変えたので以前より連射出来る。

2発が外れ、1発が当たったが猪に弾かれる。

猪?は俺の後ろを走っているシロに襲いかかろうとしてバタバタと倒れた。

一瞬で首が弾け飛んだ。

シロの石弾?

シロは石弾が気に入ったようで、暇があると木の枝を狙って撃っていた。

そのせいで威力がめっちゃ上がったらしく1撃で猪の頭を吹き飛ばした。

「シロ、偉いぞ。」

「キュルル。」

シロがどうだとばかりに首を上げている。

頭をわし掴みするようにして撫ぜてやると喜びの感情が伝わって来た。


とりあえずはお肉。

猪をアイテムボックスに放り込んで岩山を登った。

岩山の安全な所まで逃げて猪を取り出す。

熊の肉が血生臭かったので血抜きをした方が良いと思って山の斜面に首を下にして並べると血がどんどんと抜けて行く。

血抜きの間にボコとレカンの枝を取り出して果実を捥ぐ。

レカンの皮を剥いてシロに上げると喜んでいた。

血抜きが終わった猪1頭はアイテムボックスに放り込み、1頭を解体する。


初めての解体。

お肉も欲しいが、もっと欲しかったのは皮。

歩くと足の裏が痛いし、座るとお尻が痛い。

森に入ると木の枝で体中が傷だらけになる。

魔獣の皮があれば靴や服が作れる筈。

目指せフ〇チン脱出!


首の所からナイフを入れて丁寧に皮を剥がす。

皮と肉を切り離すのが結構難しい。

シロが横でじっと見ている。

皮を切り離すのは時間が掛かりそうなのでとりあえず腹を裂いて内臓を取り出した。

岩の上に内臓を置くとシロが嬉しそうに食べている。

シロが嬉しそうに食べているのを見て俺もお腹が空いてきた。

肉の塊を切り取って熊で試したオーブンの魔法で焼いた。

薄く切り取って食べてみると、獣臭さがあって不味いけどまだまし。

内臓を食べ終えたシロにもあげる。

シロ的には内臓の方が美味しかったらしい。

皮を剥がして残った肉はアイテムボックスに収納。

皮には肉が結構こびり付いている。

丁寧に肉や脂肪をこそげ落とす。

ふと気が付いた。

皮が結構硬い。

乾燥したらもっと硬くなりそう。

パンツを作ったら絶対に股擦れを起こす。

うむむ。

靴と服が出来た。

服は長方形にした皮の真ん中に穴を開けた貫頭衣、猪は2m以上あったので腰の下まで十分な長さを取れた。細く切った皮の紐を腰に巻いて出来上がり。

かなりゴワゴワするが、無いよりはまし。

パンツは諦めた。

横から見ると色っぽい?

靴は余った皮で足を包み、足首の上に革紐を巻いて結んだ。

馴染むまでは擦れて痛くなりそうだが、裸足に比べたらずっとまし。

これで行動半径が広がりそう。



森の入り口で一緒に狩りをするようになって食生活も改善した。

鑑定魔法も毒キノコが判別出来るほどにレベルが上がった。

索敵魔法の練習をして魔獣も判るようにはなったが、シロのほうが遥かに広範囲の索敵が出来るので俺の索敵はほぼ食料採取用。

襲ってくる魔獣と戦うために石弾の練習もした。

まだまだ強い魔獣には全く歯が立たないが練習を重ねればいつかは1撃で倒せる筈。

強い魔獣が出てきたときは、俺が魔獣の注意を引き付けて、シロが爪や尾の1撃で倒すのが俺たちの戦法。

少し成長したせいでシロの爪や尾の威力は半端なく強くなった。

鱗もだいぶ硬くなってきて、暇があると体当たりで森の木を薙ぎ倒している。

はっきり言えば主戦力はシロで俺はおまけ?

残念なことにシロのブレスは強くなりすぎて普通の魔獣は消滅して肉も魔石も残らない。

それでも一緒に戦うのは楽しいし、何よりもシロが喜んでくれるのが嬉しかった。

心が通じているので連携は完璧。

一緒に戦っているという高揚感が半端ない。



よし、今度は風魔法だ。

石弾にある程度目途が立ったので今度は風魔法に挑戦する。

石弾ではシロに勝てないと思ったからではない、相性の良い魔法を探す為だ。たぶん。

風刃はブーメラン状の風の刃が回転しながら飛んで行くんだったよな。

ゲームで見た戦闘画面を思い出しながらイメージを固める。

ブーメランは子供の頃に遊んだのでよく知っている。

プラスチックの安物で半分透けていたので風魔法のイメージには良い。

イメージを固めながら魔力を練る、練る、練る。

腕を伸ばして人差し指で森の木を指さした。

「行け~っ!」

1呼吸遅れて薄い紙のようなものがくるくる回りながら飛び出して、ひらひらと落ちた。


まあ最初はこんなものだ。

「行け~っ!」「行け~っ!」「行け~っ!」

少しづつ遠くまで飛ぶようになった。

「ぃけ~っ!」「ぃけ~っ!」「ぃけ~っ!」「ぃけ~っ!」「ぃけ~っ!」

森の木まで届いた。

どうや。

「キュルッ!」

「シロもやってみるの?」

「キュル。」

シロの額から三日月型の風の板が高速回転で打ち出される。

森の木に当たって風刃が消えた。

「凄い、最初から森まで届いたね。」

シロを褒めてあげる。

ド~ン。

振り返ると、シロが撃った風刃の当たった木が倒れている。

「・・・。」

めっちゃへこんだ。

「キュル?」

シロが心配している。

「大丈夫、たぶん。」

シロは風刃とも相性が良いらしい。


シロのお手本を何度も見せて貰いながら風刃の練習をする。

シロは風刃が気に入ったらしく食料調達で森に入った時は勿論、岩場でも森に向かって風刃を撃ちまくっている。

俺はシロに魔力を補給する役目。

「ぐぬぬ。」

よくよく考えてみればブーメランと風刃では全然違う。

ゲーム画面で見ただけのものを詳細にイメージ出来る筈が無い。

それに比べれば俺は実際に銃を撃っている。

マグナム弾もライフル弾も散弾銃も経験済み。

頑張れば石弾の方が伸びしろがある筈だ。

初心に帰って石弾の練習に力を入れる事にした。


毎日が楽しい。

シロと一緒に魔法の練習。

シロと一緒に食料調達。

シロと一緒にお昼寝。

魔法も徐々にではあるが確実に上達した。

小型の魔獣であれば1撃。猪や熊のような魔獣にも傷を負わせることが出来る。

俺が手負いにして狂暴化した魔獣はシロが得意の風刃で首チョンパしてくれるから安心して魔法を撃てる。

今の望みはただ一つ。

人間と出会うまでにパンツが欲しい。



20日目? シロが飛んだ?

まあ岩の上から少し浮いた感じ。

翼を羽ばたかせて飛ぶとばかり思っていたのでびっくり。

じっと見つめると魔力の流れが見える。

魔法で飛んでいるらしい。

目の前に見本が有るのでイメージを固めやすい。

朝から晩までシロの飛行訓練を観察する。

シロは殆ど翼を動かさない。魔力で飛んで翼で微調整。

翼は急な方向転換や魔力節約用で飛ぶこと自体には必要無いらしい。

一生懸命シロの魔力の使い方を真似して練習を繰り返す。

飛行魔法は魔力の消費が大きいので、時々休憩しながら石弾と風刃の練習。


3日目には少しだけだが俺も浮き上がれるようになった。

シロも魔法の練習が楽しいようで毎日一緒に練習している。

シロの魔法をお手本にして練習出来るので俺の風刃と石弾も日に日に上達している。

練習する度に上達が実感できるとモチベーションが上がる。

昨日出来なかったことが出来るようになる、こんなに嬉しいことは無い。

お勉強も毎日成績が上がったならもっと勉強していたのにな、なんて思ってしまった。

シロは自在に空を飛べるようになったが俺はまだヨタヨタ。

時々風に吹き飛ばされる。

魔法の進捗度合いではかなり差があるがいつかは追いつこうと頑張っている。

相応の練習をすればイメージ通りに魔法を使えるようになるというゲーム設定を信じて頑張っている。



シロは1か月程で俺を乗せても飛べるようになった。

問題はシロの鱗がツルツルなのですぐに滑り落ちること。

騎乗用の鞍を作ることにした。

ゲームのデモ画面で見た鞍を思い出しながら、討伐した魔物の革と森で見つけた蔓草で試行錯誤しながら作った。

何度も作り直して試験飛行と手直しを繰り返す。

万が一に備えた飛行魔法の練習も頑張った。

多少なりとも飛べればシロから落ちても撃墜は免れる。

手作りの鞍なんて当てには出来ない。

作った本人が言うのだから間違いない。

シロが生れて3か月、完成した騎乗具に跨って漸く街に向かって出発した。

もちろん洞窟にあったお宝の山は回収した。

出発直後に気が付いて慌てて戻ったことは秘密。

キラキラしているだけで価値の低い銅鉱石が多かったが、ミスリルやアダマンタイト、金などの稀少鉱石と少しだけだが宝石もあった。


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