17 温泉で凍りました
「あれが温泉街だ。」
モモに乗ったマテが声を掛けてきた。
遠くに結構大きな街が見え、あちこちで湯気のような白い煙が立ち上っている。
侯爵家は馬車で温泉街に着いているが、俺がオーク討伐で遅くなったのでマテが待ってくれていたのだ。マテだけに?
「うん。」
わくわく感が凄い。
シロの期待感も伝わってくる。
街門の手前で着地して街に入ると温泉客が大勢散策している。
屋台でまんじゅうを買ってシロと食べた。
うん、おいしい。
温泉卵も買った。
さすがのシロも卵は剥けないので俺が剝いてやる。
「キュルル」
喜んでくれた。
蒸し肉も柔らかくて美味しい。
「おいおい、すぐに夕食だぞ。食べ過ぎるなよ。」
「うん。」
宿はこの街で1番大きな宿。
貸し切りなのでシロも一緒に入れる。
最近は王都でもシロを入れてくれる店や屋敷が増えた。
俺と話すよりシロに説明した方が話が早いという妙な理由なのは少し気に入らないが。
まあシロといられる時間が増えているから文句は言えない。
部屋に案内された。
シロと一緒に寝られる大きなベッド。
シロと一緒にベッドにダイブした。
「キュルル」
シロを抱きしめてベッドで転がる。
うん、幸せだ。
ドアがノックされた。
「お茶をお持ちしました。夕食まで時間がありますので温泉はいかがですか?」
「うん。」
「では用意して参ります。」
「うん。」
長時間飛んできたからゆっくり温泉に浸かりたかった。
しばらくするとお姉さんが迎えに来た。
「ご案内します。」
お姉さんについて行くと、いくつかのドアがある。
「浴室が5つ御座います。本日は当宿自慢の露天風呂にご案内します。
突き当りのドアを開けると脱衣場?
なぜかお姉さんが二人。
「坊ちゃまと朋輩様のお世話をする湯女で御座います。なんなりとお申し付けください。」
って、どうなのよこれ。
ベビードールみたいな薄い衣装、いいの?
この世界の宿ではそういうものなのかもしれない。
まあ10歳のお子ちゃまだからいいか。
130㎝だからこの世界での見た目は8歳だし。
服を脱がそうとするからあわてて脱いだ。
女性に服を脱がされるのはさすがに恥ずかしい。
脱いだ服をお姉さまがたたんでくれる。
ドアを開けて外に出ると岩に囲まれた広い池のようなお風呂。
湯気が立ち上って情緒満点だ。
「体を洗いますね。」
かけ湯だけでなくお湯に浸かる前に体を洗うらしい。
まあこの世界では基本的にお風呂に入らないからそうだよね。
何か判らない液体を桶に入れてかき混ぜている。
如何わしいビデオで見たソープと一緒。
泡が出来た。ボディーシャンプー?
って、手で洗うの?
お姉さんが泡を掬って俺の体に塗り付ける。
横を見るとシロも同じように石鹸まみれになっている。
気持ちがいいのか幸福感が伝わってくる。
そのまま手で全身を撫ぜまわされる。
「あふっ。」
そこはダメでしょ。
周りを見渡した。
エアーマットはない。
泡踊りはなさそうだ、って背中に当たってる。
いつの間に服を脱いだんだ。
横を見るとシロも裸のお姉さんにおっぱいを押し付けられている。
気のせいかシロがいつもよりピンクっぽい?
お姉さんの手が全身を這い回り背中にはプニュプニュおっぱい。
10歳の俺だが中身は27歳。
ダメ、刺激が強すぎる。
もうダメ。
「ムリ~ッ!」
「「「えっ!」」」
瞬間、世界が凍り付いた。
シロを見ると白い体がうっすらと赤くなっている。
「シロ?」
「ウン。」
「しゃべれるの?」
「スコシ。」
「「「え~っ!」」」
「いつから?」
「オウト。」
「なぜ?」
「オボエタ。」
王都に来て大勢の人に会っているうちに覚えたらしい。
「お風呂に入る。」
お姉さん達が俺とシロの泡を流してくれた。
一緒にお風呂に入って少し落ち着いた。
「そうか、しゃべれるんだ。」
「ウン。」
「俺はしゃべるの苦手だから助かるよ。」
「ガンバル。」
少しほっとしてシロを抱きしめるとシロも抱きしめてくれた。
ゆっくりお風呂に入って驚きは収まった。
風呂から上がって部屋でくつろいだ。
発声はまだうまく出来ないが練習してくれるらしい。
俺としては心で考えるだけでシロに思いが伝わるので通訳してくれるのはありがたい。
シロも判らないことを俺以外の人に直接質問出来るので話がしたいらしい。
うん、ウィンウィン。
夕食の時間になったので食堂に行った。
大きなテーブルは上座にバレン侯爵。俺はその隣、横にはちゃんとシロの席もある。
俺の向かいには侯爵夫人? その隣に嫡男のマテ、次男? 長女? 次女?
あとは判らないが大勢並んでいる。
「家族だけだ、気を遣わずに自由に食べてくれ。」
侯爵の言葉で夕食が始まった。
「レオとシロはオーク討伐でずいぶんと活躍したそうだな。」
「ミンナガンバッタ。」
部屋の空気が凍った。
「コトバ、レンシュウシタ。」
「シロは言葉を話せるのか?」
いち早く復活した侯爵が驚いた顔で聞いた。
「ハナスハ、スコシ。キクハ、ワカル。」
再び空気が凍った。
「少なくともレオよりはきちんと話せるな。」
復活したマテが言うと侯爵が頷いている。
それは無いと言いたいが、俺も少し納得している。
「しかし、賢いとは思っていたがこれほどとはな。」
「レオの通訳が出来たと思えば俺はありがたいな。いつもうんしか言わないから。」
「しかし王宮は大騒ぎになるぞ。」
「ダイジョブ。シロガハナス。」
「頼りにするぞ。」
「タヨリニサレル。」
部屋の空気が和やかになる。
皆が次々とシロに質問して、シロが的確に答えていた。
うん、楽でいい。
温泉に1週間逗留して王都に帰る日になった。
皆は馬車で、俺と侯爵とマテは竜に乗って先に帰る。
「タノシカッタ。」
「うん。」
「マタキタイ。」
「うん。」
明日からまた頑張ってお仕事しなくちゃ。
「ガンバル。」
シロの首をガシガシと撫ぜてやった。
久しぶりにギルドに顔を出した。
「レオさん、ギルドマスター室にお願いします。」
お姉さんに先導されてシロと一緒に階段を上った。
最近はギルドにもシロと一緒に入っている。
待機場だと他の竜が緊張するらしい。
「レオさんがおいでになりました。」
「入れ。」
部屋に入った。
「すぐ済むから掛けて待ってくれ。お茶を頼む。」
ギルマスが執務机から声を掛け、お姉さんがお茶を淹れに行った。
ギルマスが立ち上がり向かいに腰を下ろした。
「オーク討伐ご苦労だったな。」
「ミンナガガンバッタ。」
ギルマスが凍った。
まあそうなるな。
「・・シロか?」
解凍した。
「ウン。」
「しゃべれるのか?」
「スコシ。」
誰しも聞くことは同じなようだ。
「凄いな。」
「レンシュウシタ。」
「おお、レオよりしゃべれるじゃないか。」
何でみんな同じ感想?
しかもそれを本人の前で言う?
「レオ、スネテル。」
「すまんすまん。しかしシロが話せるとこれからは便利になるな。」
俺はなんなんだ?
まあ楽だからいいけど。
「これだけ賢ければ他の竜も言うことを聞くはずだ。シロ、今回の戦闘指揮は素晴らしかった、礼を言う。」
「ミナガガンバッタ。ボクハスコシガンバッタ。」
「いや参った。奥ゆかしい竜というのは初めてだ。これからも頼むぞ。」
「タノマレタ。」
「これから新年で人の出入りも多くなる。当分は街道の警備をよろしく頼む。」
最後は俺が一言でビシッと決める。
「うん。」
9月投稿開始の初心者ですので乱文、誤字はお許し下さい。
現在 馬丁爵 https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/2464486/
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これからも頑張って書き書きするので宜しくお願いします。




