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27 スタンビート

「アホーナ子爵が妙な動きをしているから気を付けろ。」

「?」

貴族侮辱罪で俺を訴えたが、却下されて怒っているらしい。

マテが情報をくれた。

「闇ギルドと接触しているらしい。」

「それ、何?」

「誘拐や暗殺を請け負う地下組織だ。王都にもいくつかあるらしいな。」

闇ギルドについてはボロも知っているらしい。

「シロは悪意や殺意に敏感だからめったなことは無いと思うが、一応気を付けておけ。」

「うん。」


という訳で、襲ってきました闇ギルド。

近づいて毒を塗ったナイフを突き出した奴と、毒矢で射掛けた奴、毒針を投げてきた奴の3人同時攻撃。三所攻め?

3人同時は良いけど、近づく前から殺す気満々。

少しは殺気を隠蔽しろよ。

子爵が値切って2流の暗殺者を雇った?

ナイフの男はシロの威嚇で座りしょんべん。

毒矢と毒針は俺のスタンガンで気絶した。

駆けつけてきた警備隊に3人を引き渡す。

「ミハリガホウコクニイッタ。アイテヲタシカメル。」

「もしも敵の本拠が見つかったらこの笛を吹いて下さい。警備隊が駆け付けます。」

闇ギルドの仕事にはたいていが見届け役が付くとマテが教えてくれていた。

それらしき男にマーキングしておいたので居場所を突き止めるのは簡単な筈。


気配を探知されないように隠蔽魔法を使いながらスラム街の奥に進む。

スラムにしてはまともな2階建て。

入り口にいる見張りの二人をスタンガンで気絶させて2階に上る。

マーキングされている男が4人の男と向かい合っていた。

スタンガンで5人を気絶させて部屋を見回す。

たいしたものは無い。

「トナリニカクシベヤ。ソザイガタクサンアル。」

先日覚えたばかりの素材探知で見つけたようだ。

古代文書の魔法は役立つものが多い。

シロが本棚をゴソゴソすると、本棚が動いた。

隠し部屋には魔石やお金、宝石や魔道具が一杯。

有り難く頂戴した。

暗殺用の武器や書類も沢山あったが証拠用に残して部屋を出た。

借りていた笛を吹くと暫くして警備隊がやってきたので後は任せる。

闇ギルドはお金持ちらしく、楽なのに盗賊よりも稼ぎになる。

闇ギルド、ドンドン来い。



やってきました闇ギルド。

今度は殺意満々なチンピラさんの集団。少し離れたところから気配を消しているつもりの毒矢さん二人。

そして稼ぎの素になる見届け人さん。

美味しくいただきました。

残念ながら2件目の事件で雇い人だったアホーナ子爵が捕まってしまい、美味しい仕事が無くなった。

誰か闇ギルドに俺の暗殺を頼んでくれませんか?



儀礼の試験、女性を抱き寄せて華麗なステップを踏む、シロが。

うん、これで合格間違いなし。

結果は143点。但し書きはシロ140点、レオ3点。

今4年だからあと2年。

5年で2点、6年で1点。大丈夫だ、0点にはならない。


「ぐぬぬ。」

近接戦闘。

女の子の背が高くなった。

俺の背が伸びない。

結果として胸が顔に近くなった。

それ以上は聞くな。

86点.



感応の儀式が開かれ、社交シーズンに突入。

新年度までの間、俺はホロルに戻ることにした。

王都にいては何かとトラブルに巻き込まれそうだし、ホロルで盗賊が増えているから。

ホロルは魔石や素材の産出が多いので、商隊の規模が大きい。

最近、王都付近から拠点を移した盗賊団が増えているらしい。

王都とは違って人が少ないから魔法の練習も出来るしお小遣いも稼げる。

という訳で、今ホロル街道の上を飛んでいる。

「なんで白い悪魔がホロルにいるんだよ。」

なんでといわれても困るけど。

盗賊さん達が両手を上げて降参している。半分くらいはシロの威嚇で倒れている。

「トウゾクヲシバリアゲロ。」

シロが上空から商隊護衛の冒険者に指示を出す。

俺はシロに乗っているだけで何もしていない。

シロの威嚇を免れた盗賊は即座に降伏したのだ。

アジトもちゃんと教えてくれた。

素直で良い子の盗賊さんたちだった。

「ありがとうございました。」

商人が頭を下げている。

「うん。」

やはり最後は俺が締めた。



1週間ほどで盗賊がいなくなってしまった。

隣の街付近からもいなくなったらしい。

せっかく来たのに。

「ぐぬぬ。」

仕方がないので草原の丘でゴロゴロ遊びをした。

楽しいからまあいいか。


久しぶりに騎乗具屋さんに行った。

特に不具合は無いが、点検して貰おうと思ったのだ。

「おう、坊主か。活躍しているらしいな。」

「うん。」

「オヤジサンモゲンキデナニヨリダ。」

「う、うおっ。シロがしゃべれるとは聞いていたが、実際に声を聞くと驚くな。もともと賢かったからしゃべっても不思議は無いがな。騎乗具の具合はどうだ?」

「オオキナモンダイハナイガ、ココノクッションガウスクナッテキタ。アト、シメヒモガイタンデキタ。」

外した騎乗具を爪で指しながら説明している。

「お、おう。」

シロに説明されて親父さんが戸惑っている。

「成程、言われなければ気付かないぞ。やはり本人、いや本竜に説明して貰うと判り易いな。」

親父さんが騎乗具の裏側のクッションを剥がし、奥から持って来た新しいクッションに張り替えている。締め紐もすべて交換してくれた。

「イクラダ?」

「今日はタダでいい。その代わり新しい騎乗具を作るときは俺に作らせてくれ。」

親父さんはシロが気に入ったらしい。

「ワカッタ、ヤクソクスル。」

「うん。」

最後は俺が締めた。



今日も街道警備。

天気も良いし、風が気持ちいい。

「ギュル?」

どうした?

珍しくシロの反応が無い。

何かに集中しているようなのでじっと待つ。

「キュルル!」

急に方向転換して速度を上げた。

どうした?

「リュウタチガタタカッテイル。オオキナタタカイ。リュウガキズツイテイル。」

どこかで大きな戦闘が起こったようだ。

俺の探知には大きな戦いは見つかっていない。

竜同士なので判ったのだろう。

シロの判断に任せた。



少しでもシロの負担を軽くするために風防型のバリアを張る。

シロが高速で南東に1直線。

日が落ちる。

行き先は王都のかなり東?

真っ暗闇をシロが飛ぶ。

煌々と篝火が焚かれている街が見えてきた。

シロが沢山の竜が集まっている広場に着陸した。

「キュルル!」

「ゴルルゴゴゴ。」

「ゴゴギュル。」

「スタンビート。クロトアオガドク、ミテヤッテクレ。」

シロの後をついて行くと隣の草地にクロとアオが倒れている。

「口を開けさせて。」

隣に付き添っている辺境伯に声を掛けた。

クロが口を開ける。

竜の鱗は魔法を跳ね返すので、鱗の無い口の中から魔法を流し込むしかない。

鑑定するとバジリスクの毒に全身が侵されている。前足が特に酷い。

爪で攻撃した時に爪から毒が浸み込んだのだろう。

状態異常無効の魔法を口の中に流し込む。

精神を集中して全身に魔法を送り込む。

10mを遥かに超える巨体だけに魔法の浸透が遅い。

俺の体からごっそりと魔力が抜けていく。

魔力の流れが止まった。

鑑定してみると正常。

「大丈夫。」

「すまん。アオも観てやってくれ。」

隣で倒れているアオの元に向かった。

翼に大きな穴が開いている。ポーションを掛けたようで血は止まっているが苦しそう。

口から鑑定してみると毒にも侵されている。

クロ同様に口から状態異常無効の魔法を流し込む。

アオの方が毒は少ないがアオも10m級の巨体。

かなりの時間が掛かった。ようやく毒を消し、翼に回復魔法を掛けた。

「うん、大丈夫。」

「すまん。父上と一緒にスタンビートの中心を偵察したのだが、不覚を取った。」

「マジュウノカズハ?」

「数万。正確には判らない。一昨日に発見して昨日の朝から討伐を開始したが、数が多すぎて止められていない。夜になって魔物が止まったが、明日の朝にはこの街に押し寄せる。」

「コチラノセンリョクハ?」

「竜騎士500騎、街の騎士、兵士が700。王都から援軍15000がこちらに向かっているが明日はせいぜい先鋒の1000。本体は明後日に着くかどうかだ。」


シロが広場に行って竜達と話し込んでいる。

俺はアイテムボックスからシロの大好きなオーク肉を出し、塩コショウをたっぷりと摺り込んで火魔法で焼く。

シロは朝食を食べてから後は何も食べていない。

少しでも回復させてあげたい。

シロの所に食事を持って行った。

「キュルル。」

竜と話をしながらも肉を食べている。

俺はシロの首に手を置いて魔力を流し込んでやる。

シロが喜んでいるのを感じて俺も満足。

シロが満足したようなので、竜との話を続けているシロを残して食堂らしいテントに向かった。



「オキル。」

シロの声で目が覚める。

いつの間にか横になっていた。

食事をしたとたんに眠ってしまったらしい。

テントの隅で寝ていた俺の横にシロが付き添ってくれていた。

兵士が俺達を呼びに来たのでシロが起こしてくれたらしい。

まだ外は暗い。

ついて行くと本部らしい大きなテント。

一番奥には何度か見たおっさん。

この国の王さんだ。

脇にいるのは竜騎士団長のバレン侯爵。

俺の後で数人が入って来て会議が始まった。

「夜が明ければ魔物の進攻が始まる。このままではこの街はおろか王都まで危ない状況だ。陛下より王命が下される、命を懸けて達成せよ。」

「ドラはシロに指揮を任せるよう進言している。緊急事態である。余もそれが良いと判断した。シロに異存はないか。」

「ウケタマワッタ。マズボクトレオガカズヲヘラス。ソノアトチュウシンニムカウ。リュウキシハマチカラハナレズニボウギョ。ガイヘキガトッパサレタラ、オウトニテッタイ。」

「承知した。総員配置につけ。」



夜が明け始めると、3km程向こうに魔獣の群れが見えた。街を押し潰すかのように横幅が10km以上に広がっている。まさに見渡す限り魔獣だらけ。

シロに乗って街を飛び立った。

シロのブレスで1キロほどの範囲で魔獣が消滅する。シロがブレスを連発。俺もメテオを連発する。真っ赤に燃える岩が降り注ぎ魔獣を消し飛ばす。

右に左にとコースを変えながら広域魔法で街に近い魔獣から殲滅していく。

俺達の攻撃を掻い潜った魔獣が街に向かうがたいした数ではない。後は竜騎士に任せてどんどんと先に進む。

これ以上魔物狩りをしていては決戦まで魔力が持たない。

10㎞程進んだところで残りは無視して真っ直ぐに中心部へと向かった。


岩山の麓に大型の魔物が集まっていた。

”大空襲“

東京大空襲をイメージした大型爆弾の絨毯爆撃。

ごそっと魔力を持っていかれる。

中心部の魔物の7割ほどが消えたが上位種には効いていない。

そこにシロの全力ブレスが降り注ぐ。

生き残っていた上位種が消し炭になっている。

シロのブレスがバージョンアップ?

ボスらしいバジリスクも周りにいた上位種もブレス5発で全て消えた。


麓の沼から新手の魔物が次々と出てくる。

“広域浄化”

スタンビートの発生源である沼全体に浄化魔法を掛ける。

魔力がとんでもない勢いで減っていく。

限界。

一旦魔法を止めて非常用の魔力ポーションを2本呷る。

“広域浄化”

もう一度スタンビートの発生源である沼全体に浄化魔法を掛ける。

沼から湧き出していた瘴気が消え、魔物の発生が止まった。

もう一度非常用の魔力ポーションを呷る。

途絶えそうだった意識がはっきりとしてくる。

もう1本飲んだ。

「ダイジョウブカ?」

「うん。」

非常用の魔力ポーションを作っておいて良かった。

俺が倒れかけたのでシロが心配そうにしている。

「大丈夫。魔獣の掃討をするよ。」


街の方向に戻りながらメテオを連発する。

シロもブレスを吐き続けて魔物を消滅させている。

街から4kmほどまで戻ると、メテオは危険なのでマグナム弾100発撃ちを連発する。

シロもブレスを止めた。

味方の竜が近いのだろう。

俺もライフル弾に変えて個別撃破しながら街に向かう。

まだ魔獣は沢山いるが、危険な上位種は倒した。

報告のために街に降りる。

本部前の広場にドラが威風堂々と立っている。

その横に王さん。

貴族らしいおっさん達もいる。

「ボスヲタオシタ。オオモトノヌマヲジョウカシタ。モウマジュウハデテコナイ。」

「ご苦労である。後方で休め。」

「マダマジュウガオオスギル。オウエンニデル。」

シロに跨ってもう一度戦場に飛び立った。

シロが竜達にボス撃破を伝えたようであちこちで竜騎士の歓声が上がっている。

歓声を上げる竜騎士達を飛び越えて最前線に出る。

マグナム弾を連発しながら魔獣の数を減らす。

逃れた魔獣は竜騎士達が次々と倒している。

右に左にとコースを変えながら魔獣を倒すがさすがに疲れた。

「シロ、戻ろうか。」

「ウン、アトハリュウキシニマカセヨウ。」

街に戻った。

眠い。

広場横の草地に寝転んだ。


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