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20 勇者

マテの妹はダメだったらしい。

貴族は子供をたくさん作る。

少しでも感応出来るチャンスを増やすためだ。

普通でも5~6人、多い者は10人以上。

それでも1人感応出来ればお家安泰と大喜びなのだ。

辺境伯家のように2人も感応出来ることはごく稀らしい。

竜騎士はそれ程稀少かつ高貴な存在? 俺は下賤でぞんざいだけど。

竜騎士としては残念だった人に掛ける言葉は無い。

心の中で応援するだけ。

「キュルル」


今日も竜騎士としての誇りを胸に、じゃなくて枯草を背中につけてシロとゴロゴロ遊び。

丘の上から抱き合ってゴロゴロと転がり落ちる。

俺の存在を全てシロに預け、シロは俺の全てを受け止めてゴロゴロ転がる。

格好良く言ってみたけど子供の遊び。

大人のしがらみを忘れて童心に返るのは楽しい、11歳だけど。

入学して1年。

同級生がどんどん大人になっているのを感じる。

日に日に見上げる角度が大きくなっている気がするのだ。

俺132㎝。嘘です131㎝です。

ぐぬぬ。

「キュルル」


今日は討伐依頼を受けて王都から遠く離れた山に来ている。

討伐対象はワイバーン。

近くに巣があるらしく周辺住民が不安になっているらしい。

1頭につき白金貨1枚の報酬。

ワイバーンは小型とは言え竜種。

硬い鱗で殆どの攻撃が通らない。

魔法攻撃も殆ど跳ね返される。

以前氷竜を想定した回避訓練をしたが、攻撃に移る暇も無いし手段も無かった。

そこで今回は対竜攻撃の練習にワイバーンを選んだ。

新兵器は2つ。

敵への到達速度が速いので避けにくいレーザービーム。

竜がブレスを吐こうと口を開け始めた瞬間に撃って、口の中を破壊する。

1瞬でも遅れればブレスの威力に負けて相殺どころかこちらが黒焦げになる。

どれだけ速度が上げられるかが勝負。

もう一つはス〇ーウォーズでおなじみのラ〇トセーバー。

氷竜相手ではシロに乗っていてはシロの速度が落ちて危険だし攻撃のタイミングも少ない。

シロと俺が別の方向から連携して攻撃できなければ勝てない。

だが手から魔法を流し続けられるラ〇トセーバーなら魔法を弾く鱗にも効果があるのではないかと考えた。

1か月かけてイメージトレーニングを重ね、ようやく形になったライ〇セーバーで毎日素振りを繰り返した。


今日は実戦練習。

まずは岩に向かって撃ってみる。

額に両手を当てる。勿論指はⅤサイン。

“レーザービーム”

額から光線が出た。

イメージしたのが某ウルト〇セブンなのでこの格好が一番威力が大きかった。

100m程離れた岩に直径20㎝程の穴が開いている。

「ふうっ!」

岩を確認する。

棒を差し込むと深さ1m。2秒も撃ち続けた割に浅いし魔力の使用量が大きい。

到達速度は良いが威力かこれでは使い物にならない。

「キュルル」

うん、もっと練習して威力を上げて見せるさ。


次にライ〇セーバーを出した。

直径5㎝、長さ30㎝の筒。持ちやすいように凹凸を付け滑り止めの革が巻いてある。

“ライ〇セーバー”

筒から1m50㎝程の光の筒が伸びる。

身体強化の魔法を掛け、大きな岩に向かって思い切り振った。

ゴワ~ン!

跳ね返されて手が痺れた。

全然切れねえ。

っと、岩にひびが入った?

ひびが大きくなって二つに割れた。

「キュル!」

岩の割れ口が真っ黒。

鑑定すると魔鉱石。

大量の魔力を溜めこんだ鉄鉱石だ。

そりゃあ硬いよな。

割れた大岩をアイテムボックスに収納して周りに落ちている石を片端から鑑定する。

大きなものだけで30個程の魔鉱石を見つけた。


「行くぞ。」

「キュル」

シロに飛び乗って舞い上がる。

ワイバーンが1頭近づいて来た。

小型竜とはいえシロが小さいからほぼ同じ、いやワイバーンの方がずっと大きい。

近づくとワイバーンはかなりの大きさだった。

緑竜程ではないが、胴長が3m位、シロの1.5倍だ。

その大きなワイバーンをシロが追う。

シロの姿を見たとたんにワイバーンが逃げたのだ。

格上と瞬時に判ったようだ。

ワイバーンが必死に逃げるがシロの方が早い。

グングンと近づく。

“レーザービーム”

一瞬ワイバーンが光り地上に落ちていく。

ゆっくりとワイバーンの横に着地する。

先ほどよりも細く絞った効果で直径7~8㎝の穴が後部から首の途中まで突き抜けている。

逃げてくれたから狙い易かったけど、数頭が一度に襲い掛かってきたら魔力的に辛い。

「キュル」

今日は1頭で終わりにしてライ〇セーバーの試し切りをすることにした。

森に入って直径1m程の木に向かって振りぬいた。

ガガガドゴーン!

巨木が一撃で両断され、倒れてきた太い枝に直撃されるところだった。

あぶね~。

もったいないので枝打ちしてアイテムボックスに収納した。

何本か木を切ると魔力がおぼつかなくなる。

ライ〇セーバーも結構魔力を食う。

岩場で食事をしてシロに抱かれて寝た。


2週間、毎日レーザービームでのワイバーン狩りとライ〇セーバーの試し切り。

性能についてもかなり判ってきたし、微妙な調整も多少出来るようになった。多少は魔力の節約も出来るようになった。

レーザービームは50m以内だとワイバーンを貫けるが、それ以上だと弾かれる方が多い。

もっと威力を上げても至近距離でないと氷竜にはかすり傷すら無理だろう。

ライ〇セーバーは当たる瞬間に魔力を増大させると切れ味が増すが魔力の消費量が跳ね上がる。

こちらもまだまだ改良が必要そうだった。

2週間でワイバーンを19頭、熊?6頭、猪?3頭などなど。まあまあの成果。

巣の殲滅までは依頼されていない。

もう少し魔法を改善してからもう一度来た方が良さそうと思って帰ることにした。


「イワヤマニスガアル、マダジュウイジョウ。マリョクタリナイ、カエッタ。」

「いや一人でこれ程倒したのだから十分だ。これからも安全第一で頼む。」

ギルマスへの説明はシロがしてくれ、俺は最後に一言決め台詞。

「うん。」

ワイバーンは素材としても高く買い取ってくれるので、今回は白金貨30枚以上の稼ぎになった。

シロが大きくなったら立派な騎乗具を作ってあげるんだ。

「キュルル」



「聞いたか?」

「ああ、勇者だろ。」

「うん?」

新学年が始まってもメンバーは一緒だし、殆ど変化は無い。

いつものように食堂で昼食を摂っていた。

変わったのはシロがフォークとスプーンを器用に使いながら食事をしていることと向かい側に座っている女の子達が俺達を無視してシロをうっとりと眺めていることくらい。

ちなみにナイフは使わない。口が大きいので切る必要が無い。

「異世界から召喚されたんだろ。」

「フラン国が国中の魔導士を集めて召喚したらしい。」

「フラン国は魔国と争っているからな。」

「小競り合い程度でたいした問題じゃない。それよりも経済で失敗して国王の権威が落ちているからそれを何とかしたいらしい。」

「勇者を召喚して何とかなるのか?」

「魔王を倒して魔国を支配地にすれば権威が上がるだろ?」

「勇者ってそんなに強いのか?」

「やる気はあるらしい。ただ、偉ぶる、弱い、バカと3拍子揃っているから国王が困っているそうだ。」

「この国でなくてよかったよ。」

「うん。」

「ところがその勇者がこの国に来ている。」

「なんで?」

「力をつける修行だそうだ。」

「フラン国でやればいいだろ?」

「弱いとばれたら拙いし国民にバカがばれる。」

「はぁ? そんなのありなのか?」

「一応友好国だから断れない。」

「死んだらまずいぞ。」

「3人の従者は強いからまあ大丈夫?」

「なんで疑問形?」

「バカだから。」


そんなことがあったのを思い出しました。

目の前にいますバカが。

「ねえねえその子可愛いじゃん。僕が貰ってあげる。」

「はあぁ?」

一瞬切れそうになりました。

「申し訳ございません。シロ殿のことは宰相から伺っております。」

「決してシロ殿に敵対することはありません。」

「そうだよ僕はこの子をペットにしてあげるんだ敵対なんかしないよ。」

「コイツハホンモノノバカダナ。」

「申し訳ございません。」

「「「なんせバカですから。」」」

従者さん息が合ってる。

従者の言葉を無視して勇者がシロに近づいた。

「キュルゥ!!」

シロの威圧を受けて勇者さんは仰向けにひっくり返って白目を剝きながらジャージャーと漏らしている。

「申し訳ありません、失礼します。」

従者さんたちが勇者を抱えて足早に去って行った。

「キュルル」

うん、シロは間違っていない。

俺もめっちゃムカついたもの。

「キュル」


「というわけで修業に協力という名目でぶちのめして頂きたい。」

「はぁ?」

俺は学院長室に呼ばれていた。

目の前には3人の従者。

向かい合っているだけで強いのが判る。

一人は騎士団長クラスの剣士。

もう一人は恐らく魔法剣士で相当の使い手。

可愛い女性は聖女なのだろう、立派な杖を持っている。

「勇者様は宰相からレオ殿がこの国1番の竜騎士という話を聞いています。だから当然剣士としてもこの国1番だと思い込んでいます。」

「レオ君は1年生の近接戦闘が11人中11位、最下位ですよ。」

学院長が説明する。

「「「勇者様はバカですから。」」」

「・・・・。」

学院長も困っているらしい。

「魔法を使っても武器を使っても良いので叩きのめして下さい。そうでないと勇者様がつけあがります。このままでは外交問題にも発展しかねません。殺しさえしなければ聖女が完全に回復させますのでお願いします。」

「良いのですか?」

「お願いします。」

学院長もあきれ顔だ。

「レオ君、勝てるか?」

「うん。」

魔法を使ってもいいなら何とかなりそうだ。

「すまんがよろしく頼む。」

「うん。」


というわけで近接戦闘の時間にバカと戦うことになった。

勿論ギルドの指名依頼にして貰った。

ただ働きは嫌だから。

勇者が剣を抜いた。

宝石がちりばめられた見事な剣。

でもそれ飾り剣だよね。

重いだけで使い難いと思うけど。

俺はミスリルの剣をやめて魔鉄の棒にした。

錬金魔法の練習で魔鉄鋼を製錬しただけのただの棒。

だって向かい合っただけで弱いのが判るんだもの。

「さすがはドラゴ国第1の剣士、余裕だな。だがその鉄の棒、勇者の聖剣で叩き切ってやろう。」

いや、それ聖剣じゃなくて飾り用の剣だから。

「行くぞ!」

勇者が剣を大上段に振りかぶって斬り下ろしてくる。

隙だらけだがとりあえず交わして剣の腹に棒を叩きつけた。

折れた。

剣を弾き飛ばそうとしたんだけど折れちゃった。

めっちゃ高そうな剣だけど、弁償しろとか言わないよね。

「うわ~ん、僕の聖剣が折れちゃったよ~っ。」

勇者さんが座り込んで大泣きしている。

どうすればいいのこれ。

先生と従者たちを見るとため息をついている。

「勇者殿、相手はドラゴ国第一の竜騎士殿、今の勇者殿では負けても当然。しっかり修行すればすぐに勝てるようになれますぞ。」

「そうなの?」

「しっかりと修行すればです。」

「そうだな。まだレベルが低いのだ、この勝負預けておく。」

落ち込むのも早いが復活も早い、さすがは勇者?

胸を張って堂々と帰って行った。

「なんなんだあれ。」

ボロが呆れたように呟く。

「バカ。」

マテの言葉に皆が頷いた。

「キュルル」

シロも同意見だ。


読んでくれてありがとうございます。

拙い作品ですが、継続して読んで下さっている方がいるという事が凄く作者の励みになっています。

投稿中の4作品はこれからも毎日更新する予定です。

見捨てずに読んで下されば嬉しいです。


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