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11 学校に入りました

「レオ、学校に行かないか?」

「学校?」

「王立学院だ。」

剣の訓練に行ったら辺境伯に声を掛けられた。

「初等科に行っている息子が高等科はレオと一緒に行きたいって言うんだ。」

何度か会ったことがある。俺と同い年でシロをめっちゃ可愛がっていた青竜の騎士。

「・・・。」

迷っている。

王立学院には行ってみたい。

異世界の学園生活を体験したいから。

でも王都には貴族が多い。

貴族はあまり好きではない。

「王立学院の図書館には貴重な本がたくさんあるぞ。」

「行く。」

大切なのは臨機応変。

朝令暮改では無い。


「シロ~、久しぶり~。」

王都の辺境伯屋敷に入ると、4男のボローニャが飛び出してきた。

俺のことは無視してシロに抱き着く。

勿論辺境伯には一瞥すら与えない。

「元気にしてた? シロの好きなクッキー買っておいたよ。」

シロをわしゃわしゃしながら頬擦りしている。

「はぁ。」

前もこんな具合だったから驚きはない。

横に着地していた辺境伯も苦笑い。

シロはボローニャに連れられて発着場から屋敷の中に入っていく。

「いいの?」

辺境伯に聞いた。

「小さいから問題は無い。」

「はぁ。」

ちなみにボローニャの青竜は厩舎にいる。


今日は入学式。

普通科は試験があるが、竜騎士科は無試験で入学出来る。

竜騎士自体が少ないのだ。

会場はグラウンド。

朋輩の竜が参加するので広い場所で行うらしい。

魔法障壁が張ってあるので雨でも問題ないそうだ。

保護者や来賓が1段高い観客席に入場した後に普通科の新入生が入場。

新入生150人が成績順に1列で入場して後ろの席に座っていく。

その後で竜騎士が朋輩と共に入場する。

今年の竜騎士科は11人。

11人全員が朋輩と共に入場すると、竜騎士は所定の位置に下がる。

新入生が座る席の前には11頭分の目印が置かれている。

前に5つ後ろに6つ。

竜達はお互いの格を見定めて自分の場所を選ぶ。

真っ先に動いたのは一番小さなシロ。

一番小さな緑竜でもシロよりも一回り以上大きい。

小さなシロは堂々と歩いて前列真ん中の目印に座る。

どよめきが起こった。

次に褐竜。そして3頭の青竜。

前列が埋まると緑竜、赤竜の順に目印に座った。


参列している貴族達が驚いている。

白竜の格が褐竜よりも上ということが示されたのだ。

当然思うのは黒竜よりも上かもしれないという疑念。

国王の朋輩は黒竜、どよめきが収まらない。

竜の席が決まると係員が椅子を竜の横に置く。

それを合図に竜騎士が朋輩の横に座った。

俺の横にはボローニャと朋輩のアオが座っていた。

学院長や来賓の挨拶は1段高いスタンドから行われるので大きな竜がいても問題は無い。

入学式を終えると竜騎士以外は退場する。

普通科の新入生は自分の教室でホームルーム。

竜騎士最初のホームルームはこのグラウンド。

普通の授業は他の新入生同様に教室で行われるが、大きな竜は入れないために最初のホームルームだけはこのグラウンドで行われる。


褐竜を連れた竜騎士が前に立った。

「担任のマチオだ。朋輩はトンピ。よろしく。まずは一人ずつ前に出て自己紹介をしてもらおう。」

当然のように俺を見る。

竜の格順らしい。

立ち上がって前に行き、皆の方を振り向いて自己紹介した。

「レオ。朋輩はシロ。ホロル出身。属性は土。」

「マテーラ=フォン=バレン、バレン侯爵家の嫡男だ。朋輩はモモ。属性は火。王立学院初等部出身なので知っている者も多いと思うが、マテと呼んでくれ。」

「ボローニャ=フォン=ホロル、ホロル辺境伯家の4男です。朋輩はアオ。属性は風。王立学院初等部出身、ボロって呼んでください。」

俺以外は全員感応の儀式で朋輩と出会い、初等部に在籍していなかった3人もすぐに初等科に編入したので俺以外は全員が初等部出身だ。

俺のために初等部出身といってくれたらしい。

つまり学校生活が初めてというのは俺だけ?

まあいいか、前世で大学まで行ったから。

前向きに生きよう。


授業は午前中2時間、俺たちは教室で座学、朋輩はグラウンドで自主練習。

まあ11頭で仲良く遊ぶ時間らしい。

午後の2時間は朋輩と共に実習。

今日は初めての自主練習なので竜の自主練習に竜騎士も付き添う。

とはいえ、初等科でも同様だったのでシロ以外は今までも一緒に自主練習をしていたお友達。要はシロが加わっても問題が無いかの確認らしい。

「ゴゴゴ」

「ゴググ」

「キュルル」

「グギュギュ」

「キュル」

「ゴゴグ」

竜たちが仲良くお話?

シロは小さいからか褐竜のモモの頭の上に乗って他の9頭を見下ろしながら話している。

「モモが凄く嬉しそうにしているんだけど。」

マテが呆れたように呟いた。

「アオはモモが羨ましいみたいだよ。」

ボロはアオにもシロを乗せて欲しいらしい。

朋輩が楽しんでいるので竜騎士達も機嫌が良い。


俺一人が頭を抱えている。

シロが胸を張って話しているのは俺の自慢話。

一緒に串焼きを食べるとか、宙返りをするとびっくりするとか、毎日たわしで体を擦ってもらえるとか嬉しそうに話している。

他の竜はそれを嬉しそうに聞いているのだから訳が分からない。

竜達が立ち上がった。

どうやらみんなでランニングをするらしい。

モモを先頭に10頭の竜が1列になり地響きを立ててグラウンドを走り始めた。

「キュル、キュル、キュル、キュル」

シロはモモの頭の上で号令を掛けている。

お前も走れ!

思わず突っ込みを入れそうになった。

しばらく走ったらみんな寝転んで休憩。

シロを中心に11頭が環になってお昼寝。

「はぁ。」

学年ごとにグラウンドが決まっているので、6つのグラウンドで100頭程の竜が走り回っていることになる。それってどうなのよ。

俺たちは問題なしということで教室に戻った。


教室でこれからの予定の説明があった。

座学は数学、国語、歴史、地理、魔物、戦術、政治、経済、経営、の9分野。

数学だけ週に2時間で合計10時間。

実技は儀礼、魔法、近接戦闘、飛行、校外実習の5分野。

前世と同じく週7日、5日間授業で2日の休みになっている。


午後は初めての実習。

騎乗具を着け、竜騎士を乗せた11頭が編隊を組んで学院の上空を飛ぶ。

初等科でもやっていたらしく今日の目的はシロがどのような指揮能力を見せるからしい。

「キュルル!」

シロが一声上げて飛び立つと他の竜も一斉に後を追う。

「キュル!」

「キュキュル!」

「キュルル!」

シロが竜達に指令を送り、隊列を2列縦隊、3列縦隊へと組み換え、S字飛行や急上昇、急降下を試している。

学園内では大勢の人々が空を見上げている。

新入生最初の実習は貴族達にとっては将来の主や家臣を見極める重要な場らしい。

普段は学院に入れない一般人も大勢が見学に来ているそうだ。

俺は全てシロ任せ。

ただのんびりと乗っているだけ。

「キュルル。」

シロが着地の許可を求めて来た。

「うん、お疲れ。」

体力の無い竜が疲れてきたらしいので着地を許可した。

「キュルル!」

竜が一斉にグランドに向かい、揃ったまま奇麗に着地した。


担任のマチオ先生が駆け寄ってくる。

「素晴らしい! いや見事だったぞ。」

「うん。」

おれは乗っていただけなんだけど。

「おいおいいきなり急上昇とか無茶するなよ。」

マテが苦笑いで声を掛けてきた。

「声を掛けた。」

シロは急上昇前に竜達に急上昇の合図をしていた。

「あれ急上昇の指示?」

「うん。」

「レオはシロの言葉が判るのか?」

「うん。」

「シロもすごいがレオも凄いな。」

「シロは可愛いからね。」

ボロが口を挟む。

いやそれは関係ないだろ、突っ込みを入れそうになった。

「キュル?」

シロが小首を傾げる。

うん確かに可愛い。

可愛いは正義だ。

午後の演習を終えて辺境伯邸に戻った。

今日の結果で寄宿舎の配置が決まるらしく、今日はそれぞれの家に、近くに家の無い竜騎士は学院の仮宿舎に泊まる。




自由人 座右の銘は命を大切にの連載を始めました。お時間が有りましたらご一読下さい。https://ncode.syosetu.com/n0038jn/

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