4 魔法を使えるようになりました
おなかがすいた。
のどが渇いた。
足の裏が痛い。
もう2~3時間洞窟の中を彷徨っている。
シロも疲れているようだ。
「魔力を食べる?」
「キュル?」
いいの?と聞いてくる。
「いいよ。魔力は十分回復しているから。」
鑑定の練習をしながら歩いていたが、鑑定魔法は殆ど魔力を使わないらしく体中に魔力が漲っている感じがしている。
体力と魔力は別物だと実感した。
「キュルル!」
嬉しそうに啼くのでシロの手を握って魔力を流してあげる。
体の中から魔力が流れ出ていくのを感じる。
魔力を意識すると体の中をグルグルと回っている魔力が掌から流れ出ているのが判る。
以前よりも流れが太く勢いも増している。
シロに食べさせてあげるだけで魔力が増える予感。
「キュファ~!」
シロは満足したらしい。
ほんの少しだが大きくなった感じがする。
のどが渇いた。
そうだ、魔法だ。
明確なイメージを固めて魔力を放出すれば魔法が発動する、解説にそう書いてあった。
イメージ、イメージ。
空中に浮かぶ直径50㎝程の水球をイメージする。
「ウォーターボール!」
・・・・。
まあそうなるな。
空中に浮かぶ水球なんてファンタジー小説で読んだだけ、見たことも聞いたことも無い。
見たことのあるのは、・・・・那智の滝。
うん、滝つぼのすぐ近くまで行って観た。
那智の滝を思い出しながら、水煙を上げて天空から流れ落ちる大量の水をイメージする。
両手を掲げ、魔力を集めながらイメージを込める。
「水よ出ろ!」
魔力の放出と同時に体の中から少しだけ魔力が抜けていく。
頭上に小さな水の塊が浮かんで段々と大きくなる。
水球がバケツ一杯分くらいになった時にいきなり水が降ってきた。
“ザバ~ン”
「やった~!」
初めての魔法。
頭の上から降って来るイメージ通り俺の頭上に水が降ってきた。
感動は一瞬。
水が冷たかった。飲みたかっただけで被りたかった訳では無い。
とりあえずずぶぬれになった髪の毛から滴る水を舐める。
次からは掌に出そう。
彷徨こと更に1時間。
洞窟の先に光が見える。
出口というよりは岩の裂け目?
そっと首を出すと岩山の中腹だった。
首だけを出し、周りに敵のいないことを確かめて外に出る。
尖った石が多くてめちゃくちゃ足の裏が痛い。洞窟の中の方が遥かにましだった。
ゴツゴツとした岩に覆われた急斜面。
目の前の大きな岩に上ると遥か遠くまで見渡せた。
大きな岩の上に颯爽と立つフ〇チンの少年。
思わず周りを見渡す。
よかった、目撃者はいない。
急斜面の下には大きな森が広がり、微かに見える遥か向こうの草原には街道らしきものがある。
「キュルッ!」
シロが翼を広げて何かを威嚇している。
シロの視線をたどると額に大きな角が生えている体長2m程の獣?
動物園で見た熊よりも一回りでかい。
近くの森から出てきたようだ。
20m程下の岩場から俺達を睨みつけている。
警戒というよりも敵意を感じる。
え~っと、森で戦うときには火魔法はダメなんだよな。
拳くらいの石が獣の顔に当たるところをイメージする。
「行けっ!」
小石がビュ~ンと飛んで行って獣に当た・・・、避けられた。
まあ拳大のイメージで発射したけど、実際はそら豆くらいの大きさだったし、放物線を描いてポヨ~ンと飛んで行ったから当たってもどうということは無かったと思う。
硬い革を貫くには砲弾形?
早くするには回転?
ダメージを与えるには食い込んで爆発。
イメージするのはマグナム弾?
前世知識を駆使するのはファンタジーの定番。
両親とアメリカに行った時に練習場で色々な銃を撃ったことがあるから実物を知っている。
両手を広げ、魔力を意識しながらイメージを込める。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
掌の間の空間に弾丸が浮かんだ。
魔力をどんどんと流し込むと弾丸がゆっくりと回転を始める。
「ぅて~っ!」
マグナム弾がポヨ―ンと獣に飛んで行く。
“ポン!”
小鼓のような軽い音を立てて爆発?した。
毛が少し焦げた?
血は流れていない。
獣の堅い皮を貫通出来なかったらしい。
怒った獣が突進してくる。
やばい!
そう思った瞬間、俺の横から炎が吐き出された。
一瞬で獣が炎に包まれ、暴れながら岩に激突して動かなくなった。
倒れた真っ黒な獣からブスブスと煙が上がっている。
「キュルル!」
シロが得意そうに声を上げる。
至近距離とはいえ、生まれたばかりなのにブレスの威力が半端ない。
ひょっとして、シロってめっちゃ強い?
「キュルルッ!」
シロがどうやとばかりに胸を張って声を上げている。
褒めて誉めてという感情が伝わって来た。
「うん、シロは凄いね。守ってくれてありがとう。」
頭をガシガシとなぜてやった。
うろこが硬いので全力アイアンクローで丁度良いらしい。
感情がそのまま伝わるのでどれくらいが気持ち良いかも良く判る。
「キュルルル~!」
褒められて喜んでいる。
他の獣がいないのを確認して急斜面を降りた。
「これ食べられるかな?」
「キュル?」
真っ黒に焦げた獣を見下ろして首をかしげると、シロも一緒に首をかしげる。
超可愛い。
ミスリルのナイフを突き刺すと、皮は炭化していたが、肉は生。
クンクン。
血なまぐさい。血抜きしてないから?
まあいい、ひと塊の肉を切り取った。
ここは岩山と森との境目、いつ獣が襲ってくるかもしれないところでのんびりと調理なんて出来ない。
当然魔法の出番。
オーブンのイメージ。
200℃の温度で中まで火を通すイメージ。
家で使っていたからイメージはばっちり。
魔物の肉をオーブンで囲うイメージで魔法を練る。
200度のオーブン。
200度のオーブン。
200度のオーブン。
イメージを固めて魔法を発動する。
体の中から何かがごっそりと抜けて行く感じがする。
暫くすると、いい匂いがしてきた。
魔法を止めて肉の塊を切ってみると程よく焼けている?
小さく切って恐る恐る食べてみた。
硬い、臭い、まずい。
調味料も無いし血抜きしてないから当然か。でも毒ではない感じ。
「キュル!」
シロも食べたいらしいので生と焼いたのを並べて差し出すと両方完食。
「どっちがいい?」
「キュルル」
焼いたほうが好みらしい。
もうひとつ大きな塊を焼いてあげると満足したようだ。
とりあえず空腹は満たされたので、非常用に肉の塊をいくつか切り取ってアイテムボックスに収納した。
獣の革で靴を作ろうと思ったが見事なまでにボロボロで使えなかった。
そうだ、魔石だ。
ファンタジー定番の魔獣なら魔石が有る筈。
心臓の所を切り開くと1㎝ほどの魔石を発見。
倒したのは獣では無く魔獣だったらしい。
茶色っぽい小さな石で、実際に体から取り出していなければ普通の石と思って見過ごしてしまいそうな石だった。
ファンタジー小説では利用価値が多くて売れるのが鉄板なのでアイテムボックスに入れた。
「キュルル」
ブレスを使ったせいかシロが魔力を欲しがっている。
お肉と魔力のどちらが好いのか尋ねると、主食は魔力でお肉は嗜好品らしい。
頭に手を置く。
鱗がだいぶ硬くなっているような気がした。
魔力を流し込む。
「キュル。」
30分程魔力を流してあげたら満足してくれた。
また少し大きくなった?
「キュルル!」
大きくなったらしい。
遠くに見えた道に行きたいけど、10㎞、20㎞ではきかないほど遠そう。
まだ目の前に広がる広い森を抜けるのは危ない。
さっきの魔獣は見晴らしの良い所だったから何とかなったけど、突然襲い掛かられるとまず勝てない。
さっきは岩場だから良かったが、森の中でシロがブレスを使えば森林火災に巻き込まれる。
設定通りなら年齢相応のレベルからのスタートの筈。
まずは定番通りのレベル上げと魔法の練習が必要。
シロが飛べるようになるまで一緒に訓練することにした。
まずは土魔法の練習。
マグナム弾をイメージする。
さっきは両手を広げたが、今度は拳銃を意識して両手を組んで前に突き出した。
アメリカの射撃場で教わったように軽く肘を曲げて腰を落とす。
魔力を意識しながらイメージを込める。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
腕の前の空間に弾丸が浮かんだ。
魔力をどんどんと流し込むと弾丸が回転を始める。
「ぅて~っ!」
マグナム弾がポヨ~ンと飛んで行く。
何とか森の木まで届いた。
狙っていた木の2本隣に当たって爆発した。
ポン。
前回同様の間抜けな音。
「キュキュキュ!」
シロに笑われた。
ぐぬぬ。
練習あるのみ。
「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」
「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」「ぅて~っ!」
爆発音が大きくなった?
「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」
「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」
うん、確かに爆発音が大きくなった。
「キュルル!」
シロも大きくなったと言ってくれた。
練習あるのみ。
「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」
「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」「て~っ!」
「キュルッ!」
シロから僕も撃ってみたいという感情が伝わって来る。
俺の魔法をずっと見ていたので何となく撃てる気になったらしい。
「シロも撃ってみる?」
「キュル。」
「最初はうまく出来なくても当り前だからね。」
シロが失敗してもいいように先にフォローしておいた。
「キュル。」
シロの額から銃弾が飛んだ。
ドカ~ン。
ド~ン。
20m程離れた木の幹が爆発して倒れた。
「・・・・。」
「キュルル!」
誉めて誉めてという感情と共にシロが胸を張った。
「う、うん凄い・ね。・・・。」
めっちゃへこんだ。
「キュル?」
シロが心配している。
「うん、大丈夫。多分相性の問題だと思う。」
「キュル~。」
シロが心配そうに体を摺り寄せて来た。
シロの悲しそうな感情にハッとする。
俺の気持ちがそのままシロに伝わるのを忘れていた。
「うん、大丈夫。俺はやれば出来る男。」
自分に気合を入れ直す。
「キュル。」
「ねえ、シロはどうやって魔法を覚えたの?」
シロもイメージ魔法?
「キュルル。」
「俺の魔法を見て覚えた?」
「キュル。」
「俺も一生懸命見るから、シロが魔法を撃ってみて。」
「キュル。」
シロに魔法を撃って貰う。
じっと見つめる。
「もう一回。」「もう一回。」「もう一回。」「もう一回。」
じっと見つめていると、白の体の中を何かがグルグルと回っているのが見えて来た。
「もう一回。」「もう一回。」「もう一回。」「もう一回。」
体の中を流れる何かがシロの頭に集まって来て膨らむ。
膨らんだ何かが1瞬止まってから魔法が飛び出した。
「ごめん、もう1回。」
シロが疲れて来たのを感じたが、もう1度お願いした。
シロは文句も言わずにもう1度撃ってくれた。
「なんとなくだけど掴めた気がする。やってみるね。」
体の中を流れるものに意識を向ける。
体の中を巡回させながら脳にたくさん集まるように意識する。
たくさん集まって来たのを感じながらマグナム弾をイメージする。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
硬い弾丸、高速回転、爆発。
脳から何かが流れ出て、目の前に弾丸となって浮かんだ。
弾丸に脳から何かをもっと流し込む。
高速回転、爆発。
イメージを流し込む。
弾丸の回転が上がった。
「行けっ!」
弾丸が1直線に森に飛んで行き、木にめり込んだ。
ボワッ。
シロ程の威力は無いが、明らかにさっきまでよりも威力が上がった。
「キュルル。」
シロも喜んでくれた。
「ありがとう、シロのお蔭だよ。」
「キュル。」
「ごめん、お腹が空いたよね。」
シロに手を当てて魔力を流し込む。
「キュルル。」
シロが嬉しそう。
シロをじっと見ると俺の手から魔力らしいものが流れ出てシロの体の中でグルグルと回っていくのが見える。
自分の体に意識を戻すと俺の体の中で魔力らしいものが全身を循環しているのが見えた。
回る速さが違う。
シロに当てている手の近くではシロに吸い出されているせいか少し早く回っている。
もっと早く循環出来たらシロにもっとたくさん魔力をあげられる?
全身の流れが早くなるイメージを作りながら掌に魔力を集める。
全身の循環速度が上がった。
「キュルル。」
シロが喜んでいる。
循環速度が速い方が魔力を吸い易いらしい。
循環速度を上げるように頑張ろうと思った。
「キュル。」
20分ほどでシロが満足してくれた。
予約投稿というチートスキルの獲得を目指しています。
不定期投稿で済みません。