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12 儀礼は苦手です

「こうなるとは思っていたが、疲れたぞ。」

朝食の席で辺境伯に愚痴をこぼされた。

夜遅くまで貴族の相手をさせられたようだ。

「俺のクロが席を譲るんだから当然だが、黒竜が最高位と思っている貴族からしたら天地がひっくり返る思いだろうな。」

「そうなの?」

「竜は人格を感じて朋輩となるから、竜の格で貴族の地位が決まるのを当然と思っているものが多い。王の朋輩は黒竜。白竜が黒竜より格上ならレオは王より格が上ということになる。」

「はあ。」

そんなことには全然興味がない。

そもそも貴族になる気など全くない。

空のお散歩をしているだけで生活できる冒険者が1番だ。

「貴族なんて絶対嫌って顔に書いてあるぞ。」

「うん、嫌。」

「一応会った貴族にはそう伝えておいた。あまり活躍しすぎるなよ。」

「うん。」

竜騎士は朋輩一筋だから問題無いが、卵と感応出来なかった者からは嫉妬や羨望がひどいらしい。



登校すると寄宿舎が決まっていた。

毎年入学式の様子や登録された使用人の数などを判断して決めるらしい。

王都に屋敷がある者も竜騎士は全員が寄宿舎と決まっている。

理由は朋輩と一緒に通学出来ないから。

朝夕の通学時間のたびに数10頭の竜が王都を歩き回るのは宜しくないのだ。

もちろん朋輩を連れての外出は出来る。

竜騎士は基本的に朋輩と一心同体なのだから。

ただ大きな竜は通行の妨げになるので基本的に街を歩くことは無い。

その点小さなシロは便利だ。

寄宿舎は竜の大きさや使用人の数によって広さは色々あるが全て戸建ての平屋。

20棟ほどの宿舎がグランド横に並んでいる。

俺はボロの隣。反対側の隣はマテ。

グランドに一番近い宿舎だった。


シロは小さいので学院内も一緒に行動して良いことになった。

一緒にいられることは嬉しいのだが、困ることも多い。

「「「シロちゃ~ん!」」」

竜騎士ではない一般生徒が集まってくるのだ。

シロが喜んでいるので自由にさせているが、食堂や訓練場に移動するときは前世の教授回診のような行列になることも多い。

悪意には敏感なので危険はないが、背の高い先輩達に囲まれると俺は周りが見えない。

歩きにくい。

食堂は竜騎士だけ別なので多少はましだが先輩たちの攻撃が激しい。

「私は侯爵家次女の・・・・。」

「私は伯爵家長女の・・・・。」

食堂のテーブルは8人掛けの大きなものなので、俺と同席しようと大勢が押し寄せるのだ。

俺とシロの両脇はマテとボロがガードしてくれるが向かい側はどうしようもない。

「はぁ。」

もくもくと料理を口に運ぶのみ。



「無理。」

「キュル」

「レオ、頭を動かさない!」

15分で限界。

走るなら1時間でも走れるけど、膝立ちのまま正面直視30分は無理。

シロが励ましてくれるけど、5分で飽きる。15分は頑張ったほうだ。

「竜騎士は王国の式典に参加することもある。きちんと出来ないとシロが恥をかくのだぞ。」

「はあ。」

「“はあ”ではなく“はい”。」

「はい。」

「そう。」

そう思って頑張ってはいるんだけどな。

儀礼の授業は嫌いだ。

シロは姿勢も尾の丸め方も褒められるけど、俺は姿勢も礼も挨拶もまるでダメ。

貴族になる気も式典に参加する気もないからモチベーションが上がらない。

シロが小首を傾げて俺を見る。

可愛い!

「表情を崩さない。もっとキリっと引き締まった顔をしろ。」

無理、だってシロが可愛いんだもの。



今日は魔法の授業。

火、水、土、風という4属性それぞれの専門家が指導に参加している。

竜騎士は竜に乗って上空から魔法攻撃する。

地上で攻撃する魔導士と比べると圧倒的に有利なので竜騎士の攻撃力向上は国を挙げての重要課題。

「レオはどうして水魔法なのだ?」

竜騎士は殆どが2属性の魔法を使える。

ふつうは攻撃力の高い火魔法か風魔法を使うらしい。

水魔法や土魔法を使うのは属性的に他が使えない者だけだ。

「森で使い易い?」

「属性は土と聞いているが水魔法も使えるのか?」

「多分。」

洞窟で喉が渇いたときに使ったから何とかなる筈。

火、土、風は攻撃魔法が使える。

人間との戦闘なら必要ないが、魔物相手だと相手の弱点属性の魔法が使える方が有利だから全ての属性を使えるようになっておきたいと思った。

国に仕える竜騎士と冒険者は戦い方が違う。

「レオ、杖はどうした。」

「いらない。」

「なぜだ?」

「置き忘れる。」

先生が口をあんぐり開けて呆然とした。


「・・・・まあいい。今出来る最大の魔法を撃ってみろ。」

「ウォーターボール!」

ソフトボール程の水球が5つ頭上に浮かび、10m程先の的に向かって飛んだ。

5つの的を狙ったが2つしか当たらなかった。

「詠唱無しだと!」

いや魔法名は叫んだよ。師匠に言われているから。

「レオは詠唱無しで魔法を使えるのか?」

「覚えられない。」

またしても口が開いたまま。

「・・・そ、そうか。5発を1つの的に当てられるか?」

「多分。」

「やってみろ。」

「ウォーターボール!」

5つの水球が的に当たり、的を粉砕した。

「目標が1つだと速度と精度が上がるな。氷は無理か?」

「頑張る。」

氷のボール? 氷なら矢の方がいいか。つらら、軒からぶら下がっているつらら。

つららをイメージすると頭上につららが浮かんだ。

失敗した。

尖ったつららの先が下を向いている。

このまま発動すると俺が串刺しになる。

キャンセルする。

矢? イメージが湧かない。槍? うん、槍ならイメージ出来る。

オリンピックで見た槍投げをイメージする。

「アイスランス!」

氷の槍が山なりに飛んで的に当たった。

「氷の槍だと!」

そうか、槍投げは山なりだった。

傍でおっさんが何やら言っているけどそれどころじゃない。

真っ直ぐに飛んでいくイメージで突き刺さったら爆発?

真っ直ぐ、爆発。真っ直ぐ、爆発。

イメージを固める。

「アイスランス!」

氷の槍が高速で一直線に的に当たり、爆発した。

出来た。

「先生、出来た。」

「・・・・お、おう。今の感じを忘れない為に何回もやってみろ。」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

何度も練習すると感覚が掴めてきた。

自動的に的を作る魔道具のおかげで連続して撃てるのはありがたい。

2本出来るかな。

「アイスランス!」

出来た。3本に挑戦。

「アイスランス!」

1本外れた。でもウオーターボールよりもコントロールし易い。

「アイスランス!」

くそっ!

「アイスランス!」

「アイスランス!」

全部当たった。

「アイスランス!」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

いい感じ。5本はどうかな。

「アイスランス!」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

「アイスランス!」

やはり速度が遅くなるし精度も落ちる。回転をつける?

「レオ、レオ!」

「あっ、呼んだ?」

「さっきからずっと呼んでいる。連発は体に負担を掛ける。子供のうちは無理な連発は控えろ。」

「うん。」

「キュルル」

シロはめっちゃ嬉しそう。

新しい魔法に興奮してる。

「シロは可愛いね。」

「キュル。」

当然だって。



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