23 白い悪魔って何だ
「申し訳ない。」
ギルマスが頭を下げている。
「うん?」
「どこからかレオの警備情報が洩れているらしい。」
「?」
何のこと?
「レオの行かない方面ばかりに盗賊が出る。」
「そうなの?」
それはまずい。俺の収入が減る。
俺から逃げ回るようなけしからん盗賊は今すぐ殲滅すべきだ。
うん、腹が立って来たぞ。
「恐らくは情報屋が絡んでいる。」
「うん?」
「頼まれた情報を掴んでそれを売る商売だ。大貴族や大商人は大抵が登録された大手の情報屋と契約している。だが犯罪に係わる情報や取り締まり情報を専門に扱う非合法の情報屋もいる。」
スパイとか探偵みたいなものかな?
「受付の担当者は信頼できる人間だから、他の職員かレオの任務内容を冒険者に紛れて近くで聞いていた可能性もある。まあ情報屋はしょせん情報屋で直接犯罪に手を染めているわけでは無い。問題は盗賊だ。」
「うん。」
「レオには今まで通りに受付で街道警備を引き受けてもらう。」
「うん?」
「だが、引き受けた街道とは違う街道を警備してくれ。どの街道でもいい。出動すれば依頼達成とするから自由に行動してくれ。ただ情報屋からの連絡に時間が掛かるから盗賊が動くのはレオが任務を引き受けてから3時間以上後だ。だから一旦任務の街道に向かって盗賊を安心させ、適当な所で方向を変えて怪しいと思う街道に直接向かってくれ。」
「うん。」
「キュルル」
シロもやる気満々。
ギルドの受付で北街道警備の依頼を受けた。
シロが周囲にいる冒険者達の気配を探っているが、嫉妬から俺に悪意を持っている冒険者は結構多いので判別出来ないようだ。
門を出て北の街道に飛ぶ。
目立つよういつもより低い高度で飛んでいると、商隊警護の冒険者達が手を振ってくれる。
いくつかの商隊を飛び越え、人気が無いのを確認して街道から離れた。
人気のない草原でシロとゴロゴロ遊び。
今日は忙しくなるかもしれないので、今遊んでおかないと時間が無くなる可能性がある。
寸暇を惜しんでゴロゴロする。
しばらく遊んでから人目に付きにくい森や山沿いを低空で飛んだ。
今日の目標は西の街道。
シロが索敵範囲を広げて街道から少し離れたところから盗賊を探る。
いない。
2時間飛んだところで諦めて南西の街道に目標を変えた。
「キュルル!」
いたらしい。
シロが速度を上げる。
俺の索敵でも感知出来た。
久しぶりの獲物に思わず舌なめずりをしてしまう。
デカい。3~40人の馬に乗った盗賊が8台の馬車を追いかけている。
馬車が全速で逃げているが前方で20人ほどの盗賊が馬車で街道を塞いでいる。
近くの森にも40人程がひそんでいる。
かなり統制の取れた盗賊団。
頭を探す。
見晴らしの良い丘の上には見張りらしい男が伏せているだけ。
多分頭は森の伏兵の近く。
いた。
伏兵から少し離れた森の中に5人の男。
魔獣討伐はリーダーである上位種を倒せば群れの討伐が楽になる。
盗賊も頭を倒せば指揮系統が乱れて討伐しやすくなる。
シロが風刃を、俺がライフル弾を撃ち込む。
5人全員が死んだのを確認して馬車の救援。
「ギュロロロロ!!」
後方から追い上げる盗賊達に向かってシロが威嚇の唸り声をあげる。
恐怖で倒れる馬、棹立ちになる馬、盗賊達の殆どが馬から落ちる。
“ワイドスタンガン”
魚捕りの雷魔法で盗賊達を気絶させる。
商隊は行く手を塞がれ、待ち構えていた盗賊と戦闘になっている。
森から伏兵が飛び出してくる。
ワイドスタンガンで片端から気絶させた。
盗賊が少なくなってからは、盗賊を傷付けずに捕えると高く売れることを学んだ。
冒険者達と分けても多少の金にはなる。
「白い悪魔だ。」
「そんな馬鹿な。」
「本当に白い悪魔だ。」
「白い悪魔が来た、みんな逃げろ。」
商隊の護衛と戦っていた盗賊が慌てて逃げ出す。
“白い悪魔“って何だよ。
「「「ありがとうございました。」」」
冒険者達が集まってきた。
「トウゾクヲシバリアゲル。ウマヲマトメル。」
シロの指揮で冒険者や商人達が盗賊を縛り上げていく。
奴隷の売り上げはギルドで配分を査定してくれる。
「アトハマカセル。ニゲタトウゾクヲオウ。」
俺たちは盗賊のアジトを目指す。
マーキングしてあるので簡単。
2人違う方向に向かっているが、10人ほどが同じ場所にいる。
森の小山にある洞窟が盗賊のアジトらしい。
見張り2人をシロが風刃で倒す。
アジトから盗賊を連行するのは手間の割にお金にならない。
アジトの盗賊は全て殲滅が原則だ。
風刃は音がしないので便利。ちなみに俺の風刃では精度と威力が足りない。
只今練習中。
洞窟の中を探知すると20人が確認出来た。
13人が奥の左、7人が奥の右。
13人の部屋に突入してシロの風刃と俺のライフル弾で倒す。
もう一つの部屋に行くと、2人の盗賊が襲い掛かってきた。
シロが前足の1撃で倒す。部屋の中を見ると木の檻があり、女性が5人固まって座っていた。
「ダイジョウブ、アンシン。」
「シロ様? シロ様だ!」
「「「シロ様、シロ様!」」」
「オリヲコワス。サガッテ。」
女性たちが下がるとシロが前足の1撃で檻を壊した。
「「「シロ様ありがとうございます。」」」
「えっと、竜騎士様? 竜騎士様もありがとうございます。」
「うん。」
俺はついで?
それに絶対俺の名前を知らないよね。
シロが喜んでいるからいいか。
困った。
人質になっていた女性たちを殺すことは出来ないし、置き去りにも出来ない。
とりあえずアジトにある金目の物を手あたり次第アイテムボックスに収納した。
人質を連れて洞窟を出る。
このまま洞窟を放置するとまた盗賊に使われるかもしれない。
洞窟の奥に向かって改良した大型マグナム弾を撃ち込んだ。
イメージは戦艦大和の46㎝砲。
“徹甲弾”
大音響とともに洞窟が崩落した。
洞窟の近くにあった馬車に5人の人質を乗せる。
とにかく街道に向かうが、盗賊が作った細い道ではゆっくりとしか進めない。
「はぁ。」
この調子では今日中に王都に戻るのは不可能。
街道が見えてきたので、手前の草原で野営することにした。
土魔法でかまどを作り、枯れ木を集めて火をおこすと、アイテムボックスから出した大鍋に水魔法で水を入れ、肉や野菜を放り込む。塩とハーブで味付けしただけの簡単な煮込み料理。
焼き立てパンはアイテムボックスがばれるので出せない。
しかたなく保存食の黒パンを出した。
それでも女性達は喜んで食べてくれた。
「ボクガミハッテイル、アンシンシテネムル。」
念のため女性達の周りにバリアーを張ってシロに寄りかかって寝た。
馬の足音で目を覚ました。
「レオ殿、シロ殿ご無事でしたか。」
5人の冒険者が野営地に来た。
俺達が戻らなかったのでギルドが捜索隊を出したのだ。
この5人は先行部隊として開門前に王都を出て来たそうだ。
「ヒトジチガイタ。バシャデツレテキタノデオソクナッタ。」
「ご苦労様です。この方達は我々が王都に連れて行きます。ギルマスが心配しているのでレオ殿はシロ殿に乗って先にお戻り下さい。」
「カンシャスル。ヨロシクタノム。」
シロに乗って王都に飛んだ。
門の所には冒険者だけでなくギルドの竜騎士団まで集まっていた。
「サワガセテスマナイ。ヒトジチヲツレテイタノデオソクナッタ。」
「無事で何より。商隊の冒険者から盗賊団の事は聞いた。アジトを見つけたのだな?」
「モリノドウクツ。ジュウニンコロシタ。ヒトジチハジョセイゴニン。ボウケンシャガツレテクル。」
「ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ。」
「うん。」
最後は俺がビシッと決めた。
読んで下さってありがとうございます。
現在 馬丁爵、竜騎士、自由人、闇と光の4作品を毎朝6時10分に投稿中です。お目汚しになるかも知れませんが他作品も一度覗いて頂ければ幸いです。
今は4作同時投稿は書く量が多すぎて無謀だったと反省中。それでも第1目標の1ヶ月連続投稿と第2目標の投稿作品の完結に向け、頭を搔きむしりながら無い知恵を絞っています。
目標達成を目指して頑張って書き書きするのでこれからも宜しくお願いします。
厚かましいとは思いますが、完結すると現状ではほぼポイントが無くなるので少しでも評価を戴けると執筆の励みになります。宜しくお願いします。




