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21 勇者とドラゴ国第一の剣士?

「レオ殿、厳しい修行を積んできたぞ。今日こそはレオ殿を倒して見せる。」

厳しい修行って、まだ二日しか経ってないぞ。


魔法剣士のおっさんが耳元で囁いた。

「指名依頼は出しておきましたから。」

それならいいか。


「聖剣は1本ではない。新しい聖剣の威力を見せてやる。」

どこで仕入れたかは知らないけど、それも飾り剣だよね。

「行くぞ! 必殺昇竜剣!」

それって“剣”でなく“拳”でしょ?

異世界から召喚されただけあって下らない事を知っている。

変な名前がついているが、大きく上段に振りかぶって、思い切り振り下ろすだけ。

前回と全く同じ。

厳しい修行って何?

パキン!

折れた。

結果も前回と全く同じ。


「あれ程厳しい修行をしてもまだ届かぬとは、さすがはドラゴ国第一の剣士。」

だから俺は近接戦闘11位、つまりベッタクソだっちゅうの。

「はぁ。」

ため息しか出ない。


「いずれまたお相手致そう。」

堂々と胸を張って帰って行った。

いやいや、俺が相手をしてやってるの。

こっそり近づいて来た魔法剣士のおっさんが依頼完了書類をくれたからまあいいか。

「なんかまた来るって言っていたよな。」

「厳しい修行を二日程するのかな?」

「「「バカですから。」」」

担任もボロ達も同意見だった。


「ねえ聞いた、レオ先輩が勇者様をコテンパンにやっつけたんだって。」

「当然よ、先輩はこの国1の騎士なんだから。」

どうしてこうなった。

「1年生はレオの成績を知らないからな。」

「前期の成績が貼り出されたらひっくり返るんじゃないかな。」

まあそうだよな。

どうも勇者がドラゴ国第一の剣士と戦って惜しくも敗れたと言い回っているらしい。

そんな暇があったら稽古をしろよ。

あれで金貨3枚、街道警備6日分が実質5秒、うん美味しい。

「しかしフラン国も大変だな。」

「同情するね。特に従者に。」

「あいつの従者だけは金を積まれてもやりたくないな。」

「うん。」

「キュルル。」

皆同じ考えだ。



って、来たよ、バカが。

「さすがは伝統ある王国学院。美しい女性ばかりですな。こんにちは、私が勇者のトオ~ル=マキ~タです。」

はい、まきたとおる君ね。

変にアクセントを付けない方が良いと思うけど。


「みなさ~ん、今日はこの勇者トオ~ル=マキ~タがドラコ国第1の剣士であるレオ殿を倒しに来ました。この後すぐに中庭で戦いますから私の勇姿を目に焼き付けて下さいね。」

おいおい、観衆まで集めるのか?

まだあれから二日しか経ってないぞ。

呆れていると魔法剣士のおっさんが例の書類をこっそり見せる。

やる気が出た。


中庭に行くともう大勢集まっている。周りの校舎にも大勢の顔が見える。

勇者が女の子達に笑顔で手を振りながらやってきた。

「おい、あれってまた聖剣か?」

「「「「バカですから!」」」」

従者まで一緒に言うな。

「フフフ、皆の者、勇者の秘剣を目に焼き付けよ。」

やたらと飾りのついた派手な剣を観衆に自慢している。

どうでもいいから早く始めようよ。


「行くぞ!」

上段に構えた剣をゆっくり大きく回し始める。

秘剣?

「カー!」

何だ? 

呪文か?

「メー! ハー! メー! ハーッ!!!」

って、剣をぐるっと回すのは円月殺法だろうに。

それにカメ〇メ波は剣じゃない。

呆れて眺めていると1回転させて上段で止めた剣を気合と共に一気に振り下ろした。

それって円月殺法とカ〇ハメ波に意味あるの?

結局上段から振り下ろすだけって何なのよ。

「「「バカですから!」」」

だから従者が言うな。

パキン!

結果も一緒。

こっそりと依頼完了書類をくれたのも一緒だった。

皆が呆然としている。


「今日はレオ殿の宝剣がわが聖剣に勝ったが、剣の腕では私が上だ。今日は勝ちを譲るが、2度は無いぞ。」

って、今日で3度目なんですけど。

それに、俺のはただの魔鉄の棒。宝剣じゃないって。

勇者は俺に堂々と宣言して、今日も胸を張って帰った。

「はぁ。」



「勇者がフラン国に戻った。」

マテが笑いながら教えてくれた。

「そうなの?」

指名依頼は美味しかったんだけどな。

「ドラゴ国での修行で更なるレベルアップを果たしたからだそうだ。」

「・・・・。」

なんと言っていいのか判らない。

「厳しい修行をしたそうだからな。」

ボロが混ぜ返す。

「ああ、新しいスキルも獲得出来たしな。」

「昇竜剣にカメ〇メ波?」

円月殺法もあったよ、君たちは知らないだろうけど。


「ドラゴ国第1の剣士と3度戦い、傷一つ負わなかったとフラン国では評判だそうだ。」

確かに傷は負ってない、傷は負ってないけど、・・・。

まあ間違ってはいないか。

「ドラゴ国の剣士がめっちゃ弱いってならないか?」

「ドラゴ国最強は竜騎士だから問題ない。攻めようとする国など無い。」

「他国にも竜騎士はいるが、多い国でも100騎程度、数百騎を抱え、引退した予備役を加えると1000騎を擁するドラゴ国とは比較にならん。」

「まあそうだな。」

ドラゴ国って強いんだ。

「キュルル」

シロが胸を張っている。



「ところでそろそろ収穫祭だろ? 今年は祭りに行くか?」

「祭り?」

「王都は広いから、東西南北の神殿がそれぞれで収穫祭をするのさ。露店も沢山出るし観光客も多いから毎年凄い賑わいだぞ。」

「知らなかった。」

去年はまだ入学したてで全く気が付かなかった。まあ学院が王都の北端で神殿から遠いということもあったのだろう。

「貴族は寄付を出すだけで殆ど行かないけどね。」

「なんで?」

「貴族様がうろうろしていては平民が楽しめないだろ?」

「だから貴族が行くときは平民の格好をして目立たないように行くのさ。」

シロと一緒には行けないな。


「来週の土日が北神殿の祭りだな、一番近いから行ってみるか?」

「行かない。」

混雑した街中にシロと一緒に行くのは危険。

「シロといる方がいいか。」

「うん。」

当日はねぶた祭りのような大きいオブジェを乗せた荷車が街を練り歩くそうだ。

東西南北4つの神殿が1週間ずらして祭りをするので、来月は毎週祭り。

それを目当てに大勢の見物客が王都にやってくるらしい。

まあ俺には関係ない。

そう思っていた時もありました。



「はあ?」

「神殿からの依頼なので断れない、何とか頼む。」

担任から頼まれた。祭りの間の土日に2年生の竜騎士による編隊飛行をするらしい。

今までは王国竜騎士団が国威発揚で編隊飛行をしていたが、今年はそれに加えて白竜による編隊飛行も行われることになったそうだ。

王国竜騎士団50騎による編隊飛行の合間に白竜を先頭にした11騎の編隊飛行を入れることで王国竜騎士団の方が上位だと見せつけたい貴族達と客寄せパンダとして利用したい神殿の思惑が一致したらしい。

授業の一環なので俺達は代休が貰えるだけで報酬は無い。

かといって休めば成績に響く。

大人は汚い。

「ぐぬぬ。」



「キュル、キュルル!」

シロの好きなように楽しんでいいと言ったのでシロが張り切っている。

モモやアオも楽し気だ。

どうせ相手は50騎の大編隊、圧倒的な迫力なのだからこっちは勝手に遊べばいい。

上空では黒竜を先頭にした大編隊が悠々と王都上空を回遊している。

5列縦隊で游翼する様は迫力満点だ。

地上からは大きな拍手と歓声が上がっている。


竜騎士団が王宮に戻ると俺たちの出番。

シロを先頭に一斉に発進した。

小さなシロは地上からではあまり目立たない筈が竜騎士団以上の歓声が上がっている。

上空から街を見下ろして理由が判った。

街のあちこちで動いている巨大オブジェの殆どが白竜なのだ。

シロを先頭に三角形をした編隊が街並みすれすれまで降下して急上昇したり、上空で複雑に隊形を変化させるなど、次は何を見せてくれるかという期待を高めている。

パフォーマンスをするたびに大きな拍手と歓声が起こる。


最後に白竜のオブジェの上でシロがホバリングし、その周りを竜が飛び回るというパフォーマンスをすると白竜を作った町内会から大きな歓声が上がる。あちこちにある白竜のオブジェでのパフォーマンスを終えて学院の方向に飛び去る時には大きな拍手が沸き起こった。

さすがに学院に帰った時は皆が疲れ切っていた。


「キュルル、キュルキュル!!」

シロがひときわ大きく鳴くと、竜達の喜びの感情がグラウンドに溢れた。

合計8回行う予定だったシロ達のパフォーマンスは最初の2回だけで中止になった。

表向きは竜騎士の年齢が低いので体力的に問題があり、学業に差しさわりが出るという事らしい。

なんのこっちゃ。


読んで頂いてありがとうございます。

初投稿から2週間。少しでも読みやすくしようと鋭意考慮中です。

今月中に何とか完結させたいと思っています。


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