14 王宮に呼ばれました
今日はお休みなのに・・・。
俺は学院長と一緒に王宮に呼ばれていた。
慌てて買った七五三?の衣装が恥ずかしい。
お金を払ったのは辺境伯だけど。
子爵家の誕生パーティーを思い出す。
あの時のように扉の前で待たされた。
扉が開いた。
学院長に先導され、シロと俺が並んで前に進む。
学院長が止まった。俺達も止まる。
学院長が横に動き並んでいるおっさんたちの列に入った。
俺は跪き頭を下げる。シロも横でお座りしている。
昨日の放課後に嫌というほど練習させられた。
こういうのは嫌い。
「冒険者のレオと朋輩シロで御座います。」
右前に立っているおっさんが俺達を紹介した。
「面を上げよ。」
少し先にある大きな椅子におっさんが座っている。この国の王さんらしい。
「学院には慣れたか?」
「うん。」
部屋の中に並んでいる大勢のおっさんたちがどよめいた。
「はいと言え。」
さっき俺達を紹介したおっさんが横から小声で声を掛けて来た。
「はい。」
「それでいい。」
「うん。」
「・・・・。」
「シロに近寄っても良いか?」
「うん。」
「はいと・・・」
「良い良い。」
おっさんが注意するのを王さんが止めた。
王さんが椅子から立ち上がり、階段を下りてシロに近づいた。
シロを間近からじっと見ている。
「触っても良いか?」
「キュルル」
「いいって。」
「なるほど、シロは余の言葉が判るか。」
「キュル」
「当然だって。」
「これ、言葉に・・・」
「良い良い。少し触らせて貰うぞ。」
王さんがシロを触っている。
「成程、報告にあった通り良き触り心地じゃ。シロとやら、礼を言うぞ。」
「キュル」
王さんが椅子に戻った。
「レオは学院を卒業した後は如何するつもりだ?」
「冒険者。」
「貴族となって余に仕えるつもりはないか?」
「無い。」
即答する。
おっさんたちがどよめいた。
「貴族となれば屋敷も年金も貰えるぞ。」
「いらない。」
「冒険者がいいのか?」
「うん。」
「冒険者のどこが好きなのだ?」
「楽。」
「楽か。レオなら確かにそうかもしれんな。判った、学院で学び良き冒険者となれ。」
「うん。」
王さんが席を立って退出した。
「レオ、シロ、ご苦労であった。戻るが良い。」
おっさんの言葉で学院長が来て部屋の外に先導してくれた。
「クワ~ッ、疲れた。」
「キュルル」
シロも疲れたらしい。
控室に戻るとメイド服を着た奇麗なお姉さんがお茶とお菓子を出してくれた。
「美味しい。」
「キュル」
シロも喜んでいる。
「ご苦労さん。無事に終わってほっとしたぞ。」
「?」
「陛下に“うん”と答えたのはレオくらいだ。少しは敬語も覚えろ。」
学院長に怒られた。
「うん。」
「・・・・はぁ。」
扉が開いた。
「殿下のお越しです。」
メイドのお姉さんが教えてくれた。
学院長が立ち上がったので俺も立った。
入ってきたのは入学式でしゃべっていた兄ちゃんと奇麗な姉ちゃん、そして1年上の先輩?
後から執事っぽいおっさんと騎士が3人入ってきて扉の横に立った。
「いいよ、座って。」
兄ちゃんが言うのでそのまま座った。
「ねえ、私も触っていい?」
姉ちゃんがシロに聞いた。
「キュル」
「いいって。」
「シロは本当に人間の言葉が判るのね。」
姉ちゃんが頷きながらシロに触る。
「本当にスベスベだわ。」
「俺も触っていいか?」
先輩がシロに聞いた。
「キュル」
「いいって。」
「私も良いか?」
入学式の兄ちゃん。
「キュル」
「いいって。」
3人でシロを撫ぜまわしている。
「洞窟で見つけたんだよね。」
「うん。」
「生まれた時はどれくらいの大きさだった?」
両手で鶏くらいの大きさを示す。
「3年で2mか。1年前はどれくらい?」
両手を目いっぱい広げた。
「成長がゆっくりということは長生きするのかもしれないな。」
「そうなの?」
「白い竜の記録が無いから判らないけどね。まあレオの成長もゆっくりだから似ているのかも知れないな。」
「ぐぬぬ。」
「気にするな。身長は低いから体重が軽くて小さなシロに乗れると思えば良い事だろう?」
まあそうだけどさ・・・。
「そうだよな、おれじゃあシロが辛いよ。」
先輩は11歳なのに170㎝以上ある大男だ。
小さくてよかったのかと納得してしまった。
「ねえ、お菓子食べる?」
「キュル」
「食べるって。」
お姉さんがお菓子をシロの口元に運ぼうとするとシロは両手を出して受け取った。
「凄い、ちゃんと掴めるんだ。」
シロがお菓子を自分で口に入れて首を傾げる。
「可愛い!!」
お姉さん目がハートになってます。
「レオは本当に冒険者を目指すのかい?」
「うん。」
ギルドカードを出して見せた。
「えっ、Bランク?」
魔獣の討伐数が多かったのと、指名手配の盗賊を討伐したのでBランクに上がっていた。
「竜騎士はDランクからスタートだけど、16歳で冒険者になってもBランクには最速で5~6年かかるって聞いたぞ。」
「シロも凄いけど、レオも凄いんだ。」
「キュル」
当然とシロが胸を張る。
「長い事いなかったSランクになれるかもしれないね。」
Sランクは冒険者の最高峰だがここ100年以上いない。
Aランクもこの国に10人程、しかも半数はもう引退している。
まあ竜騎士はDランクスタートだし、普通は16歳から冒険者登録だが竜騎士は8歳から登録出来るので圧倒的に有利ではある。
もっとも8歳どころか12歳で登録した者も殆どいないらしい。
「無理。」
「なんで?」
「試験。」
「そうか、敬語や礼儀作法の試験があるんだ。」
「うん。」
「“うん”の1発で不合格だな。」
「うん。」
「貴族も無理だな。」
「うん。」
絶対に嫌。貴族になるくらいならよその国に移住する。
「殿下、そろそろお時間です。」
貴族は忙しいのが一番嫌なところ。シロと一緒にいられる時間が減るから。




